世界展望
1914年 ―「歴史的変動」
ドイツの新聞ディ・ウェルトはその社説の中で,1944年8月1日の歴史的な重要性について論評した。ところが一読者がそれに反論し,その論説はより重要な日付,つまり1914年8月1日を無視していると抗議した。その読者は次のように述べている。その日に,「世界の均衡に関する歴史的な変動が始まり,ドイツに影響を及ぼしただけでなく,ヨーロッパおよび全世界を変えた。その戦争は我々に甚だしい損害をもたらし,ベルサイユ“条約”で終結したが,その条約は,後に第二次世界大戦を芽生えさせるもととなった。ソ連,超大国アメリカの発展,ヨーロッパの衰退,第三世界の覚醒,これらすべての発端となったのは第一次世界大戦であった。1914年8月1日ほど重要な日はまずない」。
聖書本文は信頼できる
今日の聖書本文が信頼できることを示す新たな証拠が,最近,スイスのバーゼル市で開かれた国際会議の席で明らかにされた。ミュンスターにあるドイツ聖書写本研究協会のバーバラ・エイランド教授は,1975年にシナイ山の聖カタリナ修道院で発見されたギリシャ語聖書の写本に関して行なわれた研究の骨子を示した。「新しい貴重な証言が新約聖書本文研究に加えられた」と,同女史はドイツのベストフェーリッシェ・ナハリヒテン紙に語った。「これまでに知られている新約聖書の69の手書きの写本の研究から……今日まで受け入れられてきた本文の正しさが確証される」とその記事は伝えている。
カマキリの交尾
約200年の間,メスのカマキリは交尾の前に,性的な反応を誘発するため相手のオスの首を切るものと考えられてきた。しかしながら,生物学者の近年の研究が示すところによると,それは全く事実と違っている。サイエンス誌はこう伝えている。「オスのカマキリが求愛儀式のダンスを行なうと,メスは連れ合いを襲うのではなく,自分もダンスをしてこたえ応じる。そして最後には,オスを受け入れることを示す何ら脅威的なところのないポーズをとる」。では誤解を生んだ原因は何だったのか。ストレスが高まっている状況と食物の不足を生物学者は挙げている。初めの研究では,カマキリに十分の食物が与えられていなかったというだけである。それにメスのカマキリは概して配偶者を求める気持ちより食い気のほうが強い。
十代の妊娠
米国における十代の妊娠と堕胎の率は他の37の先進国よりも高い,とニューヨークのアラン・グットマッヒャー研究所は述べている。米国における十代の妊娠率は1,000人につき96人だが,イングランドおよびウェールズは45人,カナダは44人,フランスは43人,スウェーデンは35人,オランダは14人となっている。米国は十代の堕胎においてもトップを占めている。18歳になるまでに1,000人の女性のうち60人が堕胎を経験することも研究で分かった。フランスとスウェーデンが1,000人につき約30人でアメリカに次ぎ,そのあとはカナダの約24人,イングランドおよびウェールズの20人強,オランダの7人となっている。6か国の十代の若者の間に見られる性活動の割合はほぼ同じであるが,ヨーロッパ諸国の妊娠率が低い主要な理由としては,避妊具や避妊のカウンセリングを利用しやすいという事情が挙げられている。
腫瘍摘出術か乳房切除術か
今年米国では11万9,000人の女性が乳ガンにかかるものと見られる。最近まで患者のほぼ9割に対して,乳房を完全に除去し,時にはその下の筋肉を除去する乳房切除術を採用していたが,「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌に掲載された情報によると,カナダとアメリカで乳ガンの女性を5年間にわたって研究した結果,悪性の腫れものの部分と周囲の組織を少量除去する腫瘍摘出術を採用し,その後に放射線療法を行なえば,予後は前者の方法と同程度か,ややそれを上回るようであることが分かった。その研究の対象となった患者の腫瘍の大きさは,直径が4㌢以下であった。
同誌の編集者であるアーノルド・レルマン博士は,論争の的になっているこの研究について論評し,「この方法があらゆる問題の答えとなり,すべての問題を一度限り解決すると期待した人は落胆するだろう。……私は楽観視しているが,最終的な答えはまだ得られていない」と述べた。
多数の不適応者
第三世界では12歳から17歳までの若者約2億人が正式な教育を受けずに成長している,とニューデリーのヒンズスタン・タイムズ紙の一論説は伝えている。その結果多数の不適応者が出るのではないかと懸念されている。この問題に関する国際労働機関(ILO)の一調査は,「これらの十代の若者はいっさい学校教育を受けていない者たちか,最低の教育水準を終える前に学校からこぼれ落ちてしまって事実上文盲となった者たちである」と述べている。「ますます深刻化するこの問題に戦時体制を敷いて取り組む意識的な努力が払われているようには思えない」とその社説は述べ,「[インドの]独立から38年もたっているのに,人口の6割以上が[今なお]文盲なのである」と付け加えている。
学校での“恐怖の均衡”
1983年の新学期から翌年の新学期までの1年間に,ニューヨーク市の学校の生徒から3,192丁の武器が押収され,今年の最初の4か月間では,ピストル,ライフル,ナイフを含む1,000丁以上の武器が押収された。幾つかの高校の生徒たちは,仲間の生徒の40ないし70%がある種の武器を主に護身用として携帯しているものと推定した。「学校当局は,親から武器をもらったという若者の数が増えていることに頭を悩ませていると述べた」と,ニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。これほど多くの生徒が武器を携帯するのはなぜだろうか。アンドルー・ジャクソン高校の校長,エバリン・リッチ博士は,「社会で生じている事はことごとく学校でも感じられ,行なわれている。我々が住む社会は,身体的また感情的な安心感が脅かされ,弱まっている社会である」と述べている。学校安全局の局長であるブルース・イルシャルミはそれを学校における“恐怖の均衡”と呼び,「『ソ連がこのミサイルを保有したからこちらもこのミサイルを保有しよう』と言うようなものだ」と付け加えている。
難民の増加
米国難民委員会の世界難民調査によれば,保護と援助を必要とする難民の数は増えており,1983年には780万人だったのが1984年には910万人に達した。それに,難民の状況も悪化している。昨年は「公海における残虐な奪略行為,難民キャンプに対する武力攻撃,国境において強制的に退去させたり拒絶したりする行為,不合理な拘留,難民に対して外人アレルギー[外国人を恐れ憎むこと]を示すこと」などが見られた,と国連難民救済高等弁務官は語った。
東京で自転車の洪水
東京での交通の問題は,車ではなく自転車である。アトランタ・ジャーナル・アンド・コンスティテューション誌によれば,日本には「乗用車の数の2倍以上の5,500万台の自転車」があり,その数は「幼児と老人を含む,日本人二人につき[約]1台」に相当する。東京だけでも自転車が560万台以上あり,ありとあらゆる場所にとめてある。「六重ないしそれ以上に並べられる」こともあって,交通の妨げとなっている。そのため,大小の別を問わず商店に大きな負担がかかっている。地元の銀行員は,「道が完全に通れなくなっているので,車で来るお客さんが全くいなくなってしまった」と述べている。不法にとめてある自転車について最近調査が行なわれ,2万8,000台が警視庁によって撤去された。それでも自転車を見直して使おうとする傾向は衰えを見せない。
火葬が好まれる
「生ける者のために土地を節約せよ」。これは,英国で1885年3月26日に,公式には初めて行なわれた火葬の標語である。その時以来,約1,100万回の火葬が行なわれてきた。67%という英国の火葬率は,世界でも最も高い部類に属する,とAP通信は伝えている。1940年に英国で火葬にされた人はわずか3.8%だったので,これは非常な増加を意味する。その理由は何だろうか。火葬協会秘書のロジャー・アーバーは「土地は非常に貴重である」と述べている。それに対し,アメリカ人で火葬にされた人は約13%にすぎず,ニュージーランド人は52%,スウェーデン人は55%,デンマーク人は60%である,と同秘書は述べた。
偽の薬
多くの国で偽の薬が作られている,と英国ロンドンのオブザーバー紙は伝えている。空のカプセルを手に入れては,「“あまり効き目のない”薬,あるいはアスピリンとデンプンといった全くでたらめな調合薬さえそこに入れる」。それから,薬の箱に国際的な製薬会社の偽造ラベルを張り付ける。「アフリカは外国為替がひどく不足しているので,偽造する側からは格好なえじきと見られている」とオブザーバー紙は述べている。
はなはだしく返却が遅れる
「英国で最も返却が遅れた図書館の本が300年以上たって戻されたが,その期間に相当する罰金は3,000ポンド(約93万6,000円)余りに上る」と英国のロンドン・タイムズ紙は述べている。この本は1641年から1648年の間のいつかウィンチェスター州の主教が借りたもので,その死後も仕事場に残されていた。サマーセット郡記録局の一局員は,「それが17世紀の半ばに紛失したことは知っていたが,どこにあるかは全然分からなかった」と説明している。
うどんこ病を避ける
湿気の多い熱帯地方の国々で災いとなっているのはうどんこ病である。ほど良い気候の地域でも,湿気があって暑く,光があたらなくて換気の悪いところではこの菌が衣服や家具に付くことがある。ペアレンツ誌は,うどんこ病の菌の付いた着物や,もし実際的であれば家具も戸外に出してブラシをかけることを提案している。こうすれば胞子が家中に広がるのを防げるだけでなく,日光によって胞子が死滅することにもなる。その記事は続けて,「ブラシをかけても落ちない染みに関しては,変性アルコールと水を半々に混ぜたものか,レモンの汁に塩を混ぜたものを使うよう」述べている。