アレルギーについて人々が尋ねる質問
家をこれほど清潔にしているのに,どうしてわたしはほこり<ハウスダスト>に対してアレルギー反応を起こすのでしょうか
ほこり<ハウスダスト>はどんなに清潔な家からも出ます。都市部では,6部屋ある平均的な家やアパートから年に18ないし23㌔のほこりが出ます。家をどんなによく掃除してもこの問題を完全に解決することはできませんが,有効な“ほこり対策”は数多くあります。例えば,アレルギー患者の避難所にするため,家の中の一部屋を,できるだけほこりのない所にしておきます。通常,寝室をそのような部屋にあてられるでしょう。ついでながら,羽毛まくらはほこりを集めます。
空気中のほこりを除くための様々な装置(静電気エアークリーナーなど)が市場に出回っていますが,その効果は疑問視されています。それよりも大切なのは,暖房器具や空調設備のフィルターを幾度も取り替えることでしょう。屋内の汚れた空気を排出するため,冬でも毎日家の中の換気を図るようにします。
うちの子はペットにアレルギー反応を示すのですが,ペットを手放さなければならないでしょうか
ペット志向の社会にあって,これはアレルギー専門医の抱える共通の問題です。家の中で動物を飼う人々は多く,その人たちは動物に深い愛着を抱いています。
残念ながら,イヌやネコのフケや毛に対するアレルギーはアレルギー体質の子供にとって特に重大な問題です。動物が屋外で飼われている場合には概して問題はありません。しかし,ペットが屋内で飼われていると,ほどなくしてフケが家じゅうに広がります。ですから,ペットを抱いているときのほうが,家の中の他の場所にいるときより子供の症状がひどくなるとは言えないかもしれません。ペットが“至るところ”にいる,あるいは少なくともペットのフケは至るところにあるというだけのことです。事実,フケが完全に消え去るまでには,ペットを屋外に出してから普通6か月ほどかかります。
最後の点として,このアレルギーに伴う症状は他のアレルギーに伴う症状よりも重く,このアレルギーの減感作療法に用いる注射は比較的危険の大きい注射です。アレルギー疾患対策センターの中に,ペットに対してアレルギー反応を示す子供の親が家からペットを出そうとしないなら,その親を児童虐待対策の関係当局に通報することを診療所の方針としているところがあるのももっともなことです。
うちの10歳になる子供はどれ位の期間ぜん息の注射を打たなければならないのでしょうか。大きくなれば,打たなくてもよくなりますか
アレルギーに対する減感作療法に使う注射は今世紀の初めから使われ,その結果は一定せず,注射をやめる時を知るための確かな方法はありません。大抵の専門医はアレルギー用の注射を数年打ってやめ,まだ注射が必要かどうか様子を見ます。
アレルギーの大半は幼い時に始まりますが,年齢に関係なくアレルギーになることがあります。同様に,人が年を取るにしたがって消えてゆくアレルギーは少なくありません。子供のころの食品アレルギーやぜん息は,大抵の場合,子供が成長するにつれて消えてゆくものです。人が中年に近づくと,枯草熱の症状が軽くなるかもしれません。
どうしてわたしはカビに対してアレルギー反応を示すようになってしまったのでしょうか
その答えはまだ分かっていませんが,カビ・アレルギーについては,最近になって多くのことが明らかになってきています。カビは菌類に属しており,至るところにあります。そのうち,アレルギーを生じさせる種類はごくわずかです。ある種のアレルギーを引き起こす夏のカビは,人が草を刈る際に跳ね上げられ,草そのものよりもアレルギー症状を引き起こす原因になります。別の種類のカビは一年中,家の中,それも地下室や浴室のような湿気の多いところにはえます。屋内の植物の茎や葉にはカビが生えていることが珍しくありません。
うちの子が学校で行儀が悪いのは,加工食品に含まれている食品添加物のせいでしょうか
これは今日,アレルギーに関して最も論議を呼ぶ問題といえるかもしれません。活動過多の問題がしばしば提起されます。1970年代の初頭に,幾人かの研究者たちは,食品に含まれる合成着色料やその他の化学物質がその原因となり得ることを示す証拠を提出しました。例えば,米国カリフォルニア州に住む小児科のアレルギー専門医,ベンジャミン・フェインゴールド博士は,サリチル酸塩や人工着色料,それに人工香料が活動過多を引き起こすという説を展開しました。同博士は,制限の非常に多い食餌療法を広めましたが,それに従うとすれば,ビタミンを十分に摂取できるようにするため,注意深い計画が必要とされます。
活動過多の子供たちの中には化学的な食品添加物を制限した食餌療法の効果があったと見られる子もいますが,全米科学・保健評議会は1982年に,そうした添加物は,「子供の活動過多の重要な原因ではない」と,述べました。
アレルギーを治すのに,薬の代わりにどんなビタミン剤を使ったらよいでしょうか
アレルギーの治療法はまだ知られていません。減感作療法の注射でさえ,体がアレルギーの諸症状と闘えるようになるまで,そうした症状を和らげるにすぎません。アレルギー専門医のなかには,アレルギーの治療法としてビタミンを,それもしばしば大量に用いる人がいますが,こうした病気を除き去るのにこの治療法が役立つかどうかを疑問視する研究者は少なくありません。a
皮膚テストの結果,ほとんどすべての食品に対してアレルギーのあることが分かりました。このような場合,どうしたらよいのでしょうか
最近では,ほとんどすべてのアレルギー患者が皮膚テストについて聞き及んでいます。皮膚テストの際には,アレルゲンの疑いのある食品が皮膚に注射され,それに対する反応が測定されます。自分が食べても何の問題もないような食品について皮膚に激しい反応が起きるかもしれません。それとは逆に,例えば貝に対して激しいアレルギー反応を示すことが知られている人であっても,皮膚テストではそれがはっきり現われなかったこともあります。ですから,皮膚テストではある種の食品に反応のあることが分かっていても,これまでにそれを食べて別に何の不快感も味わったことがないようなら,今後食べ続けても大丈夫でしょう。
偏頭痛があるのですが,これはアレルギーのせいでしょうか
頭の中の血管が拡張すると,偏頭痛が起こります。最近の分析調査により,ある種の食品にはそうした頭痛を引き起こす化学物質の含まれていることが明らかになっています。チョコレートやバナナ,ナッツ,ワイン,チーズ,ホットドッグ,調味料のグルタミン酸ナトリウムなどに疑いの目が向けられています。偏頭痛の原因になる事柄はほかにも数多くありますが,ほかの原因を除いてもまだ頭痛が取れないようなら,偏頭痛に悩む人はこうした食品を自分が食べる物の中から除くことを考えても良いでしょう。専門家の間では,偏頭痛の問題はアレルギーとしてではなく,化学的な問題として扱われているようです。
妊娠している時には,アレルギー疾患がよくなったように思えるのはなぜですか
中には症状の悪化する人もいますが,大抵の女性のアレルギー疾患は妊娠中には軽くなります。その原因はホルモンの成分にあるようです。詳しい理由は分かっておらず,これはアレルギーという問題について学ぶべき事柄がまだどれほどあるかを示す別の事例になっています。
[脚注]
a 「目ざめよ!」誌はこのような論争の中にあって,特定の立場を取るものでも,いかなる仕方であろうと医学的な助言を与えるものでもありません。本誌の目ざすところは単に事実を提出し,読者に判断と決定をゆだねることです。