世界展望
危険度の高いコカイン
コカインはヘロインよりも危険度が高く惑溺性も強いことが新たな調査で分かった。「アメリカ医師会ジャーナル」誌の最近号の報告によると,「ネズミにヘロインかコカインを自由に食べさせたところ,コカインのほうがヘロインの3倍も致命的だった」という。ごく最近まで,コカインを使用するほうが比較的安全だと多くの人は考えてきたが,カナダのモントリオールにあるコンコーディア大学の研究者マイケル・ボザースとロイ・ワイズは,「コカインの毒性は過小評価されてきた」と報告書の中で述べている。米国の国立薬物乱用対策研究所の所長,ウィリアム・ポーリンによると,「コカインは今,よく使われる,不法使用を禁じられている薬物の中でも最も危険なものの一つであることが広く認められつつある」。同所長はさらに,最近の調査からすると,「コカインの惑溺性は非常に強いという結論に」なると述べている。
母乳からエイズ
ロイター通信によると,(オーストラリア政府が設けた全国エイズ対策委員会の)ジュリアン・ゴールド博士は,シドニーで男の赤ちゃんがエイズに感染したと述べた。エイズは体の免疫機構を破壊する命取りの病気である。その子供は今1歳と少しなので,恐らく母乳を飲んでエイズに感染したのだろう。そうだとすると,その赤ちゃんはそういう方法でエイズに感染したことが公に知られた最初の人となるだろう。母親は出産後に受けた輸血からエイズのウイルスに感染した。
米国の疾病対策センターのマーサ・ロジャース博士は,「エイズにかかる赤ちゃんの4分の3は,子宮内で発育している間か,産まれるときに母親の血液に触れることによって母親から感染する」と本誌に語った。また,エイズが母乳を通して伝染する可能性はあるとも述べた。
十代に見られる食欲高進症
「青年期」という本に掲載された,メリー・D・バンソアおよびフランシス・X・ボーゲルによる調査報告は,女子高校生も,食べることに関係した病気である食欲高進症に悩まされていると結論している。食欲高進症にかかっている人は普通,極端に多食しておいてから,のどに指を入れて吐き出したり,多量の下剤を飲んで排出したりする。この食欲障害にかかる危険性は,以前は主に若い女子大生の問題であると考えられていたが,あらゆる民族の14歳から18歳の年齢層の女子にもそれが見られた。「発見されたもう一つの重要な事柄は,人種に関係した点である」と同報告は述べている。この病気は主として白人の上流階級の女性がかかるものと考えられていたが,調査報告は「中流階級の黒人の女性も食欲高進症の症状を示し,その割合は白人の中流階級の女性と同じである」ことを示唆している。
「苦い実」
ドイツの新聞「オッヘンバッハ-ポスト」の伝えるところによると,若者の暴力団を調査するために設けられたフランクフルト保安委員会は,若者が騒ぎを起こすのは,その必要があるからでも,家庭に難しい問題があるからでもないことを知った。「今日,路上で騒ぎを起こして逮捕された15歳から19歳の年齢層の若者たちの大多数は,子供の手を引っ張ってすべてのデモ行進に参加した1968年の抗議者たちの子供である」と報告は述べている。「その子供たちはまさしく母親の乳と反抗の態度によって養われたのである。……1968年当時の若い父親や母親たちは,自分の子供たちに反権威主義の教育を施すことを誇りにしていた。今日その同じ親たちは,もし自分に正直であれば,その教育が苦い実を結んで自分の子供たちが同じ手で親に報復する時,驚かずにはいられない」。
歯科医の天国?
世界中の18歳から25歳までの年齢層の人々の中で虫歯が一番多い ― 一人につき18本 ― のはブラジルであると言われている。その上,ブラジルはカンピナスの歯科医師会会長,ホセ・パウロ・ゴウベイア・デ・トレドによると,人口の90%は,最も基本的な歯科治療を受けることができない。この状態を一層悪化させているのは,ブラジルが歯科治療における科学技術の進歩において「世界の主要な[国々]のうちに」数えられていることだと同会長は述べている。
性に対する僧職者の見方
米国,ヒューストン大学のユニバーシティ・パーク法律センターの二人の弁護士,G・シドニー・ビューカナンとマーク・ジョンソンは,469人の宗教教師と牧師に性行為に関する質問を行なった。解答を寄せた僧職者のうち,淫行は罪であると信じている僧職者は40%にすぎなかった。ビューカナンとジョンソンは,「今日の心理学」誌の中で,僧職者にとっては「淫行は不道徳な行為である」と説教するほうが,「時々淫行を行なって助言や道徳的導きを求めに来るジョンやメリーに同じことを言うよりも」やさしいということが,その世論調査によって分かったと述べている。
切手洗いを罰する
「今でも自分の家の地下室で郵便切手を洗っている人たちがいるが,これは広がる一方である」と,政府に摘発されるまで,洗った郵便切手を売っていた商店主のデイビッド・A・シュミットは言う。ウォールストリート・ジャーナル紙は,「歓迎,最新の犯罪の波 ― 切手洗い」と公然と述べている。切手の洗濯屋は,くずかごから使用済みの切手を集めたり,喜んで売ってくれる老人ホームや慈善施設から買い入れたりする。大抵の洗濯屋は封筒を熱湯に浸して切手をはがし,それからその切手を漂白液に浸して消印を除くという方法をとる。郵便局の機械の調子が悪くて切手に消印がなかったりすると,洗濯はそれだけ容易になる。しかしそれらの切手を売りまた使うことは米国の法律に反することである。1983年末以来,郵政当局は1,300万㌦(約33億8,000万円)以上に相当する密売切手を押収した。
僧職者としての女性
英国国教会の男性だけの僧職の要塞は崩壊の一歩手前かもしれない。同教会の総会は女性を英国国教会の最下位,つまり執事の職に任命することを許す票決を行なった。英国国教会の階級組織においては,執事は司祭の一歩手前である。「女性の執事も僧職者の成員になり,『尊師』と尊称され,結婚式と洗礼式を執り行なえるが,聖さん式を執り行なうことはまだできない」と,ダラムの大執事マイケル・ペリーは言う。ウガンダ,ケニア,ニュージーランド,香港およびカナダの聖公会,米国の監督教会はすでに女性を司祭に叙任している。
テレビと肥満
ハーバード大学の一研究チームは,よくテレビを見る6歳から11歳の年齢層の子供たちを調査し,テレビの見過ぎは肥満児になる一つの原因であると報告した。それらの子供が肥満児になる率 ― 普通は15% ― は,1日にテレビの前に座る時間が1時間多くなるごとに2%増加する。なぜだろうか。子供たちはテレビにくぎづけされて物を食べることがそれだけ多くなり,運動することが少なくなるからである。研究者の一人であるウィリアム・H・ディーツ2世博士は,「子供たちは1週間に約25時間テレビを見ている。そしてその25時間というのは,他のもっと活動的な事柄を行なえるのにそれをしていない時間である」と述べている。
日本の“便利屋”
日本の豊かさはもう一つの成長産業を生んだ。つまり“便利屋”である。これは小さな自営業で,料金を取って依頼者に個人的なサービスを行なう。日本でも外で働く女性が次第に増えているので,家事をする時間やエネルギーが少なくなり,英文読売によると便利屋の需要は1年に40%伸びている。便利屋は何をするのだろうか。家の掃除(2時間で約6,000円),寝ている人を起こすために電話をかけること(約1,000円),白髪を抜くこと(1時間約3,000円),ペットの世話をすること(1時間につき6,000円くらいまで),玄関の鍵がかかっているかどうかを調べること(約1万円)などである。
子供のおしりをたたくべきだろうか
育児専門家のほとんどは子供のおしりをたたくのはよくないと言うが,ニューハンプシャー大学の家族研究所の調査によると,アメリカの親の88%は子供のおしりをたたく。それに代わる懲らしめの手段を用いるよう親に勧める心理学者が増えている。「おしりをたたくことは,親と子の対話に代わる良い方法とは決して言えない」と,ノースウェスタン大学医学部の臨床心理学の準教授,ケニス・ケイ博士は主張する。4歳から8歳までの3人の子供を持つある母親はこれらの心理学者たちの意見に異議を唱える。その母親はおしりをたたくことこそ意思を通わせる良い方法であると考えている。「ほかの形の罰では子供たちにはこたえないように思える」。
「銅は石から」
ドイツのボフムにあるドイツ鉱業博物館の代表者たちは,昨年2か月を費やしてヨルダンのフェナン内外における古代の銅の生産について調査した。西暦前8世紀から5世紀にかけてフェナンは銅の生産でにぎわった。「ボフムから行った科学者たちはかつては同時に使用されていた12基の一連の溶鉱炉を発見した。それらは梨の形をしていて,容量は25㍑であった」と,オーストリアの新聞「ザルツブルガー・ナハリヒテン」は伝えている。「当時の銅生産量は数千トンであったに違いない」。フェナンからは20万㌧ほどの銅の鉱滓が発見されるものと見られる。興味深いことに聖書のヨブ 28章2節から4節は銅のそのような生産方法に言及して,「銅は石から溶かし出される」と説明している。
中国のネズミ対策
中国の英字新聞「チャイナ・デーリー」の伝えるところによると,中国の田舎の幾つかの地方ではネズミのステーキを食べたり,ネズミの皮で作った靴をはくことがはやっていて,格好のネズミ対策になっている。中国語の新聞「経済参考」も,「福建省の田舎の人々は,ネズミのステーキは世界最高のステーキと絶賛する」と伝えている。「チャイナ・デーリー」紙によると,中国の南西部にはネズミの皮で子供の靴を製造している工場があるということだ。「ネズミの皮はきめが細かくて柔軟性に富み,光沢もあるので,靴の材料としては理想的である」。中国では年間1,500万㌧の穀物がネズミに食い荒らされると言われている。