世界展望
電波教会のスキャンダル
元テレビ伝道師のジム・ベーカーと妻のタミーは1984年1月から1987年3月までに,給料やボーナスその他の報酬としてテレビ伝道から480万㌦(約7億2,000万円)の収入を得た,と米国ノースカロライナ州の新聞「シャーロット・オブザーバー」は伝えている。ベーカーは,1980年に教会のある若い秘書との間に「性的交渉」のあった事実を認め,この3月にPTL(主をたたえよ)のテレビ伝道の責任者の立場を退いている。ベーカーがその事実を告白する直前に,彼の妻は自分が薬物中毒にかかっていたことを明らかにした。別のテレビ伝道師であるジミー・スワガートはベーカー夫妻を取り巻くスキャンダルについて,「今日のように,イエス・キリストの福音がこうも地に落ちたことはかつてない」と語った。しかし,実際のところ地に落ちているのは,福音とテレビの福音伝道師のどちらだろうか。
アルミニウムにご用心
「英国の指導的な科学者たちの一グループは,アルミニウムのシチューなべの使用やアルミニウムを多く含む食品の摂取に注意を促している」と,ロンドンのサンデー・タイムズ紙は述べている。『ニューカスル・アポン・タイン市にある医療研究会議の神経内分泌学部会の科学者たちは,食品と水のアルミニウム汚染が,老人性痴呆の最も一般的な形態であるアルツハイマー病の原因になるかもしれないと考えている』。以前には料理なべから出るアルミニウムの量はごくわずかだと考えられていたが,最近の調査によって,料理の水にフッ化物が含まれていたり,トマトやキャベツのような酸性の食物を調理したりすると,化学反応が起き,アルミニウムの流出量が大幅に増加することが明らかになった。この発見により,子供の歯を強くするために多くの地域で行なわれている,水道の水にフッ化物を加えるという方法に関する問題が提起された。
昼寝
昼寝の欲求は不自然ではない,と研究者たちは言う。午後1時から4時ごろにかけて,ほとんどの人は注意力が散漫になり,生産性が低下する。こうした現象が起こるのは,以前に考えられていたような,食事や文化のためではなく,人体の生物時計が切り換わるためである。その時は数分で寝つくことができる。昼寝の時間を取った人は,注意力や作業能率は向上しなかったものの,気分がよくなった。子供たちも休む時間があると,実際には寝なくても,行儀がよくなった。
危険な離乳食
英国ウォーリックシャー州の「取引基準局」による一調査はその結論として,特に腎臓に問題のある幼児や早産の乳児が,一部の離乳食に含まれる微量のアルミニウムの危険にさらされていると述べている。しかし,強調されているのは,その含有量では健康な幼児に危険はないという点である。英国と米国における最近の研究では,腎臓に欠陥のある幼児や,器官が十分に発達していない早産の乳児にとって,アルミニウムが危険なものとなり得ることが示唆されている。子供はアルミニウムを排出できないため,過剰のアルミニウムが脳に蓄積されるからである。
死を招く血液
俳優のダニー・ケイはこの3月に死去したが,「その死の最も重大な面が一般に見落とされている。この74歳のコメディアンの死因の一つは,汚れた血液をかつて輸血されたことである」と,コラムニストのレイ・ケリソンは書いている。担当の医師は,4年前に4か所の心臓バイパス手術を受けた時に施された輸血がもとで,ケイが非A非B型肝炎にかかったことを明らかにした。「こうして,ダニー・ケイの命を救うための手術がかえって死の宣告となった。実際,米国では1日におよそ12人(血友病患者が多い)が汚れた血液で伝染する病気にかかって死亡していると思われる」と,ケリソンは述べている。なぜだろうか。血液に数多くの病気が潜んでいる可能性があるにもかかわらず,検査を増やすと採算がとれないので,B型肝炎とエイズの二つの抗体検査しか行なわないことがその理由である。
同じ時期に,人気のあった元ポルノ女優のリンダ・ラブレースが肝臓移植手術を受けた。なぜ肝臓が損なわれたのだろうか。この場合も,1970年の自動車事故後の輸血でうつされた肝炎が理由,と医師たちは考えている。
「太っているほうが楽」?
「深刻な太り過ぎの問題を抱える人のほとんどではないにしても,その多くの人たちの豊満な体型を責めることはできない」と結論する肥満の専門家が増えている,とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。その記事によると,ハーバード大学医学部の肥満の専門家ジョージ・ブラックバーン博士は,「身長・体重表に載せられている“理想”体重まで減量しようとして食事を制限している肥満体の人 ― 体重が“理想”体重を30%以上超過している人 ― の少なくとも半数はそのために医学的・身体的・心理的苦痛を味わうので,太っているほうが楽である」と語った。それでもなお,ニューヨーク市の聖ルカ-ルーズベルト病院センターのセオドア・B・バン・イタリー博士は,「肥満は環境条件に左右される。座ることが多く,食物の豊かな社会の一員として,体重の制御を望む太りぎみの人は,高いレベルの運動量を維持する方法や,身を守る食事の仕方を学ばなければならない」と述べている。
滑らないはき物
英国の病院は毎年,氷に足を滑らせて負傷する人たちを50万人も治療する。医療研究者たちはシロクマから教訓を得て,この事故を減らす計画を立てている。シロクマの足には滑りを防ぐ優れた特性が備わっているが,そこにはどんな秘密が隠されているのだろうか。ロンドンのサンデー・タイムズ紙によれば,顕微鏡で調べると,「凹凸のある」堅い表面が「柔らかくて弾力性のある内部」を包んでいることがよく分かる。堅い革底の靴やビニールの靴は寒い天候のもとでは一層堅くなり,底の厚い硬質の長靴の底には氷がたまりやすいが,科学者たちは,シロクマの足の二層構造をまねれば,滑りやすい面で最大の抵抗力が得られると考えている。「氷のような面の上で完全な安全を保証する物質はないと思うが,我々の靴は今よりもはるかに安全なものになり得る」と,フォード・モーター社の医療主任であるデリック・マニング博士は述べている。
大食漢
「イタリア人の食生活はお粗末だが,それはイタリア人の責任ではない」と,ローマの日刊紙「ラ・レプブリカ」は述べている。なぜだろうか。「イタリア栄養学協会」が今年の初めにローマで開いた大会で,イタリアの大食漢に関するこうした問題が話し合われた。ペルジア大学の指導教授トゥーリオ・セッピリは,イタリアの名高い大食漢は「一方では食べるようにと駆り立て,もう一方ではスマートな体型を願う二つの享楽主義によって」生活が分裂させられている哀れな人たちであると主張している。この点を支持するものとして,最近の統計によれば,イタリアの成人の800万人が太り過ぎの問題を解決しようとしているのに対し,2,200万の人々は相変わらず食事に不満を抱いており,自己を嫌悪しながらソーセージやチョコレートをむさぼり続けている。「ラ・レプブリカ」紙は食事に関するイタリア人の選択のお粗末さを嘆き,「第一級の廃物をむさぼり食うよう子供たちをうまく説きつけてきた」点でテレビのコマーシャルには大きな責任があると述べている。
日本の労働危機
日本は第二次世界大戦以来最も深刻な労働危機に直面している。その原因としては,円高によって日本の製品の生産費が高騰したこと,海外市場における需要の低下,韓国のような国々との競合などがある。人件費を切り詰め,競争における優位を保とうとして,日本の会社が先を争って海外生産に切り換えるため,自国の労働者は失業に追い込まれる。「日本の失業率はここ数か月,2.8%から2.9%の間を上下しており,1953年に政府が統計を取りはじめてから最高の水準に達している」と,マイニチ・デーリー・ニューズ紙は伝えている。その数字が他の国々と比べて低いのは,日本の算定方法が異なっているためである。例えば,一時解雇者や週に1時間以上働く人は含まれていない。「米国式に算定すれば,[失業率は]倍増して5%を超えるだろう」と,同紙は述べている。