世界展望
“恵まれた”国?
● 英文毎日紙は,日本はその繁栄ゆえに「最も恵まれた国の一つといっても過言ではない」と語ったある政府高官の言葉を引用している。しかし同紙の余録は,「が,心は世界のなかで最もとはいわないまでも,きわめて貧しいのではなかろうか。物質的繁栄と引きかえに,人間の心を失ってしまったのでは」との疑問を投げ掛けている。余録は幹部社員が不正行為で起訴されていることに触れ,次のように述べている。「裏金をつくり,政治家にばらまき,ウソと弁解に終始する薄汚い人間の姿が判決文から浮かびあがる」。さらに,「知識も経験も,心の荒廃を食い止める防波堤にはならなかった。『繁栄』が心を喪失した『知識,経験豊か』な人々によって支えられていたとすれば,『恵まれた国』どころではない」と述べている。地上のほとんどすべての国について同じことが言えそうである。
“患者過誤”
● 治療を受けたのに傷害を被ったとして,患者が医師の医療過誤を訴えるケースが最近多くなった。しかし南カリフォルニア大学のガーション・レッサー医師は,多くの人が“患者過誤”を犯していると指摘する。この言葉は,「患者が自分自身に対して犯す,健康を危険にさらす怠慢」を意味している。その原因は,健康管理の主な責任は患者にあるという事実を認識しないことにある。レッサー医師はよく見られる例を挙げて,こう述べている。「ある患者は医師に,多くの食事療法があるがどれが一番良いか,ジョギングするのが良いか,泳ぐのが良いか,サイクリングが良いか,最善のストレスの解消法は何かなどを聞く。それでいて,当人はたばこをすぱすぱと吸っているのである。……喫煙は恐ろしく有害であり,心臓や肺に及ぼす影響は甚大である。そのために,人がたばこを吸うなら,他の予防医学のどんな処置を施したところでほとんど意味をなさないほどである」。たばこを吸わない人をも含めて,多くの患者はいつも栄養価の低い食品を食べたり,他の仕方で自分を傷つけたりして体を損なっている。レッサー医師は次のように評している。「この種の人たちすべてに,現代医学に対する危険な誤解が見られる。患者過誤を犯す人たちには,自分を傷つけても新しい治療技術によって助かるから大丈夫だと考える傾向がある。わたしはこの人たちにお伝えしたい。それは,医学の分野でのどんな飛躍的な進歩も,命の分割払い的な自己崩壊を正当化したことはないという点である。現代の医学における最も飛躍的な進歩はこれからまだ先のことである。それは,健康に対する主な責任が患者自身にあるという事実を大衆が自覚することである」。
聖書の言語
● 聖書は現在1,739の言語および方言で出版されており,これは昨年に比べて29増えたことになる。現在,聖書全巻は277の言語で,ギリシャ語聖書の部分は518の言語で,聖書中のどれか一冊の書は944の言語で入手できる。翻訳の数の一番多いのはアフリカ大陸で,聖書全巻が104の言語,ギリシャ語聖書の部分が163の言語,聖書中のどれか一冊の書が239の言語に翻訳されている。
幼児の性病の急激な増加
● 生後6か月かそれ以下の幼児の間に性病が驚くべき増加を見せていることが,アメリカ全土で報じられている。それは性病に感染した母親からうつるのである。1977年から1981年にかけての報告によると生後6か月以内の赤ちゃんの間の梅毒の年間感染率は,2万847人から3万127人へと45%増加した。他の性病の併発症に関してはその幾倍もの数字が報告された。その悲劇的な結果として,失明,知恵遅れ,難聴,腫瘍その他の障害が起こっている。全米アレルギー・伝染病研究所は,この無邪気な子供たちの問題が“大災害の様相を呈している”と述べている。
カナダの教会の衰退
● カナダの教会員の間には神に対する信仰の大幅な衰退が見られる。カナダ合同教会,カナダ放送協会,およびカナダ政府の後援で行なわれた調査によると,カナダ最大の合同教会の会員のうち,神に対する確固たる信仰を抱いている人は半分以下である。「カナダの組織宗教は急激な減少の傾向をたどっている。諸教会はかつては活発であった会員や信者の多くを失っており,しかもその埋め合わせができないでいる」と,アルバータ州の社会学者レジナルド・ビビイ氏は語っている。彼はさらに,「保守的な教会員は別としても,カナダ人は教会員も非教会員も等しく,ユダヤ-キリスト教の基本的な内容についてさえ驚くべき無知を示している」と述べた。22年間に,教会の出席率は61%から35%に低下した。ビビイ氏は,「カナダの組織宗教はその主流派も保守派も困難な状態にある」と結論している。
養殖漁業の進歩
● 30年程前には,養殖漁業すなわち内陸部での養魚法は世界の飢きんを終わらせる一つの方法であると考えられていた。しかしその期待通りにはならなかった。とはいえ,過去5年間にこの養魚法は病気の抑制,栄養,育成その他の面で格段の進歩を遂げた。米国の養殖漁業の年間収獲量は5年間に2倍になり,13万5,000㌧にもなった。現在,マスとナマズが養殖魚の三分の二を占めている。ハワイでは,内陸に設置された最大のカキ養殖場から,昨年12月に25万個のカキが取れた。近い将来その収獲量は数倍になるものと期待されている。最近の研究の進歩に関して,ビジネス・ウィーク誌はこう述べている。「最も重要なことは,転換比率 ― 1ポンドの収獲を得るのに必要とされるえさの量 ― の急激な増加である」。10年前には1エーカー当たりの収獲高は540キログラムであったが,今では1,350キログラムが普通のことになっている。
男性による性的ないやがらせ
● カナダの人権委員会が明らかにしたところによると,調査の対象となった男性の約15%が職場で他の男性から性的ないやがらせを受けたと述べた。調査の対象となった女性のほうは,その23%が男性から性的ないやがらせを受けたことを明らかにした。男性に対しても女性に対しても,いやがらせの仕方は同じだという。「性的なことをほのめかしたり,愛ぶしたり,触ったり,時には性交渉を強制されたりする」とトロント・スター紙は報じている。
“幼い銀行強盗”
● まだ十代にもなっていない子供たちが大人の犯罪を犯すケースが多くなってきた。昨年,9歳の男の子がニューヨーク市の銀行に強盗に入り,盗んだ金をハンバーガー,フライドポテト,時計などに使った。修正された保護観察案により,当人は保護観察官に定期的に所在を報告し,定期的に学校に通い,「成人であれば犯罪に当たる行為を犯してはならない」ことになった。しかし,この少年は二人の幼い子供たちをナイフで脅して金を盗んで再び逮捕された。警察当局の話によると,今では10歳になったこの少年には,9歳と10歳の二人の共犯者がいたそうである。
アルミニウムの取り過ぎ
● カナダ,トロントの薬理学者アーマンド・リオン博士によると,我々が食べる食物や料理に使う器具に含まれるアルミニウムは,健康上の障害を起こす原因になるかもしれない。同博士の説明によれば,わずか2ないし3㍉㌘のアルミニウムが脳の中に浸透するだけで,正常の機能が阻害され,一種の老衰の原因ともなり得る。北アメリカに住む人々は平均して1日に22㍉㌘のアルミニウムを摂取し,そのほとんどが腎臓を通って排出される,とリオン博士は言う。しかし,腎臓の機能は30歳を過ぎると衰えはじめるため,少量のアルミニウムが体内に残留しはじめる,と彼は警告している。どんな食べ物の中にアルミニウムが含まれている場合が多いかというと,ケーキミックス,ホットケーキの練りもの,ふくらし粉の入った調合済み小麦粉,冷凍練り粉などである。これらの中にはふくらし粉としてリン酸アルミニウム・ナトリウムがしばしば含まれている。“ミョウバン”として知られる硫酸塩の状態で,アルミニウムはきゅうりのピクルスなどの中にも含まれている。特にトマトのような酸性の食べ物を調理したり保存したりするのにアルミ製の調理用具を用いると,アルミニウムの含有量が増加することがある,と同博士は述べている。
栄養価の高いウイング豆
● 数年前までには見向きもされなかったウイング豆が今では70以上の国々で注目を浴びている。この植物はいんげん,ガーデンピー,ほうれん草,マッシュルーム,大豆,豆もやし,ジャガイモの良いところを合わせ持っているために,“茎の上のスーパーマーケット”と呼ばれている。花から根に至るまで,食べられないところはほとんどない。ビタミンAの良い供給源と言われ,豆にはビタミンEが多く含まれている。ニューヨーク・タイムズ紙によると,「栄養価の高いこの植物は熱帯地方の大豆になる見込みがある。熱帯での栄養不良と対処するには,どんな食物の組み合わせよりもこの一種類の食物がより大きな働きをするであろう」。
ワシがラジオをスカイジャック
● ソビエトライフ誌はキルギス地方で起きた珍しい出来事を報じている。ある日,山峡で羊の番をしていた羊飼いは,高いがけの上にあるワシの巣から音楽が聞こえてくるのを耳にした。それで彼は自分のトランジスタラジオがどこに消えたかを知った。ワシが舞い降りてきて,それを自分の巣にさらっていったのであろう。同誌はまたこう述べている。「数日間,ワシの家族は昼も夜も音楽を聴いていたが,やがて電池がなくなって,ラジオの音がしなくなると,鳥たちはそれをがけから下にけり落とした」。
やせた人は長生きする
● 「たばこをそれ程吸わないやせた人がいれば,その人こそ人生で最良のものを得る人である。最も低い死亡率,卒中率や心臓発作率が低くなることなど,良いことずくめである」と,米国マサチューセッツ州のフレミンハム心臓研究所の所長ウィリアム・カステリ博士は言う。この研究グループは1949年以来住民の健康について追跡調査をしている。彼らの結論は,最も健康な人は少しばかり太った人だとする,ジョンズ・ホプキンズ大学の研究結果と異なる。その報告に関して,「太った人は皆その報告に接して喜んでいた。だが,我々はそれが正しいはずはないと言っているのである」とカステリ博士は述べた。同博士によると,平均値を得るさいに,たばこを吸う人を統計の中に含めないなら,やせた人が長生きするという結果が明らかになる。
礼儀正しさを広める運動
● 中国は最近「市民道徳月間」を設定した。公共の秩序を守ること,礼儀正しさ,清潔さはすべての市民が実践すべき分であると公に宣言され,地面につばを吐かないよう,必要もないのに自動車の警笛を鳴らさないよう,ごみを散らかさないよう,酔って自転車に乗らないよう,公共の場所で行儀の悪いことをしないようにと国民は告げられた。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると,事故の件数を少なくするために,「中国人のドライバーは運転中に食べたり,飲んだり,たばこを吸ったり,話したりすることを禁じられた」。新華社通信によると,ある週末に約百万人の人々が政府の指導者たちに加わって,北京市の汚れを洗い落としたり,掃除をしたり,磨いてきれいにしたりした。この新しい礼儀正しさは長続きするだろうか。ある店員はこう語った。「私たちがこの1か月間の運動をしているのは,どのように礼儀正しくあるべきか,また国家再建に際してこの態度を保つべき必要性を人々に教えるためです。(この月がすんだら)また失礼な態度を取っても良いという意味ではありません」。