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  • 家のない人々 ― その原因は何か
  • 目ざめよ! 1988
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目ざめよ! 1988
目88 3/8 7–9ページ

家のない人々 ― その原因は何か

それは寒い冬の夜でした。何度か甲高い悲鳴が響きわたり,ルイーズと彼女の家族はたたき起こされました。アパートの隣部屋から火が出たのです。冬の強い風にあおられて,6階建ての建物全体が炎に包まれました。5階から逃げようとする人々のパニックと混乱の中で,ルイーズの母親は非常階段から落ちて死亡しました。その後瞬く間に炎が建物の内部を焼き尽くし,すべての部屋が焼け崩れました。

一夜にして母親と家を失ったことは,ルイーズにとって大きな打撃でしたが,幸いなことに,ルイーズには物事が順調にゆくようになるまで世話してくれる親族や友人がいました。社会学者が地域互助組織と呼ぶ,何世代にもわたって緊急時の救助網となってきたのはそれです。

ではなぜ,どの都市にも街路にたむろする人々がおり,家のない人々のための収容所があるのでしょうか。一体どうして,土地不法占拠者,スラム街,バラック地区があるのでしょうか。実際,住宅問題や家のない人の問題があるのはなぜでしょうか。

救助網が破れるとき

正常な状態であれば,親族や友人の組織網はうまく働き,人が個人的にどんな窮地に陥ろうとも必要な助けを差し伸べるだけの働きをします。しかし,その組織網はもろいものです。もしその必要が非常に大きく,大変費用がかかるため,その組織網では賄いきれない場合はどうでしょうか。また,もし何らかの大規模な社会的動乱がその組織網そのものを混乱させるような場合はどうでしょうか。救助網が破れるとき,人々は全くの苦境に陥ります。

多くの発展途上国でそのとおりのことが生じています。例えばインドでは,過去数年,毎年の雨季に十分の雨が降りませんでした。1987年の夏ごろ,インド人3人に一人は十分の飲み水を得られませんでした。水不足はまた,穀物が生長せず,家畜が生き続けられないということをも意味しました。穀物がないので,畑で働く人々には仕事がなく,家族を養う手段がなくなりました。そのような人々にとって唯一の選択は,村を離れて,まだ仕事が見つかるかもしれない都会へ出て行くことでした。

人々のこの移動の結果は,すでに急激な人口増加で問題の生じている都市にとって文字どおり重荷になります。それら入って来る人々はお金も仕事もないので,スラム地区に小さな部屋を借りる余裕さえありません。また,そういう人たちは自ら全く新しい環境に身を置くわけですから,頼れる人がいる人はほとんどいません。それで,他の無数の路上生活者に加わらねばならず,住宅危機は増大します。

ほかの発展途上国も同じような問題に直面しています。「危機のアフリカ」という本はこう述べています。「1950年当時,アフリカに人口100万人を超える都市はただ一つ,カイロだけだったが,1980年に100万人都市は19になった。2000年までにそのような都市は60を超すことになろう」。田舎の人々はもっとましな暮らしができると思って都市に集まって来ます。しかし,結果はスラム街と零落であり,後にしてきた生活よりも悪い場合が少なくありません。

価格の上昇と供給の減少

比較的豊かな国あるいは先進国では,家を失う原因は全く異なる場合があります。家のない人たちの代弁者たちは一般に,経済がその主な要因であると主張します。例えばカナダでは,カナダのニュース雑誌「マクレアンズ」の伝えるところによると,「過去20年間にわたって上昇を続ける建設費が新築の住宅価格を押し上げる一方,近年の住宅市場に共稼ぎ夫婦が登場したこともあって価格はさらに上昇した。一部の都市近郊地では昨年だけで50%もの値上がりとなった」。

多くの都市で住宅価格の上昇に一役買っているのは,高級住宅化と呼ばれる傾向です。都市中心部の低所得者密集地区にある老朽化した低価格住宅は,あらゆる近代的設備を備えた高級住宅に改築・改装されることが多くなっています。それは郊外での生活よりも都市生活を好む成り金や若い職業人の要求を満足させるためなのです。これは価格を押し上げるだけでなく,低所得者ならびに中所得者の入居可能な住宅の供給を大幅に減少させることにもなります。

例えばニューヨーク市では,新築のアパートで寝室が一つの手ごろな住居を借りるには,一家族で年に5万8,000㌦(約754万円)稼がなければならないことが,最近の研究で分かりました。米国における全国調査の示すところによれば,マンハッタンも家賃の高さでは全国一です。良い地域にあるアパートで寝室が二つある広さ130平方㍍の住居の家賃は,平均して月額2,555㌦(約33万2,150円)ですから,そこに住むためには,住居費だけに収入の40%余りを費やすと仮定すれば,一家の年収が7万3,000㌦(約949万円)なければならないことになります。

ほかの都市の住居費はもっと低いかもしれませんが,そこで働く人たちの平均賃金も同じように低いのです。家計の大部分が住居費に充てられるのですから,何かのことでやりくりがうまくゆかなくなると容易に破産という結果になります。仕事を求めて数年前に家族5人で米国イリノイ州シカゴからテキサス州ヒューストンへ引っ越したジョンの場合がそうでした。しばらくの間は娯楽用乗り物のセールスマンとして働いて得た手数料で家族を扶養していましたが,不景気になったため2か月間全く売り上げがありませんでした。その結果,月595㌦(約7万7,350円)の家賃を払えなくなり,ジョンと家族はアパートから追い出されました。頼れる人がだれもいなかったので,家のない家族のための宿泊所へ行きました。雨風をしのぐ場所は確保できたものの,住所不定の者を雇ってくれる人はほとんどいない状況で,どうやって再び自活してゆけるだろう,とジョンは思案しました。

大都市に住む人の大半は家のない人々ではないかもしれませんが,その住んでいる所にはやはり問題点が数多くあります。ある調査が明らかにしたところによると,ニューヨーク市のような近代的な都市でも,既存の住宅の10%は,空気,日当たり,衛生設備などが不十分であるため今世紀の初めでさえ使用に適さないと考えられた,いわゆる“旧家屋”です。別の30%はいくらか改良された“新家屋”ですが,1929年の基準でも通用しない住宅です。老朽化した建物がついに居住不適格と判定されたり,住人がほとんどいなくなったりした時に,自分の住まいから強制的に立ち退かされる人が毎年3万人もいます。

精神医学的な要素

問題を複雑にしているのは,住む家を失うに至る原因にもいろいろあり,経済的理由はその一つにすぎない,と考える専門家が少なくないことです。その主張によると,住む家がない状態になるのは,そういう人々の中でもかなり多くの人が精神的な病気にかかっていて,もはや自分のことも自分でできないからなのです。

1960年代の半ばから,多くの州立精神病院は経費削減策の一環として,地域社会精神治療法と呼ばれる方法を採用してきました。精神病患者は精神に作用するある種の新しい薬を処方されて解放されます。その理論は,比較的重い症状を薬で抑えている患者でも,地域社会の中で生活し,人々に支えられるなら回復できる,というものです。その結果,例えばカナダでは,精神病院の全病床数が,1960年の4万7,600床から,現在の1万床に減っています。また米国の精神病院に現在入院している人の数は,最高だった1955年の55万9,000人の4分の1弱になっています。

「しかし,精神病患者は解放されても,各地域で以前の精神病院入院患者に対して社会奉仕や生活上の備えが十分になされなかったため,その解放策はほとんど効を奏さなかった」と,マクレアンズ誌は報じています。荒れ果てた宿泊施設や簡易宿泊所に住むことを余儀なくされている人は少なくありません。自分の生活をやりくり算段することができず,一時的収容所か路上で寝ることになる人もいます。多くの都市の福祉課職員の推定によると,家のない人々の約3分の1は何らかの精神障害を抱えているということです。ハーバード大学医学部のエレン・バスクの行なった研究では,ボストンにある住所不定者のための典型的な収容所に身を寄せる人々のうち「9割は,はっきり精神病と認められる」ことが分かりました。

簡易宿泊施設やその種の場所に収容されている,家のない家族の状況は,あまり良いものではありません。そういう人たちの多くは精神病にかかっていたわけではなくても,混雑と不衛生な状態に加えて退屈さや絶望感のため,特に子供たちに,家庭内暴力や情緒障害の起きることがよくあります。

解決策探究の難しさ

家がない人々の問題は,原因が経済不況なのか,高い住居費や精神病なのか,それともほかにあるのか,専門家の間でも意見は一致しませんが,その問題の幾つかの面は依然として焦眉の急となっています。何よりも,住宅問題が世界的に増大していることは否定できません。しかも,独り者ではなく家族持ちが,家を失うケースが増えているのです。そしてさらに,家のない人々の数は若年層に多くなっていることです。このように悲惨な状態なのですから,解決は急を要しています。問題解決のために何が行なわれようとしているのでしょうか。それはどれほど効果的ですか。いつかすべての人が家に住めるようになる時が来るのでしょうか。

[9ページの図版]

豪勢な住宅に隣接して作られた,間に合わせの住居

[クレジット]

Mark Edwards/UNCHS

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