世界展望
利点が認められる
「血液製剤の使用を拒むエホバの証人は間違っていないと思う。なぜなら,輸血が非常に多くの病原菌を媒介し得るのは事実だからである」と,フランスの医学日刊紙「ル・コティディアン・デュ・メデゥサン」は述べている。同紙の記事はさらに,輸血された血液が(危険で命も危うくしかねないウイルス性の病気の原因となる)サイトメガロウイルスや,一群のヘルペスウイルスのような特定のウイルスの媒体となるだけでなく,多くの場合,「輸血される人の体内にある臨床的に静かなウイルスを目覚めさせる」ことを強調した。
ブラジルの雑誌「イストエ」が伝染病の専門家である医師のビンセンテ・アマト・ネト教授に対して行なったインタビューは,そのことを確証している。サンパウロ臨床病院のアマト院長はこのように述べた。「私はよく,エイズの最善の予防策はエホバの証人になることだと言っている。その宗教に属している人たちは,同性愛者でも,両性愛者でもないからである。彼らは自分たちの結婚に忠節で,結婚を生殖と結びつけて考える。彼らは麻薬もやらなければ,駄目を押すかのように,輸血も受けない」。
砂塵あらしによる災害
干ばつと砂漠化による砂塵あらしが,この5年間に毎年80日以上,西アフリカのモーリタニアの首都ヌアクショットを吹き荒れた。どんな結果になっただろうか。モーリタニアは「吹き飛んで」いる,とロンドン・タイムズ紙は伝えている。砂漠を吹く風によって,国の南部のサヘル地方から毎年1億㌧もの表土が大西洋上に運ばれる。土と植物がなくなるにつれて,モーリタニアの酪農民たちは都市部に逃れて来ている。今や状況は,子供たちの3人に一人が栄養不良になるほど悪化しており,平均余命はわずか46年になっている。干ばつが長引いているのは,国の上空に残る砂塵のせいではないかと考えられている。
“世の終わりの時計”の針が戻される
特定のタイプの核ミサイルを削減するという歴史的な条約が昨年12月,米国の大統領ドナルド・レーガンとソ連の書記長ミハイル・ゴルバチョフによって調印された結果,科学者たちは“世の終わりの時計”の針を3分戻した。「原子科学者会報」に掲載されているこの時計は,核戦争がどれほど差し迫っているかを象徴的に表わしている。時計がその前に戻されたのは1972年だった。それ以来,世界の緊張によって,時計は真夜中の12時12分前から3分前へと着実に進んできた。時計の針は真夜中の12時6分前にいつまで止まっているだろうか。
オーストラリア人向けの聖書
オーストラリアの聖書協会は,オーストラリアの建国200年記念の一環として,「オーストラリア人向けの聖書」を発売した。基本的にその本文は「今日の英語訳」(「良いたより聖書」)と同じだが,つづり字,長さ,重さ,容積,それに表現の一部がオーストラリア式に改められた。例えば,「畑」は「囲い地」に,「水溜め」は「溜め池」になる。レビ記 19章9節には,「あなたの囲い地から収穫するとき,囲い地の端の穀物を刈り取ってはならない……」と記されている。聖書の中のさし絵もオーストラリア風で,苦しみの杭の上でのイエスの死はオーストラリアの原住民のスタイルで描かれている。さらに表紙には,広大な空間を好むオーストラリア人の心に訴えるよう,日没をバックにしたゴムの木が,建国200年記念の主催者の文字と共に配置されている。
コンクリートで権利を守る
日本は二つの岩を守るため,300億円を費やすことになる。それらの岩はフィリピン海にあって800㍍ほど離れており,干潮時には長さが4.5㌔にもなる環礁の一部を成している。ところが,満潮になると島は水没し,「直径5㍍と同2㍍の大小二つの岩が50-30㌢程度,顔をのぞかすだけ」と,朝日新聞は伝えている。鉄製の消波ブロックとコンクリートが岩礁の周りに築かれる。そんなに騒ぎ立て,それほどの巨費を投じるのはなぜだろうか。領土権は満潮時が基準とされており,日本の最南端のこの領土は水没しつつある。岩があれば,島の周囲200カイリ以内の漁業権や採掘権を保つことができる。その水域は,日本自体の面積よりも広い。
“医療パスポート”
「問題の多い国家的健康管理体制を改善する運動の一環として,[1988年に]ソ連の2億8,000万の市民に“医療パスポート”が交付される」と,カナダのトロント・スター紙は伝えている。その「ポケット版の“パスポート”」を見れば,持ち主の病歴が分かり,「その人の血液型や血圧,それに持病の治療に必要な薬の種類まで,多岐にわたる資料」が得られる。ソ連の副保健相,アレクセイ・モスクビチョフはそれを,自らが「世界最大の疾病予防治療計画」と呼ぶ事柄への第一歩と称し,「人は自分自身の健康状態を知れば,自分の生き方について考えるようになる」と述べた。
世界のコンサート・ホール
世界でも有数のコンサート・ホールによって,オーケストラの音はどのように違うかを比較できる試聴室が東京に造られた。音はコンピューターに連結された24個のスピーカーで再生され,コンピューターにはそれぞれのホールの寸法,建築材料,吸音率に関するデータが収められている。「その試聴室では,コンサート・ホールの寸法と,壁や天井からの反響の程度を計算して,ホールの音響効果を800の異なった方向から再現できる」と,マイニチ・デーリー・ニューズ紙は述べている。このシステムには,東京と大阪の有名なコンサート・ホールのほかに,ウィーンの楽友協会ホール,バーゼルのシュタットカジノ,アムステルダムのコンセルトヘボー,ボストンのシンフォニー・ホールなどがプログラムされており,もはや存在していないホールの音響効果でさえ再現できる。この試聴室は,コンサート・ホールを建てる前に,その音響効果を試聴するために開発された。
音楽中毒?
「人は騒音に酔う恐れがある。非常に大きな音を聞くと,陶酔感が生まれ,やみつきになる場合がある」と,英国のノッティンガムにある聴覚研究所の副所長は断言している。この種の中毒に特になりやすいのは,耳の中の聴神経の近くにはめ込む新しいタイプのヘッドホーンを使う人たちである,とロンドンのサンデー・タイムズ紙は伝えている。調査によると,音量を正しく制御しないと,どんな種類の音楽に対しても徐々に耐性が強まり,内耳の細胞に取り返しのつかない損傷の及ぶ恐れがある。
イラン・イラク戦争の死傷者数
イランとイラクの戦争は今や第二次世界大戦よりも長期化しており,戦い合うこれら隣接するイスラム2国は,依然として7年間に及ぶこの戦争にがんじがらめに縛られている。この戦争の“持久力”はどこから来るのだろうか。国連大学の会報「ワーク・イン・プログレス」は,その一因として,非常に多くの国々が戦争用火器,つまり武器をしきりに供給してきたことを挙げている。その結果,同会報によれば,『イラクはフランスのエグゾセ・ミサイルを搭載したソ連のミグ戦闘機を配備しており,イランは米国のF-5戦闘機と英国のチーフテン戦車で対抗している』。「オランダ大学間人口統計研究所」発行の「デモス」という出版物は,現在までに33万ないし60万の死傷者が出ており,1日に平均125人から225人が戦死しているものと推定している。
マイクロ波で飛ぶ航空機
マイクロ波を動力源とし,重い燃料タンクを必要としない,無人の航空機が実現した。そのような航空機の一つが1987年9月17日に初めてカナダで20分間飛行し,それ以来数回にわたって飛んでいる。それはどのような仕組みになっているのだろう。地上の発電機の電気エネルギーがマイクロ波に変えられ,ディッシュ・アンテナによって上空に送信される。航空機の受信機はマイクロ波を電気に戻し,電気がエンジンを動かす。最終目標は,高度2万㍍の上空にずっと何か月もとどまっていられる飛行機である。これは,科学調査,監視,自動車電話の送信などに応用できるが,大規模なマイクロ波送信設備が環境問題を引き起こすのではないかという懸念もある。