「……こんなふうにお洗濯」
この言葉が何世代にもわたり子供たちの間で親しまれている国は少なくありません。それらの国の子供たちは,この有名な童謡を元気に歌ったり,この童謡に合わせて踊ったりしてきました。しかし読者の中には,いざ洗濯となると,小躍りして喜ぶ気にはとてもなれないという人もいるかもしれません。でも考えてみてください。シャワーを浴びたあとや風呂から上がったあと,洗濯したばかりのふんわりしたタオルで体をふくのは気持ちのよいものではありませんか。清潔な服を着てさっぱりとした壮快感を覚えない人がいるでしょうか。子供たちでさえ,ちょっとの間でもいい香りのする清潔な服を着ると,気持ちよく感じるようです。
ですから洗濯はわたしたちの生活や福祉にとって,わたしたちが普段気づくよりもはるかに重要な役割を果たしています。しかし,洗濯の方法は世界のどこに住んでいるかによっても違うかもしれません。
洗濯機を使わない洗濯
多くの裕福な国では,「洗濯」という言葉と「機」という言葉は切り離せない関係にあります。しかし貧しい国では今でも大抵手で洗います。しかし驚くほどきれいになるのです。例えば汚れの目立つ白い服ですが,気候が暑く,乾燥した国の女性たちは太陽を有効に利用します。
やり方は簡単です。たらいに水を満たし,石けんかまたは洗剤を十分入れ,その中に白い服を浸します。よく働く洗濯の上手な女性たちの手は,石けん水がせんいの間を通るように盛んにつかみ洗いをします。市販の漂白剤が手に入らない場合,ココナッツの酢のような昔ながらの漂白剤を使う人もいます。そのあと簡単にゆすぎ,手ごろな低木かへいの上にぬれた服を掛けておくと,太陽が真っ白に漂白してくれます。次に服を再びたらいに戻して何度もゆすぎ,もう一度熱帯の太陽にさらして乾かします。仕上がりはどうでしょう。服は真っ白に輝き,気持ちのよい清潔さが感じられます。
河川か小川のそばに住む主婦は少し違う方法をとるかもしれません。まず,水際までの岸の傾斜がなだらかな,良い場所を選びます。しかし流れの速い川であれば,慎重に場所を選び,服が水流にさらわれる心配のない,川が河原に入り込んだ,流れのゆるやかな場所で洗います。近くに大きな岩があればなおよく,主婦はその岩の上に濡れた服をのせ,大きな木のへらでたたきます。汚れは文字通り追い出されます。
洗濯機の過去と現在
裕福な国では洗濯機が普及し,手で洗うことはほとんどなくなりました。しかし洗濯機の歴史は意外に遠い昔にさかのぼります。中世のヨーロッパでは,衣服の洗濯には主におけが使われていましたが,徐々に蒸気がまがおけに取って代わりました。19世紀に入ると今の洗濯機によく似た洗濯用の機械が登場しました。1830年に英国のある洗濯屋は,洗剤を入れたお湯の中で衣類を揺り動かす回転式のシリンダーを使用しました。この基本的な方法は今も変わっていません。
しかし,洗濯機が流行するまでには時間がかかりました。手回しのクランクでは,衣類にもクランクを回す人にも負担がかかることに消費者たちは気づいていたからです。そのため19世紀の末ごろまで多くの主婦は,ぎざぎざのある洗濯板,おけ,手動絞り機などの洗濯用具を好んで使っていました。
しかし1910年に,洗濯機は最初の電動機械の登場と共に復活しました。それから12年後には,かくはんタイプの洗濯機が初めて登場しました。それ以来,洗濯機には幾多の改良と調整が加えられてきました。中には,ボタンを押すだけで「汚れの度合いを識別し,それから最適の洗剤と洗濯方法を選んでくれる」,コンピューター制御による洗濯機を売りに出した会社さえあります。―ポピュラー・サイエンス誌,1990年7月号。
全自動洗濯機を使うこつ
スタンダードな全自動洗濯機は西欧の多くの家庭にごく普通に見られるようになりました。しかし,“全自動”だからといって全然注意を払わなくてよいというわけではありません。例えば,上から洗濯物を入れる洗濯機の場合,入れた洗濯物のバランスが悪いと,脱水サイクルで回転するときに洗濯機が床の上を動き回って洗濯室を荒らしかねません。塩素系漂白剤とアンモニアを一緒に使うなら,毒性のある臭いが発生する恐れがあります。ですから安全のための基本的な手順に従いましょう。洗濯機が完全に止まるまでは決して中に手を入れないことです。修理する場合はまず差し込みを抜いてから行ないます。また,子供に洗濯機を操作させたり,洗濯機で遊ばせたりするようなことが決してないようにしましょう。
それにしても,一山の洗濯物を洗う際,どうすれば確実に満足な成果が得られるのでしょうか。次に挙げるのは幾つかの基本的な提案です。
◻ ポケットを裏返して中のものを全部出します。
◻ カフスの折りを伸ばし,ごみをはらい落とします。
◻ ひもや飾り帯は結んでおきます。からみつくのを防ぐためです。
◻ チャック,留め金,ホックなどは,他のものにひっかかって破いたりしないように留めておきます。
◻ 洗濯をする前にしみや汚れを処理しておきます。
◻ 洗濯機に洗濯物を入れ過ぎないようにします。入れ過ぎると,汚れは落ちず,しわは増え,綿くずも増え,服はいたみます。
今でも旧式に手で洗濯をしなければならない人は少なくないに違いありません。しかし,あなたの洗濯機が金属製のたらいであれ,勢いよく流れる小川であれ,驚異的なコンピューター洗濯機であれ,成果を考えるなら骨を折るだけの価値は十分あります。自分や家族の衣服がまばゆいばかりにきれいになり,そのうえに一仕事終えたという満足感を味わうことができるのです。
[26ページの図版]
川岸で洗濯
陽に当てて漂白