世界展望
戸別訪問の技術
マドリードの新聞「エル・パイス」によると,カトリックの司祭や司教たちは危機に直面している。落胆の余り,司祭を辞めたり,早期退職を願い出たりする者がいる。理由の一つとして,強制的な独身制による孤独感が挙げられている。また,司教たちは他の宗教団体が大きくなっていることをも憂慮している。同紙によると,ある枢機卿は,「エホバの証人が行なっているように家から家を回り,人々を説得してカトリックの信仰を受け入れさせることができるよう」,神学生たちに「戸別訪問の技術を」教えることを提案した。さらにその枢機卿は,キリストも使徒パウロも家から家に宣べ伝える業を行なったことに言及した,と同紙は伝えている。
“シック”・ビルディングにご用心
屋内の空気汚染に起因するシック・ビルディング症候群が十分に実証されている今,病気になる前にどのように問題を発見できるだろうか。(「目ざめよ!」誌,1988年11月8日号の30ページおよび12月8日号の29ページ参照。)植物を用いればよい,とダートマス大学の二人の教授は言う。植物は人が汚染物質によって気分が悪くなる前に目に見えて弱るので,早期警報装置の働きをする,というのが二人の意見である。頭痛や目まいや“シック”・ビルディング症候群の他の症状を人間に生じさせるような化学物質にさらされると,多くの植物は葉が曲がったり枯れたり,異常に生長したりする。さらに彼らが言うには,植物は非常に敏感であるだけでなく,器具類よりもずっと安い。
ライフルの銃床をバットに打ち変える
フィナンシャル・メール誌によると,1990年に南アフリカ政府は防衛費を大幅に削減することを発表した。南アフリカのこの雑誌は,「軍事評論家たちは,来年の防衛予算がさらに少なくとも10億ランド(約540億円)削られるものと予想している」とも述べた。需要の低下に対処するため,兵器産業は商業製品を生産する会社との提携に乗り出した。ある兵器工場では,「最高級のクリケット用バットが作れるよう,ライフルの木製の銃床を作る機械に手を加えた」と,ヨハネスブルクのスター紙は伝えている。このクリケット用バットは南アフリカで人気のある夏のスポーツに用いられており,ある一流のクリケット選手はこれを試してみて,推賞している。
チョウの減少
ヨーロッパには現在知られているだけで約380種のチョウがおり,その3分の1ほどはヨーロッパ大陸にしか生息していない。しかしユーロピアン紙の報道によると,「そのほとんどが……激減しており,絶滅にひんしている種も幾つかある」。こうした状況の見られる国の中には,オランダ,ドイツ,スイス,英国が含まれる。原因は何か。農業生産の増加 ― 特に欧州共同体における増加が著しい ― が野生生物の生息地の破壊を招いている。草原の開墾,湿原の干拓,大規模な殺虫剤の使用,田畑の周りに並ぶ低木の伐採,牧草地の管理不徹底などが状況を悪化させている。
年若い犯罪者
法務省の行なった調査によると,「取り調べを受けたり逮捕されたりした容疑者全体の57.4%は少年である」と,ザ・デーリー・ヨミウリ紙は伝えている。年若い犯罪者の平均年齢はここ10年余の間,年々低下している。同紙はさらに,「この調査によると,非行少年の70%余りが13歳から15歳までの間に最初の犯罪をおかす。2回以上留置された者の大半は10歳になる前に最初の違法行為に携わっている」と伝えている。この調査により,日本の非行少年の大多数は親から適切な懲らしめを与えられていないことが明らかになった。そのような少年たちは,「意味深い仕方で話し合いをする能力の著しく欠けた」家族から出ている。
モンゴル語の聖書
モンゴル語を話す人々は,今や自分たちの言語で聖書の一部を手にすることができる。英国の学者ジョン・ギベンズが18年かけてクリスチャン・ギリシャ語聖書の翻訳を完成させた。アジア・マガジン誌は,「モンゴル語は世界の公用語の中で新約聖書が翻訳された最後の言語である」と述べたギベンズ氏の言葉を伝えている。しかし同誌は,「モンゴル人民共和国に住む220万人の中で」,聖書を信じている人の数は「わずか10人余りと見られている」とも述べている。英国のある聖書協会は,世界の名作として聖書に対する関心が高まっている,と説明している。
カトリック教徒間の意見の相違
フランスのカトリック教徒の考えを知るため先ごろ行なわれた全国調査によると,同国のカトリック教徒の過半数(57%)は,道徳に関連した同教会の公式の教えと意見を異にしている,と国内紙ル・フィガロは伝えている。配偶者への貞節,産児制限,妊娠中絶,人工授精などについて尋ねられた人々の60%は,教会がそのような分野の規則を一切作るべきではないと答えた。この調査により,フランスのカトリック教徒の優に69%は,結婚前に性関係を持つことに原則として賛成していることが明らかになった。また,49%はカトリックの司祭に要求されている独身制を廃止することに賛意を表わし,51%は女性が司祭職につくことは許されるべきであると考えている。興味深いことに,カトリック教会が今でもキリスト・イエスの教えに忠節に従っていると考える人は8%しかいなかった。
悪魔主義的な儀式
「あり得ないこととして長い間わきへやられていた悪魔主義的な儀式に関する報告が次第に増加しているが,その内容は不気味なほどよく似ている」と,カナダのグローブ・アンド・メール紙は伝えている。そうした報告の中には,性的虐待や人肉嗜食や人身供犠が含まれている。人身供犠の犠牲者は,毎年北アメリカで行方不明と報告されている浮浪者や家のない人々5万人の中から取られていると主張する人もいる。また,人身供犠に用いるため,赤ちゃんをもうけて隠しているという意見もある。さらに同紙は,「悪魔主義的な礼拝で虐待されたと報告してきた人々は,カナダでは推定2,000人に上る」とも述べている。この問題に対処するため,カナダの一部の地域では,警察が悪魔主義を題材とした講義を行なっている。当局は,「若者たちが悪魔主義に興味を持つ」ことを心配している。
健康に良い脂肪
日本の海岸沿いに住む人々は,内陸に住む人々よりも心臓疾患にかかりにくいことが最近の研究により明らかになった。なぜだろうか。アジアウィーク誌は,海産物を多く摂ることは「冠状動脈に関連した一般的な幾つかの危険が減少することと関係がある」と伝えている。特にサケとマスは,オメガ-3として知られる高度不飽和脂肪を多く含んでいる。この種の脂肪はトリグリセリドの濃度を下げ,「血液の『粘り』,つまり血液が凝固したり,場合によっては冠状動脈をふさいだりする傾向」を弱めることができると考えられている,と同誌は述べた。オメガ-3はこのほかに,関節炎,乳ガン,腎臓障害,片頭痛などの疾患を防ぐ助けにさえなっているかもしれないという意見を述べる者もいる。
木を枯らす元凶
ミュンヘンの南ドイツ新聞は,ドイツの森林事情が悪化していることを伝えている。同国の森林面積の約56%が被害を受けていると言われている。特にモミの木の被害はひどい。モミの木は地中深く根を張り伸ばすことによって,雪崩や表土の浸食を防ぐという大切な働きをしているので,そうした木の生えた丘では重大な結果が生じている。ドイツでは乗り物から多量の排気ガスが出るため,「自然保護論者は,『木を枯らす元凶』である自動車に対して何らかの手を打つよう連邦政府に再度要求した」と,同紙は伝えている。
自宅学習
米国の幾十万もの親たちは子供を学校に通わせる代わりに自宅で教えている。ニューヨーク・タイムズ紙によると,ある推定では,50万人もの子供が自宅で学習している。この方法は,「公立学校での麻薬や犯罪,また教師の質の低下に」不安を感じる親たちの間で好評を博している。教育者たちが言うには,こうした子供は,「悪気はなくても,資格にかなわない親の悪影響を受けやすい」と,同紙は伝えている。全米自宅学習協会のある女性スポークスマンは,「自宅学習がすべての人に向いているわけではない」ことを認めた後,「しかし,公立学校についても同じことが言える」と述べた。
聖堂維持費の危機
英国国教会は英国第2の地主だが,数多くの聖堂を維持するのが難しくなっている。マンチェスターのガーディアン・ウィークリー紙によると,「いくら立派な記念碑だとしても,崩れた聖堂を何年も維持してゆくのに大衆は嫌気がさしているようだ」。一部の教会関係者は,教会の敷地にレストランを開店することや,既存のギフトショップを拡張することなどを提案してきた。ヨーク市では,教会関係者が地元の店舗の賃貸料を2倍に上げた。そうした努力は,程度の差こそあれ教会指導部の非難を受けてきた。しかし,元カンタベリー大主教のロバート・ランシー博士は最近,英国政府に手紙を書いて教会への財政援助を求めた。もっと簡単な解決策を持っているのはイーリーの聖堂だ。訪問者から料金を取るのである。