世界展望
結核にご用心
世界保健機関(WHO)は,結核に関する世界的な非常事態を宣言し,まん延防止策が取られなければ,向こう10年間に3,000万もの人が結核で死ぬだろうと警告している。結核は予防と治療が可能だが,近年患者数は急増しており,毎年800万人が結核にかかっている。WHOによれば,結核が再燃した理由の一部は,公共政策がおろそかにされていることや,抑止計画の実行が不手際なことなどにある。また,結核とHIV感染(エイズを引き起こすウイルス)との結びつきが強いことも増加の要因となっている。HIV感染者の場合,命を奪いかねない結核にかかる危険は25倍も大きくなる。結核で死亡する人の95%以上は発展途上国の人々である。
聖書の一部が2,000あまりの言語に
聖書協会連盟(UBS)の発表によれば,1992年中,聖書の一部が新たに31の言語に翻訳された。したがって,聖書の少なくとも一つの書が訳されていて入手できる言語の総数は2,009に達した。UBSは聖書の一部をさらに419の言語に翻訳中であるため,この数はまた増えることになる。聖書全巻は現在329の言語で,「新約聖書」はほかに770の言語で出版されている。「世界の言語の総数は,推定5,000ないし6,500である」と,「世界教会新聞社」は伝えている。興味深いことに,1993年現在,ものみの塔聖書冊子協会が生産してきた聖書の全訳と部分訳の総数は8,300万冊を超えている。
有用な古タイヤ
ブラジルでは,車のタイヤを毎年1,700万本取り替えなければならない。しかし,スーペルインテレサンチ誌が伝えるところによれば,ゴムを再生して,道路の再舗装に使われるアスファルトに混入すれば,それらの古タイヤも有効に使えるという。ゴムの再生利用という考え自体は新しくないが,タイヤをアスファルトに混ぜるという考えは新しい。この方法によって,「地球上にたい積する膨大なゴミの山が大幅に減少する」よう期待されている。
アフリカ南部におけるエイズ
アフリカ最南端の地域におけるエイズのまん延は一向に衰えていない。1992年中,南アフリカではエイズウイルス感染者が一日につき50人あまり発見された。これには人口の密集している独立州の住人は含まれていないため,エイズ犠牲者と判明する人の1日あたりの数はもっと高いことになる。南アフリカはヨハネスブルクの「スター」紙によれば,「アフリカ南部で急速に広まっているエイズが,向こう10年間の最重要課題となることは多くの人が認めている」。
狂犬病の再流行
南アフリカのナタール州では,撲滅されたはずの狂犬病が急増している。ナタール州と隣国のモザンビークでは,多くの人が農村を離れ,ペットを連れて都市部に移住した。こうして流入する人々に,もれなく予防接種を行なうことはできていない。1992年にはこの地域での狂犬病の届け出は300件を超えた。狂犬病で死亡した29人の大半は子供だった。地区獣医サービスの責任者ポール・クルックは,「居住地に指定されていない場所に住む大勢の人と接触することは極めて難しい」と,厳しい調子で述べている。「政治的な暴力行為,異文化への反感,集まることへの恐れなどのために計画の実施は滞っている」とクルックは言う。
仏教とジャズ
奇妙な取り合わせだが,日本全国から訪れた僧侶1,000人と一流のジャズ・ミュージシャンが東京の日本武道館で一堂に会した。声明とジャズのコンサートを行なうためだ。基本的に言って声明とは梵語で経を即席に詠じたり唱えたりすることで,西洋音楽とは程遠い。音楽の種類は異なっていても,ジャズ・ミュージシャンたちは,自分たちの音楽を苦もなく経に合わせてのけた。ザ・デーリー・ヨミウリ紙は,定評あるジャズ・ピアニストの言葉として,「即興演奏というのは,宗教の悟りと何か深いかかわりがあると思う」と述べた。この人は,「時折,自分ではなく,別世界の不思議な力がピアノを弾いているような気がすることがある」とも述べている。
ドイツにおける犯罪への恐れ
ドイツ人の3人に二人は,過激派がドイツの民主政治を危うくしていると見ている。人口の半数以上もの人々が,過激なデモ隊を国がもっと厳しく取り締まることを望んでいる。警察は警棒や催涙ガスをより頻繁に使うべきだと考えている人はほぼ50%に上る。組織犯罪との戦いに関しては,個人の家での会話を聞くため盗聴器を使ってもよいとの意見が60%近くを占めた。これらは1992年末に3,000人近くを対象にエムニート研究所が行なった世論調査の結果で,フランクフルター・アルゲマイネ紙に掲載された。
異色の恋愛小説
ここ2年ほどの間,男性同士の“恋愛”を描いた恋愛小説が日本で人気を呼んでいる。愛読者は女性,特に10代後半から20代前半の女性である。朝日新聞によれば,小説のこのような傾向を快く思わない男性同性愛者たちがいる。同紙は同性愛者のライター,佐藤雅樹さんの言葉として,「少年愛ものの性描写では,男が女性の好奇心の対象になっている」と述べている。またこの人は,「ポルノ小説などで男の描いた女性像に女性が反発したのと同じ状況にある」と嘆いている。
行方不明の子供たち
イタリアでは毎年幾百人もの子供たちが跡形もなく蒸発している。朝,学校に出かけたまま帰って来ないというケースが少なくない。1992年だけでも未成年者734人がいなくなった。これは前年の245人増である。イタリア内務省の調査報告によれば,未解決の事件は合計3,063件となった。いなくなるのは,男の子より女の子のほうが多い。
幸せの秘けつは?
お金が増えても幸福になるとは限らないようだ。「今日の心理学」誌によれば,「収入が最低限度を上回るようになると,収入の増加と個人の幸福との関連は意外に薄い」。幸福に肝心なのは以下の要素であると言われている。現実的だが楽観的な見方,外向的であることや友達を作ること,生活をコントロールしているという自覚などである。この最後の点には「時間を有効に使う」,「活動的な信仰を持つ」ことなどが含まれている。
やめるのに遅すぎることはない
たばこを早くやめれば,肺ガンで死亡するおそれはそれだけ少なくなる。ランセット誌によれば,アメリカ人90万人を対象にした最近の調査で,以下の事柄が判明した。非喫煙者の場合,75歳になる前に肺ガンで死亡したのは10万人につき50人足らずだった。30代で喫煙をやめた男性の死亡率は上昇して10万人につき約100人。60代でやめた男性の場合は10万人につき550人にまで増えた。全くやめなかった喫煙者の場合,肺ガンによる死亡数は10万人につき1,250人だった。肺ガンによる女性の死亡率は男性より低かったが,類似のパターンが見られた。
研究所におけるミス
毎年幾十万もの人が医療研究所におけるミスが原因で死亡するか重病にかかっていると,世界保健機関は述べている。血液や人の細胞の検査を通じて病気を発見し確認する点で研究所は重要な役割を担っている。テスト結果が間違っていると,誤診や医療過誤に至りかねない。4月には世界各国から90人あまりの専門家がスイスのジュネーブに集まり,この問題について討議した。
タイタニック号の遺品請求
タイタニック号から回収された1,800点の遺品を持ち主は3か月以内に返還してもらえるようになった。この沈没船がニューファンドランド島沖の極寒の海で見つかってから7年になる。タイタニック号は1912年の処女航海の際に沈没したため,返還を求める人の大半は,その惨事の生存者687人の,あるいは死亡した1,513人の後継者であると思われる。遺品の中には,腕時計,種々の宝石の装身具,コイン,革製品,調髪用の品などが含まれている。しかし,持ち主であることを証明するのは難しいに違いない。名前が刻まれている品物はほとんどないからである。それに,遺品を取り戻すことを望み,持ち主であることを証明できても,550万㌦(約6億500万円)の回収作業費に対して寄付しなければならない。寄付額は,遺品の相場によって決まる。返還の求めのない遺品は,回収作業に出資した協会の所有になる。興味深いことに,回収された日用品にプラスチック製のものは一つもなかった。
“巨大都市”
「21世紀の初めには,人口1,000万以上の“巨大都市”が21になるだろう」と,タイム誌は言う。「そのうち18の都市は発展途上国にあることになる。世界で一番貧しい国もそれに含まれるだろう」。13の国では,首都圏にすでに1,000万以上の人が住んでいる。筆頭は東京で,人口はほぼ2,600万。これに続くのはサンパウロ,ニューヨーク市,メキシコ・シティー,上海<シャンハイ>,ボンベイ,ロサンゼルス,ブエノスアイレス,ソウル,北京<ペキン>,リオデジャネイロ,カルカッタ,ジャカルタである。アフリカには年10%の率で膨張している都市があるが,これは記録されている都市化の速度としては最も速いと世界銀行は言う。人口の増加には汚染と病気が伴いやすい。