世界展望
吃音症の人のための希望
子供の時にどもってしまってきまりの悪い思いをしたオーストラリアのある母親は,自分の子供たちが幼い時にどもるようになるのを聞いて打ちのめされた。それで母親は,ニューサウスウェールズ州,シドニーの一病院とシドニー大学の言語療法士が共同開発したプログラムを取り入れた。できるだけ幼い時から治療することが成功の秘訣のようだ。多くの親は子供が大きくなればこの癖は治ると誤解して,この問題に取り組むのを後に延ばしている。シドニー・モーニング・ヘラルド紙に報じられたように,そのプログラムは,「成功率がかなり高く,吃音症は完全に治るという見込みを初めて提示した」。幼い子供であれば言語療法士は治療に約10時間を費やすだけだが,大人や年の進んだ子供の場合は親が自宅で費やす幾ばくかの時間に加え,数百時間が必要だった,とも記されている。同紙によると,「2歳から5歳までの期間に治療を受けた43人の子供のうち,治療後1年ないし6年の子供たちを追跡調査したところ,再発したケースは全くなかったことが継続中の研究で判明した」。
巡礼を当て込んだ“商売”
「巡礼がイタリアでも世界の[ほかの]国々でも増加している」と,ラ・レプブリカ紙は述べている。専門家の算定によれば,表にしてみると,1994年は「過去のすべての記録を上回り」,イタリアだけでも3,500万ないし3,700万人がカトリックの宗教建造物を訪ねる年となる。同紙によると,イタリアの成功は,「芸術的価値があるとしてリストに挙げられている3万の教会,1,500の聖地,教区所有の700の博物館,数多くの男女修道院」に起因する。同紙はさらに,巡礼は売り上げが4兆リラ[約2,500億円]を超える“商売”になっている「けれども,他の国々でも,巡礼は不思議なつかの間の成功をみている」と付け加えている。
増加する摂食障害
過食症や拒食症という摂食障害を抱える人が増えているのはなぜだろうか。「恐ろしく,制御不能」に見える世界において,不安の念を募らせる感情的な葛藤が原因であると,ユア・ファミリー誌は伝えている。こうした人たちが抱く不安の原因は複雑であり,何が何でも成功するようにとの親からの圧力,親の離婚,虐待などがある。加えて,国立摂食障害委員会のメンバー,ダニー・ラグレーンジ医師の説明によると,多くの人がこうした障害の犠牲になっているが,それはファッション雑誌を熱心に読んだり,やせるための食餌療法に過度に身を入れたり,無秩序な食習慣を取り入れたりすることによる。まだ8歳の患者も専門家の援助を求めてきたが,最も犠牲になりやすいのは18歳から22歳の女性である。ラグレーンジ医師は,患者の治療が成功するのは患者が治療を望む場合だけであると述べ,「完全な回復は実際に可能である」と指摘している。しかし統計によれば,摂食障害の犠牲者の実に18%が死亡している。
デリーの行方不明者
インドの首都デリーでは,毎年1万人余りが行方不明になると報じられている。これらの人のうち,これまでに行方を突き止められたのは3分の1だけだった。半数は18歳未満の子供たちで,2対1の比率で男性が女性より多い。タイムズ・オブ・インディア紙で報じられたことだが,数多くの少女が結局は売春を行なうことになる。少年たちは,犯罪組織に強制されて物ごいをしたり,わずかな給料しかもらえずに小さなレストランで長時間働かされたりする。
キューバのエホバの証人
キューバのエホバの証人は宣教を成し遂げるためのより大きな自由を与えられ,神の王国の良いたよりを他の人に伝えることができるようになった。業が公式に認可され合法化されているわけではないが,旧事務所の使用が許可されたことに加え,崇拝のため以前より自由に集まり合うことができ,小規模な大会を開けるほどになった。雑誌の印刷は正式に認可された。最近のこうした出来事から,証人たちは喜びと熱意に満たされ,宣べ伝える業を続行し,聖書の希望の音信を伝えるよう努力している。
かつて南極大陸は温暖で緑豊かだった
ザ・オーストラリアン紙が伝えるところによると,オーストラリアと米国の科学者のグループが「植物の葉や木材や花粉,さらにガや昆虫の卵」の化石を「南極点からわずか500㌔[300マイル]の場所で」発見したが,これは「当時が今より摂氏20ないし25度[華氏35ないし45度]ほど温暖だったことを示している」。かぶと虫の卵の発見により,昆虫が生存できるほど温暖だったことが確認された。さらに,水は間違いなく液体の状態にあり,植物が花を咲かせ種を結べるだけの十分な生育期があった。その当時,タスマニア(オーストラリア本島の南にある島で一州を成す)には,今日,同島の北1,600㌔弱の距離にあるニューサウスウェールズ州の中央部以南では生育しない植物があった,とその研究報告は付け加えた。このことは,その地域がかつて今より温暖な気候に恵まれ,栄養分があったことの間接的な証拠である。
放射状角膜切開手術の近況
近視(遠くがぼやけて見えること)を矯正するための評判の良い外科手術,放射状角膜切開手術は米国で毎年25万人を超える人々に施されている。最初の手術の微調整を行なう2回目の手術は30%余りのケースで必要となる。ニューヨーク・タイムズ紙によると,国立眼研究所が支援して行なわれた10年間の研究は,「手術法はかなり安全で効果的であるが,近距離の物体を見る力が急速に低下するおそれがある」と結論した。手術後の経過に関する詳しい研究が行なわれ,以前にはあまり知られていなかった後遺症が明らかになった。それは,徐々に眼に変化が生じ,近距離の視界が少しずつぼやけてゆく症状である。この視力低下は手術を受けた人の43%に見られた。やむを得ない老化が原因と見られる場合もあれば,「放射状角膜切開手術に原因がありそうな場合もある。この手術は年若い人たちにも変化を生じさせているようである」と,その記事は述べている。この研究の副主任ピーター・J・マクドネル医師は,「依然として未解決の問題が残っていることを人々は認めるべきであり,完全な視力が与えられるという保証はない」と言った。
アレルギー患者の救済策
世界保健機関によれば世界人口の20%は何らかのアレルギーを持っていると,ブラジルの雑誌「グロボ・シエンシア」は伝えている。免疫学者のジュリオ・クローチェは,「アレルギーが文明病であることに疑問の余地はなく,大気中には1万を超える有害物質がある」と言っている。ダニや汚染など一般に知られている原因のほかに,ストレス,過度の薬物使用,食品に使われている化学製品,化粧品,飲み物などが原因となる。過度の運動でさえ,ぜん息の引き金になったり,ぜん息を悪化させたりすることがある。しかし,もし正しい呼吸法を学べば,「運動は発作の程度と頻度を軽減する一助となる」と,クローチェ医師は言っている。アレルギー体質の人は,寝室をきれいにし,通気をよくし,犬や猫や鳥のような家で飼う動物に近づかないようにし,香水などの香りの強い製品も避けるべきである。急激な温度変化,喫煙,アルコール飲料も避けて,薬は処方されたものだけを服用すべきである。
日本のお役所言葉を解明する
東京のお役人が,「貴重な提言だ」とか「慎重に対応していきたい」とか言う時は,ほとんど実現性がないことを意味する。同様に,「総合的に検討したい」や「幅広い視点から検討したい」も実現性はないようだ。「研究したい」は一般に,近い将来には何の変化もないことを意味する。「検討する」は「研究したい」より1ランク上で,「積極的に検討したい」になると施策の実現さえ見込まれる。「施策をやるのかやらないのか」分からないという都民の苦言に対して,都幹部は,東京都議会でよく使われる用語をこのように説明した,と読売新聞は述べている。あいまいな言い換えが行なわれるのは,役人が議員の提案をそっけなく否定して議員の顔をつぶさないように注意しているからである,と同紙は述べている。
ごみに埋もれた薬
ドイツのある健康保険会社によると,ドイツで販売されたり,処方されたりする薬品の量はかなり多く,男女子供一人当たり1日に1,250錠の丸薬を入手できる。人々はこれらの製品を皆どうするのだろうか。南ドイツ新聞によると,使われずに捨てられるだけの薬が非常に多い。「我々は高価な薬品が毎年毎年ごみ箱行きになるのを許すわけにはいかない」と,健康保険会社協会の会長は嘆いた。健康保険会社は,患者が受け取る薬品に関して,医師と製薬会社は患者にもっと詳しい情報を「分かりやすいドイツ語」で与えるように要求してきた。