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  • マトリョーシカ ― すてきな人形!
  • 目ざめよ! 1995
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目ざめよ! 1995
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マトリョーシカ ― すてきな人形!

ロシアの「目ざめよ!」通信員

たいていの観光客は私を一目見た途端,かなりのお金を喜んで払って私を家に連れて行くことにするようです。私のどこに魅力を感じるのか,私には全く分かりません。だって,私のことをほとんど知らないんですもの。たぶん,ただのはやりなのでしょう。でも,自己紹介させてください。私の名前はマトリョーシカ,出身地は ― そうですね,では最初のところから始めましょう。

実を言うと,私がどこで生まれ,生みの親がだれだったのか,本当に知っている人はいないんです。それについては二つの説があります。ある人たちに言わせると,私はもともと,日本の本州で生まれた,いくつかの部分でできた珍しいおもちゃでした。19世紀の末に,ロシア人のパトロン,サヴァ・I・マーモントフ(1841-1918年)の夫人が,私を本州からロシアへ連れてきたのだそうです。一方,ある日本人によると,私をすばらしい人形にするというアイディアを最初に日本へ持ち込んだのは,ロシア人の修道士だったということです。まあ,真相はともあれ,ロシアの職人たちはそのアイディアが気に入り,マトリョーシカが生まれたというわけです。

1880年代の末,ロシアは経済と文化の発展に力を入れていました。それと同時にロシア人は,自分たちの民族の伝統を保存することに一層大きな関心を持つようになりました。ロシア文化の復興を目指して,イリヤ・レーピンやビクター・ワスネツォフ,ミハイル・ブルーベリといったロシアの有名な画家たちをはじめとするインテリゲンチャが,マーモントフの周りに集まり始めました。ロシアの小作農階級の記念として,モスクワ近郊に民芸工房が設けられました。そこに,民芸品やおもちゃ,人形などが,国中から集められたのです。

セルゲイ・マリューチンというプロの画家が最初に私をスケッチしたのですが,その時の私は少し違った顔つきをしていました。明るい目をした丸顔の田舎娘ということになっていたのです。私はサラファン(2本のひもで吊る,床までとどく服)を着ていました。ていねいに整えた,滑らかでつやのある髪はほとんど,あざやかな色のネッカチーフの下に隠れていました。私の中には,それぞれ外側のものより小さい,他の人形が入れられました。それらは,ルバシカ(片方の側でボタンをかけるようになっているロシアのブラウス),シャツ,ポドヨフカ(男物の半コート),前掛けなどを身に着けていました。これが,マリューチンのスケッチにある,モスクワで1891年ごろに作られた時の私の姿です。

私は自分の名前について考えることがよくありました。マトリョーナ(愛称形はマトリョーシカ)は,19世紀末のロシアで最も一般的な女性の名前の一つだったことが分かりました。マトローナというラテン語の語根から派生したこの名前には,“母”,“立派な淑女”,“家族の母”という意味があります。また,人形が入れ子式になっていることは,多産や永続性の適切なシンボルと言えます。

作るのは簡単ではない

私を作ろうとして,たくさんの材料を無駄にし,結局失敗してあきらめてしまったという話はたくさんあります。それもそのはず,最近まで,私の作り方は秘密にされていたのです。そのため,ほんのわずかな人しか,私を持つことができませんでした。しかし今その秘密を明かしましょう。

私を作ることに関係した仕事には,本格的な技術が求められます。まず第一に,適当なタイプの木材を選ぶことが肝心です。木質が柔らかいという理由で,一般には科の木が選ばれますが,榛の木や樺の木が選ばれることもあります。原木はたいてい春の初めに切り倒し,皮をはぎますが,乾燥する間に木材にひびが入らない程度に皮を残しておきます。それから丸太は数年間積み重ねておかれ,適度な空気の流通によって乾燥します。

木材は,適切な時,つまり乾きすぎても湿りすぎてもいない時に切る必要があります。ちょうどよい時を見定めることができるのは熟練した人だけです。木材の各片は15もの別個の工程を経ます。一組の人形の中で一番小さなもの ― 二つに分けられないもの ― が最初に作られます。ときどき,その人形はとても小さいので,目を凝らさないとはっきり見えません。拡大鏡が必要な時さえあります。

一番小さな人形が出来上がると,職人は最初の人形がうまく入るような次の人形に取りかかります。一片の木材が必要な高さに切られ,上の部分と下の部分に二分されます。先に作られるのは人形の下半分です。それから,小さいほうの人形が中にぴったり入るように,2番目の人形の両方の部分の内側をくりぬくのですが,腕のいい職人は勘だけに頼って,いちいち寸法など測りません。その後,同じ工程を繰り返して,前の二つの人形が入る,やや大きめのものを作ります。

一つの人形の中の入れ子の数は,2個から60個まで様々です。一番大きな人形は,作った人と同じくらいの背丈があるかもしれません! それぞれの人形が出来上がると,でんぷん質の糊を塗って表面の穴をすべてふさぎます。そして最後に乾燥させ,画家が絵の具をむらなく塗れるように,表面を滑らかになるまで磨きます。それからその人形は,模倣を許さないスタイルに仕上げられます。

時の流れによる変化

人は年を取るにつれて変わりますが,私についても同じことが言えます。マトリョーシカを作る技術は,モスクワからセミョーノフ,ポルコフスキー・ミーダン,ビャトカ,トベリなどの他の都市や町へ徐々に広がってゆきました。a そして各地で独特の形や模様が生み出されました。本来の自分が分からなくなってしまうのは心配でしたが,でも文句は言いませんでした。1812年に起きた戦争の100周年記念式典が行なわれた時,ロシアの総司令官ミハイル・クトゥーゾフとフランスの総司令官ナポレオン・ボナパルトの人形のセットを注文した人がいました。その二人の総司令官の人形が一番大きく,その戦争で戦った両陣営の幕僚たちは,それぞれ自分たちの指揮官の中にはまり込むように小さく作られました。

この種の人形の製作と販売は,長いあいだ厳しく規制されていました。しかし1980年代末の政変は,職人たちに新たな可能性と自由をもたらしました。自分の作品を,恐れることなく作ったり売ったりできるようになったのです。

最初に一般の人気を得るようになった人形製作者たちの中に,シコルスキーという名の画家がいました。彼の人形は値段が最も高く,個々のセットが3,000㌦もします。シコルスキーが成功したので他の芸術家たちも刺激を受け,過去6年の間に,マトリョーシカ作りに大きなはずみがつきました。

マトリョーシカという私の名前は,今では入れ子式の人形すべてに用いられるようになりました。人形には様々なものが描かれています。花,教会,イコン,民話,家族などをテーマにしたものや,宗教や政治の指導者たちを描いたものさえあります。今ではバラエティーに富んだものが手に入るので,私の値段は手ごろなものに保たれています。

1993年の夏,モスクワで私がいつものように店のショーケースの中に立っていると,突然こちらに近づいて来る,外国からの観光客のグループの話し声が聞こえてきました。彼らが自分たちの出席しているエホバの証人の大会について何か言っていることや,みんなが,すばらしい大会の記念に私を家に連れて行きたいと言っているのを,私は耳にしました。どうしてなのかしらと思いながら,私は目を大きく見開いて彼らを見つめました。すると,それに答えるかのように,一人の人が言いました。「これはただのおみやげじゃないのよ。友達にこの目を見てほしいの。この目は,聖書にある王国や神のみ名について私が話したときの,ロシアの人たちの目と同じ表情をしているのよ」。

エホバの証人? 王国? 神のみ名? 聖書? 聞いているうちに私の目はもっと大きくなり,この感じの良い人たちが私を遠い所に連れて行ってくれるかもしれないと思うと,胸がちょっと高鳴りました。この人たちをロシアに引き付けたのがそもそも何だったのか,もっとよく知ることができるでしょう。きっと,マトリョーシカという名の人形の私に会うことだけが目的ではなかったに違いありません。

[脚注]

a 1930年代に,ビャトカはキーロフとして,またトベリはカリーニンとして知られるようになりました。ソビエト連邦の解体後,元の名称に戻されました。

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