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  • フロリダのエバーグレーズ ― 必死に助けを求める野生の声
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目ざめよ! 1997
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フロリダのエバーグレーズ ― 必死に助けを求める野生の声

偉大な創造者の驚嘆すべきみ手の業を見ようと,毎年,百万人近くの見学者がこの驚くべき熱帯性の楽園に押しかけます。ここには,畏怖の念を起こさせる深い峡谷や空高くそそり立つ絶壁もなければ,写真を撮るのに格好の壮大な滝もありません。歩き回るヘラジカや,ゆっくりと歩くハイイログマを,安全な距離の所から感心して眺められるというわけでもありません。エバーグレーズ国立公園は,息をのむような景観が見られるというよりも,生物学的豊かさゆえに世界で初めて国立公園に指定された所です。

そこは草原もあれば,熱帯性の沼沢地もあるため,“草の川”と呼ばれています。その住人は,何世紀もの昔から変わらない生活を営んでいます。体長3㍍ほどのワニが次の大きな獲物をねらって目を開けたまま,蒸し暑い中で日光浴をしています。夜になると,ワニのうなり声が沼地に響き,ワニが交尾の儀式を行なうときには地面が揺れます。洗濯だらいほどの大きさのカメが,えさを求めて草むらをかき分けながら進んでゆきます。敏しょうで,遊び好きなカワウソも同じ生息地に同居しています。えさを求めてはいかいするフロリダピューマが柔らかい土に残した,真新しい足跡が見つかることもあります。これらのピューマはあらゆる機会にオジロジカを捕らえて食べるので,オジロジカは警戒を怠ることができません。アライグマといえば,近くの川で獲物を洗っているところを描写したものが多いですが,食物が豊富なエバーグレーズはアライグマにとって居心地のよい住みかです。

エバーグレーズには,訪れる見学者の目に見えにくい生き物もたくさんいます。陸上の草木の葉,水に浮かんだスイレンの葉,運河に浮かぶ美しいホテイアオイなどの上には,色々な種類のカエルがカムフラージュして座っています。水草の間をカタツムリのようにのろのろとはい回っているのはタニシモドキです。これはゴルフボールぐらいの大きさの巻き貝で,えらと簡単な作りの肺があるので,水中でも水の外でも呼吸することができます。浅い川には,ザリガニやカニ,その他色々な魚が住んでいます。ヘビや昆虫や這う動物もたくさん生息しており,皆,えさを食べようとして待ち構えていたり,逆に食べられたりしています。

観察できる鳥類の中には,美しいベニヘラサギ,シロトキ,ユキコサギなどがいて,頭上を旋回していますが,つがいのもう一方はひなをかえすため,飛ぶのをやめて卵を温めていることもあります。風変わりなオオアオサギはあまり速く飛ぶので数えられませんが,頭上を飛ぶその様子はいつまでも記憶に残ることでしょう。また,カモメやペリカンやアメリカムラサキバンは,アメリカの国鳥である堂々としたハクトウワシと空域を共有しています。

また,首の長い鵜やアメリカヘビウもいます。ヘビウと呼ばれるのは,S字型をした長い首を突き出して水面を泳ぐ様子が,鳥というよりは爬虫類のように見えるためです。生来,大食漢のこれらの鳥はどちらも,エバーグレーズの浅い川でえさを求めて競り合っています。これらの鳥は両方とも体が水にぬれると,翼や尾羽を広げ,カメラの前でポーズをとるかのように,はでなかっこうをします。羽毛が完全に乾かないと,飛ぶことができないのです。

ツルのような形をしたツルモドキは,見過ごされては困るとばかりに叫び声を上げて,見学者たちをびっくりさせます。茶色と白の斑紋のあるこの大きな鳥は,鳴き声が,悲嘆に暮れ,失望して泣き叫ぶ人の声に似ているため,泣き鳥とも呼ばれています。カラスほどの大きさの猛禽で,絶滅の危機にさらされている珍しい鳥タニシトビは,バードウオッチャーにとって忘れ難い鳥です。この鳥が生き延びられるかどうかは,えさのタニシモドキに確実にありつけるかどうかにかかっています。上の方に目を向けると,つややかな緑の葉の茂った,そしてひも状のスパニッシュ・モスで飾られたカシの大木に,おびただしい数の鳥が止まっているので,見学者たちは驚きます。これらの鳥の色とよく調和しているのは,木々の周りの細いつるにぶら下がる赤や緑色の花です。見学者はここにいると,自分がどこの国にいるのか,またどの大陸にいるのかを忘れてしまうかもしれません。ああ,ここは独特の世界,原始的で美しい,事実上の楽園なのです。

最後に,浅い川と黄金色のカヤツリグサがあります。エバーグレーズの紛れもない特色です。この静かな草の川は見渡す限り光り輝いており,テーブルの表面のように平坦で,1㌔の距離における高低差が4㌢ほどの割合で南に傾斜しています。目につく水流はなく,分からないほどゆっくりと海に向かって絶えず流れています。水はエバーグレーズの命を支える血のようなもので,その水がなければ,エバーグレーズは死に絶えてしまうでしょう。

今世紀初頭,人間がまだエバーグレーズをひどく傷めたり,損なったりしていなかったころ,この草の海の幅は東西に約80㌔,長さはキシミー川からフロリダ湾まで500㌔もありました。普通の背丈の人なら肩をぬらさずに水の中を遠くまで歩いて行けました。エアボートは丈の高い黄金色のカヤツリグサの間を縫いながら非常なスピードで浅い川の水面を滑るように走るため,観光客は最高のスリルを味わいます。釣り人は,過去何世代もの人々と同じように,バスなどの淡水魚や海水魚を釣りにやって来ます。

必死に助けを求める声

今世紀の初めごろ,フロリダ州の政治家や企業家はエバーグレーズを好ましくない生き物のいる沼地とみなし,土地の造成,都市の拡張,農業の発展に利用すべきだと考えました。「ダムを造り,堤防を築き,干拓し,転用せよ」というのが彼らのスローガンになりました。1905年,N・B・ブロワードはフロリダ州知事に選ばれる前に,あの“害毒だらけの沼地”の水を最後の1滴まで干上がらせることを誓いました。

それは空約束ではありませんでした。巨大な地ならし機や浚渫機が持ち込まれました。米陸軍工兵隊の指導・監督のもとで,長さ90㌔に及ぶ,深さ9㍍の運河が掘られ,その作業中に湿地帯は100万平方㍍以上破壊されました。巨大な堤防や土手道や揚水場などが設けられ,エバーグレーズにはさらに多くの運河や道路が縦横に建設されました。生き物で満ちているこの湿地帯に生気を与える貴重な水は,新たに開発された広大な農地を支えるために転用されました。また,沿岸の諸都市も西方に拡張され,大規模な郊外住宅地区,高速道路,ショッピング・センター,ゴルフコースなどを造るため,エバーグレーズからさらに多くの土地が奪われました。

1947年にエバーグレーズの一部は国立公園に指定されましたが,その水は引き続き恐るべき速度で排水され,転用されました。エバーグレーズを干拓し,そのために何百万ドルもの資金を費やすのは重大な過ちであるという点で,環境保護運動家たちの意見は一致しています。エバーグレーズの水の流れを妨げると,生物に壊滅的な影響を及ぼすということを理解していた人は,ほとんどいませんでした。その害が明らかになるまでに何十年もかかりました。

しかし,1980年代の半ばにはすでに環境保護運動家や生物学者は,エバーグレーズが死にかけていることを警告していました。その湿地帯の生き物は皆,不満を訴え,助けを叫び求めているように見えました。日照りが続くと,ワニの生息している池は干上がるようになり,雨が降って辺り一帯が水浸しになると,ワニの巣や卵は押し流されました。ワニの数は今や激減しつつあります。おとなのワニが子供のワニを食べているという報告もあります。かつてこの地域に100万羽以上いたエキゾチックな渉禽類は何千羽程度にまで,つまり90%も減ってしまいました。かつては美しいベニヘラサギが群生地に戻って来る時,空が暗くなるほどでしたが,その数は段々減少して,以前と比べればごく少数の貴重な鳥になってしまいました。1960年代以来,アメリカトキコウの数は減少し,巣ごもりをする鳥の数は6,000羽からわずか500羽に減り,絶滅の危機にさらされています。また,米国の貝類・甲殻類の漁業のためのフロリダ湾の恵まれた養殖場も存続が脅かされています。ある関係者の報告によれば,シカからカメに至るまで,ほかのすべての脊椎動物の個体数も75ないし95%減少しました。

農業その他の人間活動による絶え間ない侵害に伴って,流出した化学肥料や殺虫剤などの環境汚染物質が土地や水を徐々に汚染しました。沼地の魚をはじめ,アライグマやワニやカメに至るまで,生き物の間の食物連鎖のすべてのレベルに多くの水銀が含まれていることが確認されています。漁師は,土壌から染み出た水銀が入っている特定の水域のバスやナマズを食べないようにと言われています。ピューマも人間による侵害の犠牲になり,水銀中毒で死んだり,密猟者に殺されたりしています。この動物もまさしく絶滅の危機にさらされているため,フロリダ州にいるのは30頭以下で,この国立公園にいるのは10頭足らずだと考えられています。また,エバーグレーズに自生する色々な植物も絶滅寸前の状態に追いやられています。

中には,エバーグレーズが取り返しのつかない状態に陥っているかもしれないと考えている観察者や環境保護運動家もいます。しかし政府や公園の当局者や多くの環境保護運動家は,資金を供給し,州や連邦の諸機関が迅速な処置を講ずるなら,エバーグレーズを救えるのではないかと考えています。「この広大で複雑な場所がいつ取り返しのつかない状態に陥るのか,本当のところはだれにも分からない。もしかしたら,すでにそうなっているのかもしれない」と,ある当局者は述べました。生物学者のジョン・オグデンは,エバーグレーズを再生させる見通しは明るくないことを認めていますが,楽観的です。彼はこう言いました。「楽観的に見ないわけにはゆかないのだ。そうしなければ,この地域は,ここに数匹のワニがおり,あちらに数羽の鳥が巣ごもりをしており,立派な博物館の中には中央部に剥製のピューマが展示されているといった,公園の名残をとどめるだけの生物学的砂漠になる以外にないからだ」。

米国の大統領や副大統領をはじめ,ワシントンの連邦政府当局者や政治家は,フロリダ州当局者,生物学者,それに環境保護運動家たちの全国的規模の抗議の声を聞いてきました。そこで,計画は米陸軍工兵隊により最初からやり直されることになりました。同工兵隊の先任者たちは何年も前にこの仕事を引き受けましたが,やり損ないました。彼らの全く新しいビジョンは,干拓し,ダムを造り,転用するのではなく,エバーグレーズとその生き物を救うことなのです。

問題が水であることは明らかです。「成功の基礎となるのは,比較的にきれいな,それも大量のきれいな水であるが,それは農業地区や都市圏への供給量の削減という犠牲を払って初めて得られるものである。その標的とされる可能性の最も大きい場所はフロリダ州南部のサトウキビ畑や野菜農場である」と,US・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌は述べました。エバーグレーズ国立公園の園長ロバート・チャンドラーは,「水の恩恵を分け合うのは難しいことだと思いますが,わたしたちは十分与えてきたので,これ以上与えることはできません」と言明し,「ほかの人々も自然環境の保護を真剣に考えるべきです」と語りました。エバーグレーズ再生計画の支持者たちは,エバーグレーズに大きな土地を所有している,そして同計画に反対しているフロリダ州のサトウキビ栽培者や農業経営者たちと,最も厳しい闘いをするのではあるまいかと心配しています。彼らの必要を支えるため,エバーグレーズの生き物を犠牲にして大量の水がくみ出されているのです。

エバーグレーズを再生させて救う計画は,歴史上最も大胆かつ最も費用のかかる回復計画となるでしょう。世界野生生物基金によるエバーグレーズ計画の担当者である一役員は,「この計画には,今まで世界のどこにも見られなかった規模の膨大な資金と広大な土地,そして生態系の回復が関係している」と語りました。「今後15ないし20年間に米工兵隊,州および他の連邦諸機関はおよそ20億㌦(約2,200億円)を投じて,1万4,000平方㌔の湿地帯や建設された水路を含め,フロリダ州エバーグレーズの生態系全体の給排水機構の再構築を計画している」と,サイエンス誌は説明しました。

その上,同計画を実施するには,オキーチョビー湖付近の農地を約4万㌶買収し,それを残りの農地から染み出る環境汚染物質をろ過する湿地帯に変える必要があります。サトウキビ栽培者は,エバーグレーズをきれいにするための余分の資金を工面する方法として提案されている,製糖産業に対する連邦政府からの砂糖1ポンド当たり1㌣の助成金の削除に強い反対の声を上げています。ユーエスエー・ツデー紙は社説で,「エバーグレーズを回復するための費用は,これを破壊して一番益を得ている者,つまりフロリダ州のサトウキビ栽培者や加工業者が支払うべきである」と述べました。フロリダ州の砂糖に対する1ポンド当たり1㌣の賦課金は年額3,500万㌦(約38億5,000万円)になると見積もられています。

農業経営者・サトウキビ栽培者対生物学者・環境保護運動家・自然愛好家のこの闘いは,今後も続くものと思われます。米国では他の場所でも同様の二派が対立しています。ゴア米副大統領は協力を訴え,「共に努力すれば,こうした不和を解決して,健全な環境と活力に満ちた経済を保持することができる。しかし今こそ行動すべき時である。世界にはエバーグレーズは二つとないからだ」と述べました。

[13ページの図版]

ワニ

[クレジット]

USDA Forest Service

[14ページの図版]

ハクトウワシ

[15ページの図版]

シロトキ

巣ごもりするヘビウ,つまりアメリカヘビウのつがい

[16ページの図版]

水の中を歩くアライグマのトリオ

シラサギ

[16,17ページの図版]

オオアオサギ

[17ページの図版]

ツルモドキ,別名は泣き鳥

鵜のひな鳥

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