読者からの質問
● サムエル後書 8章13節の記述は,ダビデが塩の谷でエドム人を撃ち破ったと述べていますが,歴代志略上 18章12節はそれをアビシャイの手柄としています。さらに詩篇 60篇の表題によれば,敵を敗北させたのはヨアブだとされています。なぜこのような違いがあるのですか。
これら三つの記述は,明らかに,エドム人の敗北を違った観点から描いています。サムエル後書で勝利がダビデに帰されているのは,ダビデが王であり,イスラエル人の軍隊の司令長官であり,戦闘命令を下す権限を持つ人物であったからです。ヨアブは将官の頭であったため,詩篇 60篇の表題の中で,征服をもたらした者とされています。アビシャイはヨアブの下で部隊の長を務めており,その戦闘で重要な役割を担っていたものと思われます。これが,歴代志略の記述の中でアビシャイに勝利が帰されている理由です。ですからそこには何の矛盾もありません。今日でさえ,ある特定の行為を,それを命じた人物に結びつけたり,それを首尾よく成し遂げる面で重要な役割を担った人物に結び付けたりすることは,ごく普通に行なわれています。