全地で伝道する
イエスは死なれる二日まえに,彼の再臨中,すなわち組織制度の終わる直前に成就されるべき事がらを預言されました。そして特にこう言われています,「この御国の福音は,すべての民に対してあかしをするために,全世界に宣べ伝えられるであろう」― マタイ 24:14,新口。
ちょっとの間,イエスのこの言葉に注意を向けてください。そして,この言葉を成し遂げるのに何が必要かを考えてください。伝道者の進取的精神と決意は言うにおよばず,それに要する時間,精力,費用,人力,組織を考えて見てください。神の御国を,全世界の何億という住民に宣べ伝えることは,なんという大事業でしよう!
しかしイエスが,そういう御国伝道が行なわれるであろうと言われた以上,また,この時代の前代未聞の出来事が,いまこそその仕事の成就されるべき時であることをしるしづけている以上,この仕事はいったいどうなっているのだろうか,という疑問が起こります。ところがこれは,多くの人々が気づいている以上に進んでいるのです。まえの記事で,私たちは,聖書の指示する方法に従って御国を伝道している組織のあることを知りました。そこでこの組織の世界的活動を一望することは大いに役立つことと思います。
現在の本部
第1世紀のクリスチャン会衆の本部が初めて設置されたのはエルサレムでした。それと同じく,今日,世界的御国伝道のわざを指導している本部は,ニューヨークのブルックリンという非常に地の利を得た場所にあります。マンハッタン橋をわたってブルックリンにはいっても,ブルックリン橋を渡ってはいっても,人は,その一つの橋から他の橋へと延びる,みどり色でふちどられたクリーム色の二つの大きな建物を見るでしょう。エホバの証者の印刷工場は,世界一の輸送施設に近い。そして毎日多くの人に見られるこの理想的な場所にあって,一日に何万冊という,神の御国を宣明する聖書,書籍,雑誌を印刷しています。
そこから歩いて約10分,有名なニューヨーク港を見下しながら,下マンハッタンの高層建築街から川をへだてた向う岸に,二つの,人目を引く12階建の赤れんがのビルディングが長方形の塔をのせて立っています。これがものみの塔協会の国際本部であり,本部で働く人々および,ものみの塔ギレアデ聖書学校に出席する学生たちの家でもあります。この聖書学校と,全世界の伝道活動を指導する種々の事務所,協会のアメリカ支部は,みなこの二つの建物の中にあります。しかし,イエスの預言された世界的伝道活動と関連して,いったいどんなことがここで行なわれているのでしょうか。では,ものみの塔の本部を訪問して,私たち自身で見ることにしましょう。
ベテルを訪問
コロンビア・ハイツの感じのよい住宅街の中に,本部の二つの大きな建物が見えてくると,訪問者はすぐその大きさに感心します。どちらの建物も,高さ30メートルを超え,市街の2区画の大部分を占めています。ですから人は,この二つの建物が,一室にふたりずつで950名をゆうゆう収容できると聞いても驚きません。二つのビルディングのうち,新しい方の建物の入口まで行くには,練鉄の門をはいり,色とりどりのおびただしい花で飾られた美しい庭の中の,37メートルほどの遊歩道を歩いて行きます。ここはベテルと呼ばれています。それはこの名前に,「神の家」という意味があるからです。
ベテルに住む人々はみな,エホバの証者の任命された奉仕者たちであって,全世界の90万以上の仲間の奉仕者たちと同じように,神の御国のおとずれが全世界で宣べ伝えられることに鋭い関心をもっています。そのため,彼らはひとりのこらず,その伝道活動を促進させるために,どんなことであろうと,ベテルで仕事をすることを特権と考えています。彼らは,食物と,宿泊所と,身のまわりの品を買うための手当14ドルのほかはなんらの物質的報酬も受けず,自発的にこの仕事を行なっているのです。
12年まえは,わずか355人でベテルの仕事をやっていくことができましたが,現在では,33の国を代表する654名の家族がいます。それに加えて,52の国からきた103名のギレアデの学生が,目下ここの学校に出席しており,毎年新しいクラスがはいってきます。全くもって国際的な家族です。しかし,彼らの間には,なんというすばらしい一致と愛があるのでしょう! この家族が,全世界のエホバの証者と同じように,どのようにしてかくも平和なそして一致した生活をなし得ているかは,典型的な一日のはじまりを考えて見るとわかるでしょう。
午前6時半,起床のベルが二つの建物に鳴り渡ります。7時数分まえになると,それぞれの部屋から家族がぞくぞくと出て来て,地下室に通ずる階段はいっぱいになります。地下室には,950人を収容できる二つの大きな食堂があって,新館の方に住んでいる家族は,道路の下の広い地下道を通って食堂に行くことができます。
7時きっかりに会長は,あるいは会長のるすのときは副会長が,「エホバの証者の年鑑」から,その日の聖句を読むように指示します。つぎに会長は,前もって知らされている人々を指名し,指名された者たちはその日の聖句に関連したいろいろな質問に答えます。その人たちはみな,答えを準備するのにかなりの時間を費やします。そして家族は,彼らのそのすぐれた注解を二つの食堂にある拡声器を通じて聞くのです。この朝の討論に参加する順番は,数週間毎に家族の各メンバーにめぐってきます。そして,討論の最後に,会長が自分の注解をつけ加えます。それから祈りがささげられて朝食が出ます。毎朝こうして20分から30分,霊的事がらを深く考えて見ることによって,神の義なる律法は心と精神に深く刻みこまれ,人はその日1日中神の御言葉に従うように励まされます。エホバの証者は,全世界における伝道においても,神の御言葉をそのように考えてみることを人々にすすめています。それは実際に益のあることです。
15分か20分ののち,朝食は祈りと共に終わり,家族のメンバーは,ホームおよび工場内の受持ちの仕事場へ,学生たちは,道路を渡って新館の2階にある教室へ向かいます。そして午前8時にはすでに,印刷機が回転し,タイプライターがひびき,ハウスキーパーたちは,ベッドをなおしたり家の掃除に忙しく働いています。
工場を訪問
工場に向かった420人の奉仕者はいったい何をするのだろう,とあなたは不思議に思われるかも知れません。二つの建物 ― 一つは9階,もう一つは13階で,市街の2区画を占めている ― に近づいて見ると,これらに人を配置するには,少なくともそれだけの人数の必要なことがおわかりになるでしょう。この二つの工場の床面積は,11万7970平方メートルもあるのです! しかし,世界的御国伝道活動を促進するに必要な大量の仕事を行なうには,これだけのものが必要なのです。
新しい工場の13階には,150万以上の「ものみの塔」および「目ざめよ!」誌の予約者の住所ステンシルが,整理してしまわれています。またあなたはそこに,ステンシルを切る十六台の白堊凸版機があるのを見るでしょう。下って6階には ― 二つの建物はこの6階のところで,道路をまたがる橋によってつながれている ― 2台の円圧機と,16台の大きな輪転機があって,そのうちの3台は,それぞれ1分間に500冊に近い雑誌を作り出します。これらの輪転機の半数は,御国伝道者たちによる,聖書文書の莫大な需要に応えるために,過去6年間に購入されたものです。
1961年中には,「ものみの塔」と「目ざめよ!」誌が,1億1511万1230部,聖書と書籍が556万7364冊,それに何百万冊の小冊子が印刷されました。ブルックリンでは,全部で128の言葉で文書が印刷されています。世界中にあるものみの塔の印刷工場でも,さらに34の別の言葉で文書が印刷されており,1961年に6900万冊の「ものみの塔」と「目ざめよ!」が作られました。ということは,毎日50万冊以上の雑誌が作り出され,御国伝道者たちがそれを使っているということになります。
また工場を見学している間にあなたは,22台のライノタイプ ― 大なき新聞紙印刷工場にあるよりも多い数 ― を興味ぶかく見るでしょう。これらは,この多数の出版物をメタル・タイプに組むために用いられます。製版部は,このメタル・タイプから,輪転機にかけて印刷するためのわん曲した版を作ります。そして,100万部以上の雑誌の印刷に耐え得るように,それを二つの大きなニッケル槽でメッキします。工場をひと通り見学すると13台の小型円圧機とこまごましたものの印刷機を見ます。これらの印刷機は毎年,1億4500万枚の聖書の講演の宣伝ビラに加えて,なん百万という多種多様の用紙を印刷します。
製本部も見のがすことはできません。多くの本が,バックライナーを通って,最後に表紙付けをする表紙クルミ機まで行くのを見るのはおもしろいものです。ここでは,そのような機械が3台使用されているので,1日に平均3万冊の聖書と書籍が製本されます。1961年の4月に,最初の「新世訳聖書」が完成されて以来,製本部はすでに230万冊の新世訳聖書を製本してきました。
しかしあなたは,インキ室,機械部,木工部にも興味をお持ちになるでしょう。ものみの塔協会は自分で約50色のインキを,1年に10トン以上作ります。また,建物の内外をいつも美しくして置くためのペンキもみな自家製で,昨年は2500ガロン以上を作りました。書籍や聖書を製本したり,雑誌を包むのに使われる80トンののりやにかわもここで作られます。
ベテルの家の各へやに備えられる美しいタンスや木棚,机などもみなこの近代的な木工場で作られます。私たちが工場を見学した時に見た,雑誌包装器とか,エンドシーターのようないろいろな機械は,機械部で働く奉仕者たちが考え出して作ったものです。これらの部門は,一年に何万ドルという操業費を節約します。そしてそのお金は,直接伝道活動を促進するのに使えるのです。
ベテルの家に戻って,この大クリスチャン家族と昼食を楽しむ時,人は,ここにこそ,御国のおとずれの世界的伝道に関するイエスの預言の成就に,真剣に努力している団体のあることを認めざるを得ないでしょう。
ものみの塔協会の農場
食堂でこしかけている間にあなたは,おなかをすかした何百人というこれらの働き人に食べさすのにいる,莫大な量の食物を見てびっくりするでしょう。それもそのはず,チキンを出すのに,1回の食事で140羽いるのです。そして家族は,2回の食事で,大きな牛1頭分を消費します。また興味あることに,この大部分の食物は,ものみの塔協会の経営する二つの農場で生産されるのです。一つは,112キロほど西のニュージャージーにあって,マウテン・ファームと呼ばれ,もう一つは約410キロほど北に行ったニューヨーク州イサカ市の近くにあり,御国農場として知られています。どちらの農場でも,奉仕者たちでなる家族が,ベテルにいる自分たちのクリスチャンの兄弟たちの物質的必要物を供給するために働いています。
学校は御国伝道を拡大する
御国農場にはまた,御国宣教学校があります。この学校では,アメリカ中のエホバの証者の会衆の監督たち,特別代表者たちの,1ヵ月に渡る特別訓練と聖書研究が行なわれます。1959年の3月に開かれて以来,2281名の生徒がこの課程を終了しました。そして,このような学校はまた,世界中の多くの国で開かれています。しかしあなたは,この学校と,ブルックリンのベテルにある,美しい教室や1万巻の書籍を収めた図書室を持つギレアデ学校とどこが違うのだろう,とお考えになるかも知れません。
第二次世界大戦のさなかに,ものみの塔協会の会長は,遠くの国々へ御国の音信を伝えるところの宣教者たちを訓練する学校の設立を思いつきました。この構想は,理事会の熱意ある賛成を受け,1943年の2月には,ギレアデ学校第1回の授業が御国農場で開始されることになりました。この学校が,1961年にブルックリン本部に移転するまでに,95ヵ国から来た3638名の生徒が,5ヵ月の課程を終了して,100以上の異なった国々に派遣されました。彼らは,それらの多くの場所で伝道を開始しました。何年かのうちに,音信に答え応じた,文字通り何千人もの仲間の奉仕者たちが彼らに加わりました。
ブルックリンにある現在のギレアデ学校の課程は10ヵ月です。この課程を通してギレアデ学校は,他の国々に作られてきた伝道者たちの大きな組織の世話をする,円熟した奉仕者たちを訓練します。こういう方法で,世界中のエホバの証者の組織は,聖書と,本部の示す模範に一致して指導されています。生徒たちはまた,印刷に関するあらゆる面の仕事も経験させられて,実際的な教育を受けています。それは,ほかの国々にある工場が,能率的に運営されるためです。
エホバの証者は,全世界にわたる,187の国々島々で,神の御国に関する一つの一致した音信を伝道しています。この伝道活動の拡大と,伝道方法には,あなたも興味をお持ちになると思います。というのは,音信は同じでも,人々の習慣や,音信に対する反応は,しばしば非常に異なっているからです。
欧亜
戦争で荒廃したヨーロッパは,御国の良いたよりの伝道には実りの多い土地でした。しかし,アジアにおいては,聖書の真理を受け入れにくくする根深い異教の習慣が人々をとらえているために,ヨーロッパほど早く発展しませんでした。まだ戦争中であった1942年に,ヨーロッパの13の国々にいたエホバの証者はわずか2万2796名,アジアの六つの国には406人の奉仕者しかいませんでしたが,10年後には,その総合数は7倍近くに,つまり43ヵ国で16万1141人に増加しました。それ以来,ヨーロッパとアジアの御国伝道者の数は2倍になって34万9000人を超えるほどになり,彼らは,鉄のカーテンの両側で活発に奉仕しています。
鉄のカーテンの背後の10の国では,12万以上のエホバの証者が,神の御国のおとずれを忙しく伝道しています。多くの人は,そのために投獄され殺されました。ギレアデの現在のクラスにはいっている4人の生徒は,共産主義者の刑務所に合計24年間はいっていました。それでも彼らは,研究と伝道をつづけたのです。最近そのうちのひとりが,どのようにしてそれを行なったかを,つぎのように話してくれました,「私たちは毎日十五分間,刑務所の庭を行進しましたが,その間に,看守が見ていないのを見はからって前を歩く囚人にささやきかけるのです。もしそうしているところを見つけられたなら,三週間皆から引き離されることを私たちは知っていましたが,伝道はしなければならないので,私たちはこの方法を使いました。兄弟たちは,ほんとうに看守の頭痛の種でした。もし私たちを一緒にすると一日中勉強しているし,ばらばらにすると,できる限り全部の者に伝道しようとすることを看守たちは知っていたのです。
西ヨーロッパでは,鉄のカーテンのうしろにあるような制限は少しもなく,自由に伝道が行なわれていて,すばらしい増加を見せています。エホバの証者のわざに対する人々や当局者の理解が増してきたので,彼らはエホバの証者のもたらす音信に耳を傾け,証者たちが自分たちの町で大会を開くのを歓迎します。たとえば,終戦後,エホバの証者を一般に疑いと憎悪の目をもって見たオランダではいま,新聞は好意をもって彼らの仕事を報道し,また最近,アムステルダム・ラジオ放送局は,エホバの証者の制度と信仰を説明するプログラムを放送するように招待しました。
全欧州で使われる文書は,ヨーロッパのいろいろな国で印刷されています。伝道者の最高数が,4万9千人以上に達した英国では,1961年に,1億8500万冊の「ものみの塔」と「目ざめよ!」誌が,エホバの証者の新しい工場で印刷されました。西独では,7万人以上のエホバの証者がいて,伝道しています。彼らは,ウイスバーデンの近くの,樹木でおおわれた美しい区域の中に,大きなベテルの家と工場を持っています。昨年は,1900万部に近いドイツ語の「ものみの塔」と「目ざめよ!」がそこで印刷されました。デンマーク,スウェーデン,フィンランド,スイスの工場も,この二つの聖書雑誌をヨーロッパのいろいろな言葉で,毎年何百万部も作り出します。
アジアにおける伝道活動は,ヨーロッパほど拡大されていないにしても,ある所ではかなりの発展を見せています。神の御国のことを東洋の人々に話すのは,ヨーロッパ人に話すのとはだいぶ違います。日本や韓国から来た奉仕者たちが,そこで行なわれる伝道のわざを説明するのを聞くのは興味深いものがあります。彼らの話では,人々は非常に礼儀正しく親切だということです。家の中に請じ入れられて,聖書の話をする機会がしばしばあります。もちろんその時にはくつを脱いではいらなければなりません。そして座ぶとんをすすめられ床の上にすわります。
アジアの人々は,教育に熱心で,普通いろんな問題を進んで論じ合います。そして一般に,聖書を説明した本をすすめられるとすぐに求めます。しかし,いく世紀にもわたる古い宗教的伝統に彼らを束縛する家族のきずなは非常に強いものがあり,それを継ち切って聖書の真理を受け入れることは,多くの場合むずかしいことです。しかし,彼らがそれを実行する時 ― 数が増加しているように ― 真理は彼らの生活に驚くべき矯正的影響をおよぼします。そして彼らは真理を熱心に宣べ伝える者となります。韓国のエホバの証者の約7パーセントは,毎月少なくとも100時間を伝道にささげる全時間奉仕者で,4200人の証者のうち1000人以上が,この全時間奉仕の経験をもっています。
インドにおける伝道活動への反応は緩慢で,証者は2000人弱ですが,それでも,新しく興味をもった人々は実に熱心です。インドから来た最近の手紙によると,五つ六つの大家族が真理を受け入れたということです。「彼らは,自分たちの御国会館を建てました。そして非常に熱心で,真理の下に一致しています。十歳の小さな子供たちですら,ひとりで大胆に,そして効果的に,聖書の話を全部することができます。彼らの聖書の使い方は全く称賛に価するものです。……
「ある伝道区域は遠くて,行くのも困難です。十時までに区域に着くには,午前七時半に家を出なければなりません。そして二,三そうの小さなこぎ舟に乗って出発します。それから六,七キロ川を行き,野原やジャングルを四,五キロ歩いて,さらに三キロほどバスに乗ってはじめて区域に着きます」。それでも彼らは,良いたよりの伝道に参加することを堅く決意しているのです。
アフリカ
エホバの証者の伝道活動がこれほど大きな影響をおよぼした大陸は,恐らくアフリカをおいてほかにないでしょう。証者になった人々の間では,異教の迷信,教理,習慣は捨て去られ,ただひとりの配偶者に誠実を保つということをも含めて,高い道徳の標準が守られています。聖書の真理に対する認識が動機となって,これらのアフリカ人たちは練達した奉仕者となりました。その結果,アフリカにおける御国伝道者の数は,1942年の1万70人から,1952年の7万2228人へと,10年間に7倍増加しています。それ以後御国伝道者はほとんど2倍にふえ,良いたよりの奉仕者は,13万4000人以上になりました。
政府の役人や雇主たちは,エホバの証者になるアフリカ人たちの変わりように,ただあきれるばかりです。それは,彼らが全く信頼の置ける働き人となるからです。そして,御国会館で読み書きを教えられるので文盲でもありません。しかし,最も注目に価するのは多くの大会です。この大会には,3万人を越える異なった部族のエホバの証者たちが集まって,なごやかな交わりを楽しみます。いったいそれがどのようにして行なわれているかを,自分の目で見ようと大会に出席した政府の役人たちは,すっかり驚いてしまいました。
村全体がエホバの証者になってしまって,伝道するにはほかの村に行かねばならない所もあります。伝道活動のこのすばらしい拡大によって,北ローデシアでは81人にひとりの御国伝道者,ニヤサランドでは194人にひとり,南ローデシアでは245人の住民にひとりという状態になっています。3年まえ,南アフリカのヨハネスブルクに,大きなベテルの家と工場が開設され,そこで毎年200万部以上の「ものみの塔」と「目ざめよ!」誌が,九つのアフリカの言葉で印刷されています。霊的に言って,もはやアフリカを暗黒大陸ということはできません。
海の中の島々
御国の音信は,大西洋,カリブ海,地中海,大平洋などのはるかなる島々にもしん透しています。フィリピン,オーストラリア,ニュージーランドを含むこれらの島々の多くで,御国の良いたよりは暖かい歓迎を受けました。1942年に,御国伝道者は九つの島にわずか5570人しかいませんでしたが,10年後にはその数は27の島で4万4111人へと増加しました。しかしいまでは伝道者数はその倍になって,8万9000人を超え,60以上の島々や群島でよいおとずれを宣べ伝えています。
最近受け取ったソロモン諸島からの手紙を見ると,御国の音信がいかによく受け入れられているかをうかがうことができます。いく人かの村人は,キリスト教国の宣教者たちによって伝えられた宗教に不満を抱き,彼ら自身の宗教をあみ出しました。その人たちは,宗教に深い関心を持っていたので,エホバの証者の活動を耳にした時,首都のホニアラにいく人かの代表者を送って調査させました。代表者たちは,良い報告を持ち帰りました。それどころか,そのうちのひとりは,エホバの証者たちが来る時を見越して,御国会館を建てたほどでした。
ついに4人の御国伝道者がやって来た時,450人以上の現住民が公開講演を聞くために集まりました。そのあと,次週のための教える計画が取りきめられました。どのクラスも出席者は150人くらいです。朝の6時半から始まって真夜中すぎまで続けられました。結果?「一通の手紙にはとうてい書ききれないほどの説明や討論の末,教師も牧師もひとり残らず真理の側につきました。二十いくつの教会が御国会館と改名され,二十八の村全部が,彼らに残された九つの聖書の講演を研究しています。人々はみな感激し,私に二十ポンドを渡して,黒板とチョークを買ってくださいと言いました。以前の教師や牧師たちは,それらの講演を通して,ほかの人たちを教えています。彼らはいままでの礼拝式をみな止めて,私たちのやり方にできるだけ正確に従おうと努力しています」。こういうわけで,御国の音信は,海の中の辺びな島々にもとどいているのです。
南アメリカ
いく世紀もの間,ローマ・カトリックに支配されてきたこの大陸の人々の間では,無学文盲は常態であって例外ではありません。また私生児が多く,合意結婚は日常茶飯事です。そういうふんいきの中で御国伝道はゆっくりとスタートしました。1942年に,奉仕者は807人いただけでしたが,1952年までには1万1795人に増加しました。しかしいまでは4万5000人が,南アメリカのあらゆる国で,忙しく伝道しています。近年エホバの証者の仕事は,南アメリカのどの国においても,広く公共の注目を集めています。
たとえば,ブラジル南部のサンパウロには,市内と郊外に,70のエホバの証者の会衆があり,5500人の御国伝道者がいます。そして,御国の音信は,推定150万の聴視者をもつテレビジョンの番組を通して,毎週この地域の人々の注意の対象となっています。
去る1月に,エホバの証者がサンパウロで全国大会を開いた時,役人たちは証者を歓迎し,大会に関係したいろいろな問題の解決に助力しました。ラジオ,テレビジョン,3900コラム・インチのニュース報道によって,大会はよく宣伝されました。一般の反応はどうだったでしょうか。驚いたことに,全ブラジルの御国伝道者は,3万人よりも少ないのに,4万8000人が集まって,「神の御国の下にすべての国民が一致する時」という公開講演を聞きました。
北アメリカ
この世界的伝道活動を指導する本部のある北アメリカでは,アメリカ合衆国だけに限らず,カナダや,メキシコ,中央アメリカでも,着実に増加が実現しています。伝道者の数は,1945年の7万5589人から,1952年の16万8752人に増加し,いまでは34万5000人がアラスカからパナマに至るまで,人々に神の御国の音信を伝えています。
世界中の御国伝道者の数は,ゆうに95万を超えます。彼らは毎週なん百万という人々に接触し,そのうちの多くの人々と,家庭で聖書の研究を行なっています。キリスト・イエスの残された模範に従い,また,私たちの時代に関するキリスト・イエスの預言の成就として,御国のこの良いたよりは,「全世界」で宣べ伝えられているのです。しかしこれは,ただお座なりに行なわれているのではなくて,非常に緊急性をおびたものです。なぜなら,イエスが言われた通り,御国のよい音信の伝道のあと,この悪い組織制度は,ハルマゲドンという神の戦争で終わるからです。―マタイ 24:14。黙示 16:16。
神と隣人への愛に動かされた何十万という献身した老若男女は,ぶつかる多くの障害をものともせず,この重要な仕事に熱意をもって参加しています。また毎年何万という人々がこの仕事に加わりつつあります。あなたにとってもいまは,エホバ神とその御国の側に来て,神の正しい新しい世の永遠の祝福にはいる機会を補えるべき時代です。
[26ページの図版]
エホバの証者の国際本部
[27ページの図版]
ニューヨーク,ブルックリンの ものみの塔印刷工場