世界展望
輸血なしの手術
◆ 輸血せずに行なう手術方式を開発しようとする外科医がふえている。こうした動きは,輸血の危険を避けたいという願いから出たものである。供血者の不足も一因となっている。1972年5月24日の米紙カンサス・シティ・スターは,ノースウェスタン大学医学部部長,ジェームズ・R・エケンホッフ博士の,輸血の危険に関する次のような論評を掲げた。「輸血そのものが死因となることもある。…血液のびん4,000本ないし5,000本につき一本は,血液型の不適合,アレルギー反応,あるいは汚染血液といった理由で死因となる。致命的影響を与えないまでも,すでに病気の患者は,供血者の血液が引き起こす種々の問題のために,いっそう病気が重くなることがある」。同紙はまた,テキサス州のヒューストンに住むデントン・クレイ博士が,「大手術の大半は輸血なしで行なえるということは今や明らかである」と語ったとも述べている。
政治に参加する僧職者
◆ 先ごろ,スコットランド教会の総会に提出された一報告は,牧師が説教の中で政治問題をもっと多く取り上げることを奨励し,また,牧師たちのいっそうの政治活動参加を促すものであった。これはイエスが示した模範に反する。イエスは,世の政治に参加せず,また自分の追随者は「世のものならず」と語ったからだ。―ヨハネ 17:14。
イタリアでカトリック教徒が抗議
◆ イタリアの司教たちは,同国で司祭と一般信徒による抗議が増加していることを憂慮している。最近,カトリック教会の指導権を批判する33人のイタリア人の神学者が声明を発表した。彼らは,司祭と一般信徒に,たとえ,教皇と司祭たちに反対することになっても教会の改革を進めることを呼びかけた。
引退を望む教皇
◆ バチカン市発AP通信によれば,教皇パウロ6世はローマ・カトリックの首長を引退することを願っているが,できないと感じている。バチカンが先に録音し,5月末に発表した所見を聴いたあと,こうした結論が出された。教皇の親族のひとりによれば,教皇は「彼が教皇の地位についてからの9年間に行なってきた事柄を全く何もかも厳しく批判されてひどく悩んでいる。教皇は泣くことが多く,少しの愛情にも慰めを感じる」という。
おびえる教師
◆ 最近,英国バーミンガムのある小学校教師は,10歳の生徒たちから暴力を加えられるのを恐れて,7年早く退職することにした。30年間教師をつとめた彼女は次のように語った。「辞職するのはわたしが最初ではありません。きっと最後でもないでしょう。…わたしは,たえず,侮辱や卑わいな言動をがまんしなければなりませんでした」。
拳銃の規制
◆ 最近,アメリカでは高官がそ撃されたり殺人が増加しているので,拳銃を規制する法律をもっと厳しくするように求める当局者が多い。興味深いことに,英国では警官がピストルを携行していない。また警官のピストル携行は反対されている。しかし,英国の法律は,銃器の販売を厳しく制限し,民間にほそぼそと流れる程度に押えている。イングランドとウェールズの人口は約5,000万人であるが,1970年に両地域全体で起きたピストルによる殺人事件はわずか29件であった。これに比べてアメリカでは人口が800万に満たないニューヨーク市だけで,965件の殺人事件が起きている。これはイングランドとウェールズにおける割り合いの200倍を上回る数である。
犯罪者の「黄金時代」
◆ 退職したカナダ騎馬警官隊の元副隊長W・H・ケルレイは,最近,今の犯罪者は「黄金時代」に住んでいると語った。同氏はその原因が,犯罪者を優遇する不均衡な法の構成にあると非難し,カナダの司法制度は,犯罪者に罪を犯すことを思いとどまらせる,あるいは社会復帰させて,犯罪を抑制することをしていないと言った。
グリーン・レボリューションは奇跡ではない
◆ 「ナチュラル・ヒストリー」誌の1972年6月-7月号は,「グリーン・レボリューション」,つまり高収量の農作物の開発が人間の食糧問題を解決するという考えに異議を唱えている。アメリカのコロンビア大学の人類学者,マービン・ハリスは次のように書いている。「それどころか,これらは人類史上前例のない規模の天災と人災をひき起こす危険が確かにある。ほとんどの人々が信じさせられたこととは反対に,高収量の米の品種は,一般的に小規模なアジアの農業経営の場合はそれほど産出的ではない。事実,従来の品種の代わりに新しい品種を使うだけの場合には,反当りの収穫高はただちに,しかも大幅に減少する」。高収量があるのは,ばく大な金をつぎ込み,灌漑,化学肥料,殺虫剤を投入する場合に限られている。ところが同氏によれば,「アジアの農家の70%から90%は灌漑用水がなく,また,化学製品を買うための現金や預金もない」。彼はまた,「グリーン・レボリューション」の目的は「小農階級をぬぐい去り,彼らを,工業製品や世界の市場に大きく依存している敏腕な農業経営者に換える」ことであると非難した。
大気汚染があらしの原因?
◆ 刊行物エル・ヘラルドによると,去る5月にメキシコ・シチーを襲って多くの人命を奪い,大きな被害をもたらした突然の豪雨は,「過去50年のうちで最も破壊的な豪雨」であった,と連邦地域局は述べた。気象庁予報局の局長,マリオ・リザオラの説明は特に興味深い。ウルティマス・ノティシアス・デ・エクセルシオールに掲載されたところによると同氏は,「空気の汚染は,昨日のような突然のあらしの発生を招く重要な要因の一つである」と語った。人間が空気を汚染していることは,確かにそうした要因であるといえよう。
気違いのキツネとスカンク
◆ 最近アメリカでは野性動物のあいだで狂犬病がふえていて,それにかまれる環境にある人間には大きな脅威となっている。1971年に届け出のあった,野性動物の狂犬病の件数は,前年のそれを30%上回っていた。疾病コントロール・センターは,狂犬病の増加のために,人間のあいだにもこの病気がふえるのではないかと心配している。カール・カップス博士はこう警告した。「健康な野性動物は人間を警戒するものだ。スカンクとかキツネのような動物が歯をむき出して人間に近づくなら,それはたいてい狂犬病にかかっている」。同博士はまた,ペットの様子が非常に変わりやすい場合は警戒するよう,飼い主に忠告した。
アメリカで飛行機事故の率が減少
◆ アメリカの全国輸送安全局によると,昨年中同国の航空事業は,23年ぶりに最低の事故率を示した。航空業界が全面的な事故率の減少をなし遂げたのは,昨年が連続3年目に当たる。
子どもには愛情が必要
◆ オーストラリアの専門家たちは,最近,母親が働いているあいだ子どもを保育センターに預けることから生まれる害を憂慮している。国立オーストラリア一般医科大学の学長,H・N・メーリントンは,何らかの処置が講じられなければ,母親の愛情の不足によって,精神的および感情的に回復が不可能なまでにそこなわれた青年を医者が治療することになるだろうと警告した。同氏は次のように語っている。「発達期にある子どもは母親との親密な関係をを持つべきである。子どもの他人に対する態度全体は,母親との関係によって3歳から5歳までに決定する。幼い子どもは母親の暖かさや愛情を経験する必要がある。…そうした経験のない子どもは成長しても対人関係が不安定で,人々と容易につき合うことができない」。
性『教育』が逆効果になる
◆ アメリカ,サンフランシスコの学校当局者たちは,十代の妊娠,麻薬,その他の「生の実態」の討議を含む性教育がすでに施されている以上,同性愛について教えても悪くはないと考えた。そこで,中学校9学年の社会科の授業に同性愛者が招かれて,13歳から15歳の生徒に話をした。サンフランシスコのサンデー・エグザミナー・アンド・クロニクル紙によれば,同性愛者は,「彼らの性技術を解剖学的にたいへんあからさまに説明したので,まもなく,航空病用の袋を至急必要とする生徒が出るに至った。ふたりの女性同性愛者は度を過ごし,抱擁し合ってみせた」。抗議を受けたため,校長は,「ゲイ・カウンセリング・センターに連絡して,学校における同性愛の普及には,今後は,もっとレベルの高い同性愛者を派遣してもらわなくては困るということを伝えた」。