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薬品としてのホルモン目ざめよ! 1974 | 4月8日
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にも言われています。しかしこれはわからないことではありません。どんな薬剤でも,アスピリンやペニシリンのようなごくありふれた薬剤でさえも,その服用にはある程度の危険が伴うのですから,その危険を冒すだけの価値があるかどうかは,各自が決定しなければならないことです。
避妊薬に次いで最も広く使われているらしいホルモンは何でしょうか。それは多くの医師が糖尿病患者に対して処方するインシュリンです。インシュリンは,雄牛,羊,豚などの膵臓から採られます。それらの膵臓には,インシュリンを産出する小さな「ランゲルハンス島」が含まれているのです。糖尿病の問題はすべてインシュリンによって解決されたと考えられた時期がありました。しかし今では,正しい食餌とからだの運動も,インシュリン以上とはいかなくとも,インシュリンと同じほど重要であることが理解されています。
あなたは生理の前の緊張感に悩まされている女性ですか。それとも更年期という女性の生涯のむずかしい時期を通過しつつある人ですか。もしそうならあなたの医師はあなたの状態に対してホルモンを処方するかもしれません。医師はとくに女性ホルモンのエストロゲンを勧めます。そして近年は,男性ホルモンのアンドロゲンを微量用いるのも効果的であることが知られています。しかしながら,そのようなホルモン剤に敏感な女性には,ホルモン剤は有害であることを一部の医師は認めています。ですからもしこの種のホルモンによる治療が必要と思われるなら,注意深い監督のもとで行なうのが賢明です。
あるホルモン剤が,女性の妊娠防止に用いられることはすでに述べましたが,別のホルモン剤は,流産ばかりしている婦人が子どもを生むよう助けるのに用いることができ,また実際に用いられています。また先ほど述べたデンバーの婦人の場合のように,妊娠できない人に有効な,他の人から採られるホルモンもあります。しかしなかには,主義として他の人間から出たホルモンを使うことをいやがる人もあるでしょう。
もっと一般に知られているホルモンのなかにDESがあります。これは家畜の成長を促進するために広く用いられていました。しかし,肉の中に残留するこのホルモンが原因で実験動物にがんが発生することがわかったとき,米農務省はその使用を禁止しました。
しかし今では米薬務局が,強姦の犠牲者を治療する時のような危急の場合に,『モーニング・アフター』薬剤としてそれを用いることを許可しています。妊娠したとしても,性交後72時間以内に服用すれば,受精した卵子の着床を防ぎます。しかし,ザ・ナショナル・オブザーバーは,問題の重要な倫理的面に焦点を向け,「DESは妊娠を阻止するものではない。避妊薬という名称で通っているがこれはまちがいである。DESは流産を起こすのである。……これがどの程度有効であるかは,この薬品の使用の妥当性をめぐって今行なわれている論議の争点のひとつである」と述べています。もうひとつは,この合成ホルモン剤を用いる婦人に生まれた女の子は,成人してから生殖器のがんにかかる率が普通より高いことが報告されているということです。そういうわけで,これの使用については警告が発せられています。
あなたは枯草熱またはそれに類する病気に悩まされていますか。もしそうなら,あなたの医師はコルチゾンを処方するかもしれません。自然の状態のコルチゾンは副腎から産出されます。何年か前コルチゾンは「妙薬」とか「奇跡」の薬とたたえられました。とくに関節炎の治療においてはこの薬ができたために大きな希望が生まれました。しかし現在では関節炎の治療の一面であるにすぎないことが認められており,アスピリンでさえそれくらいの効果はあり,しかも副作用は少なく,値段はずっと安い,と考えている人もあります。
オキシトシンと呼ばれるホルモンは,母親の子宮を収縮させて分娩を助け,乳の分泌を開始させます。このオキシトシンが今では人工的につくられており,一部の産科医は,陣痛を起こさせるためにこれを用います。それで母親は,からだそのものが陣痛を起こすまで待たなくても自分の好きな時に子どもを産むことができるわけです。しかしこれは賢明なやり方でしょうか。専門家の中には,ノースウェスタン大学医学部のE・デ・コスタ博士のように,ただ便宜のためだけに人工的に陣痛を起こさせることに反対の人もいます。母親か子供の命が関係している時だけ用いるべきだと彼らは主張します。
ホルモンは他の病気や障害の医療にも利用されます。たとえば尿崩症にかかると,腎臓は多量の水分を排出します。そのために患者は激しい渇きをおぼえますが,この状態の治療にはしばしばホルモンが使われます,粒液浮腫と軽い甲状腺腫は甲状腺ホルモンの欠乏が原因で生じます。それでこれには,豚の甲状腺から採ったホルモンが使われるかもしれません。もちろん,これらや他のホルモンの効力を考慮して,その使用の際に,有能な医師の綿密な監督の必要が認められています。
以上のことから,患者の体内の自然のホルモンの欠乏を補うためのホルモンの投与がしだいにふえていることがわかります。また,特殊の病気に対抗する手段として,あるいはからだに特定の効果を生み出すために,医師たちがホルモン療法を利用することもしだいに多くなっています。しかしホルモンは非常に強力であり,その強力な影響はまた多方面に及ぶので,それに代わる治療が可能かどうかもよく考えずに,安易な気持ちで用いるべきではありません。とくにクリスチャンは,場合によっては関係してくる道徳的な面に注意を払わねばなりません。薬剤としてのホルモンにそのように用心するなら,その使用に対してもバランスの取れた見方をすることができるでしょう。
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許しを請い求める目ざめよ! 1974 | 4月8日
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許しを請い求める
アメリカ,ミシガン州のカラマスー市にあるエホバの証人の王国会館に来て講演をしていた一奉仕者は,講演中に行なわれたある注解に非常に驚かされました。その講演者はいつものように,聴衆からの答えを求める幾つかの質問をしました。
ひとりの男の人が手を上げました。講演者は,その人が王国会館の集会に初めて出席した人だということを知らずに,その人を指名しました。その男の人は提出された質問に直接答える代わりに,立ち上がって,長年エホバの証人に対してひどい態度を取ってきたことを謝りたい,と言いました。そして神が許してくださることを望んでいると言いました。なぜそのようなことを言ったのでしょうか。
注解をしたその男の人はドイツで生まれてそこで育ち,1920年代の終わりにはナチ党に入党しました。後に彼はカナダに移りましたが,ドイツ人は卓越した民族であるといった,政治や人種上の問題に関する自分の確信をあからさまに述べたため,第二次世界大戦中は投獄されていました。戦後,その人は釈放され,最後にアメリカに定住しました。彼は政治および人種問題に関するナチ的な国粋思想を捨ててはいませんでしたが,外面的には極端に愛国的なアメリカ人になりました。
時々エホバの証人が彼の家に立ち寄ると,彼は証人たちを口ぎたなくののしったり,家から追い出したりし,国旗に対して愛国的な行為を行なわない者にはだれでも侮べつ的な態度を示しました。そのような状態が約15年間も続きました。
1970年の春に,ふたりの年若い証人が彼の家を訪問しました。しかし,後に彼自身が述べたところによると,そのふたりの若い女性をきびしく扱う気持ちにはなりませんでした。会話は人間の魂の問題にふれました。バプテスト教会の影響を受けていた彼は,人間には不滅の魂があることを堅く信じていました。しかしそれらの証人たちは,聖書から人間が魂であることを示しました。
彼はその証人たちが置いて行った聖書研究の手引書を注意深く読み,ほどなくして,定期的に聖書を教えてほしいとエホバの証人に頼みました。そして翌月,王国会館に姿を現わしました。
講演をしていた奉仕者は,エホバは真の崇拝に反対していた人を許すことがおできになるし,事実許されるということを話し,その人を安心させました。今では,その男の人はエホバの証人の奉仕者になっており,惜しみなく許しを与える神エホバに関する真理を他の人びとに伝えています。
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