『われこゝにあり 我をつかはしたまへ』
エホバの証人が困難な状況下で働く12の国々の報告(4)
― エホバの証人の1967年度年鑑から
ソビエト社会主義共和国連邦
国中の兄弟は,音信に耳を傾ける人をさがすためあらゆる手段を用いています。兄弟は家から家に伝道することができず,また奉仕に用いる文書も持っていません。しかし,売り物の土地をさがしているように見せかけて,持ち主でそれを持っている人すなわち隣人にたずねて見ることができるかもしれません。やがて会話は御国の主題にかわるでしょう。あるいは,聖書を持っている人を見つけ,それをゆずってもらえるかどうか尋ねることもあります。「古い本」になぜそんなに興味を持つのか人々は時に不思議に思うでしょう。この時こそ聖書の真の価値について説明できます。そして別かれぎわに,彼らの聖書を手に入れることはできなくても,彼らは自分で聖書を読み真理を学び始めるでしょう。あるいは葬式の行なわれる墓地に行けるでしょう。人はなぜ死ぬのか,復活はあるだろうか,全然死ぬ必要のない人がいるのだろうかなどについて幾つかの質問もできます。このようにして,神の御国の福音について間もなく活発な会話ができるでしょう。
こんな方法で一兄弟は墓地の入口をちょうど通り過ぎるとき,ウクライナ人が友人に語る次のような言葉を耳にしました。「これはすべての人が通らなければならない門です」。兄弟はこの時とばかり答えました。「今生きている人の中でこの門を通らなくてもよい人がいるのをお聞きになったことがありますか」。その結果興味ある会話が始まり,この見知らぬ人々は音信を聞くことができました。
少し前,共産主義の一青年指導者は若い人を宗教から無神論に転向させる仕事を命ぜられました。彼は若い姉妹を無神論者にならせようと説得に努めました。彼女の考えにもっと巧みに反論するため,彼は自分で真理をしらべ始めました。彼は学んでいるうちに,物の考え方が変わりはじめました。彼はこの姉妹に対しても少し関心が起こって来たのです。この時,姉妹は福音を伝道したかどで逮捕され,3年の刑で投獄されました。青年の指導者はこの事に感銘しました。彼は姉妹との結婚の意志を表明し,彼女が釈放されるまで待つ約束をしたのです。こうして彼は真理にはいりました。
アラブ連合共和国
真理を学んでいるということで,奥さんをひどく叩き,彼女を家から追い出した不信者で反対者の主人は,こんなことをしたにもかかわらず,奥さんと和解を決意しました。彼女がそれを拒否すると,彼は奥さんや彼の知っている全部のエホバの証人に復襲しようとしたのです。彼は警察へ行き,自分の妻がシオン主義者であり,たくさんの男の人と出かける不道徳の女性であってみだらな行ないをしていると訴えました。また彼は自分の知っている多くの兄弟姉妹の住所氏名を知らせ,彼らが非合法のユダヤ人の集会を開いていると言いました。彼が不平を述べた警官はこのことを聞いて当惑しました。というのはこの警官の妻もエホバの証人と学んでおり,彼の妻が親類の者に偶然の伝道をしたことから,エホバの証人に対する同じような訴えを彼はすでに聞いていたのです。それで彼はエホバの証人の活動を細かに監視させるため連続9週間,問題の全部の住所に秘密警官を派遣しました。彼は自分の妻の行動を監視するようにも任命しました。このようにして彼は妻が会衆の集会に出席していることや彼には告げずに伝道していることがわかりました。このような詳しい調査の結果,エホバの証人が平和で道徳的な人々であって神の言葉の研究と伝道だけに関心があることを彼は納得しました。調査が終わってから彼は,エホバの証人は良い人たちだから研究を続けるようにと妻を励ましました。また彼は反対していた主人に,あなたが言うようなことをエホバの証人は何もしていないので彼らを処罰することはできないと述べました。それで反対している主人は,この警官がエホバの証人や彼の妻に何もしなかったということがわかると,警察署長のもとへ行きました。署長は最初の警官に調査の再開を命じました。従順なこの警官は反対している主人を警察の車にのせてすべての住所を一緒にまわりました。それから警官は反対する主人のいつわりについて署長に納得させました。署長はエホバの証人の清い崇拝を公に続けさせたのです。
一人の巡回のしもべは次のような報告を寄せました。「私が大きな一会衆を訪問したとき,正教会,カトリックまたプロテスタント教会が私たちのわざに反対するための組織を作ったということを兄弟たちから聞かされました。指導者を知っているかどうかを兄弟たちにたずねると,彼らは知っていたので,この場合最善の防御は攻撃にありという原則を適用し会衆の別々の兄弟をともなって,指導者を一人ずつ訪問することにきめました。この活動から二,三のきわだった結果が得られたのです。
「最初私たちが訪問したのは薬剤師でしたが,私たちの訪問に彼は非常に驚きました。彼は私たちの見解について聞くと自分は両方の側の主張を知らないこと,また『神に清い奉仕』を捧げる考えでエホバの証人に反対するこの組織に加わったことを率直に認めました。彼はエホバの証人に対する牧師たちの無礼で激しい攻撃にあまり好感を持っていませんでした。二度目の訪問で「神を真とすべし」の本を使って聖書研究が始まりました。彼は今よく進歩しています。
「この組織の指導者の二番目の人は,はからずもかじ屋でした。御国の音信を聞いてのち,私たちが教会の成員であると思っていた彼はたくましい腕を見せながら次のように言いました。『エホバの証人の一人に会ってたたきのめしてやろうと待ちかまえていました!』 それで兄弟(巡回のしもべ)は一人ではなくて二人のエホバの証人が今,あなたの目の前にいますと述べました。この言葉を聞いた彼は恥じいり,聖書についてもっと聞かせてほしいので家にはいるようにすすめました。聞いたことに大いに感激した彼は,少したってから次のように述べました。『あなた方がとてもきらわれ迫害されているのをご存じですか』『はい』と私たちは答えました。彼はまた『恐ろしくないのですか』とたずねました。私たちのわざは神のものであり,私たちは天使に保護されていると答えました。たった一人の御使いが,一夜の中に18万5000人のアッシリア人を打ち滅ぼしたことを考えるならば,神がどれほど私たちを守られるかがわかります! この話し合いの終わりに彼は次のように言葉を加えました。『あなた方は迫害されるような人たちではない,むしろあなた方のことを悪く言う人の方が迫害されるべきだ』。ここで私たちはやさしく彼の言葉をさえぎり,報復はエホバにあることを話しました。このようにしてもう一人の強烈な反対者と二番目の研究が始まりました。