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あなたが家主でこんな借家人がいたら……目ざめよ! 1982 | 2月22日
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あなたが家主でこんな借家人がいたら……
海を見下ろすがけの上に美しい家を建てたとしましょう。その家は森に囲まれ,なだらかに起伏する8万平方㍍ほどの敷地にあります。家の内部には名匠の手になる,一点の非の打ちどころもない装飾が施されています。外に目をやると,家の近くには手入れの行き届いた花壇がまばゆいばかりの色に輝いており,家自体の窓台に付いている植木箱もやはり美しく輝いています。果樹園と菜園からは十分な食物が得られます。
この耕された区画の先には,草原を取り囲むように木々がそびえ,その草原をぬって小川がさらさらと流れています。日を浴びた森の間の空き地に色を添える野の花が,海からの風にそよぎます。どこを見ても目を楽しませるものばかりです。深く息を吸い込めば花のかおりの漂う海の空気が鼻に快く,あたりに響き渡る鳥のさえずりが木の葉をかさかさと揺らす風の音と相まって耳を楽しませてくれます。そして,はるか下の方にある海岸に,海の波が打ち寄せるかすかな音も遠くの方から聞こえてきます。
あなたは自分の働きの結果を目にし,満足感,物事を成し遂げたという満ち足りた気持ちを味わいます。ほかの人にもその喜びを味わってほしいと思います。そこで,ある大きな家族を呼んで,そこを敷地ごとゆだね,管理の仕方を指示したうえで,あなたはその地を離れます。
後日,帰ってみて,衝撃を受けます。海は黄色を帯びた茶色に変わり,海岸には廃油塊やごみが散らばり,木は切り倒され,草原は赤茶けた色になり,小川はかろうじて流れている程度で,しかも汚染されています。至る所にごみが散乱しています。鳥はいなくなり,花は消えうせ,果樹は枯死し,菜園のあった所はコンクリートで覆われています。
家のペンキははがれ,家の中に入ると,床は汚れ,壁には染みが全面に付き,家具には傷が付いています。台所には食べ残した食物が散乱し,流しには汚れた皿が詰まっています。幾つかの部屋からは騒々しい音楽が聞こえてきます。ほかの部屋からは悪態をつく声が聞こえ,はなはだしい性の不道徳や倒錯が行なわれている部屋もあります。管理をまかされた家族は非常に大きくなり,家族同士のけんかや争いが絶えず,互いに殺し合うことさえしています。
あなたの家とその敷地が損なわれているのを見,その住民の道徳的な腐敗を目にする時,どんなことが脳裏をよぎりますか。それはあなたの手の業です。家主はあなたです。これらの人々はあなたの借家人なのです。この人たちのためにあなたがしてあげた事柄を,彼らが感謝していないことは明らかです。その資産を管理するようあなたの与えた指示をこの人たちは無視しました。あなたはその人たちをそこにとどまらせますか。どうすることにされますか。
同様に,『地とそれに満ちるものはエホバのもの』です。(詩 24:1,新)神はそれを創造されてから,「自分の造ったすべてのものをご覧になったが,見よ,それは非常によかった」と記されています。(創世 1:31,新)神は地球に人々を置き,それを,つまり植物や動物や環境を管理するようお告げになりました。では,6,000年後の今日,神はどんな事柄を目にされますか。ご自分のご覧になる事柄に対してどのように感じておられるでしょうか。神はどんなことをされますか。
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地球の住人たちがしてきた事柄目ざめよ! 1982 | 2月22日
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地球の住人たちがしてきた事柄
「我々は地球を探険し,それを掘り起こし,それを燃やし,そこから物をはぎ取り,その中に物を埋め,その森林を伐採し,その丘を崩して平らにし,その水を泥で汚し,その空気を汚染してきた。これは私の考える良い借家人の定義にはあてはまらない。我々がもし一月ごとの契約でここにいるとすれば,とうの昔に立ち退かされていたであろう」― カリフォルニア州最高裁判所長官,ローズ・バードの談話。
最近の記事の見出しはその証拠を積み上げる
放射性廃棄物のはんらん
「不気味な質問がある。それは,いよいよはんらんしつつある放射性廃棄物をどのように処分したらよいか,という質問である。……埋められた廃棄物は幾千年もの間放射能を出し」,中にはそれが「25万年に及ぶ」ものもある。
有毒な廃棄物はアメリカ人の健康を害している
「将来アメリカにさらに多くの“ラブ運河”が現われるのではないかという懸念は,公衆衛生を脅かす化学物質によって一層深刻化している」。
ソ連の環境保護: つめを失ったクマ
「ソ連の居住可能地域のほぼ1割は,環境汚染のためにすでに荒廃している」。
マドリードを包み込む汚染
「わずか1週間のうちに,呼吸器系あるいは心臓血管系の病気を持つ人700人が息の詰まるようなスモッグの影響で死亡したと考えられている」。
地中海に広がる汚染
「地中海は,実のところ,ふたのない広大な下水と化しつつあると言っても過言ではない」。
[ブラジルでの] 森林の伐採と災害
「かつて生い茂っていた多くの植物はなくなり,たくさんいた鳥もいなくなり,そこに住む人間は皮膚ガンのために醜い姿をしている」。
無数の人々を脅かす砂漠の拡張
「誤った土地の用い方が原因で,アフリカ,アジア,オーストラリア,および南北両アメリカの各地で砂漠が徐々に広がっている」。
ノルウェーの殺人 [酸性] 雨
「その酸は,西はベルファストから東はモスクワまで,ヨーロッパ全土に由来する」。
有毒な煙に音を上げるメキシコシティー
「メキシコの大気汚染に関する最近の一報告によると,その汚染は『毎年死亡する15万人の子供の間接的な死因』になっており,『毎年17万5,000人の大人に容易ならぬ影響を及ぼしている』」。
五大湖でダイオキシンが発見される
「カナダおよび米国における一連の報道により,五大湖地域が西欧世界で最も汚染のひどい地域であることが確証されつつある」。
グアテマラにおける殺虫剤の乱用は死亡事故を引き起こす
90日間におよぶ綿花の生長期に,「1日あたり30ないし40人が殺虫剤中毒のために治療を受けた」。
カラチは水質汚染の危機に直面する
「パキスタン最大の都市で,主な港でもあるカラチの飲料水は,未処理の下水と産業廃棄物によりひどく汚染されている」。
鉛汚染の危険に関するさらに多くの証拠
「鉛は子供の脳に対する潜行性の害を及ぼす原因となる」。
殺虫剤のきかない害虫
「かつては殺虫剤で殺されていた虫が耐性を培い,驚くべきペースで繁殖することが可能になっている」。
精子は環境によって特に傷付けられやすいことが分かる
「流産,先天性疾患,不妊などは毒物による害と結び付けられている」。
化石燃料の使用は世界の天候に対する脅威とされる
「今後200年間の炭酸ガスの蓄積は,地球の天候の劇的な変化につながりかねない。……北極の浮氷群は解けてしまうであろう」。
沖合の油の流出が著しく浄化されたことはない
「海の生物……は油の炭化水素をその組織の中に蓄積している。これらの魚や貝は公衆衛生に危険をもたらしている。それらの炭化水素のあるものは発ガン物質だからである」。
騒音にさらされると,健康に有害であることが明らかになる
「聴力を失うことだけではなく,高血圧,神経障害,学習上の問題,不眠症,未熟児,さらにはある種の心臓病までが関係している」。
計り知れない脅威となる海洋汚染
「しかし,ほとんどの人は注意を払わない。全滅するまで,『平常通り営業』」。
資源に関して全地球的な処置を取るよう迫る報告
「飢え,過密化し,汚染された,資源の乏しい世界になってしまう前に,国際的な処置を取るために残されている時間は少なくなっている」。
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地球の住人は事態を一層悪化させる目ざめよ! 1982 | 2月22日
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地球の住人は事態を一層悪化させる
人間の解決策は思いがけない害を及ぼしただけでなく,災いを引き起こす連鎖反応に火を付け,結果として幾百幾千万もの犠牲者が出ました
レーチェル・カーソンの著した,「生と死の妙薬」という非常に感動的な本は,環境問題に対する世界的な関心に転機を画するものとなりました。殺虫剤の危険について世界を初めて目覚めさせたのはこの本でした。しかし,世の人々は概してその警告に耳を貸さず,事態は悪化の一途をたどっています。
害虫は作物を食い荒らします。その害虫を殺すために,農場経営者は殺虫剤を散布します。無数の害虫が死にますが,自然の免疫を持つものが数匹おり,それらは生き残ります。生き残ったものはこの免疫を子孫に伝え,やがて殺虫剤に強い種類の害虫が作物を食い荒らすようになります。その解決策は思わぬ害を引き起こしました。事態は一層悪化してしまったのです。
しかし,それは思わぬ害を引き起こしただけのことではありませんでした。それは一連の連鎖反応を誘発し,新たな災いと新たな犠牲者を生みました。殺虫剤は害虫を食べる益虫をも殺し,雨に流されたその毒物が地面に浸透して土壌の中のバクテリアを損ない,毒物は水に運ばれて湖や海洋に流れ込んで微生物やプランクトンを害し,魚を汚染します。その魚を食べる鳥は卵をかえせなくなります。人はその魚と殺虫剤を一緒に口に入れます。別の食物連鎖を通して毒物が人の体内に入ることもあります。殺虫剤が草に付き,牛がその草を食べ,毒物がその牛乳や肉に入り,人々がそれを飲んだり食べたりするのです。
殺虫剤は汚染の問題のほんの一部分にすぎません。新聞の見出しだけを見ても,汚染が世界的な規模のものであることが明らかになります。すでに広く伝えられている事柄をここで蒸し返そうとしているわけではありません。しかし一部の人々の間では,前途に横たわる大きな危機に対する意識が深まっています。そうした危機には,表土の消失,動植物の幾つかの種の消失,他の人々に対する配慮が見られなくなったことなどがあります。これらの点を簡単に考えてみてください。
表土は世界中で失われていますが,“世界の飢えた大群衆のための穀倉”と呼ばれてきた米国に,その被害が集中しています。毎年,120万㌶の農地が舗装されたり,宅地や工業用地を造成するために用いられたりしています。また,年間160万㌶が侵食によって失われています。イリノイ州では毎年1億8,100万㌧の表土が失われています。トウモロコシが1ブッシェル(約27㌔)生産されるごとに土が2ブッシェル失われるのです。1世紀前には,アイオワ州には平均40㌢の表土がありましたが,今ではそれが20㌢になろうとしています。毎秒15㌧の表土がミシシッピー川の河口から流れ出ています。農場経営者たちは,「アイオワ州の一番良質の表土はメキシコ湾にある」と言っています。
そのうえ,残っている表土も害を受けています。正常な土壌には生命が満ちています。藻類,ミミズなどの虫,昆虫,バクテリア,菌類,カビ,酵母菌,原生動物およびその他の微生物がいます。有機物を腐らせて,腐植にするのは,一説には温帯の土壌小さじ1杯分の中に50億もいるとも言われる微生物のこの膨大な集まりなのです。腐植は極めて重大な働きをします。それは植物の栄養になり,侵食を防ぎます。
一権威者は,「1970年代の初めに集約農業が[始まる]とともに,土壌の消失は22%増加した」と語っています。市販の肥料は腐植に代わるものとはなりません。硫安が用いられると,硫酸塩が硫酸になり,腐植をつくり出す土壌の微生物を殺します。殺虫剤も土壌の中の生物を殺します。土壌の微生物の自然の住みかは土の表面から約7.5㌢までの部分ですが,土を深くまで掘り起こすと,土壌の微生物をそれよりもずっと深い所に葬ってしまいます。また,ほぐされた土は風や水で侵食されやすくなります。硝酸肥料は植物によって使い尽くされるのではなく,その半分までが水源にこし出され,湖に到達します。そしてそこで藻類を異常増殖させ,その藻類が死んで腐ると水の中の酸素がなくなり,魚が死にます。このようにして死の湖がつくり出されるのです。
土壌の乱用の引き起こす様々な結果は広範囲に及びます。しかし,それよりもさらに広範囲に及ぶのは,動植物の遺伝素材の喪失です。
過去20年間に開発された高収量の農作物の人工変種は,幾千年も前から野に育ってきた在来種に由来します。野生の植物は病気や害虫に対して自然の抵抗力を持っていましたが,人間が新たに交配した植物は,損なわれた土壌で集約農業によって栽培されるため,除草剤や殺虫剤によって保護されねばなりません。多くの場合,元来新しい交配種を作り出すために用いられた野生の変種そのものは絶滅し,それとともに地球上で最も貴重な物質とも言えるその生殖質も失われました。野生の植物のこの遺伝素材の蓄えがなくなれば,人間は殺虫剤に強い害虫や植物の病気,天候,人口の増加などがもたらす新たな挑戦に首尾よく対処する,新たな交配種を開発するための原材料を失うことになります。
人間の取る栄養の95%以上は,30種の植物と7種類の動物からきています。特に,害虫や病害や天候の変化などに対する抵抗力を弱める集約農業や同系交配のことを考えると,このようにわずかな種類の食物に頼ることには危険が伴います。野生の種の価値を示す例はカラシです。カラシから,ブロッコリ,芽キャベツ,コールラビ,ケール,キャベツ,そしてカリフラワーが作り出されました。また,トウモロコシに近縁の野生の多年生植物から,多年生の,すなわち種から毎年育てる必要のない,高収量のトウモロコシの一種が開発される望みがあります。
ある植物あるいは動物の種が一度絶滅してしまうと,その遺伝子の蓄えは永久に失われてしまいます。しかも,正にそのことが世界中で起きているのです。過去三,四世紀の間に,200種以上の動物が絶滅しました。現在,存続があやぶまれている種は800以上あります。動植物に共通する最大の脅威は,生息地や自生地が失われていることです。
毎年1,000万㌶以上の熱帯の森林が失われています。世界の温帯には150万種の生物がいますが,熱帯の森林には300万種がいます。それらは新薬や新しい食糧源の開発に大いに役立ち得るものです。しかし,森林が消えてゆくにつれ,そうした生物の遺伝子の蓄えも失われてゆきます。フィリピンに生えていた目立たない植物がガンを治す薬にならないとも,アマゾンにある未知の菌類が心臓病の予防に役立たないとも限らないのです。核戦争を別にすれば,これは人類がつくり上げている最悪の危機と言えるかもしれません。
それだけではありません。熱帯の森林が伐採されると,雨が土壌を侵食します。その土壌も元々肥よくではなく,数年後にはそこで作物を作ることも家畜を育てることもできなくなってしまいます。すると,農場経営者や牧場主はほかの土地へ移って行って,破壊のサイクルを繰り返すのです。アマゾンの密林であったところがアマゾン砂漠に変わってしまうことが予想されています。まだあるのです。森林が焼かれると,大気中に大量の炭酸ガスが放出されます。これは工業によってすでに大気中に排出された膨大な量の炭酸ガスをさらに増し加えるものとなります。1700年代の後半に起きた産業革命の開始以来,空気中の炭酸ガスは15ないし25%増加しました。増大するこの炭酸ガスの覆いは,天候を変え,食糧生産を危うくし,人間の生存を脅かしかねません。
一昨年,環境学者のノーマン・マイヤーズは世界的な規模の会議の席上でこう語りました。「地球上に存在する500万の種のうち,今世紀末までに少なくとも100万種が失われる結果になるということは十分に考えられる。すでに1日当たり一つの種が失われており,1980年代の末には1時間に一つの種が失われているかもしれない。……種と熱帯の森林の問題は,20世紀後半の予想外に大きな問題である。人類にとってこれら二つの問題以上に潜在的な重要性を持ちながら,一般大衆とその政治指導者たちからあまり認識されていない問題はほかに思い当たらない」。
世界の政治家たちがこの点を認めているかどうかは別にして,政治家たちがこうした問題よりも優先させているものがほかにあります。伝えられるところによると,レーガン大統領は環境規制を米国の産業界の首に掛けられたかせと呼びました。同大統領の全般的なねらいは,規制を緩和し,取締りの手をゆるめ,基準を下げ,罰則を軽くすることです。内務長官のジェームズ・ワットは,植物,動物,大気,水,土壌そして人間を守るための環境保護を放棄することに着手しました。他の国々も優先順位を入れ替えて,環境よりも経済を先にしています。
それでも,国際連合環境計画は,その「世界環境状況[年次]報告」の中で,先進国における汚染による損害が環境保護に必要とされた費用を上回っていると述べています。その報告はまた,一つの傾向に焦点を当てています。それは汚染を出す産業が先進国から発展途上国へ移転する傾向です。その報告は,日本がそうしている,と述べています。また,環境に害を及ぼす恐れのある米国の産業が,メキシコ,ブラジルおよび他の発展途上国に移転しています。
これは人間の福祉に対する冷淡なまでの無関心さを反映していないでしょうか。他の人々に対する配慮の欠如ではありませんか。隣人愛は失われ,金銭に対する愛だけがあるのではありませんか。人間よりももうけを優先する実例ではありませんか。他の人々に対するこうした配慮が欠如している事例はブラジルのクバタン市に見られます。外国の企業が同市をあまりにも汚染したために,市内を流れる四つの川には生物が住まなくなっています。河口近くの海からとれた魚は摂取した水銀の影響で目がつぶれていたり体が変形したりしています。鳥やチョウや昆虫は一切いません。雨が降れば,酸性雨です。死産になる赤ちゃんや奇形が多く,生後1週間以内に死んでしまう子供も少なくありません。このような,目にあまる公害は先進国では容認されることがないため,クバタン市にある鉄鋼会社の専務取締役は,極めて冷淡に,「鋳鉄工場は第3世界の国々で操業する方がふさわしい」と言い放ちました。
わたしたちは古い価値基準に戻らなければなりません。唯一の実際的な道は隣人愛を実践することです。環境に配慮を払うのはわたしたちが生き残るための道なのです。被害が出てから危険が明らかになるということが多すぎます。しかも,危険が明らかになったあとでさえ,害が引き続きもたらされるのです。生命のあやはきっちりと織りなされています。ほんの一部分でも危険にさらせば,多くのものを危険にさらすことになります。最初は数匹のチョウかもしれませんが,その危険は次に人間に及ぶのです。やがてはすべての生物が巻き込まれることになります。
ローマン・ゲーリーはこう尋ねています。「どんな人間も孤島のようなものではないと言い続けることが本当に必要なのだろうか。どれだけ警告を受けたら気がすむのだろうか。どれだけ証拠や統計を並べられ,どれだけの人が死に,どれほどの美が失われ,あの悲しい動物園にどれほど“絶滅寸前の種”を送り込めば気がすむのか。……問題は心がそれにこたえ応じるかどうかである。……博物館に芸術品を詰め込み,美のために金を湯水のように使いながら,生きたこのすばらしい環境すべての中にある美が理不尽な仕方で破壊されるがままにするのは不条理なことである」―「絶滅に向かいつつある種」という本の序文より。
しかし,最も重要な問題は,地球の所有者がご自分の地球の汚染についてどんな措置を取られるかということです。
[6ページの拡大文]
「アイオワ州の一番良質の表土はメキシコ湾にある」
[8ページの拡大文]
「どれだけの人が死に,どれほどの美が失われ,あの悲しい動物園にどれほど“絶滅寸前の種”を送り込めば気がすむのか」
[9ページの拡大文]
毎年1,000万㌶以上の熱帯の森林が失われています
[7ページの図版]
カラシから次の作物が作り出された
ブロッコリ
芽キャベツ
コールラビ
ケール
キャベツ
カリフラワー
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地球の所有者の取る措置目ざめよ! 1982 | 2月22日
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地球の所有者の取る措置
自分を地球の所有者の立場に置いて,自分だったらどうするだろうか,と自問してみてください
この号の冒頭の記事の中に,美しい家を借家人に貸し与えたのに,その人たちがその家を荒らしてしまったという話がありました。あなたはそのような者たちを立ち退かせるに違いありません。その後の二つの記事は,人間が地球に臨ませた荒廃のほんの数例を挙げています。ある家族があなたの家を破壊するのと,人類が地球を破滅させるのと,どちらが悪質でしょうか。あなたが自分の家を破壊する借家人をそのままそこに住まわせることがないのであれば,ご自分の地球を破滅させる人々を神がそこにとどめておかれない理由を理解できるのではありませんか。
エホバは正にそのこと,つまりいつまでも地が破滅させられるままにしてはおかないということを述べておられます。そのうえ,神はそうした行為を終わらせる時を定めておられます。その時は,「終わりの日」として知られています。戦争・ききん・地震・疫病・道徳の崩壊・青少年非行・犯罪の急増・神や敬神の行為に時間を割こうとしない,自分が第一の快楽指向社会 ― これらは現在のこの体制の「終わりの日」を特色付けるものとして予告されていたことです。このすべての及ぼす全般的な影響は正に預言されていた通りになっており,わたしたちは現在それを見ています。すなわち,「逃げ道を知らない諸国民の苦もん」があり,どんな所に住む人々も「人の住む地に臨もうとする事がらへの恐れと予想から気を失います」。―テモテ第二 3:1-5。マタイ 24:3-14。ルカ 21:25-27。
このことを嘲笑する人がいるでしょうか。そうした者たちの存在も,この時代について予告されていました。「あなたがたはまずこのことを知っている(の)です。つまり,終わりの日にはあざける者たちがあざけりをいだいてやって来るからです。その者たちは自分の欲望のままに進み,『この約束された彼の臨在はどうなっているのか。わたしたちの父祖が死の眠りについた日からも,すべてのものは創造の初め以来と全く同じ状態を保っているではないか』と言うでしょう」。(ペテロ第二 3:3,4)予告されていた通り嘲笑する者たちが存在し,そうした者たちはききとして,こうした事柄すべては以前にも起きたことがある,と言います。
しかし,そうではありません。現在全地球的な規模で存在しているほどにそうした事柄が存在したためしはなく,かつては存在しなかった事柄が新たに存在するようになっています。ニューヨーク・タイムズ紙の元編集長,ジョン・オークスは,この新たに加えられたものを明らかにして次のように述べています。「環境危機……は質の点でも,程度の点でも,人類史上かつて存在したいかなるものとも異なっている」。エホバ神は増し加えられたこの点をも,「終わりの日」のもう一つの証拠としておられます。キリストの即位と国際的な動乱に言及したのち,聖書の啓示の書は,「地を破滅させている者たちを破滅に至らせる」時が到来した,と述べています。(啓示 11:18)人間はその貪欲さと金銭への愛から,以前にも喜んで地球を破滅させていたかもしれませんが,そうするだけの力を持ち合わせませんでした。ところが今,人間は科学技術のおかげで地球を破滅させる力を持つようになり,人間は地を貪欲な仕方で開発しながら正にそのことを行なっているのです。そして,この預言がさらに示すように,破壊をもたらす人々の進路を阻むのはエホバです。
エホバ神は一時の気まぐれから地球を創造されたのではありません。それが荒れ地と化するのを手をこまねいて見るために地球を造られたのではありません。神は目的を持って行動されました。「神[は],地を形造り,それを造り,……それをいたずらに創造せず,[むしろ]人が住むために形造った方」なのです。そして地球は,人の住む美しいパラダイスの状態のもとでいつまでも存在することになっていました。―イザヤ 45:18,新。詩 104:5。伝道 1:4。
地上の最初の人間はエデンの園に置かれ,『それを耕し,またその世話をする』よう告げられました。植物は,人間だけでなく,すべての生物の食物となるはずでした。目を楽しませることを目的とした植物もありました。神は実に見事に野のユリを着飾らせたではありませんか。地は世話を受けることになっていました。後日,神は7年目ごとに「その地のために全き休みの安息」を設けるようお命じになりました。―創世 1:30; 2:15-17,新。マタイ 6:28-30。レビ 25:3-7,新。
人間は命じられた通りに地球を世話してきたでしょうか。
動物に対して配慮が示されることになっていました。神は動物のことを気遣う人を義なる者と呼び,残酷な者には邪悪な者というらく印を押しておられます。モーセを通して与えられた神の律法には,種の保存を図る規定がありました。母鳥は逃してやらなければなりませんでした。牛とロバを同じかせに付けて耕してはならないことになっていました。体の小さい,力のない方の動物にとって不公平なことになるからです。穀物を踏んで脱穀している牛にくつこを掛けてはなりませんでした。牛には働きながら食べる権利があったのです。律法のもとでは,家畜は安息日にその主人と共に休むことになっていました。また,人はたとえ安息日であっても,苦しんでいる動物を助けるためには働かなければなりませんでした。―マタイ 10:29。箴 12:10。申命 22:6,7,10; 25:4。出エジプト 23:12,5。ルカ 14:5。
こうした原則は今日実践されているでしょうか。
神は人々が互いに対してどのように振る舞うべきかについて指示をお与えになりました。イエスはその点を次のように言い表わしておられます。「それゆえ,自分にして欲しいと思うことはみな,同じように人にもしなければなりません」。「あなたは隣人を自分自身のように愛さねばならない」。そしてわたしたちが美しい持ち家に住む借家人から感謝を示して欲しいと望むのであれば,わたしたちも地球の所有者であられるエホバ神に感謝の念を示すべきです。「あなたは,心をこめ……あなたの神エホバを愛さねばならない」とイエスは言われました。(マタイ 7:12; 22:37-39)興味深いことですが,そうするためには隣人を愛さなければなりません。「自分がすでに見ている兄弟を愛さないものは,見たことのない神を愛することはできないからです」― ヨハネ第一 4:20。
現在のように地球の大気や水や土壌を汚染している人間は,この種の愛に導かれているでしょうか。人間が今日,動物や植物や人間に対して,冷淡で無関心な,また残酷とも言える仕方で行なっている破壊行為にこの種の愛が見られますか。また特に,害を受けやすい第三世界の発展途上国に事業を移転させる企業経営者の側にこの種の愛が見られるでしょうか。第三世界の国々では,はなはだしい汚染を出し,障害者や死者を出し放題でも,その土地とそこに住む,身を守るすべのない人々から略奪することを阻むやっかいな環境規制がないのです。
最後に,地を破滅させる別の種類の汚染があります。それは道徳上の汚染です。これはまた,地球の借家人たちを追い出すことを求めるものでもあります。神がイスラエル人に約束のカナンの地を占拠するよう命じた時,無神経に一つの民を移動させて別の民が住めるようにされたわけではありません。カナン人はそのはなはだしい不道徳と宗教的な流血行為のゆえにその地を汚し,そのためにそこから追い出されていたのです。それら憎むべき犯罪の幾つかを挙げた後,神はイスラエル人にこう警告されました。「これらの事のいずれによってもあなた方の身を汚してはいけない。わたしがあなた方の前から去らせる諸国民はこれらのすべての事によってその身を汚したのである。そのためにその地は汚れており,わたしはそのとがのゆえにそれに処罰を加え,その地もそこに住む民を吐き出すのである」― レビ 18:24,25,新。
しかし,イスラエルはそれらの諸国民と同じことを行ないました。偶像に仕え,無実の者の血を流し,見下げ果てた不道徳をならわしにし,ついには再び「その地は流血で汚されることになりました」。そして,エホバは偏り見ない方なので,イスラエルは以前にそこに住んでいたカナン人と全く同様,その地から吐き出されました。預言者はこう語っています。「見よ,エホバはその地を空にし,荒れ果てた所とされる。その面をねじ曲げ,その住民を散らされた。そして,土地そのものが住民の下で汚されたのだ。彼らが律法をうまく避け,定めを変え,永続する契約を破ったからである。それゆえに,のろいがその地を食い尽くした。そこに住む者たちは有罪とされる」。―詩 106:35-39; イザヤ 24:1,5,6,新。
借家人があなたの美しい持ち家の美観を損ない,中の部屋を売春宿に変えるなら,あなたはそうした者たちをそこにとどめておかないでしょう。同じように,エホバは地を汚染する,地球上の借家人たちを追い出されます。その後に地球は,その地に対する感謝の念を抱き,その世話をする人類すべてにとって美しいパラダイスの住みかになるのです。詩篇作者はこう歌っています。「ほんのもう少しすれば,邪悪な者はいなくなる。あなたは必ずその場所に注意を向けるが,彼はいない。しかし柔和な者たちは地を所有し,豊かな平和にまさに無上の喜びを見いだすであろう。義なる者たちは地を所有し,そこに永久に住むであろう」― 詩 37:10,11,29,新。
地はすべての生きる被造物のために造られたのです。すべての被造物はその創造者なる神エホバを賛美することになっています。『神を賛美せよ,天よ,地よ,海の生物よ,鳥よ,動物よ,そしてすべての人々よ』と詩篇 148篇は述べています。そして,聖書の詩篇の最後の篇の最後の節は,次のような輝かしいフィナーレを鳴り響かせています。「すべて息あるもの ― ヤハを賛美せよ。あなたがたはヤハを賛美せよ!」―詩 150:6,新。
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