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20世紀の人類に対する神のあわれみものみの塔 1976 | 6月15日
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20世紀の人類に対する神のあわれみ
「ホセアの書の中でも言っておられるとおりです。『わたしの民でなかった者を「わたしの民」と呼び,愛していなかった女を「わたしの愛する者」と呼ぶであろう。そして彼らは,「あなたがたはわたしの民ではない」と言われたその場所で,「生ける神の子ら」と呼ばれるであろう』」― ローマ 9:25,26。
1 今日でも,夫がどんなあわれみを示すなら,妻は喜びを感じますか。
わたしたちは皆,自分が生まれた時に,なんの力もない自分に両親があわれみをかけてくれたことをうれしく思っています。妻は,夫が女性特有の病気や感情的動揺,弱点などを考えて自分にあわれみを示してくれるとき,うれしく思います。そのような妻は,あわれみ深くあることを勧める,19世紀前に与えられた言葉が,今日でも依然として正しいことを理解できます。「夫たちよ,同じように,知識にしたがって妻とともに住み,弱い器である女性としてこれに誉れを配しなさい。あなたがたは,過分の恵みとしての命を妻とともに受け継ぐ者でもあるからです」― ペテロ第一 3:7。
2 今日神があわれみを示しておられるのをなぜある人々は喜ばないで,自分のほうがよほどあわれみ深いと考えたりしますか。
2 有名な山上の垂訓から取られた,「あわれみ深い人たちは幸いです。その人たちはあわれみを受けるからです」という言葉を自分の生活に当てはめることに努力している人たちがまだいます。(マタイ 5:7)人間の創造者はわたしたちわがままな人類にあわれみを示されますが,この点を創造者に見倣っているので彼らは幸いです。他の人々は,創造者の特質の中にあわれみという特質があることを疑っています。それを疑う人はますます増えています。彼らはこのように不平を言います。「神がいるのなら,なぜ地上のこの多くの悪と非常な苦しみとを許しておくのか。神が全能であるのなら,なぜわれわれにあわれみ深い配慮を示してそうしたものをすべて阻止し,生活を楽しませてくれないのか」。そういう不平家は,恐るべき説の侵略に身をさらすのです。つまり「神は死んでいる」,すなわち人類にあわれみ深い関心をそそぐ限りにおいて「死んでいる」という説です。そんな「死んだ」神よりも我々のほうが他人に対してよほどあわれみ深い,と彼らは結論するかもしれません。この20世紀に神があわれみを示している証拠を,彼らは見ないのです。
3 神が現在まで悪を許して来られたことは,どんな点でわたしたちに対するあわれみある目的のためでしたか。
3 しかしながら,神が悪や暮らしにくさを許しておられるのは,実際にはあわれみある目的のためかもしれないと考えたことがあるでしょうか。例えば,もし悪を許さないとすれば,神は同時にあわれみを示すこともできないのです。悪はわたしたちが生まれる何千年も前からこの地上に存在していないでしょうか。そうです! ですからもし全能の神がわたしたちの時代よりも前にその悪を終わらせておられたなら,わたしたちは今日ここに生きていたでしょうか。
4 わたしたちは自分が今日生きているのを,どの8人の人間に感謝しなければなりませんか。なぜですか。
4 信頼できる歴史的記録を調べてみると,天地の創造者は,43世紀余の昔,すなわち西暦前2370年に一度世界的な暴力と悪を終わらせておられます。創造者は世界的大洪水を起こされました。そしてわずか八人の人間だけが巨大な耐水性箱船でそれを無事に切り抜けました。その結果,ノアとその三人の息子の建造した箱船に入らなかった幾万もの家族は皆,今日まで続いたかもしれない家系をことごとくその世界的大洪水で断ち切ってしまったのです。わたしたちは自分が今日この20世紀に生きていることを,ノア,セム,ハム,ヤペテおよび彼らの忠実な妻たちに感謝しなければなりません。―創世 6:1から9:19。
5,6 (イ)神のあわれみの持続期間について今やどんな質問が生じますか。(ロ)パウロはローマ 9章21節から26節で,どんな平衡の取れた見方を示していますか。
5 では実際にわたしたちは自分が今日存在していることを,神のあわれみの証拠と考えることができるのではないでしょうか。そうです,多くの暴力行為や不法の増加がこの20世紀を特徴づけてはいても,それは「あわれみ」によるのです。神はその辛抱とあわれみを活用する者たちだけのために,この世界的な規模の悪をがまんされていますが,今や大きな問題は,神がさらにどれほど長くがまんされるか,ということです。聖書が示すすべての徴候によると,あまり長くはありません。ですからわたしたちは,神が地上の悪を許されていることについてぐちをこぼさないようにしましょう。むしろ神のあわれみを無にしないようにしましょう。そうするなら神は,人類の間にはびこっている悪を近いうちに終わらせる時,わたしたちの生存をも終わらせるようなことをされないでしょう。神はあわれみをもって,この地上に立てられる義と平和の新秩序にわたしたちを導き入れてくださるでしょう。ですから,クリスチャン使徒パウロと同じように平衡の取れた見方をしましょう。彼は次のように書いています。
6 「どうでしょう。陶器師は,粘土に対して,同じ固まりから一つの器を誉れある用途のために,別のものを誉れのない用途のために作る権限がないでしょうか。そこで,もし神が,ご自分の憤りを表明し,かつご自分の力を知らせようとの意志を持ちながらも,滅びのために整えられた憤りの器を,多大の辛抱強さをもって忍び,それによってあわれみの器に対するご自分の栄光の富を知らせようとされたのであれば,どうなのでしょうか。そのあわれみの器とは神が栄光のためにあらかじめ備えられたもの,すなわちわたしたちであり,ユダヤ人だけでなく,[異邦の]諸国民の中からも召されているのです。ホセアの書の中でも言っておられるとおりです。『わたしの民ではなかった者を「わたしの民」と呼び,愛していなかった女を「わたしの愛する者」と呼ぶであろう。そして彼らは,「あなたがたはわたしの民ではない」と言われたその場所で,「生ける神の子ら」と呼ばれるであろう』」― ローマ 9:21-26。ペテロ第一 2:9,10も参照。
神ご自身の結婚における問題
7 ホセアとはどんな人でしたか。彼の書のどの翻訳からパウロは引用していますか。
7 使徒パウロはホセアの書から上記の文を引用していますが,ホセアとはどんな人でしたか。彼は西暦前九世紀から八世紀にかけて住んでいた預言者でした。使徒パウロは,ギリシャ語七十人訳のホセア書 1章10節および2章23節から引用しています。そこには次のように書かれています。「彼らは,あなたがたはわたしの民ではない,と言われたその所で,生ける神の子と呼ばれるであろう」。「わたしはわたし自身のために彼女を地に植え,愛されなかった彼女を愛するであろう。そしてわたしは,わたしの民でなかった彼らに対し,汝はわが民なり,と言うであろう。そして彼らは,汝は主わが神なり,と言うであろう」― チャールス・トムソンの訳による七十人訳。
8 エホバはホセアを通して語り,ご自分と愛されない者との間にどんな問題が存在していたことを示されましたか。
8 ヘブライ人の預言者ホセアを代弁者としてこのように語っておられるのはエホバ神です。エホバは,「わたしは……愛されなかった彼女を愛するであろう」,または,「わたしは……愛されなかった彼女を『愛する者』と呼ぶであろう」と述べて,ご自分と彼女,つまりご自分が一時愛しておられなかった彼女との間に何か問題があったことを示唆されました。エホバの話し方からすると,それはエホバと彼女の間の結婚生活上の問題でした。エホバは彼女を人の妻に例えておられます。
9 エホバがご自分に嫁いでいる者として語っておられるのはだれですか。
9 エホバがご自分に嫁いでいる者として語っておられるこの女はだれでしょうか。彼女は文字通りの女,つまり一人の人間の女性ではありません。エホバはご自身の言葉により,彼女が一つの民であることを,族長アブラハム,イサク,ヤコブの子孫であるイスラエル国民であることを示されました。したがって彼女は国民という妻,組織という妻でした。エホバはイスラエルの12部族の組織と結婚しておられました。中東の買われた花嫁のように,12部族のイスラエル民族はその神エホバと結婚していました。
10 このひゆ的な結婚はいつ,どこで,どのように行なわれましたか。
10 この結婚はいつ行なわれたのでしょうか。それは西暦前1513年で,エホバがイスラエルの12部族を買い取られた後のことでした。どのようにしてそうされたのでしょうか。それはエジプトの国における奴隷状態から彼らを解放することによってです。次いでエホバは,預言者モーセに目に見える指導を行なわせて,彼らをアラビア半島のシナイ山に連れてこられました。そしてその場所で,神と人間の間の仲介者モーセを通して,ご自身と解放されたイスラエル人との間に結合のきずなを結ぶことを提案されました。つまりご自身と彼らの間に一つの契約を結ぶことを提案されたのです。この契約は,当時女が夫の律法に服したのと同じく,イスラエル民族が服することに合意する法典が基礎となります。(ローマ 7:2)エホバはシナイ山の頂からイスラエルに次のように言われました。『汝らもしよく我が言を聴きわが契約を守らば汝らはもろもろの民にまさりてわが宝となるべし 全地はわが所有なればなり 汝らは我に対して祭司の国となり聖き民となるべし』。(出エジプト 19:1-6)正式に告げられたので,イスラエル人は自発的にこの契約を結びました。
11 イスラエル国民は,自分と神との間の結婚をどのようにして拘束力あるものに保たねばなりませんでしたか。
11 シナイの荒野においてこのような方法で,天におられる夫エホバと,神の妻である地的組織イスラエルとの間の結婚は行なわれました。この神聖な関係は,動物の犠牲の血を流すことによって成立しました。この血の一部は神の律法の書に,また一部はイスラエルの民の上にふりかけられました。(出エジプト 24:1-8。ヘブライ 9:19,20)その時以後,イスラエル民族はその律法契約が効力を有する限り,妻が夫に対して貞節でなければならないのと同じく,彼らの神エホバに対して貞節でなければなりませんでした。十戒によると,彼らはどんな像をも用いずにエホバを自分の神として崇拝する義務がありました。(出エジプト 20:1-6)彼らは自らを,ほかのどの所有者にも属さない,エホバの「宝」と考えるべきでした。彼らは,世の諸国民から分離された,エホバにささげられた聖なる国民として自らを保たねばなりませんでした。そうすることによって彼らはその結婚を拘束力を持つもの,破られないものに保つことができました。―エレミヤ 2:2,3; 31:31,32。
12 エホバとイスラエル国民との間の古代の結婚および現代のその相対物について考えるのは,なぜ重要ですか。
12 今日では,二人の人間,つまり一人の男と一人の女の間においてさえ正式の結婚が破たんをきたすことは珍しくありません。ではエホバと幾百万もの人々で成る国民全体との結婚はどうなったでしょうか。わたしたちは今日この事柄に関心を持たねばなりません。昔行なわれたその結婚の結末は,後ほど行なわれる同種の結婚に起こるある事柄を予示するものとなったからです。エホバとイスラエルの結婚に生じた事柄は,一つの国民に影響を及ぼしただけでした。しかしエホバの後の結婚に生ずる事柄は宗教界全体に,そうです,全人類に影響を及ぼします。それは今日のわたしたちが影響を受けることを意味します。したがって,わたしたち全部が近い将来災いに遭う可能性があります。このことから,昔行なわれたエホバとイスラエルの結婚および現代におけるそれに似た結婚について考えることがなぜ大切かが分かります。
ホセアは例に用いられた
13 イスラエルを治める王権はなぜサウルの家系からダビデの家系に移されましたか。そしてダビデの王統はだれで終わりますか。
13 幾世紀か後,イスラエル国民は,天にいます目に見えない夫であるエホバのみを自分たちの王として持つことに不満を覚えるようになりました。そこでエホバは西暦前1117年,彼らの求めに応じ,彼らの最初の王としてベニヤミン族のサウルに油をそそぐことを許可されました。サウルはエホバに忠実ではありませんでした。したがって,全イスラエルを治める王が引き続き彼の家系から出ることは許されませんでした。エホバは王権をユダの部族のエッサイの子ダビデに移されました。ダビデは西暦前1077年に王としての動きを開始しました。そして西暦前1070年,エルサレムを,イスラエルの12部族全部を治めるための首都としました。ダビデは正しい崇拝に対してあくまでも忠実であったので,エホバは彼の家系に与えられる永遠の王権のための厳粛な契約を彼と結ばれました。したがってダビデの王統は永遠の王となるメシアをもって終わります。―使徒 13:20-24。サムエル後 7:1-17。
14,15 (イ)何故に,またいつ,ソロモンを経るダビデ王の家系の王国は小さくされましたか。(ロ)10部族のイスラエル王国はどのように姦淫を犯しましたか。そしてどの神を愛しましたか。
14 ダビデの最初の後継者ソロモン王は,エホバを神とする清い崇拝からついに離れてしまい,愚かな行ないをしました。それに対する神の罰として,ソロモン王の後継者たちはその王国をユダとベニヤミンの二部族に減らされました。このことはソロモン王の子レハベアムが王位についた後に生じました。その時には10部族が離れ去り,ネバテの子ヤラベアムを王として一つの独立王国をつくりました。この反逆の王は,エルサレムのソロモンの神殿で行なわれていたエホバの崇拝とは別個の宗教礼拝を打ち立てました。彼は10部族のイスラエル王国を,二個の子牛の崇拝に転じさせました。一個の子牛はベテルに,もう一個はダンにありました。10部族のイスラエル王国の七代目の王オムリの時代には,サマリアの町が建てられて国の首都となりました。
15 そのサマリアにおいては,オムリ王の子アハブが,シドン人の神バアルの崇拝を採り入れてバアルの神殿をそこに建てました。(列王上 16:23-33)この不忠実な道を歩むことによって10部族の王国は不貞にも天にいます全イスラエルの夫を捨て,不倫の相手である偽りの神バアルを国の夫として愛しました。―ホセア 9:10。
16 ユダ王国の王たちはヒゼキヤに至るまで宗教の面でどのように振る舞いましたか。
16 二部族のユダ王国の王たちはどうだったでしょうか。彼らはエホバの清い崇拝と,偽りの神々を愛することとの間を行き来しました。ダビデから数えて12代目のアハズ王は偽りの崇拝に転じ,エルサレムのエホバの神殿のとびらを閉じることまでしました。しかし彼の子ヒゼキヤは神殿のとびらを再び開き,ユダ王国に清い崇拝を復興しました。極めて有益なことに,ホセアはヒゼキヤ王の治世に至るまで預言を続けていました。この預言者は,彼が語っていた事柄が行なわれる最中にいました。
いやな奉仕の割り当て?
17,18 ホセアはどんな任務を与えられましたか。彼がそれについて告げていることが作り話でないことはどうして分かりますか。
17 結婚適齢期になって,結婚を取り決めようとする父親から,ある女と結婚するように言われ,しかもその女は不忠実で姦淫にふけり,ついには夫を捨てて別の愛人に走るだろうと聞かされるとしたら,わたしたちはだれでもどう感じるでしょうか。多少いやな気持ちにならないでしょうか。ところがそれに似たことが実際にホセアの身に生じたのです。それは想像でも,作り話でも,神話でもありません。
18 ホセアは,実在した歴史上の人物として,彼の名を有する預言書の中で事実を告げています。彼の言葉が真実であることは,マタイから啓示aに至るまでの後代の霊感の書の中で彼の言葉が少なくとも七回引用されている事実により裏付けられています。キリスト教の創始者自身も,彼の言葉を引用しています。ですからわたしたちには,ホセアが,エホバの預言者として自分に与えられた奉仕の割り当てについて述べるとき全くの真実を語っており,好色文学の読者を喜ばせる目的ででっち上げられた物語など話しているのでないということを信ずる確かな理由があります。また,ホセアの生涯の預言的な意味は,依然存在する一民族の歴史の結末と一致するので,彼が真実を語っているという確信は一層強められます。
19 ホセアは,ユダとイスラエルのどの王たちの治世に預言の業を行なったことを示していますか。
19 イスラエルの12部族の記録された歴史の中の明確な一時期に住んでいたことを示しながら,ホセアは自己紹介をし,まずこう述べます。「これユダの王ウジヤ,ヨタム,アハズ,ヒゼキヤの世イスラエルの王ヨアシの子ヤラベアムの世にベエリの子ホセアに臨めるエホバの言なり」。(ホセア 1:1)ウジヤ,ヨタム,アハズ,ヒゼキヤはダビデ王の子孫で,エルサレムにおいて二部族のユダ王国を治めました。ウジヤは西暦前829年に王として支配を始め,ヒゼキヤは西暦前716年に統治を終えました。ですから,それらの王たちの治世は合計113年の期間にわたります。一方,10部族のイスラエル王国を治めた王統においては,ヨアシの子ヤラベアムは,そのような名前を持つ二番目の人だったので,ヤラベアム二世でした。
20 ヤラベアム二世はだれの曾孫でしたか。ホセアはこの王の治世のいつ預言の仕事を始めましたか。
20 このヤラベアムの曾祖父はニムシの子エヒウ王でした。エヒウは10部族のイスラエル王国からバアル崇拝を一掃しました。王妃イゼベルがイスラエルにおいて悪らつにもバアル崇拝を推し進めたので,エヒウは彼女を窓から投げ落とさせて死なせました。その後ヤラベアム二世が王として登場しましたが,それはアマジヤ王がユダを統治していたときでした。ヤラベアムの統治は,アマジヤの後継者ウジヤの統治と重なります。したがってエホバ神は,ヤラベアムの統治とウジヤ王のそれとが重なった期間中に,すなわち西暦前829年以後に,ホセアをして預言の業を開始させられたわけです。
21 エホバはホセアにどのような妻をめとるように言われましたか。なぜですか。
21 ホセアが次に述べる事柄が実際に生じたときの彼の反応を想像できますか。『エホバはじめホセアによりて語りたまえる時エホバ,ホセアに宣わく 汝ゆきて淫行の婦人をめとり淫行の子等を取れ この国エホバに遠ざかりてはなはだしき淫行をなせばなり』― ホセア 1:2。
22 ホセアがめとることになっていた女はどんな点で「淫行の妻」でしたか。そして彼女の子供はどのように「淫行の子等」となりましたか。なぜですか。
22 ホセアがそのような命令を受けて預言の業を開始したことにわたしたちは驚きますか。しかしエホバは,すでに淫婦となっていた女と結婚するようホセアに命じておられたのではありません。ホセアが妻にめとるように言われた女は,『淫行をしている女(または妻)』とは呼ばれていません。エホバは彼女を「淫行の[文字通りには多淫の]婦人」と呼んでおられます。さらにこの女は,エホバの象徴的な地の「妻」を表わすものとして用いられることになっていたので,彼女が最初から浮気な堕落した女であったのでは適合しません。エホバは霊的な意味での嫡出子をもうける目的で,道徳的に清い「処女」の妻と結婚された,つまり妻にめとられたのです。ですから「淫行の子等」という表現は,エホバが霊的な方法で得られる「子等」の種類,つまり彼らがどんな「子等」となるかを預言的に示すものでした。なぜそうですか。なぜなら,エホバが言われているように,「この国は淫行により確かにエホバに背いているから」(新)です。ここで言われている「国」は10部族のイスラエルの国のことです。
23 ホセアはだれを妻にめとりましたか。そして彼に何を生みましたか。
23 結婚に関する見通しは当分の間よくありませんでしたが,ホセアは神の命令に従いました。こんな方法で彼はエホバの預言者としての生涯に入りました。『ここにおいて彼ゆきてデブライムの女子ゴメルを妻にめとりけるがその婦はらみて男子を産り』― ホセア 1:3。
24 エホバはその男の子をなんと呼ぶように言われましたか。なぜですか。
24 この子はホセアの嫡出子で,ホセアが養子にしなければならなかった『淫行の子』ではありませんでした。この息子の誕生から八日目,つまりその子に割礼を施すべき時に,ホセアはその男の子にどんな名前を付けることになりましたか。その男の子の名前は預言的なものになることになっていました。そこで,この預言劇を演出しておられたエホバは,ホセアに代わってその子に名前をお付けになりました。その名前は,エホバの目的の一つを指し示すものでした。『エホバまた彼にいい給いけるは汝その名をエズレルと名づくべし 暫時ありて我エズレルの血をエヒウの家に報いイスラエルの家の国をほろぼすべければなり その日われエズレルの谷にてイスラエルの弓を折るべしと』― ホセア 1:4,5。
25 (イ)こうしてどの王家とどの国に災いが予告されましたか。(ロ)イスラエル国民は,エホバに対しどのように霊的姦淫を犯してはなりませんでしたか。
25 こうして,四代を経ていたエヒウ王の王朝および10部族のイスラエル王国に対し災いが予告されました。この王国は,かつては一つであった12部族のイスラエル王国の広いほうの部分を占めていました。その元のイスラエル国民は,西暦前1513年の昔に,シナイの荒野で,エホバ神と霊的に結婚しました。イスラエルとエホバの間にモーセの律法契約が結ばれたのはその時でした。その結婚契約によると,12部族のイスラエル王国は,エホバだけを自分の神として崇拝し,エホバに貞節を保たねばなりませんでした。エホバから離れて偽りの神々を崇拝するような霊的姦淫の罪を犯してはならなかったのです。
26 ホセアの妻はだれを表わしましたか。
26 エホバとイスラエルの結婚は,ホセアとゴメルの結婚によって表わされました。ゴメルの名前は「完全」という意味を持っています。ですからゴメルは当然イスラエル国民を表わしました。しかし,ホセアの時代には,イスラエルは,10部族だけのイスラエル王国となっていた,イスラエルの一部であった10部族によって表わされました。150余年を経ていたこの国は,エホバが『この国エホバに遠ざかりてはなはだしき淫行をなせばなり』と言われた通りの「国」になっていました。
27 イスラエルは清い出発をしたにもかかわらず,ホセア書 10章1,2節によると国状はどうなりましたか。
27 イスラエルは預言者モーセの下に清い出発をしたにもかかわらず,その国状は,エホバがご自分の預言者に霊感を与えて,ホセア書 10章1,2節で言わせた通りになっていました。『イスラエルは果をむすびて茂り栄えるぶどうの樹b[イスラエルは生い茂るぶどうの木。彼はおびただしい実を結んだ。(モファット訳)]その果の多くなるがままに祭壇をましその地のゆたかなるがままに偶像[聖なる石(モファット)]を美しくせり かれらは二心をいだけり 今かれら罪せらるべし』。
「エズレル」という名前の預言的な命名
28 エズレルという名前にはどんな意味がありますか。それには預言的な意味があったので,ホセアの息子の名にふさわしいものでしたが,なぜですか。
28 エホバは,霊的姦淫を行なうイスラエルを罰することを意図しておられたので,ゴメルによる最初の子にエズレルという名を付けるようホセアにお命じになりました。その名前は極めて適切でした。ホセアが話した言語のヘブライ語では,「神,まきたもう」という意味があります。しかし『まく』ことではあっても,良い意味ではありません。ここでの『種まき』は,『まき散らす,散乱させる』という意味を持っています。人は種をまく時それをまき散らすからです。エホバが王家である「エヒウの家」にまき散らすような動作で対されるということは,「エヒウの家」が衰えること,滅亡することを意味しました。10部族のイスラエル王国に対する同様の行動は,同王国の滅亡,同王国の崩壊を意味しました。―ルカ 22:31と比較してください。
29 エヒウ王は,バアル崇拝をどうしましたか。子牛崇拝についてはどうでしたか。どんな戒めを破りましたか。
29 イスラエルのアハブ王の首都はサマリアでしたが,王宮はエズレルの町にありました。後のエヒウ王の王朝もエズレルに王宮を持っていました。エヒウはエホバ神の命令に従って10部族のイスラエル王国からバアル崇拝を荒々しく根絶しました。しかし依然として二個の金の子牛の崇拝を続け,エルサレムにおけるエホバの崇拝を無視しました。その刻んだ像を崇拝することによってエヒウの家は十戒を犯しました。彼らはまた,殺すなかれ,という戒めを破りました。―出エジプト 20:2-6,13。
30 エホバは,エヒウの家がエズレルで行なった流血行為に対して,エヒウの家にどのように報いられましたか。
30 こうして,エズレルに王宮を持つ子牛崇拝者のエヒウ王の王朝は流血の記録を作り始めました。十戒の授与者はその記録を見逃すことはできませんでした。そこで彼は言いました。『我エズレルの血をエヒウの家に報い(る)』。(ホセア 1:4)その言葉にたがわず,イスラエルを治めたエヒウ王の王朝は,ヤラベアム二世の子ザカリヤが統治を始めてわずか六か月後に,激しい最期を遂げました。ザカリヤは殺されました。―列王下 15:8-12。
31 イスラエルの家の王の支配はどのように終わりましたか。それはどのようにあたかも「エズレルの谷」のようでしたか。
31 かくしてイスラエルを治めたエヒウ王の王朝は西暦前791年に終わりました。しかし,10部族のイスラエル王国自体は西暦前740年まで,さらに51年間存続しました。次にエホバは,『イスラエルの家の国をほろぼす』ことをされました。(ホセア 1:4)世界強国アッシリアを用いて,『エズレルの谷にてイスラエルの[戦いの]弓を折』られました。イスラエルの首都サマリアが覆されて背教の国は低められました。イスラエルの生き残りがアッシリア帝国の遠隔の諸州に流刑にされ,種のようにまき散らされた時,その国の力は消散しました。その恐ろしい経験は,「エズレル[神,種まきたもう]の谷」という表現の象徴的な意味と一致します。これは,イスラエルの解放者士師ギデオンが,わずか300人のえり抜きの戦士を率いて,略奪を行なっていたミデアン人を,「エズレルの谷」の近くの,メギドにほど近いところに追い散らしたときのようなものではありませんでした。(士師 6:33,34)西暦前740年には,解放者はおらず,生存のための戦いを行なうことはもはやできず,10部族のイスラエル王国は『ほろぼされ』,滅亡しました。
32 なぜわたしたちは,以上の事柄がこの20世紀において持っている意味を理解することに努めるべきですか。
32 わたしたちは,このことが今日もわたしたちに対して持っている重要な意味を理解しているでしょうか。わたしたちはそれを理解しなければなりません。なぜならそれは,この20世紀に,霊的姦淫を行なった不忠実なイスラエルの現代の相対物の中で成就しつつあるからです。その相対物とは,世界中に10億近い教会員を有するキリスト教世界のことです。キリスト教世界の切迫した災いを前にして,わたしたちは,ではエホバ神のあわれみが働いているのを見られるのはどこか,と尋ねるかもしれません。エホバ神がご自分の預言者ホセアに対して取られた態度をさらに深く調べてみれば,それはめいりょうになります。
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ハルマゲドンで示される神のあわれみものみの塔 1976 | 6月15日
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ハルマゲドンで示される神のあわれみ
1,2 (イ)エホバはだれの結婚生活における問題にご自分のそれを表わすよう仕組まれましたか。(ロ)イスラエルはヤラベアム一世の時代にどのようにして姦淫を行なうようになりましたか。
男と女の結婚は,地上で罪と悪が支配する間に多くの問題にぶつかりました。エホバと古代イスラエル国民との結婚に生じたのもそれです。
2 神はご自身の結婚において生じた問題を,預言者ホセアの結婚生活における問題を通して表わすように仕組まれました。ホセアは神の命令により,デブライムの娘ゴメルと結婚しました。このことは,西暦前1513年に神がシナイ山でモーセの律法契約により古代イスラエルと結婚されたことを表わしました。ダビデの子ソロモン王が西暦前997年に死んだ後,長く結婚生活を送ってきたイスラエル国民は二つの部分に分裂しました。ユダとベニヤミンの二部族は共にユダ王国の下に,他の10部族はイスラエル王国の下にとどまりました。イスラエル王国の最初の王は,エフライム族のネバテの子ヤラベアムでした。このヤラベアム一世の下にイスラエル王国はエホバとの結婚契約を破りました。エルサレムにおけるエホバの崇拝をボイコットし,二個の金の子牛の偶像を,一つをダンに,もう一つをベテルに設けて,その国自身の国民的崇拝を打ち立てました。こうして10部族のイスラエル王国は,預言者ホセアの妻ゴメルのように,姦淫を行なう者となりました。
3 エホバはゴメルの二番目の子にどんな名前を付けるように言われましたか。なぜですか。
3 ゴメルがホセアにエズレルという名前の嫡出子を産んだ後,エホバと12部族のイスラエル国民との間の問題を示す例としてのホセアの結婚生活に生じた問題は,どう発展したでしょうか。ホセアは続けて次のように語ります。『ゴメルまた孕みて女子を産みければエホバ,ホセアに言いたまいけるは汝その名をロルハマと名づくべし そは我もはやイスラエルの家をあわれみて赦すがごときことをせざるべければなり されどわれユダの家をあわれまん その神エホバによりてこれ[ユダ人]をすくわん 我は弓 剣 戦争 馬 騎兵などによりてすくうことをせじ』― ホセア 1:6,7。
4 ゴメルの娘の父親はだれでしたか。彼女の名前は預言的にだれに向けられましたか。
4 この場合にはホセアは,ゴメルが「彼に」娘を産んだ,とは述べていません。それでロルハマと名付けられたその娘は一般に『淫行の子』と解されています。(ホセア 1:2)ホセアの妻ゴメルがそのようにして姦淫をしたことは,エホバ神とイスラエル国民の結婚関係における問題の経過と一致しています。もちろん,ホセアの問題の場合にここで重要な事柄は,ゴメルの娘に与えられた名前の意味 ― またエホバがホセアにそういう不快で不吉な名前を彼女に付けるように告げられた理由です。その娘の名前ロルハマの字義通りの意味は,「あわれまれぬ女子」です。エホバはその名前を,エズレルの町に王宮を持つ,霊的な姦淫を行なう10部族のイスラエル王国に対して預言的に向けられました。それにはどんな理由がありましたか。
5 エホバが10部族のイスラエル王国にあわれみを示されなかったことはどんな結果を招きましたか。キリスト教世界はどのように同様の経験をしますか。
5 この20世紀においては,キリスト教世界がエホバの示される理由に耳を傾けねばなりません。なぜなら,ロルハマという名前は現在に当てはまるからです。エホバが示しておられる理由は今日のキリスト教世界に当てはまります。『そは我もはやイスラエルの家をあわれみて赦すがごときことをせざるべければなり』。(ホセア 1:6)キリスト教世界は現在のあわれまれない者,あわれみを示されていない者です。西暦33年にイエス・キリストの仲介によって成立した「新しい契約」によりエホバ神と結婚関係にあると彼女は主張しますが,10部族のイスラエル王国と同じく,そのエホバ神に背いて霊的姦淫にふけっています。(エレミヤ 31:31-34。ルカ 22:19,20。ヘブライ 8:6-12)ホセアの時代以降,エホバはもはや10部族のイスラエル王国にあわれみを抱いておられなかったので,結果はどうなりましたか。霊的に不貞なその王国は,一世紀たたないうちに,すなわち西暦前740年に滅びました。同様に,エホバはイスラエルの現代の相対物にもはやあわれみを抱いておられないので,きたるべき「大患難」がハルマゲドンで頂点に達するとき,キリスト教世界は滅びてしまうでしょう。―マタイ 24:21,22。
6 ホセア書 1章7節によると,10部族の王国の滅びの時,エホバのあわれみは全イスラエルから撤去されましたか。
6 10部族のイスラエル王国を一掃されたとき,エホバは少しもあわれみを示されなかったでしょうか。シナイ山で与えられた律法契約を通して最初に神と結婚関係に入っていたすべての部族から,あわれみを完全に撤去されたのでしょうか。エホバご自身がその問いに答え,次のように言われました。『されどわれユダの家をあわれまん その神エホバによりてこれをすくわん 我は弓 剣 戦争 馬 騎兵などによりてすくうことをせじ』― ホセア 1:7。
7,8 (イ)エホバがユダの家にあわれみをかけられた理由はどこにありましたか。(ロ)その時優勢な世界強国が存在していた故に,戦争の道具によらずにユダを救うためには,エホバは何をしなければなりませんでしたか。
7 エホバが,エルサレムを首都とする二部族のユダ王国にあわれみを示すことにされた納得のいく理由に注目するのは良いことです。ホセア書 11章12節でエホバはご自分があわれみを示す理由を明確にし,次のように言われています。『エフライムはいつわりをもて イスラエルの家[主要な部族エフライムにより表わされた]は詐偽をもて我を囲めり ユダは神と信ある〔至高の聖者〕とに属きみつかずみ漂蕩おれり』。a ユダの家はまだエホバを至高の聖者,己が神として,『つかず離れずたゆたって』いました。ですからエホバはご自分の名のためにユダの家を救わざるを得ませんでした。「その神エホバによりてこれをすくわん」とエホバが言われたのはそのような理由からでした。
8 エホバは,10部族の王国を取り除いて『イスラエルの家の国をほろぼし』,それと同時にユダの家を救う目的を立てられました。そうするためには,アッシリア帝国と対決しなければなりません。アッシリアは高度の軍備を整えて,当時の支配的な世界強国となっていました。そうした状況の下で,弓,剣,戦争,馬,騎兵などによらずにユダの家を救うためには,エホバは何か特別のことを行なわれねばなりません。
ハルマゲドンにおける神のあわれみを予示する
9 サマリアが滅びた後,エルサレムに関し,事態はエホバにとってどのように極めて挑戦的なものになってきましたか。
9 西暦前740年,エホバは世界強国アッシリアをご自分の「斧」として用いて,偶像崇拝を行なう不貞な「イスラエルの家」を切り倒されました。エズレルにあった王宮はあき家にされ,首都サマリアは覆され,生き残ったイスラエル人は,アッシリアの遠隔の諸州に流刑にされました。(イザヤ 10:15)それはエルサレムにとって脅威となりました。エルサレムにはダビデの王家のヒゼキヤ王がいて,二部族のユダ王国を統治していました。八年後,アッシリアの大軍がユダの地に侵入し,その町々を従わせ始めました。攻め寄せるアッシリア王セナケリブは,弓,剣,戦いの道具,軍馬,騎兵などを十分に有していました。さて,エホバのあわれみはどんな方法でユダの家に示されるでしょうか。事態はエホバに対し極めて挑戦的なものになってきました。
10,11 ご自身の名前を高めるために,エホバは今やユダの家をどのように救われましたか。
10 リブナの町を包囲している間に,セナケリブは,30余キロ離れたエルサレムのヒゼキヤ王に対して,神にいどむ最後通牒を発しました。憤りを感じられたエホバは,預言者イザヤに霊感を与えて挑戦的な通告を出させ,エルサレムの城壁の前にいたアッシリアの代表をしてそれを不敬なセナケリブに持ち帰らせ,同王がその警告を受け取った後,エホバはご自分の名前を高めるためにユダを救われました。
11 列王紀略下 19章35節から37節には次のように記録されています。『その夜エホバの使者いでてアッスリヤ人の陣営の者十八万五千人を撃ちころせり 朝早く起きいでて見るに皆死にて屍となりおる アッスリヤの王セナケリブすなわち起いで帰りゆきてニネベにおりしが その神ニスロクの家にありて礼拝をなしおる時にその子アデランメレクとシャレゼル剣をもてこれを殺せり しかして彼らはアララテの地に逃げゆけり ここにおいてその子エサルハドンこれに代わりて王となれり』。
12 エホバがユダの家にあわれみを示されたことは,何を予示しましたか。
12 これは,当時エホバとの霊的結婚関係を忠実に保っていたユダ王国に対するエホバのあわれみの,この上なく優れた表示ではありませんでしたか。それは,将来ハルマゲドンの戦いの時にエホバが示されるあわれみを予示するものであり,今日のわたしたちに慰めとなる意義を持っています。(啓示 16:14,16)悪魔サタンの下で,ハルマゲドンbと呼ばれる「全能者なる神の大いなる日の戦争」の時に忠実なエホバの証人と戦う,神にいどむ地上の大軍には,神のあわれみは示されません。エホバは,地上にいるご自分の忠実な証人たちが弓や剣,戦争,馬,騎兵その他の戦争手段に訴えなくても彼らを救われます。
13 ではロルハマという名前はだれに当てはまりますか。それで神が「憤りの器」に怒りを示される時にだれが生き残りますか。
13 それは神が「憤りの器」に怒りを示され,そして「ユダの家」によって予表されているキリストの共同相続者の油そそがれた残りの者にあわれみを示される時となるでしょう。(ローマ 9:22)油そそがれた残りの者は,新しい契約に対して忠実を保つでしょう。エホバはその契約によって霊的イスラエルと結婚しておられます。その残りの者は忠実な霊的イスラエル人ですから,ロルハマ(あわれまれぬ者)という名前は,それが現在キリスト教世界に当てはまっているようには,彼らには当てはまらないでしょう。(ガラテア 6:16。ヤコブ 1:1。啓示 7:4-8)霊的残りの者が救われるのは,「その神エホバにより」ます。彼らは生き残ります!
14,15 (イ)レカブの子ヨナダブはエヒウ王と共にどんな経験をしましたか。(ロ)ヨナダブの子孫はどんな国家的災いを生き残りましたか。それらレカブ人は今日のだれを予表しましたか。
14 その昔セナケリブがエルサレムを脅かしたとき,エホバのあわれみを経験したのは「ユダの家」だけではありませんでした。レカブ人として知られていた非ユダヤ人もそれを経験しました。レカブ人は,ケニ人レカブの子ヨナダブの子孫でした。イスラエルのエヒウ王は,サマリアにおけるバアル崇拝を滅ぼしてエホバの命を果たすべく同市に向かって車を駆っていた時に,自分と一緒に車に乗るようにヨナダブを招き,「我とともに来りて我がエホバに熱心なるを見よ」と言いました。(列王下 10:15-27)ヨナダブはそうしました。
15 西暦前740年にサマリアが陥落したとき,レカブ人ヨナダブの子孫は生き残りました。また西暦前732年にセナケリブがユダの地に侵入した時にも生き残りました。後日レカブ人は,預言者エレミヤの時代のユダ王国と交わっています。それはエルサレムが西暦前607年にバビロンに滅ぼされる前で,エルサレムの終末の時でした。彼らは忠実だったので,エルサレムが滅びる時に生き残ることをエホバはレカブ人に約束されました。(エレミヤ 35:1-19)エホバのあわれみを受けたその人々はだれを予表しましたか。今日,油そそがれた残りの者と交わっているエホバ崇拝者の「大群衆」です。彼らもパラダイスの地に希望を抱いて,きたるべき「大患難」を生き残ります。―啓示 7:9-17。
『わが民にあらず』と言われた人々
16 (イ)キリスト教世界はエホバの民の一員となることを拒否しますが,それは彼女にとって何を意味しますか。(ロ)ホセアの妻の二番目の子にはどんな名前が付けられましたか。なぜですか。
16 近い将来に「大患難」のぼっ発を控えている今は,エホバのあわれみを受け入れるべき時です。キリスト教世界はきたるべき患難の間にあわれみを示されない,ということを忘れないようにしましょう。したがってわたしたちは彼女との関係を絶たねばなりません。その時,彼女がエホバの民に属さぬ者として退けられていることは,否定できないまでに明らかにされるでしょう! それは彼女の滅びを意味します! 彼女は今日のロルハマ(あわれまれない者)です。(ホセア 1:6)彼女が完全に退けられることは,預言者ホセアの結婚生活におけるさらに別の問題によって予表されていました。彼はその妻ゴメルについて次のように述べています。『ロルハマ乳をやめゴメルまた孕みて男子を産みけるに エホバ言いたまいけるはその子の名をロアンミと名づくべし そは汝らはわが民にあらず我は汝らの神にあらざればなり』。(ホセア 1:8,9)こうした言葉をもって,ユダヤ人の翻訳聖書の,またギリシャ語七十人訳のホセアの預言の書の第一章は終わっています。
17 ロアンミはなぜゴメルの二番目の子にふさわしい名前でしたか。それに関連してエホバは10部族のイスラエル王国に対しなんと言われましたか。
17 ホセアの妻ゴメルの二番目の息子もホセアを父として生まれたのではなく,ゴメルの姦淫の子と解されています。ホセアはゴメルが彼にこの二番目の子を産んだとは言っていません。ですからエホバがその男の子にロアンミという名前を付けさせたのには十分の理由がありました。その名前には『わが民にあらず』という意味があるからです。それは預言的な意味を持っていました。エホバはその男の子にそのような不吉な名前を付けた理由を説明するに当たり,10部族の「イスラエルの家」に向かって次のように言われました。『そは汝らはわが民にあらず我は汝らの神にあらざればなり』。この言葉をもってエホバはご自分がもはや,契約を破る「イスラエルの家」の天的夫でないことを宣言されました。
18 いつ,どのように,エホバは10部族のイスラエル王国がご自分の民でないことを知らせましたか。
18 エホバはご自分がもはや背教した「イスラエルの家」の神でも霊的夫でもないことを,はっきりと知らせました。西暦前740年,アッシリアがイスラエルの首都サマリアを攻略するのを許して,そのことを知らされました。こうしてその「イスラエルの家」はもはやエホバの民ではなくなりました。エホバが言われた通りそれはロアンミ,すなわち『わが民にあらず』でした。離婚した妻のようにその人々はアッシリアに流刑の身となりました。霊的姦淫を行なった「イスラエルの家」は,モーセの律法契約の中で与えられた,エホバに対して『祭司の国』となる機会を見下していたのです。―出エジプト 19:5,6。
19 イエス・キリストはどの言葉が実現する時にキリスト教世界に対し,彼女が新しい契約の目的の成就にあずからないことを知らせますか。
19 大いなるモーセ,イエス・キリストを仲介として成立したエホバの「新しい契約」も,同様の目的を持っています。その目的は,イスラエルの現代の相対物であるキリスト教世界では実現しません。彼女は,宗教上の連れ合いとしてこの世の政治支配者たちに仕えることにより,この事物の体制の中で地に君臨することを試みてきました。イエス・キリストは,彼女が天の王国におけるご自分の共同相続者の中に入っていないことを彼女に知らされるでしょう。その時にはイエスの次の言葉は真実となります。「わたしに向かって,『主よ,主よ』と言う者がみな天の王国に入るのではなく,天におられるわたしの父のご意志を行なう者が入るのです。その日には,多くの者がわたしに向かって,『主よ,主よ,わたしたちはあなたの名において預言し,あなたの名において悪霊たちを追い出し,あなたの名において強力な業を数多く成し遂げなかったでしょうか』と言うでしょう。でもその時,わたしは彼らにはっきり言います,わたしはいまだあなたがたを知らない,不法を働く者たちよ,わたしから離れ去れ,と」― マタイ 7:21-23。
個々の人が神のあわれみを受ける希望
20,21 (イ)流刑にされた「イスラエルの家」の個々の人は,エホバのあわれみを活用することをいつ,そしてどのように許されましたか。(ロ)エホバはホセア書 1章10,11節にあるどの言葉をもってそのことを指し示されましたか。
20 キリスト教世界の古代の型であった10部族のイスラエル王国は,中東にあった,神から与えられた地に再建されることはありませんでした。けれども,退けられた「イスラエルの家」の個々の成員は,エホバのあわれみを受け入れてエホバに帰り,エホバの是認された民の一員となることが許されました。その特権は,アッシリアの後継者である世界強国バビロンが覆される時に彼らのものとなります。その時には征服者クロスが,アブラハム,イサク,ヤコブの神の,流刑の身の崇拝者たちを解放します。そのことを指摘してエホバはご自分の預言者ホセアを通し次のように言葉を続けられます。
21 『されどイスラエルの子孫の数は浜のいさごのごとくに成りゆきて量ることも数うることもなしがたく前になんじらわが民にあらずと言われしところにて汝らは活ける神の子なりと言われんとす かくてユダの子孫とイスラエルの子孫は共に集まり一人の首をたててその地より上りきたらん エズレル[神,種まきたまう]の日は大いなるべし』― ホセア 1:10,11。
22 その預言が予表的に成就したのはいつですか。彼らにとって「エズレルの日」はどのように「大いなる」ものとなりましたか。
22 このあわれみに満ちた預言は西暦前537年に予表的に成就し,バビロンを征服したペルシャ人クロスは,「ユダの子孫とイスラエルの子孫」の忠実な残りの者を去らせ,バビロン捕囚の『地より上りきたらせ』ました。エホバのしもべクロスの命令の下に彼らはエルサレムにエホバの神殿を再建すべく,共に集まって行きました。(歴代下 36:20-23。エズラ 1:1-11)そしてその残りの者は,彼ら自身の地において再び,量ることも数えることもできない浜のいさごのように人口が増加しました。そのように『エズレルの日は大いなるもの』となるでしょう。この場合,「神,まきたまう」という意味のエズレルという名前は有利に成就することになっています。神は復帰した民の子等を種のようにまき,増やされます。
23 (イ)イスラエル国民はだれを退けた後,そしてエホバがどんな行動を取られた後,エホバの民ではなくなりましたか。(ロ)エホバは,その退けられた国民の中のだれにあわれみを示されましたか。どのように?
23 ですからエホバはもはや彼らに対して,ロアンミ,すなわち『わが民にあらず』,とは言われません。予表的に,『活ける神の子』と呼ばれます。使徒パウロとペテロは,キリスト教の領域におけるこのことの対型的成就に関し,ローマ 9章25,26節,ペテロ第一 2章9,10節の中で書いています。生来のイスラエルの子らは,西暦33年にメシアとしてのイエスを拒否して以来,エホバの民ではなくなりました。エホバはモーセの時代に律法契約によって12部族のイスラエル国民と結婚されましたが,その律法契約を廃止されました。しかしエホバはあわれみ深くも生来のイスラエル国民の,信仰を持つ残りの者を受け入れて,メシアなるみ子イエスを仲介者とする新しい契約に入れられました。そのようにしてエホバは新しい国民,霊的イスラエルの基礎を置かれました。―ガラテア 6:16。ヤコブ 1:1。ローマ 2:28,29。啓示 7:4-8。
24 エホバはなぜ,そしていつ,エホバの民でなかった人々に目を向けられましたか。そしてどのように彼らをご自分の民にされましたか。
24 地のもろもろの国民は「アブラハムの胤」を通して祝福されることになっていますが,クリスチャンになった生来のイスラエル人はその「アブラハムの胤」の数を満たすには,不幸にして不十分でした。そこでエホバは,一度もご自分の民でなかった者たち,『わが民にあらず』であった人々,すなわちロアンミに目を向けられました。西暦36年,エホバはそれら非イスラエル人が,新しい契約の下にある霊的イスラエルの一員となる道を開かれました。彼らは,浜のいさごのごとくになることになっていた「アブラハムの胤」の一員とされました。―ガラテア 3:8-29。創世 22:18。
25 (イ)『共に集まった』霊的イスラエルの残りの者が『立てた』『一人の首』はだれですか。それにはどんな解放が伴いましたか。(ロ)だれが彼らと共にハルマゲドンの戦争を生き残ることを期待していますか。
25 『共に集まった』霊的イスラエルが『たてた』『一人の首』というのは,現在統治しておられるイエス・キリストのことです。大いなるクロスとしてのイエス・キリストによって悔い改めた残りの者は,第一次世界大戦後の1919年に,大いなるバビロンの力から解放されました。この残りの者は,地上にエホバの清い崇拝を復興することに用いられました。エホバはこれら自由にされた霊的イスラエル人を『活ける神の子』とされました。彼らは神のあわれみに従い,近づきつつあるハルマゲドンの,「全能者なる神の大いなる日の戦争」に救われること,そうです,それを生きて通過し新秩序が始まるのを見ることを期待しています。古代のレカブ人のような仲間の崇拝者の「大群衆」も,神のあわれみにあずかって残りの者と共に生き残ることを期待しています。
26,27 (イ)神のあわれみを今望んでいる人々は,キリスト教世界が霊的に言って何であることを認めねばなりませんか。彼らはなぜ彼女の「子等」となることを望みませんか。(ロ)エホバのあわれみを受けている者たちに対してなんと言うようにエホバは彼らに教えておられますか。
26 わたしたち自身は今日エホバのあわれみに希望を抱いていますか。もしそうであるなら,わたしたちはキリスト教世界がまさに霊的姦通女であることを認めねばなりません。彼女は,バビロン的な宗教で身を汚すことにより,大いなるバビロンの一員となりました。彼女は,その偽りの宗教の世界帝国と共にきたるべき「大患難」において滅ぼされます。わたしたちは彼女の「淫行の子等」のどれにもなりたくありません。エホバのあわれみを受ける者として,エホバが今わたしたちに与えてくださる指示に従って行動します。
27 『汝らの兄弟に向かいてはアンミ(わが民)と言い 汝らの姉妹にむかいてはルハマ〔あわれまれる女!〕と言え なんじらの母とあげつらえ 論弁うことをせよ 彼はわが妻にあらず 我はかれの夫にあらざるなり なんじらかくしてかれにその面より淫行を除かせ その乳房の間より姦淫をのぞかしめよ しからざれば我かれを剥て赤体にしその生まれいでたる日のごとくにし また荒野のごとくならしめ 潤なき地のごとくならしめ 渇によりて死なしめん 我その子等を憐まじ 淫行の子等なればなり かれらの母は淫行をなせり かれらを生める者は恥ずべき事をおこなえり そはかれいえる言あり 我はわが恋人たちにつきしたがわん 彼らはわがパンわが水わが羊の毛わが麻わが油わが飲物などを我に与うるなりと』― ホセア 2:1-5。
28 宇宙の前で何をあげつらうことにおいてエホバを支持することは従順の道ですか。それでわたしたちは,「大患難」の時にエホバが取られるどんな処置に賛意を表しますか。
28 ではわたしたちは,妻としてエホバと契約関係にあると偽善的に主張するキリスト教世界とあげつらう天の夫エホバを支持しましょう。彼女がこの世の友となって霊的淫行,姦淫の罪を犯していることを宇宙の最高法廷で指摘しましょう。(ヤコブ 4:4)彼女は,自分の利己的で物質的な欲望を満たしてもらうために,この世の名利を追う著名な人物や有力な人物,金持ちなどを慕いました。神の訓戒にもかかわらず,自分の顔の前から淫行を除きその乳房の間から姦淫を除くことをかたくなにこばみました。彼女の宗教上の子らである教会員は,「[霊的]淫行の子等」です。エホバが「大患難」で彼女を滅ぼさせる時,わたしたちは心からそれに賛意を表します。
29 わたしたちはだれに対して家族関係を表現しますか。きたるべきどんな戦いの時にエホバの一層のあわれみを得るということを希望できますか。
29 わたしたちは,聖書的に見てエホバの民であると自分が認める人々,エホバが「わが民」と言われる人々に兄弟愛を抱きましょう。迫り来る「大患難」前の,世界史のこの「終わりの時」にエホバがあわれみをかけておられる,清められた,忠実な組織と,姉妹同士のような家族関係を持ちましょう。(マタイ 24:21,22。啓示 7:14)彼女を現代のルハマと認め,彼女に向かって「あわれまれる女!」と言いましょう。(ホセア 2:1)誠実な気持ちでそうするなら,ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれている所で行なわれる「全能者なる神の大いなる日の戦争」でエホバがそれにふさわしい者たちにあわれみを示される時に,エホバの一層のあわれみを経験できるという希望を持つことができます。―啓示 16:14,16。
(つづく)
[脚注]
a アメリカ訳,リーサー訳,英国改正訳,アメリカ改正標準訳も参照。
b 「ものみの塔」1976年5月1日号の「反宗教的斧からのきたるべき解放」という記事をご覧ください。
[380ページの図表]
預言に関する類似
ホセアとゴメルの結婚 西暦前1513年におけるエホバ 西暦33年におけるエホバと霊的
とイスラエルの結婚 イスラエルの結婚
「淫行」 偽りの神々の崇拝に転じて サタンを神とする世の友となる
不倫な行ないをする
エズレル 西暦前740年に,10部族の エホバは「大患難」において
(神,まきたもう) イスラエル王国に対して キリスト教世界を滅ぼされる
エホバが取られた
まき散らし滅ぼす処置
ロルハマ エホバに退けられた不忠実な キリスト教世界はもはや神の
(あわれまれぬ者) 10部族のイスラエル王国 あわれみを受けることなく
滅ぼされる
ユダの家は救われた 二部族の王国の首都 霊的イスラエルの残りの者は,
エルサレムは,エホバに ハルマゲドンの時エホバに
より侵略者アッシリアから 救出される(「大群衆」も
救われた(レカブ人も命を 命を助けられる)
助けられた)
ロアンミ 契約を破った10部族の キリスト教世界は,「新しい
(わが民にあらず) イスラエル王国 契約」の作成者に対して
不忠実である
以前は『わが民にあら 西暦前537年にバビロン捕囚 西暦36年から,異邦人の信者
ず』であったが,今 から帰還したイスラエル人 たちが霊的イスラエル人に
は『活ける神の子』 加えられた。西暦1919年に
霊的イスラエルは正しい状態
に復帰させられた
「一人の首」 クロス王 イエス・キリスト
「エズレルの日は 神は帰還したイスラエル人を 西暦1919年以来,エホバは復帰
大いなるべし」 増加させられた した人々をまき,彼らを増加
させられた
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神のみことばは人の生活に影響を与えるものみの塔 1976 | 6月15日
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神のみことばは人の生活に影響を与える
[イスラエルの]支部は,前科のあるひとりの若者の経験を寄せています。その若者のおばは会衆と交わっていて,しばしば彼に証言しましたが,若者は応じようとしませんでした。そうしたある日,彼は,訪問中の地帯の監督の講演会に出席することに同意しました。若者はその講演から深い感銘を受け,まもなく家庭聖書研究をするようにとの勧めを受け入れました。神のみことばが若者の生活に著しい影響を与え,彼はかつての生き方を捨てて,野外奉仕に活発になると共にエホバ神に献身しました。彼の個人的な生活上の大きな変化は結婚生活をも救いました。彼と妻は,あらゆる面で共通点がなかったので,離婚寸前のところだったのです。しかし,現在共に良いたよりの伝道者であるふたりは,聖書の原則にそって生活し,クリスチャン会衆の幸福な成員となっています。―「エホバの証人の1976年の年鑑」より
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真の神を探し求めるものみの塔 1976 | 6月15日
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真の神を探し求める
[エルサルバドルの]ひとりの婦人は,幼い頃,イエス・キリストの父である唯一の真の神を知りたいとの強い願いを抱いていました。彼女はカトリック教徒として育ち,教会をあちらこちら巡ってむなしく神を尋ね求めました。その人は若い時に,非常に年上の,妻のある男性と生活するようになりました。彼女の生活はその男性を中心としていました。14年がたちましたが,エホバを知りたいとの彼女の願いは満たされていませんでした。その時突然その男の人が亡くなったのです。彼女の生活はその人と物質的な事柄とを中心にしていましたから,彼女には将来に対してひとすじの希望もありませんでした。彼女はどうすれば良いでしょうか。その時以来,婦人は不眠症にかかり,食欲がなくなってやせ細ってしまいました。人生には少しも意味がありませんでした。生き続けることを願うなら,真の神を見いださねばならないことを彼女は知っていました。それが彼女の唯一の希望だったのです。
ある日その婦人は大聖堂に行って神に祈りました。祈りは涙に変わり,婦人はさめざめと泣き続けました。彼女はそこに数時間いたのですが,何の慰めも得られませんでした。それで彼女はそこを去り,とある本屋に入って行くと聖書を一冊求めました。神はわたしたちに書き記されたみことばをお与えになった以上,きっとだれかがそれを理解しているはずだと考えたのです。それで彼女
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