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エホバの王国を告げ知らせるものみの塔 1959
塔59 4/15 145–151ページ

全人類のための完全な政府

『彼に主権と光栄と国とを賜い,諸民,諸族,諸国語の者を彼に仕えさせた。その主権は永遠の主権であつて,なくなることがなく,その国は滅びることがない。』― ダニエル 7:14,新口。

1,2 (イ)私たちの生活は,たがいにどのように結びつけられていますか。その故に私たちには何が必要ですか。(ロ)人は将来に対するどんな共通の危険を認めますか。しかし,それよりも悪いもので,しかも有益なものとは何ですか。

全人類のための完全な政府は,是非とも必要になつています。今日,そのことは,まつたく明白な事です。どの大陸でも,また海洋の島であつても人類はみな一つであるという事実は,否定することができません。また,人間である私たちは,みなこの一つの地上の住居,すなわち地球に住んでおり,私たちすべての者はいつしよに生活せねばならぬという事実も真実です。宇宙の他の遊星で私たちの生活できる所はありません。いま程,私たちひとりびとりの生活,私たちすべての生活がたがいに重り合つている時は,かつていちどもありませんでした。特にこの現代においては,私たちの生活はみな互いにむすびつけられています。

2 今日,地上で孤立を保てる場所は何処にもありません。好もうと好むまいと,私たちはみな一つの共通な危険に面します。今日の人間の指導者たちは,危険は全世界に結果の及ぶ第三次世界大戦であると認めています。この世界的な核戦争に対しては,人々はひどく恐れており,多数の人々は近い将来には必ず起ると信じています。しかし,この世界的な核戦争以外にその結果がもつと悲惨な別の戦争があるのです。それは天の神御自身のみ業です。もやはそれを無視することはできません。天と地の大いなる創造者は,み業を行おうとしています。しかし,神の側に立場を取る善意者のすべてには,これは有益のものです。それは彼らにとつて生命を意味します。私たち人間は,ひとり残らず一つの共通の熱望を持つています。それは,天および天の表わす神の力と一致しつつ,この地上で幸福の中に生活するということです。私たちの熱望をみたすために一つの世界政府は必要です。そしてこの政府は完全なものでなければなりません。

3 (イ)そのような政府は可能ですか。(ロ)それはいつ来ますか。そして,最善の権威によると,どのように来ますか。

3 完全な政府は可能ですか。最初において,完全な政府は可能であり,その来ることは確実であると言うことができます。しかし,そのような完全な政府はどのように来ますか。また何時それは来て,善意を持つすべての人にたしかな救いをもたらしますか。全人類のための完全な政府は,私たちの時代の中に,この時代の中に必ず来るのであつて,私たちは非常によろこばしいものを待ち望むことができると言えます。それは人間のあいだの政治科学者たちによつて来ますか。否であります! 政治科学者たちは,過去幾千年ものあいだ実験してきました。彼らは種々の方法を無計画に試みて,失敗すればまた別の仕方でやりなおすという方法をとつてきましたが,いま私たちがその方法を行う政治科学者に完全な政府をつくり出すことを依存すれば,どんなに長く時間をかけようとも彼らは決して成功しないでしよう! その間,地上のすべての人々は人間政府の相変らずの不完全さ,間ちがい,そして失敗にくるしみ,常につらい状態にいることになります。これは望ましいものではありません。しかし,世界でいちばん偉大な書物,真実の予言の書の権威にもとづいて,次のように言うことができます。すなわち,この完全な政府は私たちの宇宙を創造した御方の栄光に輝くみ業によつて来るのであつて,他の何人によるものでないということです。

4 天と光り輝く天体について調べると,地上に対する律法と秩序についてどんな疑問が生じますか。

4 強力な望遠鏡を用いて見るときでも,または人間の肉眼で天を見上げる時でも,私たちはこの宇宙の完全さを見ることができます。まつたく,宇宙の天体すべては完全であり,外界からこの地球に光を照らし,人類に光と熱と生命を与えます。すべての天体の複雑な関係を調べるとき,宇宙の法則に従う完全な秩序がその中にあることを認め得ます。これらの天体の運行法則が完全であることを示すのに現代科学に頼らなくても済みます。このことは,むかしの詩篇記者である予言者ダビデ王が天について語つた次の言葉と一致調和します,『もろもろの天は神の栄光をあらわし,大空はその御手のわざを示す。』それと全く関連したところでダビデは又,ヱホバ神の律法は完全であるとも言つています。(詩 19:1,7)宇宙の運行は,神の律法が完全であるというこの事実を証明しています。宇宙内の法則と秩序の完全さは,人類の規模をはるかに超越しているものです。それであるなら,この地上にいる人類のあいだにも完全な法則と秩序を持つべきではないでしようか。それらのものを持つことは,全く理にかなうことです。

5 (イ)宇宙的な法則がかくも完全であることは何を証明していますか。(ロ)この法則の源は,なんという名前を持つていますか。

5 宇宙内に運行している法則は,被造物のすべてに対して完全です。そのことは叡智のある最高の御方,万物を支配する法則の与え主なる全能の創造者の存在を証明するものです。この方は,すべての生命の源であつて,その御方の住まわれる霊界内のすべての被造物や,人間の住居である物質界内のすべての被造物は,生命を楽しんでいます。その御方は神です。その御方の名前はヱホバであると聖書は述べています。この大いなる完全な神から,全宇宙をかくも美しく支配するこの法則が出ているのです。

6 (イ)完全な政府ということについて,なぜ彼は評価することができますか。(ロ)私たちが人間の政府について不満であることから彼についてのどんな質問が生じますか。私たちはどんな結論に達しますか。

6 政府という事柄になるとき,大いなる完全の神は何が完全な政府であるかを評価することができるにちがいありません。彼が完全であられ,そして彼が完全な事柄を信じておられるということは,モーセの予言の中に述べられています。申命記 32章の3節と4節はこう述べています,『我はヱホバの御名をたたえあげん。我らの神に汝ら栄光を帰せよヱホバは磐にましましてその御行為は全く,その道はみな正し。』彼は完全の神です。すると,この地上の人間による政府については神はどう考えておられるでしようか。この地上の人間政府の下に住む私たちが満足しているのと同じく,この完全な神はそのような政府に満足しているなどと考えることができますか。不完全な私たちが不完全な人間の政府に満足していないとき神がそのような政府に満足しているなどと考えることができますか。神はいろいろの国のすべての政党よりも賢明な御方です。国々の政党は内輪もめしたり,ちがつた政党の政府を非難したり,また時折り行われる選挙によつて互に政府支配の地位を奪い取つたりしています。人間は諸国民を支配するために政府を設立しましたが,長い年月のあいだ人類はそのような政府に満足を感じなかつたのです。それでは,大いなる完全な神に満足と思われる政府は,全人類の歴史上ひとつもありませんでした。神は,御自分の不満を永久に続けさせないでしよう。

7 聖書は,人間政府のどんな歴史を述べていますか。そして,この歴史によると,その性質について神はそのような政府をどう見なしていますか。

7 聖書の記録は,神の民となんらかの関係を持つた政府全部の歴史を簡単に述べています。聖書は19世紀前に完成しました。しかし聖書を書くのが終了した時から後の将来の政府も,聖書はあらかじめに見ました。それで聖書の示すとこによると,その御名がヱホバであられる天の全能の神は,今日にいたるまでの人間の政府をことごとく前もつて見られ,また人間の政府の価値と性質を決定されたのです。智恵と正義と愛および力に完全であられるこの大いなる神の価値判断によると,いまに至るまで幾世紀にも亘つて延々とつづいてきたそのような地的な政府は,獣のような政府でした。人間の持つ国家的な誇がどのようなものであつても,聖書は人間のつくり出す政府を獣と述べています。聖書の最後の本である黙示録も,今日までの人間の政府の性質は獣のようであると示しています。このことを証明するために,ダニエルの予言の7章と黙示録 13章および17章をあなた御自身で読みなさい。

8 (イ)これらの人間の政府が獣のような性質を持つていたため,神はそれらに対し何を定めましたか。(ロ)神の否認を受けてどんな政府はすでに終りましたか。そして,どんな主要な理由の故に?

8 人間の政府が獣のようであるということは,貴重な人間の生命を殺して犠牲に供し,また諸国民のあいだに荒廃をもたらしたことからも示されます。その故に宇宙の統治者であられるヱホバ神は,御自分の選んだ時に人間のつくり出した政府をことごとく終らせると定めました。過去においてヱホバ神はいろいろの政府を滅ぼして御自分の言葉を成就させました。エジプト,アッスリヤ,そしてバビロンについての聖書の記録を読んでごらんなさい。どの場合でも次のことを知ります。すなわち人類の事柄を制御されるヱホバ神は,昔のけもののごとき政府を悲惨な終りにいたらせた者は御自分であると言明しておられるのです。後の政府であるメデヤ-ペルシヤ帝国,ギリシア帝国,そしてローマ帝国についても,聖書はそれらの帝国の来ることを前もつて告げました。これらの帝国も隆盛に達し,そして神に否認されたため悲惨な終りに達しました。その主要な理由は,これらの不完全な政府はみな,神の大敵にしてこの悪しき世の不敬虔な神サタン悪魔の見えざる力に制御されてきたからです。―ルカ 4:5,6。コリント後 4:4。ヨハネ第一書 5:19。

9 地を支配する最大の帝国は何でしたか。その種類がどんなものであろうとも,今日のすべての政府はなぜ終らねばなりませんか。

9 この地球を支配したすべての帝国の中でも,英米合併の世界勢力は人間の歴史上で最大のものでした。聖書はまたそれをも予めに告げ,その支持を主として受けている国際制度,すなわち国際連合のことをも予め告げています。しかし,明白な言葉を述べる聖書は,大強国と人々に考えられている今日のこれらの政府も,共産主義的なものであろうとなかろうと,終結してしまうと述べています。それらはみな不完全な政府です。そして,私たちの地の創造者にして完全な神の御心によると,不完全なものはこの地上で永続いたしません。

10 神はどんな政府の存在と働きを中止しませんか。それはどんな目的の為に永久に存続しますか。

10 私たちの時代の中に存在し,全能のヱホバ神が,その働きと存在を中止させない一つの政府があります。それは完全な政府です。すなわち神のメシヤの政府,神のキリストの政府,神の天的な子,主イエス・キリストの政府です。全能の神はこの政府を打ち倒しません。むしろ,この政府を用いて,私たちの時代の国民,種族,人種間に多くの苦しみをもたらしている不完全な人間の政治制度を打ち倒します。近づきつつある宇宙支配をめぐる戦争の時,この完全な政府は勝利を得て永久に存在するでしよう。そして神に讃美と名誉を帰すと共に,人類に永遠の祝福をもたらします。

11-13 (イ)完全な政府は,何がないなら可能ではありませんか。(ロ)良い政府について支配者もしくは支配者の群の重要性は,『アイダホ州対レイモンド・ブランガート』法廷意見の中で,どのように述べられていますか。

11 私たちはみな次のことに同意するにちがいありません。すなわち完全な政府は完全な支配者,または支配者たちの完全な群れなしでは可能でないということ,そして完全な神なしではもちろん可能ではないということです。過去および現在のすべての人間の政府は,神を認めました。彼らの認めた神々は,その崇拝者たちに完全な政府を与えることができませんでした。完全な政府は,制御力を行使する支配者もしくは支配者の群れに依存します。理性を持つすべての人は,その事実を認めます。ここにアメリカのアイダホ州,一地方の判事の述べた法律意見があります。この判事は,1958年4月8日,『アイダホ州対レイモンド,ブランガート』と知られている裁判で次のような意見を述べました。彼はその中でこう語つています。

12 『200年以上のむかし,ウイリアム・ペンがこの新しい地にクエーカーの植民地,フレンド派の植民地を設立したとき,(英国の)君主は彼にペンシルバニヤ州を与えた。彼の名にちなんでペンシルバニヤ州と名づけられたのである。彼は次のように教えた。

13 『「政府は時計のようである。政府は人間の与えるはずみで動く。人間が政府を動かすと同じく,人間はまた政府をこわす。それ故に,人間が政府に依存するというよりも,政府は人間に依存している。人間が良いなら政府が悪いということはあり得ない。もし政府が悪いなら人間はそれを癒やす。しかし,人間が悪くて政府が良いなら,人間は政府をゆがめて悪くし,自分たちの気質に合わせようとつとめる。」』― 印刷した意見書の6頁。

14 どんな政府の原則に関して,この意見は聖書と一致しますか。

14 これは神の言葉である聖書と一致します。すなわち完全な政府は,神御自身が全人類のために備え給う完全な支配者に依存しているということです。

政府の起源

15,16 古いバビロンの帝国以来,人間の政府はどのように運営され,力を持つようになりましたか。

15 人間の政府はどのように存在するようになりましたか。なぜ人間の政府は悪くなつて失敗しましたか。人間の書いた歴史によると,いろいろな方法によつて政府は働き始め,力を持つようになりました。4000年前のノアの時代の洪水後にできた最初の政府は,ニムロデという独裁者の掌握したものです。ニムロデは,ノアの是認も受けなければヱホバ神の是認も受けず,ただサタン悪魔の是認の下に,中東メソポタミヤの地に設立された政府を得ました。それはバビロンの独裁王国でした。ニムロデは神の敵で,『ヱホバに反対する力ある狩猟者』でした。彼は古いバビロン帝国もしくは最初のバビロン帝国を設立するために,近隣の国民に対して軍事征略を行つたのです。(創世 10:8-12,新口)その時以来,人類は多くの種類と型の政府を持ち,地上のいろいろの場所を支配して来ました。

16 これらの政府はいろいろな手段によつて存在するようになりました。たとえば,権力を握るとか,国民大衆が反乱するとか,国民に対する支配権力を欲する者たちの陰謀とか,また強いひとりの者が他の支配者を追いのけて自ら王位に即く横領によるのです。そして又,アメリカ合衆国の場合のように,外国勢力に反対する反乱によるだけでなく,憲法会議によつても政府を樹立しました。たとえば大英帝国の13のアメリカ植民地に対して1777年に連盟規約を作製した憲法会議のようなものです。今日のアメリカを支配する憲法が1788年に実施され始めた時まで,この連盟規約は,幾年ものあいだ植民地を制御していました。

17 (イ)政府について,人々は神が何をすることを好ませんか。(ロ)神は地上に政府を設立し得るということについて,どんな答は与えられねばなりませんか。それの最初の表明は何でしたか。

17 天の神ヱホバが,全人類を支配する政府を設立するということに対して,人間はそれを欲しません。人間がヱホバより先走つてわがままな行いをしたことは,地上に政府を設立するという神の能力に疑いを持つことを示します。しかしながら,神は全人類を支配する政府を設立し得ますか。この質問に対して普通の理性ならこう答えます。不完全な人間がいろいろな手段によつて政府を設立することができるのなら,全宇宙を制御して御使たちを支配する全能の神なる創造者に,地上の人間を支配する政府を組織し,設立し,そして行使せしめる力がないなどということはあり得ません。彼はたしかにこの力を持つておられます。過去において彼は最善の政府を設立し得るこの力を表明しました。神の是認を受けた地上の最初の王は,メルキゼデクという人でした。彼は,祭司であると共に王でした。彼は,後日エルサレムと呼ばれるようになつたサレムの邑で支配していたのです。メルキゼデクは最高の神の御名によつて家長アブラハムを祝福しました。サレムにあつた彼の政府は消滅しました ― どのようにであるかは知られていません。聖書の記録は,この事柄について一言も述べていないのです。(創世 14:18-20)しかし,聖書の予言の中では,祭司であると共に王であるこのメルキゼデクの政府は,完全な政府の予言的な型または予表として用いられているのです。神はメルキゼデクのごとき者,すなわち完全な支配者の手によつて,全人類を支配する完全な政府を設立するでしよう。―詩 110:1-4。ヘブル 5:10; 6:20; 7:1-17,28。

18 神が地上に立てた次の政府は何でしたか。そして,どのような面でそれは王国でしたか。

18 神が地上に立てられた次の政府は,クリスチャン時代よりも16世紀むかしのイスラエルの政府です。神は予言者モーセを指導者となし,御自分の選民であるイスラエルをエジプトの地から連れ出しました。彼らはエジプトで不本意ながら奴隷の生活をしていたのです。ヱホバは,彼らを荒野のところ,アラビヤ半島のシナイ山の麓にみちびきました。その場所で彼は彼らを支配する政府を設立し,自らは人間の目に見えぬ天的の王になりました。その政府の基礎は,良く知られている十戒でした。(出エジプト 20:1-17)ヱホバ神は,これらの十戒に加えて,幾百という他の律法をつけ加えられました。これらの律法は,神より与えられた律法であつて,イスラエルの国民を統治したのです。時経てイスラエルの要求に応ずるため,神はイスラエルの国民を支配するための見える王国を設立しました。これは,ヱホバ神が彼らをカナンの約束の地にみちびき入れて,その地に定住させ,そして悪鬼を崇拝するその地の悪しき住民たちを追い払つてから幾百年もの後でした。―サムエル前 8:4-22; 10:17-26; 12:1-14。

19 どんな面でイスラエルの政府は神権的な政府でしたか。なぜ,それはその当時までの地上でいちばんすばらしい政府でしたか。

19 神がイスラエルを支配するために設立した政府は,その時までに存在した世界のいろいろの政府の中でいちばんすばらしい政府でした。その政府は,神から与えられた律法を持つていましたから,神権政府でした。すなわちヱホバ神により支配された政府,国民だつたのです。それですから,その国民は神の見える代表を人間の指導者としてこの地上に持つていましたが,その政府は神権政府でした。聖書の告げるところによると,昔の諸国民はイスラエルの持つていた律法に驚嘆して次のように言いました。「いずれの大いなる国民に,きよう,私があなた方の前に立てるこのすべての律法のような正しい定めと,おきてとがあるであろうか。」そして,ヱホバ神はイスラエル人に次のことを約束しました。すなわち彼らがこれらの律法を守り行つて,ヱホバを自分たちの神として崇拝し,また従うとき,ヱホバは彼らを諸国民のかしらにならせて末尾にならせないでしよう。彼らは諸国民の中で先頭に立つものとなり,現代のイスラエルの国民が今日経験しているように諸国民の最下部につくことはないでしよう。―申命 4:5-8; 28:13,14,新口。

20 ソロモン王の統治は,ヱホバ神の設立した政府について何を表わしましたか。

20 ヱホバ神がイスラエルに設立したこの政府は,非常に大きな栄光と光輝と祝福を持つことができました。そのことは,賢明なソロモン王の平和な統治期間中に表明されました。全世界はソロモンの智恵のことを聞いたのです。聖なる本,聖書の中にソロモンのすばらしい智恵のいくらかが保存されています。ソロモンの時,地上のすべての王からつかわされた人々は,ソロモンの智恵を聞くためにエルサレムに来ました。地のいちばん極とも言える所のシバの女王でさえも,ソロモンの智恵を聞き,イスラエルにおけるソロモンの国の栄華を見るためにはるばる来た程です。(列王紀略上 10:1-10; 4:34)聖書の記録の告げるところによると,イスラエル人はこの国の支配下にあつて祝福を楽しみました。聖書の記録はこう述べています。すなわちイスラエルの子たちは,ダンからベエルシバにいたるまで飲食して楽しみ,各人はおのおの其の葡萄の樹の下といちぢくの樹の下に坐り,彼らの神の恵みと,神が彼らの上に置かれた政府について大いによろこびました。―列王紀略上 4:20,25。

21 ソロモン王の政府は何を予表していましたか。なぜそれは,ソロモン王の政府よりも大きいものなのですか。

21 ソロモンの政府は栄華に満ちたすばらしいものであり,そして国民におよんだ祝福は大きなものでした。しかし,それは来るべき完全な政府を予言的に予表するものでした。その完全な政府の下にあつて,地上の全家族と全国民は神の定められた時に祝福を受けるでしよう。その政府は,ソロモン王よりも大いなる王,賢明なる王を持つでしよう。いまから19世紀むかし,イスラエルの地にひとりの人が立ちました。そして,シバの女王はソロモンの智恵を聞くために地の南の極から来て,さばきの時にはユダヤのその時代の者と共によみがえされると,ユダヤ人に語りました。なぜですか,なぜなら,シバの女王は不完全な人間の智恵を聞くためにはるばる来ましたが,その時のイスラエル人の中には,ソロモンよりも大いなる者,ソロモンよりも偉大なる者がいたのです。しかし,イスラエル人はこの者の言葉に耳を傾けようとはしませんでした。彼らはその者を殺すようなことさえしました。(マタイ 12:42)完全な政府を支配する御方は,この方すなわちソロモンよりも大いなる方,ソロモンよりも偉大なる方です。ヱホバ神は御自分の定められた時に完全な政府を設立し,全地を支配する力をことごとく取ります。

22 ソロモンよりも偉大なこの支配者の政府の下で楽しむ祝福については如何ですか。

22 ソロモン王の支配下にあつたイスラエル人は,平和,繁栄,幸福そして敬虔の祝福を楽しみました。それであるなら,この強力な支配者,完全な統治者,むかしの賢明なソロモン王よりも偉大な御方の支配下にあつて,全人類はいかに多くの同様な祝福を楽しむことでしよう! それらは永遠の生命,永続する平和,消滅しない幸福,そして敬虔をともなう多くの繁栄という祝福です。

23 王たちが『ヱホバの座位』に坐つていながら,昔のイスラエル人はなぜ政府の完全さを楽しまなかつたのですか。

23 今日,私たちは来るべきこの完全な政府を確信して待ち望むことができます。むかしのイスラエル人は,神の大祭司によつて油注がれた人間の王の支配下にあつて神の模型的な国の下に生活していました。それで,それらの王たちは,『ヱホバの座位』に坐ると言われました。しかし,それらのイスラエル人は政府の完全さを楽しまなかつたのです。王も民も,みな神の完全な律法を守ることができませんでした。なぜですか。なぜなら,彼らはみなアダムとエバの子孫だつたからです。私たちはみなアダムとエバから罪と不完全を相続したと神の言葉は述べています。クリスチャン使徒パウロは,次のように正しく語りました,『ひとりの人によつて,罪がこの世にはいり,また罪によつて死がはいつてきたように,こうして,すべての人が罪を犯したので,死が全人類にはいり込んだのである。』(ロマ 5:12,新口)私たちはみな罪の中に生まれました。全くのところ,母親は,よこしまの中に私たちをはらみました。神権的な政府の下にあつたユダヤの国民の場合でもこのことは言えます。ダビデ王自身もこの悲しい事実を認めました。(詩 51:5)それで,油注がれた王である支配者も,国民も両方とも不完全で死を受けました。

24 モーセを通して与えられた神の律法は,イスラエル人にどんな事実を教えるべきであると,神は目的を立てられましたか。そして,ヨブのどんな質問と答は,彼らが政府の完全さを持たない理由を示しましたか。

24 ヱホバ神の目的は,予言者モーセを通して与えられた律法が御自分の民イスラエルに,彼らの罪人なること,彼らの不完全なることを教えることでした。以前はユダヤ教のパリサイ人であつた使徒パウロも,次のように語つています,『律法を行うことによつては,すべての人間は神の前に義とせられないからである。律法によつては,罪の自覚が生じるのみである。』(ロマ 3:20,新口)私たちは神の律法を行おうと努めますが,しかしできません。その事実は私たちが不完全に生まれたことを示します。私たちが不完全である結果,私たちは罪人です。それで正直なユダヤ人は,次のことを認識し,また神の律法は,彼らの認識することを援助したのです。すなわち,彼らは罪人であつて完全な政府を持ち得ないこと,そして罪深い人間は彼らの支配者,彼らの油注がれた王として奉仕していたということです。ここにおいて,忍耐を持つたヨブという名の予言者が次のように問うた質問は極めて適切なものです,『誰か清き物をけがれたる物の中より出し得る者あらん。』母親自身も不完全で,しかも不完全な男によつてはらむのですから,完全な子供を産み得るどんな母親がいるでしようか。ヨブは次のように答えました,『ひとりも無し。』(ヨブ 14:4)それで人間は不完全であり,また人間が政府の支配者を出すのですから,人間が完全な政府をつくりだすことなどとうてい期待できません。人間にはできないのです。モーセを通して与えられた神の律法は,忠実で信仰を持ちつづけたイスラエル人にその事実を銘記させました。

25 完全な政府をつくり出すのに何が必要ですか。それでモーセを通して与えられた神の律法は,イスラエル人にどんな他の事実を示しましたか。

25 完全な政府がつくり出されるためには,政府の完全な源がなければなりません。唯一つの完全な源は神です。モーをを通してイスラエル人に与えられた神の律法は,イスラエル人が不完全であつて,完全な人間の犠牲によるあがないを必要とする罪人であるということ以上を示したのです。神は御子を通してその完全な人間の犠牲を供します。モーセを通して与えられた神の律法は,イスラエル人が完全な政府を必要とすることを彼らに示しました。その神の律法は,罪と不完全と死から彼らを向上させるのに必要なあがない主を指し示すだけでなく,彼らの王をも指し示しました。モーセを通して与えられた神の律法は,次のように命じました,『なんじの神ヱホバの選びたもう人をなんじの上に立てて王となすべし。』(申命 17:14,15)『エルサレムの女よ呼われ。みよ,汝の王なんじに来る。』と神の予言は述べています。―ゼカリヤ 9:9。

26 神は完全な政府の他に何を供給することができますか。何時このことをすると神は約束しましたか。

26 完全な源であられる神は,完全な政府をつくり出すことができるだけでなく,その政府のために必要な完全な支配者をも供給することができます。神はこのことをすると約束しました。クリスチャン時代よりも19世紀以上のむかし,神は忠実な家長アブラハムをカルデヤのメソポタミヤの地より呼んで中東の約束の地に入れました。神は忠実なアブラハムにこう告げました。すなわち神はアブラハムをして地の全家族への祝福となし,そしてアブラハムと彼の子孫なる裔にあつて地のすべての家族と国民は祝福を受けるということです。(創世 12:1-3; 22:17,18)アブラハムが100才で彼の妻サラが90才のとき,神はイサクという名の息子を家長アブラハムに奇蹟的に与えました。イサクは王になりませんでした。しかし,神がアブラハムの妻サラによりアブラハムにこの息子を与えると告げたとき,サラは王たち,支配者たち,統治者たち,王なる君主の先祖になると語りました,『我かれを祝み,彼をしてくにぐにの民の母とならしむべし。もろもろの民の王たち彼より出ずべし。』このわけで彼女の名前は王妃という意味のサラに変えられたのです。(創世 17:15,16)それで,予定の時に現われて,地の全家族と諸国民が祝福を受けると神の言われたこのすえは,王なるすえでした。それは王になるものでした! 王の政府はできるのです!

27 ヱホバは誰たちを,設立した政府を持つ一つの国民に形成しましたか。この国民のどの部門を通して約束された王は来ますか。

27 家長のアブラハムは12人の孫を持つていました。これら12人はイスラエルの12の支族をつくり出し,エホバ神はそれらのものを一つの国民につくり上げました。ヱホバ神は,彼らの上に神権政府を設立したのです。彼らの神なる王および律法の与え主であるヱホバは,彼らに十戒を与えました。(申命 33:1-5)神は,イスラエルのこの12支族の中から,全人類を祝福する支配者を生ぜしめる特定な支族を選びました。それはユダの支族でした。そしてユダの父親は,彼に次の祝福を与えたのです,『杖ユダを離れず,法を立る者その足の間をはなるることなくしてシロ(大いなる平和な者)の来る時にまでおよばん。彼にもろもろの民したがうべし。』(創世 49:10)それでは,ユダのどの子孫が王になりますか。

28 アブラハムとサラに告げられた王についての神の約束は,実際には誰に成就し始めましたか。この者とむすんだ神の厳粛な契約は,実際には何を意味しましたか。

28 神はアブラハムとその妻サラにむかい,もろもろの王は彼女から来ると約束しました。その約束は,ベツヘレムの小さな邑にいた羊飼の若者ダビデに成就し始めました。ダビデはユダの家系の11番目にあたります。時経てダビデは,油注がれた王になり,イスラエルの12支族を支配するようになりました。間もなくして彼は,エルサレムの聖都内に政府の座を設立しました。神の聖なるけいやくの箱はその場所にたずさえ入れられ,ダビデ王の宮殿近くに置かれました。それから神はダビデ王と厳粛な契約をむすび,その国はダビデの家族,彼の家系,彼の家,彼の血統から離れることがないと約束しました。(サムエル後 7:12-16)詩篇 89篇の中で神は次のように述べられました。すなわち神はダビデとこの契約をむすび,神はこの契約を決して破らないと言われました。この理由の故に,ダビデから出る完全な王は,日と月のつづくかぎり,つまり永久につづいて終ることのない御座を持つでしよう。そして政府内に後継者を持つ必要はないでしよう。―詩 89:3,4,19-37。

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