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運動は本当に必要ですか目ざめよ! 2005 | 5月22日
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運動は本当に必要ですか
「健康維持のために週2回,運動しよう。1日に30分,体を動かそう。がん予防のためにアルコールは控えるのがよい。心臓病の危険を減らすためにアルコールを飲むとよい。こうした善意のアドバイスに困惑させられることがあるだろうか。ある健康情報がメディアで取り上げられたかと思えば,翌週には全く違う情報が提供される。……なぜ科学者の見方はいろいろなのだろう。ある週にコーヒーは危険とされたのに,翌週には無害と言われるのはなぜか」。―バーバラ・A・ブレーム,教育学博士,運動・スポーツ科学の教授。
栄養と運動について,健康専門家たちの意見は異なる場合があります。健康情報があまりに多くて困惑している人も少なくありません。とはいえ,適度に体を動かす必要があるという点では,研究者の意見は全体的に一致していると言えます。健康のためには,定期的な運動が不可欠です。
運動不足は,現代社会の深刻な問題となっています。先進国では特にそうです。それらの国でも長い間,多くの人が農耕,林業,建築などの肉体労働に携わっていました。もちろん,昔の人々は生計を立てるために体を酷使することも多く,寿命を縮めることさえありました。ブリタニカ百科事典(英語)は,「古代のギリシャやローマで平均寿命は28歳前後だった」としています。これに対し,20世紀の終わりに,先進国における平均寿命は74歳前後になりました。こうした変化はなぜ生じましたか。
科学技術 ― その功罪
何百年も前の人と比べると,現代人のほうが健康で長生きです。これは,一つには技術革命のおかげです。現代の数々の発明によって人々の生活は様変わりし,以前には手間のかかった仕事がずいぶん楽になりました。医学は病気との闘いにおいて大きく前進し,人々の健康状態は概してよくなっています。とはいえ,皮肉な結果も生じています。
現代の科学技術は健康増進に役立ってきましたが,時とともに,相当数の人に座っていることの多いライフスタイルをもたらしてきました。アメリカ心臓協会が最近出版した「心臓血管疾患の国際統計」(英語)と題する報告書には,「経済の変遷,都市化,工業化,グローバル化によるライフスタイルの変化で,人々は心臓病になりやすくなっている」とあります。この報告書は,主な危険因子として「運動不足と不健康な食生活」を挙げています。
わずか50年前には多くの国で,よく働く人は汗を流して田畑を耕し,自転車で町に出て用事を済ませ,晩には家の修繕などをしたものです。ところが,その孫の世代の生活は全く異なっています。現代の労働者の中には,ほとんどの時間コンピューターの前に座り,どこに行くにも自動車に乗り,晩はテレビの前で過ごすという人がいます。
ある調査によれば,スウェーデンのきこりはかつて,伐採や丸太運びで一日に7,000㌔㌍を消費しましたが,今では,そうしたきつい仕事のほとんどは高性能の機械が行なっています。かつては世界の道路の多くを人間がつるはしとスコップで建設し,保守していました。しかし今では発展途上国でも,地面の掘り起こしや土砂の運搬がブルドーザーなどの土木機械によって行なわれています。
中国の一部地域でも,交通手段として自転車よりスクーターを選ぶ人が着実に増えています。米国では,外出の25%が1マイル(約1.6㌔)未満の距離ですが,そのような短い移動の75%に車が使われています。
現代の科学技術のために,子どもの世代も座っていることが多くなっています。ある調査によれば,テレビゲームが「いっそう面白くリアルになり,子どもたちが……ゲーム機の前で過ごす時間が長くなっている」とのことです。テレビを見ることなど,子どもたちが座ってする他の娯楽に関しても同じ状況です。
座っていることの多いライフスタイルの危険
体を動かすことが大幅に減ったために,多くの身体的,精神的,感情的な問題が生じています。例えば,英国の保健機関は最近,次のように報告しました。「活発に動かない子どもは自尊心が低く,不安感が強く,ストレスが大きくなりやすい。そうした子どもは,活発な子どもと比べてたばこや薬物を使用する可能性も高い。あまり体を動かさない従業員は,よく体を動かす従業員よりも欠勤が多い。運動をしないと,晩年に日常の活動を行なう体力や柔軟性が失われる。その結果,自活できずに精神的にも不健康になる人が多くなる」。
カナダ・フィットネス・ライフスタイル研究所の所長コーラ・クレーグは,「カナダ人は,仕事で体を動かすことが以前と比べてずいぶん減った。……全体的に見て,身体活動が減少している」と述べています。カナダのグローブ・アンド・メール紙(英語)は,「カナダ人の約48%は太り過ぎで,そのうち15%は肥満である」と伝えています。同紙はさらに,カナダでは大人の59%が座りがちの生活をしているとも述べています。フィンランド,クオピオ大学のマッティ・ウーシツパ博士は,「肥満および座っていることの多いライフスタイルが増えているため,世界じゅうでII型糖尿病が急増している」と警告を発しています。
最近の調査からすると,香港<ホンコン>では35歳以上の人の死因の約20%に運動不足が関係している可能性があるようです。この調査は香港大学の林 大慶教授が行ない,2004年に「疫学年報」(英語)に載ったもので,香港の中国人の間で「運動不足は喫煙よりも危険」と結論しています。研究者たちは,中国のほかの地域でも「同様の原因で多くの人が亡くなる」と予測しています。
こうした懸念は正当でしょうか。運動不足は本当に健康に有害で,しかも喫煙より危険なのでしょうか。体を動かす人に比べて,体を動かさない人は血圧が高く,脳卒中や心臓発作を起こしやすく,ある種のがんになりやすく,骨粗鬆症になる可能性が高く,肥満になる傾向が強いということは広く認められています。a
ウォールストリート・ジャーナル紙(英語)はこう伝えています。「栄養不良が広く見られる地域も含め,地上のすべての大陸で,太り過ぎあるいは肥満の人の数が驚くべき速度で増えている。主な原因は,米国で肥満症の原因となっているのと同じ,高カロリーの食事と座りがちの生活という組み合わせである」。スウェーデンのストックホルムにあるカロリンスカ研究所で保健行動の教授をしているステファン・レスナー博士もこの点を認め,「世界で肥満が増加していない国はない」とさえ述べています。
世界的な問題
明らかに,適度な運動を計画的に行なうことが健康に不可欠です。運動不足の危険が広く報道されていても,世界人口の大半は実質的に運動不足です。世界心臓連合は,世界人口の60%から85%,「特に女性は,健康が増進するほどの運動をしていない」と見ており,「子どものほぼ3分の2も健康のためにもっと体を動かす必要がある」と述べています。米国では,大人の約40%が座ってばかりで運動をしておらず,12歳から21歳までの若者の約半数が激しい運動を定期的に行なってはいません。
ヨーロッパの15か国で,座っていることの多いライフスタイルがどれほど広まっているかについて調査がなされ,体をあまり動かさない人の割合は最も低くてスウェーデンの43%,最も高くてポルトガルの87%であることが分かりました。ブラジルのサンパウロでは,人口の約70%が座ってばかりで運動をしていません。世界保健機関(WHO)は,「世界各地から集まった健康調査に関するデータは,驚くほど似通っている」と報告しています。であれば,毎年推定200万人が運動不足の関係する原因で亡くなっているのも驚きではないでしょう。
世界の健康専門家たちは,この傾向を憂慮すべきものと見ています。世界各地の政府関係機関は状況を踏まえ,適度な運動の益について国民を啓発する様々な計画を推進してきました。オーストラリア,日本,米国は2010年までに,国民の運動量を10%増やすことを目標にしています。スコットランドは2020年までに,大人の50%が定期的に運動することを目指しています。「ほかに,メキシコ,ブラジル,ジャマイカ,ニュージーランド,フィンランド,ロシア連邦,モロッコ,ベトナム,南アフリカ,スロベニアが国として運動計画に力を入れている」と,WHOの報告は述べています。
政府や保健機関が努力を傾けているとはいえ,自分の健康を管理する最終的な責任は,もちろんわたしたち各自にあります。それで,こう自問してみてください。『体を十分動かしているだろうか。十分に運動しているだろうか。そうでないなら,座っていることの多いライフスタイルから抜け出すために何ができるだろうか』。次の記事は,運動不足を解消する方法について述べています。
[脚注]
a 運動不足によって,命を脅かす病気になる危険が大幅に高まります。例えば,運動不足によって,「心臓病になる危険は倍になり,高血圧の危険は30%増す。また,心血管疾患と脳卒中で死ぬ危険が倍になる」とアメリカ心臓協会は述べています。
[4ページの囲み記事]
運動不足ゆえにかかる費用
多くの政府や保健機関は,運動不足ゆえに社会にのしかかる財政負担について憂慮しています。
● オーストラリア - 同国では,運動不足と関係のある保健医療費が毎年およそ415億円に上る。
● カナダ - 世界心臓連合によれば,カナダは「運動不足が原因の」保健医療費に1年で2,200億円以上を費やしている。
● 米国 - 2000年に,米国は運動不足が直接関係する医療費に約8兆3,600億円という天文学的な額を費やした。
[5ページの囲み記事/図版]
子どもにも運動が必要
最近の調査で,運動習慣のない子どもが増えていることが分かりました。男の子よりも女の子のほうが体を動かしていません。子どもは大きくなるにつれて運動量が少なくなるようです。子どもが定期的に運動することから得られる益には以下のようなものがあります。
● 骨と筋肉の強化および関節の健全な発達
● 太りすぎや肥満の予防
● 高血圧に伴う問題の予防あるいは遅延
● II型糖尿病の予防
● 自尊心の向上と不安やストレスの防止
● 座ってばかりの大人にならないための,活動的な生活習慣の確立
[6ページの囲み記事/図版]
年配者もいっそう健康に
年を取れば取るほど,適度な運動から益を得やすいと言われています。とはいえ,多くの年配者は,けがや病気を恐れて定期的に運動するのをしりごみします。もちろん,激しい運動を始める前に医師に相談するのが良いでしょう。年配者は運動すれば生活の質が大いに向上する,と専門家は考えています。年配者は定期的な運動によって,以下のような点で益が得られます。
● 頭の働き
● 平衡感覚と柔軟性
● 感情面での健康
● 病気やけがからの回復
● 胃腸と肝臓の機能
● 新陳代謝
● 免疫系
● 骨密度
● 活力
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十分に運動していますか目ざめよ! 2005 | 5月22日
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十分に運動していますか
「健康維持の点で,現在用いられまた今後見込まれるどんな薬も,生涯にわたる計画的な運動に勝るほどの効果は期待できない」。
これは,医学者のウォルター・ボルツ2世が1982年に書いたものです。以来23年間,数多くの健康専門家や保健機関がこの言葉を書籍,雑誌,ホームページに引用してきました。ボルツ博士のアドバイスは,1982年当時と同じく今日でも通用し,健全で適切な見解として広く受け入れられています。それで,『十分に運動しているだろうか』と自問してみるのは良いことです。
自分は太りすぎてはいないから運動する必要はない,という誤った考えをする人がいます。肥満や太りぎみの人が定期的な運動から大いに益を得ることは確かですが,太りぎみでなくても身体活動を増やすなら,全般的に健康を増進させ,ある種のがんなどの重い病気を予防できる可能性は高いのです。また,最近の研究によれば,体を動かすことが不安を軽減し,うつ病の予防になる場合もあります。実際,ほっそりした多くの人も精神的また感情的ストレスを抱え,心臓血管疾患や糖尿病など,運動不足によって症状の進む病気にかかります。ですから,太りぎみでもそうでなくても,座っていることの多い生活を送っているなら,身体活動を増やすのは良いことです。
座っていることの多いライフスタイルとは?
十分に体を動かしているかどうかはどうしたら分かるでしょうか。座りがちのライフスタイルとはどのようなものかについては様々な意見があります。とはいえ,大半の人にあてはまる一般的な規準に関して,ほとんどの健康専門家の意見は一致しています。幾つかの保健機関が採用している説明で,座っていることの多いライフスタイルとは以下のようなものです。(1)30分以上の運動や体を激しく動かす活動を週に3回もしておらず,(2)余暇のときはあまり動かず,(3)1日に100㍍以上歩くことがめったになく,(4)起きている間はほとんど座っていて,(5)体をほとんど動かす必要のない仕事をしている。
あなたは十分に運動しておられますか。そうでないなら,今日から何かを始めることができます。『でも時間がない』とおっしゃるかもしれません。朝起きたとき体が重く,一日の初めは身支度をして仕事に出かけるのが精一杯です。そして長い一日の終わりには,やはり疲れきっていて運動どころではなく,やるべき事がほかにいっぱいあります。
また,運動をし始めたものの,きついと感じたり,運動後に気分が悪くなったりして,数日でやめてしまった人も大勢います。体力維持のためには厳しいウエート・トレーニングをこなし,毎日何キロも走り,考え抜かれたストレッチを行なわなければならない,と考えてしりごみしている人もいます。―「ウエート・トレーニングとストレッチ」という囲み記事をご覧ください。
さらに,費用がかかり,不便に感じる点もあるでしょう。ジョギングには,ふさわしいウエアとシューズが必要です。筋力トレーニングは,ダンベルやそれなりの運動器具を必要とします。スポーツクラブに入るにはけっこう費用もかかるでしょう。ジムに通うには時間がかかるかもしれません。それでも,こうしたことはいずれも,体をよく動かして健康を増進させることができない理由とはなりません。
現実的な目標を定める
何よりも,運動を始めようという時は,無理な目標を立てないことです。ゆっくり始め,徐々に量を増やしてください。研究者たちは最近,軽い運動や中程度の運動の効果を認め,座りがちの生活を送ってきた人が少しずつ運動量を増やしていくことを勧めています。例えば,「一日に数分ずつ増やしていって30分間の運動にし,週のほとんどの日,できれば毎日行なうように」と,カリフォルニア大学が発行している栄養・体力・ストレス対処に関する刊行物「カリフォルニア大学バークレー・ウェルネス・レター」(英語)に述べられています。「歩くことや階段を使うことなど通常の活動をすればよく,ただ,回数を増やす,少し長く行なう,少し速度を上げるというだけのことだ」ともあります。
初めて行なう人は,量や激しさではなく定期性に注意を向けるべきです。筋力や持久力がついてきたら,運動の量や激しさを増やすことに取り組めます。それには,早足のウォーキング,ジョギング,階段上り,サイクリングなど,少し激しい運動を長めに行なうようにすればよいのです。やがて,よりバランスの取れた体力づくりとなるよう,ウエート・トレーニングやストレッチなども取り入れられるかもしれません。ただし,多くの健康専門家は,「痛むほどやって初めて効果がある」といった運動方法に今では同意していません。それで,けがの危険を減らし,疲れ果てたり気落ちしたりしてやめてしまうことのないように,気持ちよい程度にしておくのがよいでしょう。
定期的に行なう
運動する時間が取れないと思える人たちは,上述の「ウェルネス・レター」にある次の提案を歓迎するでしょう。「1日に短時間の運動を何回かする場合でも,その効果は累積する。つまり10分間ずつ3回運動すると,30分間運動したのとほぼ同じ効果がある」。それで,健康を大幅に増進させるために激しい運動を長く行なうことは必ずしも必要ではありません。「アメリカ医師会ジャーナル」誌(英語)によれば,研究者たちは,「激しい運動だけでなく軽い運動や中程度の運動でも,冠状動脈性心疾患の危険を減らすことに役立つ」ことを発見しています。
とはいえ,定期的に行なうことは必要です。ですから,運動をする明確な日時をカレンダーを見ながら決めるとよいかもしれません。運動の予定を二,三週間つづけると,それが生活の習慣になることに気づくでしょう。健康の増進を実感できると,運動する時間を楽しみにするようになることでしょう。
活動的であるのは良いこと
毎日30分の運動でも健康によいのは確かですが,もう少し行なえるとよい,というのが医師たちの最新の意見です。現在,心臓の血管を最良の状態に保つには,毎日合計60分間の運動をするのがよいと言われています。この場合も,短時間の運動を1日に何回か行なうのでも構いません。「カナディアン・ファミリー・フィジシャン」誌(英語)はこう述べています。「現在提唱されているのは,1日に合計で60分間運動することである。健康に及ぶ益の幾つかは,運動を分けて行なうかどうかで大した違いはないようだ」。この医学雑誌はさらに,「激しい運動はあらゆる死亡率の低下に寄与するという証拠を提出する研究もあるが,現在では適度な運動を奨励するほうに重きが置かれている」とも述べています。
肝心な点は,人の体は動き回り,定期的に体を動かすようにできている,ということです。座っていることの多いライフスタイルは健康によくありません。いつも活動的であることの代わりとなるビタミン剤,薬剤,食品,外科的な手法はありません。もちろんわたしたちすべては,中程度であれ激しいものであれ,少しづつ分けてであれ長時間続けてであれ,日常的に十分運動するには時間が必要である,という現実に直面します。食事や睡眠のために時間を取るのと同じように,いつもよく体を動かすための時間を作ることも不可欠です。これには,自己鍛錬と自己管理が欠かせません。
努力の要らない運動はありません。それでも,活動的な生活を続けることに伴う不便や犠牲は,活動的でない生活によって命に及ぶ危険に比べれば大きくはないでしょう。よく体を動かし,時々汗を流し,筋肉を使ってください。そうすれば,長く健康でいられることを期待できるでしょう。
[8ページの囲み記事/図版]
中程度以上の運動
毎日の身体活動を幾らか増やすだけでもかなり健康が増進しますが,研究者たちは,より激しい運動にさらに大きな効果があると述べています。例えば,以下のような運動です。
健康の専門家は,激しい運動を計画する前に医師に相談するように勧めています。
● 早足ウォーキング: エクササイズ・ウォーキングやパワー・ウォーキングなどとも呼ばれ,手軽にできる運動の一つです。必要なのは,快適なウォーキング・シューズと歩くコースだけです。普通に歩くよりも歩幅を広げ,かなり速いペースで歩いてください。時速4㌔から9㌔ぐらいを目指します。
● ジョギング: ジョギングとは基本的に,ゆっくりしたペースで走ることです。心血管系を鍛えるのに最も効果的な方法と言われています。とはいえ,衝撃が強いので,筋肉や関節を痛める可能性もあります。ですから,ジョギングをする人には,適切なシューズをはき,柔軟体操を行ない,やり過ぎないようにとの注意が与えられています。
● サイクリング: 自転車があれば,非常に効果的な運動を楽しめます。サイクリングをすると,1時間に700㌔㌍が消費されます。ただし,ウォーキングやジョギングと同じく,サイクリングも普通は路上で行ないます。このため,サイクリング中は注意を怠らず,事故のないように安全策をきちんと講じなければなりません。
● 水泳: 水泳は,体の主な筋肉をすべて動かすことができます。関節の柔軟性を保つのにもよく,心血管系に及ぶ益はジョギングをしたときとほぼ同じです。水泳は体への負担が少ないので,関節炎や腰痛,体重の問題を抱えている人,また妊婦にも勧められています。一人では泳がないでください。
● 跳躍運動: この有酸素運動には小さなトランポリンを使います。トランポリンの上で跳びはねるだけでよいのです。この運動を勧める人が言うには,跳躍運動は血液やリンパ液の循環を良くし,心肺機能を高め,筋肉の状態や協調,平衡感覚を向上させます。
[9ページの囲み記事/図版]
ウエート・トレーニングとストレッチ
研究者たちは最近,バランスの取れた体力づくりには,ウエート・トレーニングなどの筋力を鍛える運動を含めるのがよいと見ています。ウエート・トレーニングは適正に行なえば,筋肉を強化するだけでなく,骨密度を増し,体脂肪を減らすのに有効です。
ストレッチをして体を柔軟にし血行をよくすることを勧める健康専門家も多くいます。ストレッチをすると,関節が十分に曲がるようになります。
とはいえ,けがをしないために,ウエート・トレーニングもストレッチも正しく行なう必要があります。信頼できる資料を読んだり医師に相談したりするなどして基本を学ぶのがよいでしょう。
[9ページの囲み記事/図版]
運動と精神作用
激しい運動を行なうと,ドーパミン,ノルエピネフリン,セロトニンなど,精神安定作用のある脳内化学物質の分泌が促進されることを科学者たちは発見しました。これは,運動をすると気分が良くなるという意見が多いことの説明となるかもしれません。定期的に運動する人は,座ってばかりの人よりうつ病になりにくいことを示す研究もあります。そうした研究の中にはそれほど確定的でないものもありますが,多くの医師はストレスや不安を軽減する方法として運動を勧めます。
[10ページの囲み記事/図版]
健康増進の心がけ
最近の研究によれば,座っていることの多い人は幾らか体を使う必要のある日常の活動を増やすだけでも益を得られるようです。以下のようなことができます。
● エレベーターに乗る代わりに階段を上る。あるいはエレベーターを少し手前の階で降りて,後は階段で上る。
● 公共の交通機関を利用する場合,一つ二つ手前の停留所で降りて残りは歩く。
● 車を使う場合は,目的地から少し離れたところに駐車する習慣をつける。立体駐車場の場合,階段を上ることになる階に駐車する。
● 歩きながら話す。友人や家族とのおしゃべりは必ずしも座ってする必要はない。
● 座業の場合,立って仕事をする機会を見つけ,可能ならいつでも歩く。
[10ページの囲み記事/図版]
水分を十分に取っていますか
運動中に水分を十分に補わないと,健康を損なうことがあります。疲労が生じ,体の動きがぎこちなくなり,けいれんが起きかねません。運動すると発汗が促されて,血液の量が減少することがあります。発汗によって失われた水分を補わないと,血液を循環させるために心臓がよけいに働かなければならなくなります。脱水症状を避けるために,運動の前後も運動中も水を飲むことが勧められています。
[11ページの囲み記事]
体を大切に ― それは神からの贈り物
聖書は,体,そして命という贈り物に深い敬意を持つように勧めています。古代イスラエルのダビデ王は,「わたしは畏怖の念を起こさせるまでにくすしく造られている」と書きました。(詩編 139:14)真のクリスチャンはダビデのように,命という贈り物に対する鋭い認識を示します。健康管理を大切な責任と考えます。
およそ2,000年前に,神は使徒パウロに霊感を与えて,次のように記させました。「体の訓練は少しの事には益がありますが,敬虔な専心はすべての事に益が(あります)。それは,今の命と来たるべき命との約束を保つのです」。(テモテ第一 4:8)パウロの言葉は,運動には確かに益があるとはいえ,それは神との良い関係という長期的な益ほど大きくはないことを示しています。ですから真のクリスチャンは,健康を追求する点で平衡を保ち,「体の訓練」が神への崇拝よりも優先されることが決してないように努めます。
クリスチャンは,健康であればそれだけ神と隣人への愛を示す面で多くを行なえることを認識しています。ふさわしい栄養と休息に加えて,活動的であることは健康に不可欠です。真のクリスチャンは自分の体を神からの贈り物として大切にし,健康によい習慣を保つことに努めます。
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