ものみの塔 オンライン・ライブラリー
ものみの塔
オンライン・ライブラリー
日本語
  • 聖書
  • 出版物
  • 集会
  • 「ご覧ください,エホバの奴隷女でございます!」
    その信仰に倣う
    • 顔を上げ,目を丸くしているマリア

      第17章

      「ご覧ください,エホバの奴隷女でございます!」

      1,2. (イ)マリアは見知らぬ人からどんなあいさつをされましたか。(ロ)マリアが人生の岐路に立っていたと言えるのはなぜですか。

      マリアはその人が家に入ってきた時,顔を上げ,目を丸くします。マリアの両親を訪ねてきたのではありません。マリアに会いに来たのです。ナザレの人でないことは確かです。この小さな町で,よそ者はすぐに分かります。もっとも,この人はどこにいても目立つことでしょう。マリアは,聞いたこともないようなあいさつの言葉をかけられます。「こんにちは,大いに恵まれた者よ。エホバはあなたと共におられます」。―ルカ 1:26-28を読む。

      2 こうして聖書に,ガリラヤのナザレの町に住む,ヘリの娘マリアが登場します。この時,マリアは人生の岐路に立っていました。マリアは,裕福ではないものの信仰の厚い人である大工のヨセフと婚約していました。今後どんな生活を送るかは容易に想像できたでしょう。妻として夫を支えながら働き,共に家庭を築くという素朴な生活です。ところが突然,訪問者がやって来て,マリアに神からの任務を告げたのです。その務めによって,マリアの人生は一変します。

      3,4. マリアをよく知るには,どんなことを忘れる必要がありますか。また,どんなことに思いを集中させる必要がありますか。

      3 意外かもしれませんが,聖書はマリアについてあまり多くのことを記していません。生い立ちについてはほとんど述べておらず,性格に関する情報はさらに少なく,容姿については全く触れていません。とはいえ,神の言葉がマリアについて述べていることは,実に啓発的です。

      4 マリアをよく知るには,様々な宗派が広めた固定観念にとらわれないようにする必要があります。ですから,絵の具や大理石や石膏で表現された無数の“肖像”のことは忘れましょう。また,この謙遜な女性に「神の母」や「天の女王」といった仰々しい称号を付与する,複雑な神学や教義のことも忘れましょう。聖書が実際に明らかにしている事柄に思いを集中させるのです。そうすれば,マリアの信仰とそれに倣う方法について貴重な洞察が得られます。

      み使いの訪問

      5. (イ)ガブリエルのあいさつに対するマリアの反応から何を学べますか。(ロ)マリアからどんな大切な教訓を学べますか。

      5 マリアを訪問したのは,単なる人間ではありません。み使いガブリエルです。マリアはガブリエルから「大いに恵まれた者」と言われた時,その言葉に「ひどくとまどい」,この聞き慣れないあいさつにはどんな意味があるのだろうと考えます。(ルカ 1:29)だれから大きな恵みを受けたのでしょうか。マリアは人から大きな恵みを受けることなど期待していません。しかし,み使いはエホバ神の恵みについて述べていました。それはマリアにとって重要なことです。とはいえマリアは,自分は神の恵みを得ているという誇り高ぶった考え方をしません。わたしたちも,神の恵みをすでに得ているというごう慢な考え方をするのではなく,その恵みを得るよう努力しましょう。そうするなら,若いマリアがよく理解していた大切な教訓を学ぶことになります。神はごう慢な人に敵し,へりくだった謙遜な人を愛し,支えられるのです。―ヤコ 4:6。

      マリアは,自分は神の恵みを得ているという誇り高ぶった考え方をしなかった

      6. マリアはみ使いからどんな特権を差し伸べられましたか。

      6 マリアにはそうした謙遜さが必要です。想像もできないような特権をみ使いから差し伸べられるからです。ガブリエルは,マリアの産む男の子がすべての人間の中で最も重要な人になることを説明します。そして,こう言います。「エホバ神はその父ダビデの座を彼に与え,彼は王としてヤコブの家を永久に支配するのです。そして,彼の王国に終わりはありません」。(ルカ 1:32,33)マリアは,1,000年以上前に神がダビデになさった約束を知っていたはずです。ダビデの子孫の一人が永久に支配を行なうという約束です。(サム二 7:12,13)マリアの子は,何世紀も神の民が待ち望んできたメシアになるのです。

      マリアに話しかける,み使いガブリエル

      マリアはみ使いガブリエルから,想像もできないような特権を差し伸べられた

      7. (イ)マリアのした質問から,マリアについてどんなことが分かりますか。(ロ)若い人たちはマリアから何を学べますか。

      7 み使いは,マリアの子が「至高者の子と呼ばれる」とも述べました。人間の女性が神の子を産むことなど,どうしてできるのでしょうか。そもそも,どうしてマリアが子どもを産めるのでしょう。ヨセフと婚約していますが,まだ結婚していないからです。マリアはその疑問を率直にこう言い表わします。「どうしてそのようなことがあるのでしょうか。わたしは男と交わりを持っておりませんのに」。(ルカ 1:34)マリアは処女であることを少しも恥ずかしく思っていません。貞潔さを大切なものと見ていたのです。今日,多くの若者は純潔を簡単に捨て,そうしない人をあざけります。確かに世の中は変わりました。しかし,エホバは変わっておられません。(マラ 3:6)マリアの時代と同様,エホバはご自分の道徳規準を堅く守る人たちを高く評価されます。―ヘブライ 13:4を読む。

      8. 不完全な人間であるマリアは,どのようにして完全な子どもを産むことができましたか。

      8 マリアは神の忠実な僕であるとはいえ,不完全な人間です。どのようにして,神の子つまり完全な子どもを産むことができるのでしょうか。ガブリエルはこう説明します。「聖霊があなたに臨み,至高者の力があなたを覆うのです。そのゆえにも,生まれるものは聖なる者,神の子と呼ばれます」。(ルカ 1:35)聖なるという言葉には,「清い」,「純粋な」,「神聖な」という意味があります。人間は普通,汚れた罪深い状態を子孫に伝えます。しかし,エホバはマリアに対し,特別な奇跡を行なわれます。み子の命を天からマリアの胎内に移し,ご自分の聖霊つまり活動力でマリアを「覆(って)」み子を罪のあらゆる汚れから保護なさるのです。マリアはみ使いの約束を信じるでしょうか。どのように反応しますか。

      ガブリエルに対するマリアの返答

      9. (イ)懐疑的な人たちがマリアについて間違った疑いを抱いているのはなぜですか。(ロ)ガブリエルはどのようにしてマリアの信仰を強めましたか。

      9 キリスト教世界の一部の神学者を含む懐疑的な人たちは,処女が子どもを産むということを信じ難く思っています。高い教育を受けていながら,一つの簡明な真理を理解していません。ガブリエルが述べたとおり,「神にとっては,どんな宣言も不可能なことではないのです」。(ルカ 1:37)マリアはガブリエルの言葉を真実として受け入れます。強い信仰を持っていたからです。しかし,その信仰は盲信ではありません。理性的な人がそうであるように,マリアは信仰の基盤となる証拠を必要としています。ガブリエルは,そのような証拠を増し加える事柄をマリアに話します。マリアの親族である年老いたエリサベツについて話したのです。神は奇跡により,長い間うまずめとして知られていたエリサベツが身ごもるようにされました。

      10. マリアがこの特権を受け入れるうえで何の不安も困難もなかった,と考えるべきでないのはなぜですか。

      10 では,マリアはどうするでしょうか。果たすべき任務があり,ガブリエルの言葉どおりのことを神が行なわれるという証拠もあります。しかし,マリアがこの特権を受け入れるうえで何の不安も困難もなかった,と考えるべきではありません。一つの点として,マリアはヨセフと婚約しています。ヨセフがマリアの妊娠について知ったなら,二人の結婚はどうなるでしょうか。別の点として,与えられた任務そのものに圧倒されるように感じたかもしれません。神の創造物すべての中で最も大切な,愛するみ子の命を宿すことになるのです。そして,無力な幼児の間その子を世話し,邪悪な世界で守ってゆかなければなりません。まさに重大な責任です。

      11,12. (イ)強健で忠実な男子でさえ,神からの難しい任務に対してどんな反応を示したことがありますか。(ロ)ガブリエルに対するマリアの返答から,マリアについてどんなことが分かりますか。

      11 聖書によると,強健で忠実な男子でさえ,神からの難しい任務を受け入れるのをためらったことがあります。モーセは,自分は神の代弁者になれるほど流ちょうに話せないと訴えました。(出 4:10)エレミヤは,自分は「少年にすぎない」,神から与えられた務めを果たすには若すぎる,と述べました。(エレ 1:6)そしてヨナは任務から逃げたのです。(ヨナ 1:3)マリアはどうでしたか。

      12 マリアの言葉には謙遜さと従順さが表われており,信仰の人すべてがその言葉に感動を覚えます。マリアはガブリエルにこう言います。「ご覧ください,エホバの奴隷女でございます! あなたの宣言どおりのことが私の身に起きますように」。(ルカ 1:38)奴隷女は最も立場の低い僕であり,命は完全に主人の手中にありました。マリアは自分の主人であるエホバについて,そのように感じていたのです。自分がエホバのみ手の中にあって安全であること,エホバがご自分に忠節な者に忠節であられること,この難しい任務を果たそうと最善を尽くす時に祝福してくださることを知っていました。―詩 18:25。

      マリアは,自分が忠節なエホバ神のみ手の中にあって安全であることを知っていた

      13. 神から求められている事柄が困難あるいは不可能に思えるとき,マリアの模範はどのように役立ちますか。

      13 わたしたちも,神から求められている事柄が困難あるいは不可能に思えることがあるかもしれません。しかし,神はみ言葉の中で,わたしたちが神を信頼し,マリアのように自分を神のみ手にゆだねるべき十分な根拠を示しておられます。(箴 3:5,6)わたしたちはそうするでしょうか。もしそうするなら,神は報いてくださり,いっそう強い信仰を築くための根拠を与えてくださいます。

      エリサベツを訪ねる

      14,15. (イ)マリアがエリサベツとゼカリヤを訪ねた時,エホバはどのようにマリアに報いをお与えになりましたか。(ロ)ルカ 1章46-55節に記録されているマリアの言葉から,マリアについてどんなことが分かりますか。

      14 ガブリエルがエリサベツについて語った言葉は,マリアにとって大きな意味があります。世界中の女性の中で,エリサベツほどマリアの状況をよく理解できる人はいなかったでしょう。マリアはユダの山岳地方に急いで向かいます。3日か4日の旅だったと思われます。マリアがエリサベツと祭司ゼカリヤの家に入った時,エホバはマリアの信仰を強める確かな証拠をさらに示して報いをお与えになります。エリサベツは,マリアのあいさつを聞くとすぐ,胎内の幼児が喜びで躍り上がるのを感じます。そして聖霊に満たされ,マリアを「わたしの主の母」と呼びます。神はエリサベツに,マリアの子がエリサベツの主つまりメシアになることを明らかにしておられました。さらにエリサベツは霊感のもと,マリアが忠実に従順さを示していることを褒め,「信じたその女も幸福です」と言います。(ルカ 1:39-45)エホバがマリアに約束なさったことは,すべてそのとおりになるのです。

      エリサベツを訪ねるマリア

      マリアとエリサベツにとって,二人の間の友情は祝福だった

      15 次にマリアが話します。その言葉は聖書に大切に記録されています。(ルカ 1:46-55を読む。)それは聖書中のマリアの言葉としては最も長く,マリアについて多くを明らかにしています。メシアの母親になる特権を与えて祝福してくださったエホバを賛美していることから,マリアの感謝に満ちた態度が分かります。また,エホバがごう慢な権力者たちを卑しめ,ご自分に仕えようとする立場の低い貧しい者たちを助ける方である,と述べていることから,マリアの信仰の深さが分かります。さらに,広い知識を持っていたこともうかがえます。マリアがヘブライ語聖書に20回以上言及していた,という見方もあります。a

      16,17. (イ)マリアとその子どもは,わたしたちが倣うべきどんな態度を示しましたか。(ロ)マリアがエリサベツを訪ねたことに関する記述は,何を思い起こさせますか。

      16 マリアは,神の言葉について深く考えていたのです。それでも謙遜さを保ち,自分自身の考えを述べるのではなく聖書の言葉を用いることを望みました。マリアの胎内で成長していた子どもも,後に同じ態度を示してこう言いました。「わたしの教えはわたしのものではなく,わたしを遣わした方に属するものです」。(ヨハ 7:16)わたしたちも次のように自問できます。『自分は神の言葉に対してそのような深い敬意を示しているだろうか。それとも,自分の考えや教えのほうを好むだろうか』。マリアは優れた精神を示しました。

      17 マリアはエリサベツのもとに3か月ほどとどまります。二人は大いに励まし合ったことでしょう。(ルカ 1:56)この訪問に関する温かな記述は,友情の大切さを思い起こさせます。わたしたちもエホバ神を本当に愛する人を友とするなら,霊的に成長し,エホバにいっそう近づくことができるに違いありません。(箴 13:20)やがて,マリアが家に帰る時が来ます。ヨセフはマリアの状況を知って,何と言うでしょうか。

      マリアとヨセフ

      18. マリアはヨセフに何を打ち明けましたか。ヨセフはどんな反応を示しましたか。

      18 マリアは,自分の妊娠が自然に明らかになるまで黙っていることはなかったようです。ヨセフに話さなければならなかったでしょう。マリアは,神を恐れるまじめなヨセフがどんな反応をするだろう,と不安に思ったかもしれません。それでも,自分の身に起きたことをすべてヨセフに話します。やはりヨセフは非常に困惑します。愛するマリアを信じたいという気持ちはありますが,マリアが不貞を働いたようにも思えます。ヨセフがどんなことを考え,どんな推論をしたのか,聖書は述べていません。しかし,マリアと離婚しようと思った,ということは述べています。当時,婚約した男女は結婚しているものとみなされたからです。ヨセフは,マリアが恥をかいたり悪いうわさを立てられたりすることを望まなかったので,ひそかに離婚することにします。(マタ 1:18,19)マリアは,この優しい男性がかつてない状況でひどく悩んでいるのを見て,心を痛めたに違いありません。とはいえ,いらだったりはしません。

      19. エホバは,ヨセフが最善の道に進めるようどのように助けられましたか。

      19 エホバは,ヨセフが最善の道を見いだせるよう親切に助けられます。神のみ使いがヨセフに夢の中で,マリアの妊娠は確かに奇跡によるものであると告げたのです。ヨセフはどんなに安心したことでしょう。それでヨセフは,マリアが最初から行なっていたように,エホバの導きに沿って行動します。マリアを妻として迎え,エホバのみ子を世話するという特別な責任を担う用意をしたのです。―マタ 1:20-24。

      20,21. 結婚している人や結婚を考えている人は,マリアとヨセフから何を学べますか。

      20 結婚している人や結婚を考えている人は,この2,000年前の若い夫婦の模範から学べます。ヨセフは,自分の若い妻が母親としての責務を果たすのを見て,み使いが自分に指示を与えてくれたことを喜んだに違いありません。重要な決定をする際にエホバに頼ることの大切さを理解したはずです。(詩 37:5。箴 18:13)ヨセフは家族の頭として決定をするとき,常に注意深さと思いやりを示したことでしょう。

      21 マリアがヨセフと進んで結婚したことから,何を推察できるでしょうか。マリアは当初,ヨセフに話をなかなか理解してもらえませんでしたが,家族の頭となるヨセフが物事の進め方を決めるのを待ちました。このことはマリアにとって良い教訓となりました。今日のクリスチャンの女性にとってもそうです。またヨセフとマリアはこれらの出来事から,正直かつ率直に意思を通わせることの重要性を学んだことでしょう。―箴言 15:22を読む。

      22. ヨセフとマリアの結婚生活にはどんな土台がありましたか。これから二人は何を行ないますか。

      22 この若い夫婦は最良の土台の上に結婚生活を築き始めました。二人とも,エホバ神を最も愛しており,責任感と思いやりのある親としてエホバに喜んでいただきたいと強く願っていました。しかし前途には,さらに大きな祝福,そしてさらに大きな難題が待ち受けています。これから二人は,人類史上最も偉大な人となるイエスを育てるのです。

      a マリアが言及した言葉には,忠実な女性ハンナの言葉も含まれていたようです。ハンナも出産に関してエホバからの祝福を受けました。―6章の「二つの印象的な祈り」という囲みを参照。

  • 彼女は「心の中であれこれと結論を下し」た
    その信仰に倣う
    • マリア

      第18章

      彼女は「心の中であれこれと結論を下し」た

      1,2. マリアの旅の様子を説明してください。この旅がマリアにとって大変だったのはなぜですか。

      マリアは,ロバの背で少しつらそうに座り直します。もう何時間も揺られています。前を行くヨセフは変わらない足取りで進んでいますが,ベツレヘムはまだだいぶ先です。マリアはお腹の赤ちゃんが動くのをまた感じます。

      2 出産の日が近づいています。聖書は,マリアが「身重になっていた」と述べています。(ルカ 2:5)道沿いの畑ですき返したり種をまいたりしている農夫の中には,顔を上げてこの夫婦を目にし,『身重の女性がどうして旅をしているのだろう』と不思議に思う人もいたことでしょう。マリアが郷里の町ナザレから遠く離れた所にまでやって来たのはなぜでしょうか。

      3. マリアはどんな任務を与えられましたか。これからどんなことを学びますか。

      3 この若いユダヤ人女性は数か月前に,人類史上,前例のない任務を与えられました。メシアとなる,神の子を産むことになったのです。(ルカ 1:35)そして出産が近づいたころ,この旅をしなければならなくなります。旅の間に,マリアの信仰は何度も試されます。では,マリアが霊的な強さを保つのに何が助けとなったか,調べてみましょう。

      ベツレヘムへの旅

      4,5. (イ)ヨセフとマリアがベツレヘムに向かったのはなぜですか。(ロ)カエサルの布告によって,どの預言が成就しましたか。

      4 旅をしていたのはヨセフとマリアだけではありません。少し前にカエサル・アウグスツスが民に登録を命じる布告を出したので,人々はそれに従って先祖の町まで旅をしなければならなくなりました。ヨセフはどうしたでしょうか。こう記録されています。「もとよりヨセフも,ダビデの家また家族の一員であったので,ナザレの都市を出て,ガリラヤからユダヤに入り,ベツレヘムと呼ばれるダビデの都市に上った」。―ルカ 2:1-4。

      5 カエサルがこの時に布告を出したのは単なる偶然ではありません。700年ほど前に記された預言には,メシアはベツレヘムで生まれる,と予告されていました。ナザレからわずか11㌔の所にもベツレヘムという町がありましたが,預言によると,メシアが生まれることになっていたのは「ベツレヘム・エフラタ」でした。(ミカ 5:2を読む。)その小さな村は,ナザレからサマリアを通って起伏の多い道を約130㌔行ったところにあります。ヨセフが登録のために行かなければならないのは,そのベツレヘムです。そこは,ダビデ王の家系の人にとって先祖の都市であり,ヨセフもマリアもダビデの子孫だからです。

      6,7. (イ)マリアにとってベツレヘムへの旅が容易なものでなかったのはなぜですか。(ロ)ヨセフの妻になっていたことは,マリアの決定にどう影響しましたか。(脚注を参照。)

      6 ヨセフは布告に従うことにしました。マリアはその決定を支持するでしょうか。それはマリアにとって大変な旅になるはずです。おそらく秋の初めごろで,乾季は終わりかけており,小雨が降ることもあるでしょう。さらに,「ガリラヤから……上った」と記されているとおり,ベツレヘムは標高760㍍を超える高地にあります。数日間の旅の最後には,つらくて急な上り坂が待っています。身重のマリアは何度も休まなければならないので,普通より時間がかかるでしょう。出産間近の若い女性であれば,陣痛が始まった時すぐ家族や友人に助けてもらえるよう,自宅から離れたくないものです。この旅に出るには確かに勇気が求められます。

      ベツレヘムへ旅をするマリアとヨセフ

      ベツレヘムへの旅は容易なものでなかった

      7 そういう状況でも,ルカの記録によれば,ヨセフは「マリアと共に登録をするため」に出かけた,とあります。また,マリアは「約束どおり[ヨセフ]に嫁(いで)いた」,とも述べられています。(ルカ 2:4,5)ヨセフの妻になっていたことは,マリアの決定に大きく影響しました。マリアは,夫の決定を支持することによって,神から与えられた,夫の助け手としての役割を受け入れ,夫を霊的な頭と見ていることを示しました。a そのため,信仰を試されかねないこの場面で,進んで従順を示しました。

      8. (イ)マリアがヨセフと共にベツレヘムへ行った理由として,どんなことが考えられますか。(ロ)マリアの模範は忠実な人々にとって,どんな点で励みとなっていますか。

      8 マリアが従った理由として,ほかにどんなことが考えられますか。マリアは,メシアがベツレヘムで生まれる,という預言を知っていたのでしょうか。聖書は何も述べていません。とはいえ,その可能性は否定できません。なぜなら,宗教指導者だけでなく一般の人々もその預言を知っていたからです。(マタ 2:1-7。ヨハ 7:40-42)マリアは聖書によく通じていました。(ルカ 1:46-55)彼女が旅をすることにした理由としては,夫に服すため,布告に従うため,エホバの預言どおりにするため,といった点が考えられます。あるいは,それらの理由が重なったのかもしれません。いずれにせよ,マリアは立派な模範を残しました。エホバは,男性であれ女性であれ,謙遜で従順な精神を示す人を高く評価なさいます。服する態度が軽視される現代,マリアの模範は世界中の忠実な人々にとって励みとなっています。

      キリストの誕生

      9,10. (イ)マリアとヨセフはベツレヘムに近づいた時,どんなことを考えたかもしれませんか。(ロ)二人はどこに泊まりましたか。なぜですか。

      9 ようやくベツレヘムが見えた時,マリアはほっとしたに違いありません。マリアとヨセフは丘を登り,一年の最後の収穫物であるオリーブの畑の横を通りながら,この小さな村の歴史を考えたことでしょう。預言者ミカが述べていたとおり,ベツレヘムは,ユダの諸都市の一つとして数えるには取るに足りない村です。しかし,1,000年以上前にボアズ,ナオミ,ダビデが生まれた場所なのです。

      10 到着すると,村は混み合っています。すでに多くの人が登録のためにやって来ており,二人は泊まる場所を見つけることができません。b やむを得ず,家畜小屋で夜を過ごします。そうした状況で,マリアは今まで経験したことのない痛みを感じ,痛みはどんどん強まります。そんな妻を見て,ヨセフはどんなにか心配したことでしょう。よりによって,こんな所で陣痛が始まったのです。

      11. (イ)女性にはマリアの気持ちがよく分かると言えるのはなぜですか。(ロ)イエスはどんな意味で「初子」でしたか。

      11 女性にはマリアの気持ちがよく分かるかもしれません。その時から4,000年ほど前にエホバが予告されたとおり,女性は受け継いだ罪のゆえに出産の際に苦痛を経験するようになっていたからです。(創 3:16)マリアもその苦痛を経験したに違いありません。ルカは,マリアの苦しむ様子を描写することなく,「彼女は男の子,初子を産(んだ)」とだけ述べています。(ルカ 2:7)生まれたのはマリアにとって「初子」で,マリアは後に少なくとも6人の子どもを産みます。(マル 6:3)とはいえ,この子は特別です。マリアの初子というだけでなく,エホバご自身にとって「全創造物の初子」,神の独り子だからです。―コロ 1:15。

      12. マリアは赤ちゃんをどこに横たえましたか。実際の状況と,キリスト降誕の劇や絵画や飾り付けとでは,どんな違いがありますか。

      12 ここで,次の有名な記述が登場します。「彼女は男の子……を布の帯でくるんで,飼い葉おけの中に横たえた」。(ルカ 2:7)世界各地のキリスト降誕に関する劇や絵画や飾り付けでは,この場面が美しく描かれています。しかし,実際はどうだったのでしょうか。飼い葉おけとは,家畜にえさを与えるための箱です。この親子は家畜小屋に泊まっています。今も昔も,空気や衛生状態が良いとはとても言えない場所です。ほかに場所があれば,そんな所で子どもを産みたいとはだれも思わないでしょう。親であれば,子どもの最善を願うものです。マリアとヨセフはなおのことそうです。その子は神の子だからです。

      13. (イ)マリアとヨセフは持っている物を使い,どのようにできる限りのことをしましたか。(ロ)今日の賢明な親たちは,マリアとヨセフに倣って,どのように優先すべき事柄を見分けることができますか。

      13 しかし二人は,快適とは言えない状況でもいらだったりはしません。持っている物を使って,できる限りのことをします。例えば,マリアは自ら,赤ちゃんを布の帯でしっかりと包み,飼い葉おけの中にそっと横たえ,その子が温かく安心して眠れるようにします。置かれた状況への不安から最善を尽くせなくなる,ということはありません。マリアもヨセフも,最も重要なのは霊的な面で世話をすることであると分かっています。(申命記 6:6-8を読む。)今日の賢明な親たちも,霊的な貧困状態にある世で子どもを育てるにあたり,優先すべき事柄を見分けます。

      やって来た人たちに励まされる

      14,15. (イ)羊飼いたちがその子どもを一目見たいと思ったのはなぜですか。(ロ)羊飼いたちは家畜小屋でイエスを見た後,何をしましたか。

      14 突然,辺りが騒がしくなり,羊飼いたちが家畜小屋に飛び込んできます。彼らは,この親子,特にその子どもを一目見たいと思っています。皆,喜びに顔を輝かせ,興奮しています。丘の中腹で羊と一緒にいたのですが,そこから急いでやって来たのです。c そして,びっくりしているマリアとヨセフに,見聞きしたばかりの驚くべき事柄を話します。羊飼いたちが丘の中腹で羊の番をしていたところ,夜中に突然,ひとりのみ使いが現われました。辺り一面にエホバの栄光がきらめき,そのみ使いが,たった今ベツレヘムでメシアなるキリストが生まれた,と言います。そして,あなた方はその子が布の帯に包まれて飼い葉おけの中に横たわっているのを見つけるでしょう,と告げます。それから,さらに壮大な光景が広がりました。大勢のみ使いたちが現われて,神を賛美したのです。―ルカ 2:8-14。

      15 この謙遜な人たちがベツレヘムに駆けつけたのも不思議ではありません。羊飼いたちは,み使いが述べたとおり,生まれたばかりの赤ちゃんが横たわっているのを見て,胸を躍らせたことでしょう。この良いニュースを他の人に話さずにはいられません。「彼らは……語られていた事柄を知らせた。すると,聞く者は皆,羊飼いたちの話す事柄に驚嘆した」と記されています。(ルカ 2:17,18)当時の宗教指導者たちは羊飼いを見下していたようです。しかしエホバは,この謙遜で忠実な人たちを高く評価しておられました。では,彼らが来たことによって,マリアはどんな影響を受けましたか。

      エホバは,この謙遜で忠実な羊飼いたちを高く評価しておられた

      16. マリアは物事を深く考える人であることをどのように示しましたか。マリアが信仰を保てたのはなぜですか。

      16 マリアは,出産で疲れきっているはずですが,話される言葉に一心に耳を傾けます。それだけでなく,「心の中であれこれと結論を下しつつ,こうして語られる事柄すべてを記憶にとどめて」ゆきます。(ルカ 2:19)この若い女性は,物事を深く考える人です。み使いによるこの知らせがとても大切なものであることを知っています。エホバ神は,生まれてきた子が実際にはだれであるか,どれほど重要な人物なのかを,マリアが知って理解することを願っておられました。それで,マリアは聴く以上のことをします。聴いた言葉を心の中に収め,その後の年月に何度も思い巡らせるようにしたのです。それゆえに,マリアは生涯にわたって信仰を示すことができました。―ヘブライ 11:1を読む。

      家畜小屋で,赤子のイエスを抱きながらヨセフと一緒に羊飼いの話に耳を傾けるマリア

      マリアは,羊飼いたちの話に注意深く耳を傾け,聴いた言葉を心の中に収めた

      17. 霊的真理を取り入れる際,マリアの模範にどのように倣えますか。

      17 あなたはマリアの模範に倣いますか。エホバは,み言葉 聖書に大切な霊的真理を満たしておられます。しかし,わたしたちがそれに注意を向けない限り,真理から益を得ることはできません。ですから,聖書を定期的に読みましょう。文学作品としてではなく,霊感を受けた神の言葉として読むのです。(テモ二 3:16)そして,マリアのように,語られる霊的な事柄を心の中に収め,「あれこれと結論を下(す)」必要があります。聖書を読んでその内容を黙想し,エホバの助言をいっそう十分に適用する方法を考えるなら,信仰を養って成長させることができます。

      語られる事柄をさらに記憶にとどめる

      18. (イ)イエスが生まれて間もない時,マリアとヨセフはモーセの律法にどのように従いましたか。(ロ)神殿でヨセフとマリアがささげた物から,二人の経済的な状況についてどんなことが分かりますか。

      18 マリアとヨセフは,モーセの律法の要求に従って生後八日目に息子に割礼を施し,指示されたとおりにその子をイエスと名づけます。(ルカ 1:31)その後,40日目に,ベツレヘムから約10㌔離れたエルサレムの神殿に息子を連れて行きます。そして,浄めの捧げ物として,律法で貧しい人のために定められていた2羽のやまばと,あるいは2羽のいえばとをささげます。二人は,経済的に余裕のある親たちのように1頭の雄羊と1羽のやまばとをささげることができず,そのことに引け目を感じたかもしれませんが,それでも律法に従いました。いずれにしても,マリアとヨセフはこの神殿で力強い励ましを受けることになります。―ルカ 2:21-24。

      19. (イ)マリアはシメオンの語るどんな事柄を心の中に収めましたか。(ロ)アンナはイエスを見つけた時,どうしましたか。

      19 シメオンという名の老人がマリアとヨセフに近づき,話しかけます。マリアはシメオンの語る事柄も大切に心の中に収めます。この老人は,メシアを見るまでは死なない,と約束されていました。そして,エホバの聖霊により,この幼いイエスが予告された救い主であることを知らされたのです。シメオンは,マリアがいずれ耐え忍ばなければならない苦痛についても指摘し,あなたは長い剣に貫かれるように感じるだろう,と述べます。(ルカ 2:25-35)こうした言葉は苦難を予示するものでしたが,30年以上後にそのつらい出来事が生じた時には,マリアが忍耐する助けになったことでしょう。シメオンに続いて,アンナという女預言者も幼いイエスを見つけ,エルサレムの救出を待ち望んでいる人たちにイエスについて語りはじめます。―ルカ 2:36-38を読む。

      神殿にいるマリアとヨセフ,赤子のイエスを抱いているシメオンとそれを見ている預言者アンナ

      エルサレムにあるエホバの神殿で,マリアとヨセフは多くの励ましを得た

      20. イエスを神殿へ連れて行ったことが良い決定だったと言えるのはなぜですか。

      20 ヨセフとマリアが赤ちゃんをエルサレムのエホバの神殿に連れて行くことにしたのは,本当に良い決定でした。その日はイエスにとって,忠実にエホバの神殿に行くという生涯の歩みの始まりとなったのです。神殿において,二人は自分たちにできる最善の犠牲をささげ,教えと励ましの言葉を受けました。神殿を去る時,マリアの信仰はいっそう強まり,心は黙想したり他の人に語ったりできる霊的な事柄で満ちていたに違いありません。

      21. どうすればマリアのように信仰を強めることができますか。

      21 今日の親たちがこの模範に倣っているのは素晴らしいことです。エホバの証人の親たちは,忠実に子どもをクリスチャンの集会に連れて行きます。仲間のクリスチャンに励ましの言葉をかけたりして,自分たちにできることを行なっています。そして,集会から帰る時には,強められ,いっそう幸福になり,他の人に語ることのできる良い事柄で満たされています。そうした仲間と集い合えるのは,本当にうれしいことです。わたしたちもそのようにするなら,マリアのように,自分の信仰を強めることができるでしょう。

      a この記録とは対照的に,これより前の旅については,マリアはエリサベツに会いに行ったと述べられています。(ルカ 1:39)その時,マリアは婚約していたものの結婚はしていなかったので,ヨセフに相談せずに行動したのかもしれません。結婚後の二人の旅については,マリアではなくヨセフの行動として述べられています。

      b 当時は,旅人や隊商に住民が宿を提供する習慣がありました。

      c この時,羊飼いたちが羊の群れと一緒に戸外に住んでいたことは,聖書の年代計算の正しさを裏づけています。その計算によると,キリストが誕生したのは12月ではなく10月の初めです。12月であったなら,羊の群れは,所有者の家の近くの屋根がある場所に入れられていたことでしょう。

日本語出版物(1954-2026)
ログアウト
ログイン
  • 日本語
  • シェアする
  • 設定
  • Copyright © 2025 Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania
  • 利用規約
  • プライバシーに関する方針
  • プライバシー設定
  • JW.ORG
  • ログイン
シェアする