仏教の人にどう話せますか
1 日本では古くから存在した自然宗教である神道と融合した独特の仏教が形成されました。仏教には「人格神」の概念がありません。このように異なった宗教の背景を持つ人々を真理に引き寄せるものは何でしょうか。良いたよりを仏教の人にどのように伝えることができますか。
2 仏教徒の考え方: 人生は苦しみに満ちているが,悟りを開くことによって不本意な人生の絶えざる循環から抜け出せるというのが基本的な教えです。この循環から解放されるには,涅槃に到達しなければならず,それは場所や事柄ではなく,苦痛や悪の存在しない空の状態であるゆえに,言葉で言い表わすことはできないと言えます。このように,上座部仏教は釈迦の教えに忠実に従い,自己の悟りを求めて修行する出家者中心の仏教です。
3 上座部仏教と対照をなすのは大乗仏教です。大乗とは「大きな乗り物」を意味し,すべての人を救済するという広い見方が取り入れられています。その基本思想は,「他を救うことが自らの救いである」という菩薩精神であると言われています。菩薩とは,仏陀になろうとして修行している者たちすべての呼び名ですが,彼らは自らは輪廻から脱し得る悟りのうちに達していながらも,輪廻の中に留まって人々を救い続けようとする存在のこととされています。この菩薩思想が大乗仏教の根幹を成す教えであると言えます。とはいえ,信仰対象や実践方法の異なる大乗仏教の系統が幾つにも分かれているため,諸宗派の哲学論に精通し,人々と議論する必要は全くありません。むしろ,彼らの基本的な考え方を知り,物事を事実に即して考えたり,共通の話題について論じ合ったりすることを目標とすることができます。
4 互いに関心のある点を目立たせる: ある仏教徒は,限りなく続く輪廻転生を経て,極楽浄土で暮らすことを最終目標として教えられています。また,人の死は誕生とセットで,一つの生涯と次の生涯の境界を示すだけの単なる区切りに過ぎないと考えます。そのような人にとって,地上の楽園で永遠に生き続けることや死者の復活という考えは容易には理解できないかもしれません。むしろ,次のように質問してみることができます。
■ 「子供や愛する者にいつ死が臨むようなことがあっても,それを自然に受け止め,納得することができるでしょうか」。ある人はこのように問われて初めて,今まで教えられてきた事柄と自分の本当の感情との間に大きな違いがあることに気づき,そうした話題を取り上げたブロシュアーを喜んで読んでみたいと言うかもしれません。
5 多くの仏教徒は,平和や家族生活に関心を抱いています。次のように語りかけることができるでしょう。
■ 「これほど世の中が悪くなると,良い母親や子供に尊敬されるような父親にどうしたらなれるか,改めて自分の生き方を考えてみたいという人によく会います。また,今の時代,子供たちが責任感のある大人に成長するだろうかという心配もあります。学校では特にそうした教育を受ける機会がありませんでしたが,あなたはいかがでしたか」。
6 注意を要する幾つかの事柄: 宗教をまじめに考えている人々は,わたしたちが普通に会う人よりもはるかに友好的である場合が少なくありません。とはいえ,それらの人々の考え方は聖書のそれとは大きく異なっています。それで,証言の際にはできるだけ対立や論争を避けるように心がけましょう。例えば,仏教徒は一般的にどのような悪人であれ救われるという考えを抱いています。したがって,ハルマゲドンで邪悪な者がすべて滅ぼされることを強調するなら,家の人の心を閉ざすことになりかねません。また,先祖崇拝を否定していると取られかねない話題を避けることも必要です。
7 住職や熱心な信徒の信仰心や自尊心を傷つけないよう,次のような近づき方ができるかもしれません。
■ 「こちらが__であるということは存じておりましたが,お尋ねしてみました。__さんは仏教の教えを通して家族や社会が良くなるように色々と尽力しておられることと思います。わたしたちも同じような願いを抱いて聖書の教育活動を行なっているのですが,最近の社会の変わりようはあまりにも激しく,家庭,学校,社会で問題を抱える人々が増え続けています。皆さんは最近の傾向をどのように観察しておられるでしょうか」。
8 年配の方には次のようにも言えるでしょう:
■ 「近年,多くの方が退廃した考え方があふれていることやそれが子どもたちに与える影響を心配していますが,ご主人も[奥様も]心配しておられるのではないでしょうか。若い人たちの間で不道徳な傾向が増大しているのはなぜだと思われますか。[答えの間を置く。] キリスト教や仏教ができるより前に書き始められた本に,そのことが予告されていたのをご存じでしょうか。[テモテ第二 3:1-3を読む]」。その後,ふさわしいブロシュアーを提供します。
9 どの出版物が最適ですか: 仏教徒のために,「いつの日か苦しみはなくなりますか」というパンフレットが,日本語で発行されています。また,次のような文書を使って成功している奉仕者も少なくありません。「幸せな家庭を築く秘訣」,「若い人が尋ねる質問 ― 実際に役立つ答え」の本,「神はわたしたちに何を求めていますか」,「見よ! わたしはすべてのものを新しくする」,「人生の目的は何ですか ― どうすれば見いだせますか」のブロシュアー。現在,真理を学んでいる人の多くは,初めにブロシュアー,それから「知識」の本を研究しています。
10 パウロがアテネで伝道するより400年近く前に仏教の布教師はそこに到着したと言われていますが,パウロが仏教思想の感化を受けた人に出会ったかどうかは定かではありません。しかしわたしたちは,あらゆる人に証言することについてパウロがどう感じていたかは知っています。パウロは,「何とかして幾人かでも救う」ために,自分を「すべての人の奴隷」としました。(コリ一 9:19-23)わたしたちも,人々に個人的な関心を払い,出会うすべての人に,わたしたちが共通に持つことのできる希望をはっきり述べることによって,同じようにすることができます。