世界展望
騒音の公害
◆ 現代文明の生活には,とくに都市において,騒音の洪水に耐えることが要求される。ワシントン大学の環境衛生学のピーター・A・ブレイス助教授によると,過度の騒音は頭痛,吐き気,聴力の一時的,または慢性的障害,筋肉の緊張そして呼吸の型の乱れをさえ引き起こすという。周囲の騒音の影響を減少させる一つの方法は,家の囲りに垣根を設けたり樹木を植えたりすることである。高速道路沿いに多くの樹木,灌木,つるの生える植物,草などを植えると,騒音の程度を60%も減少できることが明らかにされた。
粘液により速度を増す
◆ 船の速度は水が撹乱されて生ずる摩擦抵抗のため阻害されるので速度を増すには多量のエネルギーを費やさなければならない。速く泳ぐ魚は粘液によりその問題を克服している。たとえば,太平洋のカマスは,からだの表面の粘液のおかげで,水の摩擦抵抗を65.9%も減少させることができる。その粘液は,すばやく泳ぐさいに生ずる水の撹乱作用で初めて水中で溶解する。粘液の一番表面の層が溶解すると,水の性質が変化し,撹乱作用が減少する。こうしてカマスはエネルギーをあまり多く費やさなくとも速く泳げる。カマスから採集した粘液を水の量の1%以下の濃度に溶解させたところ,水の摩擦抵抗は44%減少した。
考古学につけこむ略奪者
◆ 考古学上の発掘地における略奪行為は,メキシコおよびラテン・アメリカの他の国々,タイ,インド,中東,アフリカなどで問題となっている。盗み出された考古学上の物品はそのあと国外に持ち出され,それで大もうけをする美術商に売り渡される。メキシコのマヤ人の神殿から盗まれた彫刻の施されたある石碑は8万ドル(約2,500万円)相当の品物とされている。そうした石碑は何トンもの重量があるので,それを国外に持ち出すため,略奪者たちは電動のこぎりでそれを切断する。最近,メキシコのインディオの一グループが,略奪の行なわれていたマヤ人の神殿にさしかかったさい,略奪者たちはそのうちの3人を殺し,他の二人に傷を負わせた。傷を負ったその一人はようやく町にたどりつき,警察の助けを求めた。貪欲な人間は人の命も考古学上の貴重な物品をも尊重しない。
不満をいだくルーテル派教会
◆ アメリカの8,000人の信者を代表する七つのルーテル教会は最近,ルーテル教会ミズリー会議との関係を断ち,真正ルーテル教会連合を設立した。さらに20の教会が同連合に加入するものと予想されている。ルーテル派の他の二つのグループも組織ぐるみで同連合の信条に同意すると唱えた。その二つのグループとは,32万6,000人の信者を持つ福音ルーテル教会会議と2,500人の信者を有するアメリカ福音ルーテル教会である。
電子を照射される木の細片
◆ 紙その他の製品に加工されるまで屋外に貯蔵される木の細片<ウッドチップ>は,その間に腐るため,世界中で年間2億ドル(約616億円)もの損害をこうむっているが,その腐敗を防止する新しい処理方法によってその損害は減少するものと考えられている。その腐敗の原因となっているのは菌類その他の微生物である。腐敗を防止するその新しい処理方法では,木片に高速度の電子が浴せられる。その方法開発者の主張によれば,二次的な利点としてパルプの産出量は6ないし10%も増大するという。一方,製紙工場側は関心とともに疑問の念を表明した。
水泳のできる赤ちゃん
◆ 生後6か月の赤ちゃんに水泳ぎができるだろうか。カナダ,ケベック州のある水泳指導員はそれが可能なことを証明した。まず赤ちゃんにあお向けになって浮くことを教え,赤ちゃんがそれを学んだら,今度はうつ向けにして浮かせる。そうすると,赤ちゃんは自分でひっくり返って,あお向けになって浮かぶ。生後数か月の赤ちゃんは水をこわがらないので,水泳を教えるのに都合のよい時機だというのが同指導員の意見である。彼は自分の息子には生後4週間目に泳ぎ方を教え始めた。今では4歳になるその息子は,おもな泳ぎ方はみな知っており,プールを何回も往復できる。
暖かい月
◆ アポロ15号の宇宙飛行士が月面にあけた深さ約1.6㍍の穴から,驚くべきニュースが地上に送られてきた。穴の中に設置された観測装置が無線情報を地球に送ってきたが,それによると,月面の下方から意外に高温の流れの発していることがわかった。それで,科学者たちは月の生成に関する説を改めねばならなくなるだろうと語った。
ガンの原因となる防腐剤
◆ 最近スウェーデンの科学者たちが発見したところによれば,ぶどう酒・生ビール・ソーダのはいっていない果汁の飲み物の多くに添加されるある種の防腐剤はガンを引き起こす副産物を生むという。問題の防腐剤それ自体は食品に添加されてから24時間以内に消失するものの,それらの飲み物のアンモニアとともに反応して,ウレタンを生じる場合がある。この化学物質はガンの原因となることでよく知られており,そのうえ,前述の防腐剤のように消失することがない。他の食品添加物もガンの原因になることがわかっている以上,多種多様な化学物質を添加するのはいったい賢明であろうか。
高価な健康食品
◆ 食品の化学添加物のことを憂慮する人々は,添加物の含まれていない食品のために喜んで普通以上のお金を費やしてきた。しかし場合によっては値段の開きがかなり大きいため,値段が不当だと感じている人は少なくない。アメリカの消費者問題処理局が開いた,健康食品悪用に関する聴問会で証人たちは,健康食品の値段が往々にしてあまりにも高すぎ,必ずしも有機物ではないということを証言した。ある証人は,二つの食パンをくらべ,一方は健康食品の店で98㌣(約304円)で売られているが,それと原料のたいして変わらない他方のパンは普通のマーケットでは45㌣(約140円)で売られている事実を証言した。別の証人は,健康食品の店で売られている少なくとも13の人気食品は,スーパーマーケットでもっと安く買えると述べた。
再確認された童貞制
◆ ローマ・カトリック教会の司祭の結婚を禁ずる措置は教皇パウロ6世による宣言の中で再確認された。これは1971年9月30日から11月5日までバチカンで開かれた司教会議の提案と一致するものである。87名の司教はより自由な提案を求める投票をしたが,107名の多数決で前述の提案が採択された。しかし結婚を禁ずることは聖書と相容れない。カトリック訳聖書のテモテ前書 4章1から3節までを読んでいただきたい。
教師,危険な職業
◆ アメリカの学校で教べんをとるのは製鉄会社の仕事の2倍も危険な職業となった。アメリカでは7万5,000人もの教師が病院で手当てを受けなければならないほどの傷害をこうむっている。校内での犯罪があまりにも急速に増加しているため,なかには,全教室に閉開路テレビ・カメラを据え付けたり,教師をおどす生徒の声を録音するテープレコーダーを設置したり,生徒に変装した警官を配置したりする学校もある。アメリカのある都市では1965年以来,学校の警備員は15名から102名にふえ,さらに別の都市ではその数は170名から382名にふえた。
人工衛生を使って医療援助
◆ 太平洋の上空3万5,700㌔の軌道を回る静止衛星が,アラスカのいなかの26の村に医療に関する助言や情報を中継するために用いられている。従来の無線通信の場合は,あらしや大気現象によってしばしば不通になるが,人工衛星による通信はこの問題を解消する。アラスカのフェアバンクスとアンカレッジにある特殊な医療機関とは,この人工衛星を用いて常時連絡を取ることができる。
危険な清浄剤
◆ アメリカの病院ではヘクサクロロフィンとして知られている化学物質が赤ん坊を入浴させるさいに用いられてきたが,最近その化学物質の使用に対してアメリカ食品医薬局が警告を発した。動物実検の結果,その物質は皮膚から吸収されること,また吸収量が高まると重大な脳障害を引き起こすおそれのあることが明らかにされた。その物質は,含有量はずっと少ないにしても,約4,000種類もの製品に用いられている。その中には女性が衛生上使用する各種スプレー,多数の浴用石けん,シャンプー,防臭剤などがある。