世界展望
輸血をしない心臓手術
◆ 1977年9月19日号のアメリカ医学会ジャーナル誌は,「心臓や血管の手術は輸血なしで安全に行なうことができる」と伝えた。これは輸血なしでエホバの証人の患者に施された542例の心臓手術に関する報告の一部である。テキサス州ヒューストンのデイビッド・A・オットー博士とデントン・A・クーリー博士のまとめたその報告書によると,両博士が輸血なしで手術を行なったのは,「患者に決定を下す権限があり,医師には患者の願いを尊重する道義上の責任があると考えている」からである。また,両博士はこう語っている。「エホバの証人を治療することに同意した外科医は,彼らの宗教信条を尊重するか,さもなくば患者を他の医師のもとに回すべきである」。
さらに,「我々は,状況や必要のいかんを問わず,手術の際に輸血を施さないという事前の約束を破ったことはない」とも語った。これらの医師は,心臓病患者に施す輸血の量を相当量減らすことから,良い結果の得られることを学んだ。「これらの一連の手術から,我々は,エホバの証人以外の患者にも輸血の量を少なくするようになった」と,オットー博士はニューヨーク・タイムズ紙の記者に語った。
麻薬に酔っ払う
◆ 人が酔っている場合,それは例外なく飲酒によるものだろうか。そうではないようである。マリファナの関係している場合も少なくないと思われる。関係者の間でこの点に関する懸念が表明されている。酒酔い運転の疑いやとっぴな運転のために停車を命じられ,酒気検査を受けても,あっさり不問に付されるような運転者がいるが,取締り官の中には,そうした人の多くがマリファナもしくはマリファナとアルコールの両方に影響されているとみなしている人がいる。最近,カリフォルニア州で行なわれたある検査によると,酒酔い運転で停車を命じられた291人の運転者の22%,つまり5人に一人以上の人々の血液からマリファナが検出された。
ロックバンドが後に残すもの
● パンク・ロックグループはステージの内外で粗暴な振舞いをするので知られているが,その損害を償うために,しばしば高額の責任賠償保険を掛けておかねばならない。カナダのロックバンド“ティーンエイジ・ヘッド”は,最近2,500万㌦(約62億5,000万円)の保険契約を結んだ。年間保険料は6万2000㌦(約1,550万円)にもなるが,同バンドのマネージャーは,「これは必要経費である」と語った。「パンク・ロックは非常に荒っぽいので,何が起こるか全く予測できない」のである。
● より“正統的”な楽団“レッド・ツェッペリン”でさえ,最近,同様の問題を引き起こした。同グループはニューヨーク・プラザ・ホテルから8,000㌦(約200万円)の損害請求を突き付けられたのである。同ホテルの広報担当者は,「夏の初めにレッド・ツェッペリンが使った部屋はひどく荒らされ,最近になってようやく使用可能になった」と語った。備え付けの家具は壊され,じゅうたんはだめになり,壁には隣りの部屋と行き来できるように穴が開けられていた。
暴力行為を是認する神学者たち
◆ 最近,米国ジョージア州アトランタで,黒人神学プロジェクト主催の会議が開かれ,世界各地から集まった黒人教会指導者および神学者約175人は,解放闘争に関する声明を採択した。この声明は,解放の手段として,非暴力的行為と暴力行為の両方を是認している。声明書はこう告げている。「我々は,[被抑圧民]の選ぶ手段がどんなものであれ,その特殊な状況下ではそれが最善のものであることを確信する。また,彼らに対する抑圧に終わりをもたらす努力を非とする,宗教に名を借りた偽善的な態度を取るようなことはしない。この国に住む我々も,同様の決定を下さねばならないような事態に追い込まれるかもしれない」。
アルコールと心臓
◆ アルコール飲料の適度の使用は心臓病の防止に役立つだろうか。アルコール飲料を適度に用いれば,血液中のコレステロールが危険度のより低い物質に変わるため,心臓病の防止に役立つかもしれない,というある医学研究班の驚くべき報告が,英国の医学専門誌ランセットに掲載された。「この発見はわれわれにとって思いもよらないものであった」と,主任研究員の一人は語った。しかし,その研究員は,アルコール飲料と心臓に関する質問「に答えるその研究は始まったばかりである」ことも付け加えた。アルコール飲料を心臓病の予防薬に用いることは今の段階では時期しょう早であり,注意を要する,と研究員たちは考えている。
これまでに最大の地震?
◆ 最近,インド洋の海底で起きた巨大な地震は有史史上最大規模のものであると欧州の地震学者は主張している。この地震によって高さ30㍍の大津波が発生したと言われている。震源は,インドネシアのバリ島の南東480㌔の海嶺であった。この地震は,震源の南方2,400㌔ほどのところにあるオーストラリアのパースでも感じられた。全世界の地震学者は,この地震の規模をマグニチュード7.7ないし8.9と測定している。
“カブトムシ”がいなくなる?
◆ “カブトムシ”とも呼ばれる,ドイツの小型乗用車フォルクスワーゲンが,一時米国で大いにもてはやされたことがあった。1968年にその売上げ台数は頂点に達し,42万3,000台が売られた。ところが最近になって,価格の上昇などの要素が重なり,売上げが落ちていた。そこで同社は,この車種の対米輸出用の製造を1977年型をもって中止すると発表した。しかし,依然としてこの車種の人気の衰えない他の国々ではこれからも販売される。
抗ウイルス薬品の開発成功
◆ 研究者たちは,ある致命的な病気に効く抗ウイルス薬品の使用に成功したと言っている。現在まで,薬品を使って,普通のかぜを含む,ウイルスによる感染を治療しようとして努力が払われてきたが,いずれも失敗している。アデニン・アラビノサイドと名づけられたこの新しい薬品は,脳を破壊する病気であるヘルペス・ウイルス脳炎の治療に用いられた。虫を媒介として伝染するこの病気にかかった人の約七割は命を失う。ところが,この新しい薬品を使ったところ,死亡率は28%にまで下がった。この薬品は,フロリダおよびバハマ沖にいる海綿動物から取ったものである。
肉は良くかむこと
◆ 毎年約3,500人のアメリカ人が,肉を食べていて窒息死している。死ぬ人は大抵,話すこと,飲むこと,食べることを同時に行なっている。普通,十分にかまずにのみ込んだ肉片が原因となって窒息することが多い。一番窒息しやすいのは,45歳以上の大人と4歳以下の子供である。窒息する人のうち年老いた人は,歯が悪かったり欠けていたりするか,入れ歯がうまく合っていないような人が多い。そのために,よくかまずに食べ物をのみ込んでしまう傾向がある。検死解剖の結果,当初心臓発作で死亡したと考えられていた人の多くは,実は食べ物がのどにかかって窒息死したことが明らかになっている。
ぼろぼろになる,図書館の蔵書
◆ 幾千万冊もある,図書館の古い蔵書は,その紙に含まれている酸のために傷んできている。コロンビア大学の蔵書復元係によると,コロンビア大学の500万冊の蔵書のうち,少なくとも150万冊はばらばらになりかかっている。米国国会図書館では,1,800万冊のうち600万冊の蔵書がぼろぼろになりつつある。また,ニューヨーク公立図書館の研究書コレクション500万冊のうち半分は使用に耐えなくなっている。1900年から1939年までに生産された本を調べたところ,その97%の耐用年数は約50年だった。ところが,今日の本に使われている紙の推定平均耐用年数はわずか30年ないし35年にすぎない。紙の質が「歴史上これまでにないほど悪く」なっているためである。
増加する英国の産油量
◆ 北海から英国に流れ込む石油の量は増え続けている。十年以上の調査と投資の結果,沖合いの油田は今や英国の石油消費料の約三分の一を供給している。以前は必要とされる石油をほとんど全面的に輸入に頼っていた英国は,1980年までに石油を完全に自給自足できるようになるとされている。
助かった赤ん坊の命
◆ オハイオ州のフリーブランド大学病院の小児科教授マーシャル・H・クラウス博士によると,1971年から翌72年にかけて,下痢をしたアルゼンチンの赤子のほぼ半数が死にそうになっていた。この問題はどのように克服されたのだろうか。最近開かれたラ・レッチェ連盟国際総会の席上,クラウス博士はこの問題にふれ,人工乳を母乳に切り換えたところ幼児の命が助かった,と語った。
“秀才”がいちばん望ましいか
◆ 米国ペンシルバニア州フィラデルフィアのハーバーフォード大学の学生68名を対象にして行なわれた15年におよぶ研究によると,そうとは限らないようである。心理学の教授ダグラス・ヒースは,この学生たちが1960年代の初めに入学した当初から観察してきた。現在,彼らはどうなっているだろうか。今日,かつての大学の秀才は,“実力”の点でも,人間としての成熟度の点でも,成績の劣っていた人たちに及ばない。大学で優秀な成績を収めていた人の多くは,一般に「日常生活の現実の問題と真理的に無縁」であったことが判明した。彼らは同期の卒業生に比べて陰気で観念的であった。そこでヒース教授は,学生の知的教育のみならず,社会的,道徳的能力の向上を計る努力をするよう大学当局に勧めている。
北極点一番乗り
◆ 1893年から1896年にかけて,ノルウェーの探検家フリチョフ・ナンセンは水上船艇で北極点に到達しようとした。ナンセンは,氷を砕いて進む代わりに,潮の流れに身をまかせて漂流し,北極点から450㌔以内の地点にまで達した。近年になって,米国の原子力潜水艦が北極点の氷の下を通過したり,北極点で浮上したりするようになった。しかし,ソ連の原子力砕氷船アークティカは,最近,水上船艇としては初めて北極点に到達した。7万5,000馬力のエンジンを装備していたので,アークティカ号は,厚さ3.5㍍の氷を砕きながら,極点に向かうことができた。
波に秘められているエネルギー
◆ 山形県の由良海岸沖では,波の高さが3㍍以上になる日が一年に100日ほどある。そこで,この波を利用して発電機のタービンを回すことになった。現在,世界最初の海上発電施設が由良海岸沖に建造中である。ここに据えられる三台の発電機の最大発電能力は各200キロワットである。波のエネルギーでピストン室の空気を圧縮し,発電機のタービンを回す。
拒否された尼僧
◆ ギリシャのアテネで発行されているデーリー・ポスト紙[1977年8月7日付]によると,25歳の尼僧志願者が女子修道院に行く途中乱暴された。もはや処女ではないとの理由で修道院当局が彼女の修道院入りを拒否したため,その女性は精神障害を引き起こして精神病院に収容された。