世界展望
増えつつある“顕著な”地震
● 米国地質学調査局の調べによれば,1983年中,全世界で“顕著な”地震が70回発生した。「この数は1980年中に起きた地震より1回少ないだけで,1982年より14回,1981年より20回多い」と,地球物理学者のウェーバリー・パーソンは述べた。ある地震が顕著なものと呼ばれるのは,それがマグニチュード6.5に達する場合か,死傷者やかなりの損害が出る場合である。同調査局の報告は「1976年に起きた中国の大地震の際の60万人を超すとみられる死者を含め,過去10年間に75万近くの人々が地震によって死亡した」と述べた。
エアゾール剤は無害?
● ロンドンのデーリー・テレグラフ紙の伝えるところによると,英国のファラデー南極基地で研究に取り組む科学者たちは,エアゾール缶の使用が地球の大気に害を及ぼすとの学説はくつがえされたと語った。しばらくの間,エアゾール剤に含まれるフッ化炭素が,過度の紫外放射線から地球を保護するオゾン層を希薄化してしまうと考えられていた。ここ数年間,科学者たちは南極で地球に届く放射線の量を測定し,記録してきたが,感知されるほどの増加が見られなかったため,彼らはオゾン層は希薄化されてはおらず,結局のところエアゾール剤は無害であるとの結論に達した。「この発見は1970年代に,エアゾールスプレーの使用を厳しく制限する法案を可決した米国議会や欧州議会の議員を当惑させるものとなろう」とテレグラフ紙は述べている。
神経性食欲不振症の増加
● 神経性食欲不振症とは,人が食べることを拒否する感情的な病気である。スタンフォード大学のスチュワート・アグラス博士によれば,注意が払われてきたにもかかわらず,その病気は驚くほどの率で広がっているとのことである。現在,約4,000人のアメリカ人が自分を飢餓状態にしており,そのほかに230万人が食べた物を吐くという症状を引き起こす大食症と呼ばれる障害を持っていると同博士は述べている。「最近まとめられた研究は,過去30年間,10年ごとに食欲不振症が倍加していることを示している」とアグラス博士は述べた。人の体重が平常より25%減ると,その障害を持つとみなされている。その障害を持つのはおもに女性であり,男性一人につき女性9人の割合で,犠牲者のうちの5%はその結果として死亡する。それらのうちのほとんどは裕福な家庭で育った有望な十代の若者である。アグラス博士は,「さもなければ聡明な,生活に必要な物は何でも持っているかに見える若者が,ゆっくりとした死病ともいうべきものに取りつかれるのはなぜだろうか」と尋ねている。一つの要素は,流行しているダイエット熱であると同博士は感じている。
ヨセフの秘訣をさぐる
● ニュージャージー・サンデー・ヘラルド紙は,「旧約聖書に登場するヨセフが,砂漠に穀物を貯蔵することによって古代エジプト人を餓死から救って以来ほとんど4,000年を経た今日,イスラエルの科学者たちは,干ばつの続く20世紀の国々での飢きんを相殺するという希望を持って,ヨセフの用いた方法のことで頭をしぼっている」と述べている。イスラエルと共にその計画に従事しているのは米国農務省で,その調査運動の指導者であるモーシェ・カルデロン教授によれば,米国には「売ることのできる小麦が大量に」ある。550㌧の小麦を貯蔵できる白いドーム形のテントで実験をすることで,科学者たちは,ヨセフが7年の豊作と7年の飢きんの間,どのように虫と湿気を寄せつけずに穀物を蓄えたかを知ろうとしている。聖書は彼がどのようにそれを行なったかは述べていない。
宇宙競争
● レーガン米大統領は,1992年までに恒久有人宇宙基地を軌道に乗せる計画を正式に承認した。マクリーンズ誌が報告しているように,「国家主義的な言葉遣いと壮大な宇宙植民地化計画をにおわせる」演説の中で,同大統領はその発表を行なった。最初の乗組員はそれぞれの分野の専門家である男性5人と女性二人で構成されるが,宇宙基地の拡大に伴ってその数は増えるものと見込まれている。部品や備品を軌道へ運ぶにはスペースシャトルが用いられる。建設費はどのくらいであろうか。計画に着手するに当たり80億㌦(約1兆9,000億円)の費用が見込まれるが,今世紀の終わりまでには恐らく300億㌦(約7兆円)を上回るものと思われる。この計画には反対がないわけではない。米国科学アカデミーによれば基地の建設を行なう“科学的な必要性”はないとのことである。ある人々は,無人衛星を用いればその費用のごく一部で計画されている実験を成し遂げられると語っている。また,途方もない赤字予算のために社会福祉計画が削減されているその同じ時に,これほどの経費をかけることを嘆く人々もいる。国家の威信が,基地建設を正当化する唯一の理由であると言われている。レーガン大統領は次のように述べた。「我々は,自分たちが最初であり最高であると言えることを誇りに思う」。
“急ぎ病”
● 南カリフォルニア大学の心臓学者,ガーション・レッサー博士は,“急ぎ病”がその犠牲者となる幾百万もの人々の命を奪っていると述べている。それは風邪,インフルエンザそして心臓病などを含む多くの病気を引き起こす“現実の病理学的存在”であると同博士は言明している。USAトゥデー紙に報告されているように,レッサーは今日の人々が,仕事の行き帰り,食事,雑用を行なうとき,そして休暇の時でさえも,どれほど絶えず急いでいるかに言及している。同博士は,「絶えず急いでいる状態にある人々は,慢性の化学的非常事態の状態にある。それらの人たちは,心臓血管系統に無理な負担をかけるアドレナリンの“急襲”を経験しており,究極的には心臓に,命取りになりかねないような強い負担をかけている」と述べている。中年になるとしばしば起こる心臓発作という代価を払うのを避けるため,同博士は次のことを学ぶよう勧めている。それは息抜きをすること,ゆとりをもって活動を計画すること,真に優先させるべきことに努力を集中すること,および手つかずのままになっている事柄があっても動じないことである。
モーセ五書の登録
● トーラー,すなわちモーセが著した聖書の最初の五つの本の手書きの写しが米国にあるユダヤ人の会堂から姿を消している。過去3年間に,200以上の聖なる巻き物 ― 一つの巻き物の値段は平均2万5,000㌦(約600万円)― が盗まれた。それらは,一度覆いと支柱がはずされると基本的には,すべて同じに見えるため,そのほとんどは取り戻されていない。ユダヤ人の律法が,巻き物の上に目に見えるしるしを付けることを禁じているので,今までに行なわれた巻き物を鑑定する努力は,その大部分が成功しなかった。3年間の研究を重ねた今,権威者たちは何とか受け入れられる制度を提案した。今実施されつつある登録制度は,それぞれのトーラーの10か所に“極小の目うち”により,独特の方法でコードが付されるというものである。―目うちの八つの穴は非常に小さく,肉眼では見えないが,警察の装置を用いれば判読できる。こうして登録されたモーセ五書すべての,コンピューター化された記録は,警察当局がすぐに利用できるように保管されるであろう。
半ペニー銅貨が廃止になる
● 英国の半ペニー硬貨は,704年間存在してきたが,もはや鋳造されなくなり,今年の終わりには法定通貨として回収される予定である。イングランド王エドワード1世により1280年に世に紹介され,当初は銀で造られていたが,半ペニーは落としてもわざわざ拾う人がいなくなるほどまでにその大きさや価値の点で小さくなった。今や銅貨を鋳造するにはその額面価格よりも経費がかかり,物の値段は最低1ペニー単位で上下するため,その硬貨を絶滅から救おうとする者はだれもいない。現在,25億個を超す半ペニー硬貨が出回っている。
ハエたたき
● ハエを上手にたたくのはなぜそれほど難しいのだろうか。それは,ハエの目が情報をその脳に送るのに,わずか1,000分の1秒しかかからないからである。ロンドンの国立医学調査研究所のE・G・グレーは,今ではより良い方法があると述べている。チェンジング・タイムズ誌に報告されているように,同氏は両手のひらにティッシュ・ペーパーを1枚ずつ取ってハエに近づき,それぞれの手をハエから等距離のところで止めたままにしておくよう勧めている。それから手のひらの間隔を心持ち広げたり狭めたりし,そして両方の手でハエをピシャリとたたくのである。この方法はなぜ効果があるのだろうか。グレーによると,ハエの脳はその視野のうちの一つの領域から来る動きに対してのみハエを反応させる。「同時に近づいて来る二つのものにたたかれるとハエは動けなくなる。というのはハエの中枢神経系統は今やどの角度で飛び立てばよいか算定できないからである」とグレーは述べている。
溺れても生き延びる
● 低体温法の専門家であるミネソタ大学のロバート・ポゾス博士は,「だれでも,人が溺れたらそれでおしまい,その人は死んだとかつては考えていたが,今や我々は,人が冷たい水の中に1時間も完全に浸された後でさえ生き延びる可能性があること,したがってその人を生き返らすようあらゆる努力が払われねばならないことを知っている」と述べた。その原因となっている生物学的現象は,摂氏20度以下の水温によって引き起こされる“哺乳動物潜水反射作用”と呼ばれる。その作用によって血液は体の表面部分や先端部分から心臓や脳のほうに送り出され,それらを保護することになる。同時に,急速に体を冷却することは,重要な諸器官の機能を保護する上で重要な役割を果たす。脳の代謝の速度は急激に低下し,脳に必要な酸素の量を大幅に減らすのである。脳の損傷や他の病的な影響もなく溺れても生き延びた子供たちの最近の例は,― 臨床的には死を宣告され,生きていることを示す重要な兆候が見られなかったにもかかわらず ― 低体温で苦しむ,水に溺れた犠牲者たちのことをあきらめないようにということを医師たちに教えた。
古代人の方法が最善
● 2,000年前にヘロデに仕えた技術者たちが,現代のイスラエルの建築業者たちの問題を解決した。ロンドンのサン・テレグラフ紙に報告されているように,1971年にアシュドド港に造られた防波堤が浸食され,ぼろぼろに崩れていた。問題を解決できなかったので建築業者たちは,ハイファ大学の海事センターに援助を求めた。同大学はその後,アシュドドの北方約80㌔にあるカエサレアにヘロデ王が建造した防波堤を調査した。同大学のアブネル・ラハンド氏は,「我々は,ヘロデに仕えた技術者たちが彼らの防波堤を,アシュドドで用いられたよりも進んだ技術と先見をもって建造したことが分かった」と述べた。しっかりとした,波にも崩れない土台を据えるために彼らが海底に石や小石を最初に敷きつめた古代の方法にしたがって,アシュドドの防波堤は建て直された。そしてそれはよく持ちこたえていると報告されている。
部品は高くつく
● ますます多くの車が,事故に遭うと全く使いものにならないとみなされるのはなぜだろうか。全米保険業者連合会によると,それは部品を取り替えることが非常に高くつくからである。7,128㌦(約171万円)の輸入小型車の全部品を取り替えるなら2万6,787㌦(約642万円)もかかると言われている。それは豪華な車1台分の値段である。計算が合わないとはいえ,これは車全体の値段が部品の総額と同じではないことを示す一例である。
病院の請求書は確かめるとよい
● 今度病院の支払いをする前に,その請求書を確かめるのは良いことかもしれない。保険業者のために危険管理<リスク・マネージメント>をする会社であるエキファックス・サービスが行なった最近の会計監査によると,余分の請求をされる少なからぬ可能性がある。ファミリー・ウイークリー誌が報告している通り,40の州で調べられたたくさんの請求書 ― みな1万㌦(約240万円)を超えるもの ― のうちの93%には誤りがあった。それらの誤りの4分の3は,二重に請求されたり,一度も行なわれたことのない診療に対して請求されたものであることが分かった。