世界展望
ブラジルにおけるエイズ
● ブラジルの新聞,オー・エスタド・デ・サンパウロの伝えるところによると,ブラジルでエイズの患者第1号が発見されて以来,「その数は急速に増加している」。1月から3月までの間に新しい患者は12人になり,これらは「ここ[ブラジル]で発生したケースである」と,サンパウロ保健局のパウロ・R・テイシエイラは述べている。サンパウロ州だけでも20人がエイズで死亡した。またブラジルでは1月に,血友病患者の中から初のエイズ患者が出た。これにかかったのは13歳の少年である。その少年は血友病患者として「しばしば輸血を受けるので,それから感染した」ものと担当の医師は見ている。同医師はまた,「我々はすべての供血者を徹底的に検査し得る態勢にない」と述べた。
高血圧の薬の使用
● 高血圧に悩まされているアメリカ人は6,000万人と推定されているが,その一部に対して米国政府は薬を使わない療法を勧めている。最も軽度の患者に対しては,規定食,運動,行動様式の変化などを療法として勧めている。「また,肥満と高血圧が密接な関係にあるという事実に対する認識も高まっている」と,アラバマ大学の心臓血管研究訓練センターの所長,ハリエット・P・ダンスタン博士は述べている。「軽い高血圧症なら,体重を減らすだけでコントロールできるかもしれない」。高血圧は,心臓病,脳卒中,腎臓病などの危険を増す。
地震による死者
● ドイツの新聞,「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥンク」は,「地震による死亡者数は全世界で年平均2万人に上る」と述べている。ヨーロッパにおける危険な地震帯は,ギリシャ,南部イタリア,そして中東ではトルコなどを通っている。北部ドイツのキール市にある地球物理学研究所によると,地中海地方だけでも毎年2,000人ないし3,000人が地震で死亡している。
カナダにおけるエホバの証人の増加
● 1981年に行なわれたカナダの国勢調査が示すところによると,エホバの証人と称する人々が14万3,480人いる。しかし,カナダのエホバの証人自身は,現在近隣での福音伝道を活発に行なっている人を7万7,628人と報告している。なぜこの差が生まれたのだろうか。政府の国勢調査による数字には,子供や,エホバの証人と聖書研究を行なっている人々が含まれている。1981年の国勢調査における統計的分類では,男子が6万5,160人,女子が7万8,320人となっている。約4万1,000人が15歳未満,2万4,000人が15歳から24歳,6万5,000人が25歳から64歳,そして1万6,000人以上が65歳を超えている。ちなみに,最新の国勢調査によるこれらの数字は,わずか20年間に,1961年の国勢調査のときの6万8,015人に対して111%増加したことを示すものである。
教会が“マーケティング”
● オーストリアの諸都市の中でも,カトリック教会を離れる人が最も多いのはウィーンである。1979年には教会を離れたウィーン人は9,010人にすぎなかったが,1982年には脱退の波は高まって1万6,760人という数字になった。その傾向を阻止するため,オーストリアの司教たちは枢機卿を先頭にテレビに出て,教会を離れた人々すべてに対し,「個人的な話」を行なった。その結果教会に戻った人たちもいれば,教会あてに手紙を書いた人たちもいた。ウィーンの刊行物,「ベルゼン-クリール」は次のように伝えた。「それらの手紙は今,教会を離れた人々の動機を知るために分析されている。この種の動機調査を行なったり,法王が広告代理業者の役(属司教ウェーバーによると,オーストリアにおけるカトリック会議には史上最大の宣伝活動が含まれていた)を務めたりして,オーストリアの教会は初めて,現代のマーケティングと経営手段を利用した」。
子供の性病
● カナダにあるアルバータ州ソーシャル・サービスの児童保護課のプログラム製作者であるポール・フリッツによると,性病を抱えて病院を訪れる10歳未満の子供たちが次第に増えている。1982年の州の重要な統計が示すところによると,10歳未満の子供の淋病は12件で,そのうちの7人は5歳未満であった。ある10歳の少女の場合,医師は淋病と診断したが,「その子供にとっては5年間で3度目の感染であった」と,エドモントン・ジャーナル誌は伝えている。1982年以来,性行為による感染として報告される若いアルバータ州人の数は毎年約15%増加している。それでもフリッツは,現在報告されているケースは「氷山の一角」にすぎないと見ている。
シートベルトの安全性
● 英国では,1983年の2月以来,乗用車や小型ワゴン車の前の席に座る時にシートベルトを着用することが義務づけられている。どんな結果が出ただろうか。運輸省の報告によると,路上を走る,シートベルトを義務づけられている車種が1%増えたにもかかわらず,その時以来,致命傷や重傷は20%ないし25%減少した。政府は長い間ベルトを自発的に着用することを車の利用者に勧めてきたが,結果はよくなかった。今のところ政府は,後部座席に乗る人々にもベルトの着用を義務づけることを考えている。
スポーツの力
● 大規模なスポーツ競技には人々を活気づける力があるが,これは様々な政治目的や社会目的に資する強力な現象である,と南カリフォルニア大学哲学部の学部長,ダラス・ウィラードは言う。「スポーツは気晴らしになり,感情を発散させる手段になる。大がかりなショーのようなスポーツ競技には,観衆を一致させる働きがある」,「歴史的に見ると諸政府は,大衆を懐柔する政治的道具としてスポーツを利用する傾向を示してきたが,それも驚くには当たらない」と同部長は主張する。
「生き残るための問題」
● 1700年代の英国国教会の牧師,ジョン・ウェスレーを祖とするメソジスト教徒は,今年,アメリカで200年祭を行なっている。同派は成立第3世紀に入るところであるが,将来の展望はどうだろうか。最大のメソジスト団体で,950万の会員を擁するメソジスト教会連合の牧師,ジェームズ・E・マゴーは,「第3世紀への出発」という小冊子の中で次のように書いている。「地方には,生き残るための問題と闘っている教会が多い。教会員の数は減少し,日曜学校は振るわず,予算は上昇し,熱意は冷えており,疲労は我々の指導力の質を低下させている」。
ポークと電子レンジ
● 米国疾病対策センターのピーター・シャンツ博士によると,電子レンジには時々熱にむらが生じる。残念なことだが,そういう場合,ローストポークはよく焼けているように見えても,「旋毛虫症の原因になる回虫はまだ死んでいない」と,メディカル・ポスト紙の記事は述べている。さらに,アイオワ大学の調査によって,「五つの異なった電子レンジで調理された189のローストポークの4分の1以上に,旋毛虫のいることが」分かった。
避難所
● オランダの雑誌「KRI」の伝えるところによると,オランダ人教授ヘルマン・ビアンフィは,犯罪者が「復しゅうという最初の反応から逃れる」ことができる避難所を再導入することを提案している。そうした一時的な収容所は,麻薬中毒者のような法律違反者たちが,逮捕される恐れを持たずに自分たちの問題を克服するよう助けるのに使用できる,とビアンフィは考えている。オランダ全土に散在する都市の五つか六つにそうした収容所があればよいというのが同教授の意見である。歴史からヒントを得てビアンフィは,空き家になった修道院を避難所に改造することを提案している。
コンピューターで学ぶ?
● 「コンピューターは珍しさゆえに一時は学習を向上させるかもしれない ― しかし,珍しくなくなれば,伝統的な方法を用いる,準備をよく整えた教師も全く同じように教えることができる」。ニュー・サイエンティスト誌は,南カリフォルニア大学教育学部のリチャード・クラーク教授が最近行なった調査の結果を発表するに当たって上記のように述べた。「生徒たちは,新しい機械を初めて手にした時に,多くの時間と努力を投入する傾向がある。しかし,同じ時間と努力を伝統的な方法で行なわれる授業に投入すれば,恐らくそれに匹敵する結果を得るに違いない」と同教授は述べている。コンピューターのない生徒は元気を出すことだ。
人工衛星の棺?
● 埋葬地の需要が増えているので,多くの人は火葬に変えてもよいと考えるようになっている。しかし,イタリアの発明家,ドミニコ・デ・レンツォはまた別の「解決策」を提案している。彼は,ジェノアで催された“84人の発明家”プリマベラ博覧会に,特殊の耐熱性アルミニウムで作られ,地球の上空の軌道を浮遊する仕組みになっている棺を出品した。世界人口の増加による墓地の過密化の問題に触れ,ドミニコは,「我々の頭上には無限の空間が広がっていて,死者は全く安らかに,永遠にそこで浮遊することができる」と述べた。しかしドミニコが触れなかったらしい一つの事柄は,その種の“葬式”にかかる費用である。それは,普通の収入の人から見ると途方もない額となろう。
犬の麻薬パトロール
● 成田空港で麻薬をかぎ出す役目を持つ犬の部隊に仲間入りをしたテリアとコッカースパニエルについて,英文毎日は,「小形犬が世界で初めて税関勤務」というふうに伝えている。今までは,ドイツシェパード,ポインター,レトリーバーなどが麻薬を密輸する者たちをかぎ出してきた。これらの大形犬は下のほうの棚にある麻薬はかぎ出したが,犬の体重が重すぎて持ち上げることができないために,高さ8㍍の荷物棚の上のほうには手が届かない。担当官たちは,上のほうの棚から麻薬を発見した例が1度もないことに気づき,今こそ小形犬にその仕事を仕込むべきだと考えたのだ。
フレスコ画にミルクセーキ
● ミルクセーキを濃くするための材料であるメチル・セルロースは,ミケランジェロのフレスコ画をきれいにするのに役立つ。その成分を含むゼリー状の混合物が,バチカンのシスティナ礼拝堂の,絵の描かれている天井と壁に塗りつけられた。その清掃用混合物を取り除いたところ,何と,ミケランジェロの絵が元の色に戻った。400年の歴史を持つこれらのフレスコ画は伝統的に,「まれに見る,淡い色調の,一種の散光の調和」と評されていた。ところが修復者たちは,ミケランジェロが柔らかな色調ではなく非常に鮮明な色を選んで使っていたので,今ではその絵が壁から飛び出しそうに見えるのに気づいた。
にわとりの音楽
● ソビエトの雑誌「スプートニク」の伝えるところによると,卵を産むにわとりに産業騒音が及ぼす被害は,音楽によって少なくすることができる。騒音が大きすぎると産卵量が減り,死ぬにわとりの数が増える。騒音が極度に少なくても同様の影響がある。ある記事によると,丁度よい音響レベルは75デシベルである。養鶏場によっては騒音レベルが電気のこぎりと同じほど高く,94デシベルもあるところがある。これはにわとりの体温を下げ,食欲を奪って,にわとりに有害な影響を及ぼす。音楽はその致命的な影響を逆転させるようである。
隠す場所がない
● 銀行の金庫室にある頑丈な箱は,宝石や現金を入れておくのに安全な場所と普通考えられている。しかし,もはやそうではなくなった ― 少なくともパリではの話だが。かつらをかぶり,ほおひげを付けているために,パリの警察が「かつらギャング」と呼んでいるすご腕のギャング団が,2年にわたりあちこちの銀行を開店時間中に襲った。幾人かが行員や客を後部の一室にとじ込め,その間にほかの者たちが箱を壊してあける。盗みが行なわれている最中に運悪く銀行に入ってきた客は,丁重に他の被害者たちのいる所へ連れて行かれる。手荒いことは箱をあけるときにしか行なわれない。“かつらギャング”は週に4回も銀行を襲い,250個もの箱をあけた。