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目ざめよ! 1988
目88 7/8 19–21ページ

音のない世界から

午前5時ごろだったでしょうか,まだ早い時刻でした。夫のバシルと私は,掛け布にくるまって心地よく,うとうとしていました。その時,夫がひじで私をつつき,ささやくような声で,「ほら,雨が降ってるよ」と言いました。私は,家に当たる静かな雨音を床の中で聞くのがとても好きでした。しかし8年もの間,バシルは,雨が降っているとそのことを私に知らせなければなりませんでした。私には雨の音が聞こえなかったからです。でもこの度は事情が違っていました。私はさっと起き上がりました。雨音が聞こえたのです。何年もたって再びあの美しい音を耳にしたのです。

幾年も聞けなかった懐かしい音を耳にしたのは,その時が初めてだったわけではありません。その前の週に,いろいろな音の交響楽で私の耳は満たされたのです。暖房装置のファンの回る音,電話のダイヤルを回す時に響く音,台所を歩く自分の柔らかい足音。大抵の人には別に何でもないそういう音も,私の耳には音楽のようでした。聴力が回復したのです。その経験をお話ししましょう。

初期の診察

年も若くまた献身していた私は,1958年に全時間の聖書の教え手としての仕事を始めました。30年後の今でもまだその仕事を続けています。1970年代の初め,バシルと共に,人々が霊的な視力を得るよう,また神の言葉のすばらしい真理に対して聴力を取り戻すよう人々を助けていたころ,私は自分の肉体的聴力の低下に悩まされるようになりました。

1977年になって,私は米国カリフォルニア州サンペドロのある医師に診てもらい,その時初めて「耳硬化症」(英語: otosclerosis)という言葉を知りました。それはよくある遺伝性の病気で,手術をすれば難聴は改善される,ということでした。でも,手術に弊害が伴うかもしれないことを聞かされると,私は内心,『自分の場合は違う。私にはそんなことは起きない』と,自分に言い聞かせながら,その診察室を出ました。

音のない世界に入る

それから3年の間に少しずつ私は音のない,ふんわりとした世界,周囲の騒音の全くない世界へと入ってゆきました。私には,人々が私の背後に忍び寄り,突然に姿を現わすように思えました。夫の車が私道に止まる時の,聞き慣れたエンジンの音も聞こえなくなりました。ですから夫まで突然家に入って来るようになって,びっくりさせられることがよくありました。話している人の唇を見ることができない時は,その音声がとんでもない方向から聞こえて来るように思え,困ってしまいました。また,人と話をした後は,自分の応答が間違っていなかったかどうかを確かめようとして,ついその人の顔をじっと見つめるようになりました。物を食べている時に会話を聞くためには,かむのをやめなければなりませんでした。最悪だったのは,小さな声で話す研究生と聖書研究をしていた時,いら立ちや,失望に近いものを感じたことです。そういう研究生の述べる注解は全部理解できたわけではないからです。たった1時間なのに,勉強が終わるとくたくたに疲れました。

1980年に一つの転機が訪れました。その年に私は,聖書の授業が2週間集中的に行なわれる開拓奉仕学校に出席するよう,ものみの塔協会から招待されたのです。数年その特権を待ち望んできましたが,耳がはっきり聞こえなければ,その学校から益を得ることはできません。それで私は,別の医師の意見を聞いてみることにしました。

こんどは私は,診察室で,背の高い,薄茶色の髪の毛をした耳科医の前に座っていました。その医師は,優しい表情をした,近づきやすい感じの人で,「サンペドロの医師が言ったとおり,耳硬化症ですね」と言いました。私はその医師を信頼するようになりました。なぜなら,私のする質問に耳を傾け,答えを出す前に,私の尋ねている事柄を確かに理解するようにしてくださったからです。つまり,患者の言うことによく耳を傾ける人だったのです。時間をかけて耳硬化症とは何かを説明し,それに関する本もくださいました。私はその医師に患者のことを気遣う心があるように思えて安心しました。

耳硬化症とはどのようなものか

“oto”(「耳」に相当するギリシャ語)とsclerosis(「硬化」に相当するギリシャ語)という言葉から,自分の耳に生じている事を少し理解できるようになりました。中耳の中にある小さな骨,ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨のことを聞かれたことがありますか。私もそうでしたが,恐らくそういう小さな器官に関心をお持ちになったことはないでしょう。しかし,私たちはそれらの器官に大いに依存しているのです。我が身のことになって初めて私も,ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨という名称を知りました。アブミ骨は,中耳にある変換器の最後のものです。大抵,耳硬化症はこのアブミ骨にまで広がり,骨が硬くなるにつれて,内耳リンパ液に伝わる振動はいよいよ弱くなり,結果として気導聴力が失われます。アブミ骨硬化症は,普通,手術によって矯正できる一種の伝音性難聴です。

私が最初に学んだのは,伝音性難聴とは何かということです。簡単に言えば,伝導を妨げる何らかの状態のために音が中耳を通って伝わらない,という意味です。でも,もし神経の機能が依然良い状態であれば,その人は手術を受ける良い立場にあります。幸い私の神経の機能は良い状態にありました。

アブミ骨切除手術

アブミ骨の手術中は何の物音も聞こえないだろうと思っていましたが,全く逆でした。局所麻酔をかけられていましたが,医師が顕微鏡を使いながら耳道からアブミ骨を切除し,その代わりに金属線の人工器官を埋め込んでいた時には,大きな音が聞こえました。そして急に,まだ手術台の上にいたのに,医師が看護婦に話す声が非常にはっきりと聞こえました。次に医師は私に,「どうですか」と言いました。「何でも聞こえるわ」と,私は思わず声をあげました。でも医師は,耳の中がはれてくるので間もなく聴力は減退するけれども,数週間もすればまた聴力は回復する,と言いました。

医師は手術室を出る前に,小さなプラスチックの容器に入った私のアブミ骨を私に手渡してくださいました。私はそれを見て,びっくりしました。非常に小さいのです。こんなに小さくてしかも重要なものをお造りになったエホバ神の偉大さに,しばし感動しました。「わたしがひそかに造られたとき……わたしの骨はあなたから隠されてはいませんでした。あなたの目は胎児のときのわたしをもご覧になりました。あなたの書にそのすべての部分が書き記されていました」という詩編作者の言葉を思い出しました。そうです,人体の中で最も小さな骨である,このちっぽけなアブミ骨も,胎内で勘定に入れられていたのです。―詩編 139:15,16。

相手の声を聞いて会話する能力は,私たちの創造者からのすばらしい贈り物です。その能力を失うことは,確かに大きな損失です。しかし,いったんそれを失って再び取り戻すことは,実際,胸の躍る経験です。音のない世界を後にすることができて,私は本当に感謝しています。―ベティ・E・スターレットの語った経験。

[19ページの囲み記事]

聞かれたことがありますか

聞こえない耳の治療に次のような進んだ方法が用いられていることを聞かれたことがありますか。

■ 重い平衡障害とそれに伴う難聴を引き起こす内耳疾患である,メニエル氏病の治療には,ロサンゼルスのウィリアム・ハウス博士およびハウス耳研究所が開発したシャント管を挿入する手術が行なわれています。

■ 全く耳の聞こえない人は,移植蝸牛刺激装置を用いる処置に希望が持てるかもしれません。その移植片は小さな電子機器から成っており,手術によって耳の中に移植されます。それは体に付けたマイクロホンと音声処理装置によって活性化されます。それらの装置は音波を電流に変換し,その電流はその移植片を通して聴覚神経繊維を刺激し,メッセージを脳へ伝達します。次いで脳は,それらの刺激を音として認知します。この装置を移植された患者は,こうして音のない世界から音のある世界へと連れ出されます。患者は,ごく限られた音声しか識別できませんが,それでも周囲の事柄と協調関係を持つことができ,そのため意思の疎通を図ることや,周囲の音を識別すること,また自分の声を制御することができます。これまでのところ,およそ400人の患者が何らかの形の蝸牛刺激装置を移植されました。移植片の使用には一層の進歩が期待されており,将来は明るいようです。

[20ページの囲み記事]

聴力の弱い人と会話する方法a

■ 自分の伝えたいと思っている主な点を話すことから始め,特に大切な点はメモに書いてあげる。

■ 普通の声の高さで,明りょうに,そして少しゆっくりと話す。

■ その人のほうを向いて,できれば自分の顔に明るい光が当たるようにして話す。

■ 物をかみながら話したり,話している時に自分の顔に手を当てたりしない。

■ 別の部屋から話したり,水の流れる音のような,避けられる雑音をそのままにして話したりしない。

[脚注]

a ニューヨーク・タイムズ紙の保健記事担当者,ジェーン・E・ブロディーの提案

[21ページの図]

(正式に組んだものについては出版物を参照)

アブミ骨の手術

段階1: 硬化したアブミ骨

段階2: アブミ骨を切除する

段階3: アブミ骨を金属線に代える

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