人間にできない事柄を成し遂げる政府
「あなた方は来て,神の働きを見よ。人の子らに対するその扱いは畏怖の念を起こさせる」― 詩編 66:5。
1,2 (イ)目に見える宇宙は,創造者の恐るべき力をどのように示していますか。(ロ)エホバの預言的な言葉が現代について述べている事柄を信ずるべきなのはなぜですか。
エホバは,人間が行なえないことを行なう力を持っておられます。例えば,人間は核爆弾の威力に対して恐怖心を抱いていますが,その核爆弾の力も,太陽に内在する膨大な力と比べるなら,物の数ではありません。ところがその太陽は,この銀河系だけでも約2,000億個もある恒星の一つにすぎません。宇宙全体には,それぞれ幾十億もの恒星を持つ約1,000億の星雲があると天文学者たちは推定しています。このすべてを創造するには,実に膨大な力が必要でした。(イザヤ 40:26)創造者の持たれるこの恐るべき力の前に,人間の力は取るに足りないものと化してしまいます。―イザヤ 40:15。
2 ですから,エホバは,ご自分が行なうと述べておられる事柄を成し遂げることができるという点にだれも疑いを差しはさむべきではありません。(イザヤ 46:9,10; 55:11)神が人間に独自の道を進むのを許してこられた制限時間の終わりが今や近づいているとその預言的なみ言葉に示されている以上,わたしたちはそのことを信じるべきです。人間や動物や地球そのものに対して人間が行なってきた事柄は,神の造られた宇宙にとって一つの恥辱,つまり汚点であることを歴史は示しています。ですから,エホバがこの汚点を一度限り完全にぬぐい去られるのは全く正当なことです。―ホセア 4:1-3。ユダ 14,15。
3 聖書は近い将来について何と述べていますか。
3 今日,世界の舞台で生じている事柄は,この事物の体制が,テモテ第二 3章で予告されていた「終わりの日」の最終部分に実際に達していることを示す明白な証拠です。エホバは間もなくこの事物の体制を打ち砕いて消滅させ,その頭である悪魔サタンの行動の自由を拘束されます。それに続いて,地上には全く新しい事物の体制が設けられます。その体制は天の政府によって管理されますが,イエスはその政府を祈り求めるよう追随者たちに教えて,こう言われました。「あなたの王国が来ますように。あなたのご意志が天におけると同じように,地上においてもなされますように」― マタイ 6:10。ダニエル 2:44。ローマ 16:20。
買い戻しの原理
4 エホバは古代イスラエルにおいて,買い戻しの原理をどのようにお用いになりましたか。
4 人間の政府は罪や病気や死を除去できませんが,神の政府は人間の行なえない事柄を行ないます。エホバが古代のイスラエルの民を扱われた仕方を調べてみると,それがどのように行なわれるかについてある程度の洞察を得ることができます。当時,神は,買い戻し,つまり贖いの原理を用いられました。例えば,イスラエル人が貧しくなった場合,その人はイスラエル人ではない人に自らを奴隷として売らざるを得なくなるかもしれません。しかし,近い親族が買い取るための価を十分に持っているなら,その人を贖うことができました。―レビ記 25:47-49。
5,6 (イ)受け継いだ罪から人類を解放するために,買い戻しのこの原理はどのように作用しますか。(ロ)すべての人が自動的に罪から解放されますか。
5 同じようにして,神は人類を罪への隷属状態から買い戻す備えをしてくださいました。その価は失われたものと等しくなければなりませんでした。(申命記 19:21)アダムは,人間としての完全なとこしえの命を失いました。罪深い人間の所有するもので,その価値に匹敵するものはないので,彼らは「兄弟をさえ……請け戻す」ことはできません。(詩編 49:7)しかし,聖書はそれを行なえる方の到来を予告していました。その方とは,イエス・キリストであることが分かりました。イエスは人間となる前に天におられたことが明らかにされました。しかし,その命はエホバの力によりマリアの胎に移されました。こうしてその方は人間として生まれました。しかし,神がその父であったため,イエスは人類の残りの人々すべてを無力な者にした罪深い状態を受け継ぐことはありませんでした。―マタイ 1:18-21。ヨハネ 1:1,14。ペテロ第一 2:22。
6 このようなわけで,イエスは完全な人間の命と価値の等しい唯一のもの,つまり別の完全な人間の命を持っておられました。しかし,イエスは不従順なアダムとは異なり,神に対する従順を保たれました。そして,人類のためにご自分の命をささげられた時,エホバはそれをふさわしい買い戻しの価として受け入れられました。(ガラテア 1:4)では,だれでも罪から自動的に解放され,王国の支配下で完全さを得るということになりますか。そうではありません。ヨハネ 3章16節はこう述べているからです。「神は世を深く愛してご自分の独り子を与え,だれでも彼に信仰を働かせる者が滅ぼされないで,永遠の命を持てるようにされた」。買い戻しの備えを受け入れ,それについて何かを行なって初めて,わたしたちは楽園において自分の体と思いが元通りの完全な状態に戻されることを経験するのです。―啓示 21:4。
新秩序における教育
7,8 人間の頭脳には,将来の学習に関するどんな潜在的な力がありますか。
7 現在の人間の不完全な状態のもとでさえ,頭脳には膨大な潜在的学習能力があります。しかし,それも,新秩序で頭脳が学び得る事柄のほんの一部にすぎません。新秩序では頭脳の機能が罪に妨げられることはなくなるのです。「頭脳の本」と題する本の中で,著者はこう述べています。「我々の頭の中には,既知の宇宙の中で最も複雑な機構の一つが収められている。その能力と融通性は,人間の造ったどんなコンピューターをもはるかにしのぐ」。そしてこう続けています。「人間は全潜在思考能力のわずか10%しか用いていないとよく言われるが,今この数値は高すぎるように思われる。恐らく1%も用いていないのではあるまいか。0.1%,あるいはそれ以下といったほうが当たっているかもしれない」。
8 新秩序において頭脳がその全潜在能力を発揮する時,その脳によって人間がどんなことを成し遂げられるかを想像してください。動植物や海洋生物など,エホバがこの地上に置いてくださった,わたしたちの学び得る魅惑的なものすべてについて考えてみてください。また,幾十億もの星雲を包含する驚嘆すべき宇宙について学ぶことも考えてみてください。さらに,美術,音楽,工芸その他たくさんの分野で習得できるすべての技術のことも考慮してください。
9 どんな種類の教育は,新秩序において最大の益をもたらしますか。
9 新秩序では,すべての人々に最大の益をもたらす別の種類の教育も施されます。イエスは,「彼らは皆エホバに教えられるであろう」と言われました。(ヨハネ 6:45)これは最も高いレベルの教育です。しかも,この事物の体制の終わりを生き残る人々を含め,神の王国の臣民全体がその教育を受けられるようになるのです。(啓示 7:9,14)王国の他の臣民のことは,ヨハネ 5章28,29節で言及されています。そこでイエスは,「記念の墓の中にいる者がみな,彼の声を聞いて出て来る時が来ようとしてい(ま)す」と述べておられます。この幾十億という死者の復活 ― 人間には全く成し遂げることのできない事柄 ― は,彼らのために広範にわたる教育の業が行なわれなければならないことを意味しています。
10 新秩序ではどのように教育が進められますか。
10 今日,互いに相いれないたくさんの教育制度が存在していますが,新秩序では,神の天的な政府が,一致した方法でエホバに関する真理を人々に教える世界的な一つの教育制度を備えるでしょう。正しい人間関係について人々を教えることもその中に含まれます。人種や国籍もしくは社会的な地位に対する誇りが教えられることはないでしょう。それどころか,地の住民は,互いに各人の尊厳を認め合い,互いに愛し合うことを学ぶでしょう。こうした教育によって,エホバの優れた特質を反映するよう人格を健全な方向に作り変えるという結果も生じます。―使徒 10:34,35。コロサイ 3:9-12。
11,12 新秩序におけるこうした教育が首尾よく目的を達成すると確信できるのはなぜですか。
11 このような教育は本当に良い成果を生み出すでしょうか。確かに生み出すことができますし,実際に良い成果を生み出すでしょう。一つの理由は,偽ることのできないエホバがそうすると述べておられるからです。(テトス 1:2)それに,この種の教育は,まさに今,良い成果を生み出しているのです。エホバはすでに世界的な教育組織を持っておられ,その組織はエホバの王国政府とその要求について幾百万もの人々に教えを授けています。そうしたことが生じているのは,「終わりの日」の始まった1914年以来王国支配が機能しているためです。
12 その時以来,マタイ 25章の預言が成就してきました。そこには,神の敵がなお地上にいるあいだに,イエスが天で王国の支配権を執ることが示されています。32節はこう述べています。「すべての国の民が彼の前に集められ,彼は,羊飼いが羊をやぎから分けるように,人をひとりひとり分けます」。これら羊のような人々は,エホバから,その拡大しつつある見える組織を通して教えられています。それらの人々は学ぶ事柄に感謝し,神の像に自らの人格を作り変えるよう努力しています。そして,この教育がまさに今,幾百万もの人々に良い影響を及ぼしているという事実は,その教育が同じことを神の新秩序においてより一層大きな規模で行なうことを示す確かな証拠です。
楽園を作り上げる
13 王国の支配下ではどんな壮大な建設の業が行なわれますか。
13 王国の支配のもとで行なわれる別の仕事は,この地球を楽園に変える仕事です。楽園にはスラム街や貧困があってはなりません。人々は,人並の家と,樹木や花や庭のある幾らかの土地を望みます。進んで神から教えを受ける人々はまさにそうしたものを得ることになるのです。イザヤ 65章21節と22節は次のように予告しています。「そして,彼らは必ず家を建てて住み,必ずぶどう園を設けてその実を食べる。彼らが建てて,だれかほかの者が住むことはない。彼らが植えて,だれかほかの者が食べることはない。……わたしの選ぶ者たちは自分の手の業を存分に用いる」。
14,15 エホバの僕たちには楽園を作れると確信できるのはなぜですか。
14 エホバが新秩序において,ご自分の民の,進んで物事を行なおうとする心や手を用いて成し遂げてゆかれる事柄を疑ってはなりません。今日でさえ,建設業界は,エホバの証人が“速成の”王国会館など,建物を造る面で成し遂げている事柄に驚嘆しています。そのような建物の一つが米国で建てられたあと,ある新聞の社説は次のように述べました。『建物よりもさらに貴重なものがそれら2,000人の自発奉仕者たちによって作り出された。市政の指導者たちは,先週末に成し遂げられた事柄をもっとよく調べてみるべきである。熱意と献身,目標を達成したいとの願望が相まって,驚嘆すべき成果がもたらされたのである。地元の諸団体が同様の資質を活用できさえすれば,再生利用,犯罪防止,地域社会の発展など,どんな目標であろうとも達成可能なものとなろう。働き人の一隊は,地域社会が一致するとき,人がどれほどの力を持ち得るかを証明した。我々はこの王国会館がエホバの証人たちに感動をもたらす泉のような場所となることを願うものである。その存在はすでに我々すべてに感動を与えている』。
15 エホバの僕たちの,進んで物事を行なおうとするこの意志と,洗練された技術は,神の新秩序でも用いられ,なお一層大きな益をもたらすことになるでしょう。そして,望ましくない地域すべてを,美しい家や環境で置き換えるのは,何と楽しいことでしょう! 自分が毎日つぎ込む努力によって,この地球が日一日と全地球的な楽園へと近づいてゆくのを知ることにより,深い満足がもたらされることでしょう。
一致した全地球的な家族
16 新秩序の住民が暴力による脅威を決して感じないのはなぜですか。
16 新秩序の住民は,犯罪,暴動,戦争などの脅威を感ずることはもはやありません。詩編 46編9節は,「神は地の果てに至るまで戦いをやめさせておられる」と述べています。「平和の君」であられるイエス・キリストは,永続する全地球的な平和を実際にもたらされます。「君としてのその豊かな支配と平和に終わりはない」からです。(イザヤ 9:6,7)真の平和がもたらされ,全人類が同じ高い規準に従って教育されるので,すべての人は破れることのない愛のきずなで結ばれるでしょう。このようにして,分裂を引き起こす国境はもはやなくなってしまします。
17 今すでに神の僕たちが得ている平和と一致は,どれほど広範にわたるものですか。
17 これは,余りに良すぎて実現することのない約束でしょうか。そうではありません。平和と一致は,王国の支配に忠節に服する人々の間ですでに現実となっているからです。このことを考えてみてください。250万余りのエホバの証人は全地に広がっています。それでも,彼らは次のイザヤ 2章4節をすでに成就しているのです。「そして,彼らはその剣をすきの刃に,その槍を刈り込みばさみに打ち変えなければならなくなる。国民は国民に向かって剣を上げず,彼らはもはや戦いを学ばない」。どんな状況に自分がいようとエホバの証人は,どこの国に住む人であれ,兄弟たちであれ,他のだれであれ,人々の命を故意に奪うことをしません。イタリアの出版物,「イル・コリエーレ・ディ・トリエステ」は,「エホバの証人は,……汝殺すなかれ……という基本的な命令を破るよりは,死を受け入れる覚悟ができている」と述べました。エホバの証人は神の規準を固守しているため,この世が得ることができない真の平和と一致を得ています。争いで分裂したこの世界のただ中で,幾百万もの人々がこうした状態を楽しんでいるという事実は,神の王国が地上の事柄全般を管理する時に何が生ずるかを確証しています。―ヨハネ 13:34,35。ヨハネ第一 3:10-12。
18,19 神の高い規準を固守する人々にもたらされる他の益にはどんなものがありますか。
18 この国際的な平和と一致に加えて,神の優れた規準を固守することにより,隣人や隣人の所有物を尊重する人々が生み出されています。彼らはこのようにして,『すべてのことにおいて正直に行動して』います。(ヘブライ 13:18)このことに関して,あるフランス系カナダ人のコラムニストは,ル・ジュルナール・デ・モーンレアル紙に寄せた記事の中で,エホバの証人について,「もし世界にエホバの証人しかいなかったら,夜ドアに差し錠をして固く締めたり,盗難警報器のスイッチを入れたりする必要はなくなるであろう」と述べました。
19 この世では犯罪問題は手に負えなくなっていますが,神の政府の忠節な臣民たちの間では,犯罪の問題は全くありません。さらに,彼らは聖書の高い道徳規準を固守するので,どの国でも蔓延している性行為感染症や堕胎という災いを被ることもありません。また,世は結婚の取り決めについて何でも許容する見解を示していますが,エホバの僕たちはそれとは対照的に結婚に対して深い敬意を抱いています。エホバの証人はなぜこうした規準を保てるのでしょうか。それは,エホバがご自分の忠節な崇拝者たちを導いておられ,「神にとってはすべてのことが可能」だからです。―マタイ 19:26。
真の崇拝に集まりなさい
20 現代における最も重要な運動とは何ですか。
20 人々が気づいているかどうかにかかわりなく,羊のような人々をエホバの組織に集める全世界的な業は,現代における最も重要な運動です。これは,イザヤ 2章2,3節の顕著な預言の成就です。こう記されています。「そして,末の日に,エホバの家の山[高められたそのまことの崇拝]はもろもろの山の頂より上に堅く据えられ,もろもろの丘より上に必ず高められ,すべての国の民は必ず流れのようにそこに向かう。そして多くの民は必ず行って,こう言う。『来なさい。エホバの山に……上ろう。神はご自分の道についてわたしたちに教え諭してくださる。わたしたちはその道筋を歩もう』」。
21 正直な心を持つ人々は何をするよう勧められていますか。
21 正直な心を持つ人々すべてに対して,真の崇拝と義の政府を目ざして進むこの感動的で世界的な運動に加わるようお勧めします。神の律法と原則に関する教育を受けている民と交わることによって現在もたらされる祝福を享受してください。間もなくこの地球を楽園に変え始める王国政府に忠節な態度で服してください。あなたの信頼を,この世の企てにではなく,この王国に置いてください。詩編 127編1節は,「エホバご自身が家を建てるのでなければ,建てる者たちがそのために骨折って働いても無駄である」と述べているからです。「あなた方は来て,神の働きを見よ。人の子らに対するその扱いは畏怖の念を起こさせる」という詩編 66編5節の招待にこたえ応じてください。ですから,人間にできない事柄を成し遂げることのできる政府,つまり人類のための最善の政府を保証しておられるまことの神のもとに来てください。その政府こそ,間近い将来にこの地球を治める唯一の政府になるのです。
どのように答えますか
□ エホバが必ずご自分の目的を成し遂げられると言えるのはなぜですか
□ 買い戻しの原理は,人を罪から解放するためどのように作用しますか
□ 新秩序においては,どんな大規模な教育と建設の業が行なわれますか
□ 新秩序においては全地にわたる平和と一致と愛が行き渡ることを示すどんな証拠が現在見られますか
[17ページの図版]
王国の支配のもとで,真理を愛する人々は「皆エホバに教えられる」
[19ページの図版]
王国政府に服する人々の間では,すでに平和と一致が現実のものとなっている