「論じる」の本を十分に活用する
1 「論じる」の本は,宣教のあらゆる分野における効果性を増し加えるための優れた道具として,1985年の地域大会において発表されました。それ以降ほとんど毎月,「王国宣教」のプログラムの中でこの本の特徴や用い方が説明されてきました。多くの奉仕者にとって「論じる」の本は,まさに人々と聖書から論じ,反論に対処し,説得する上できわめて有用な道具であることが実証されてきました。
2 それでも,野外からの報告によると,たいへんよく活用している人がいる反面,ほとんど活用していない,あるいは,活用しているとしても,「紹介の言葉」と「対話を拒否するような返事に対処する方法」の部分以外は余り用いていない人がいるという観察も寄せられています。
3 「論じる」の本は,家から家,再訪問および聖書研究で直面する質問や反論に対処するのに必要な,ほとんどすべての情報を収めています。したがって,「論じる」の本の一部分ではなく,全体を活用して初めてこの本は生きたものとなり,有用な道具となるのです。
4 「論じる」の本は,神の組織が数十年間にわたり蓄積してきた経験に基づいて準備されており,その有用性は十分に実証されています。それで新しい人だけでなく,経験のある人も皆,この本から益を得ることができ,またそうすべきです。「論じる」の本の特色,用い方および価値を正しく理解し,認識するなら,この本を一層効果的に活用できるようになります。
紹介の言葉
5 「論じる」の本の9ページから15ページには,41通りの紹介の言葉が載せられています。その各々を土地の事情に合わせて調整するなら,紹介の言葉はきわめて変化に富んだ,しかも大変効果的なものになります。野外奉仕に出かける前に,「論じる」の本のこの部分から数種類の紹介の言葉を準備するのはよいことです。加えて,家から家の途中であっても,今用いている紹介の言葉が余り効果的でないと思えるなら,次の家に移る前に「論じる」の本を開き,新鮮な近づき方を証言に取り入れることができるでしょう。これらの紹介の言葉を活用することにより,わたしたちの紹介の言葉は型にはまることなく,家の人や状況に合った,より効果的なものとなるに違いありません。
野外で直面する反論に対処する方法
6 「論じる」の本は,主にこの分野に注意を向けており,扱っている反論に対処する方法は以下に挙げる五つに分類できます。
7 一般的な反論: これは15ページから24ページの「対話を拒否するような返事に対処する方法」の部分で扱われており,野外でしばしば直面する一般的な反論に対処する実際的な例が取り上げられています。
8 家の人が持つ特有の信念に関連のある反論: この種の反論に対処するための鍵となるのは,最初に述べる一,二の文章あるいは言葉であり,その目的は対話を継続させることです。まず,家の人の質問や考えを温和に受け止め,その後,家の人がそう考える理由を尋ねる質問や,異なった角度から問題を考えるよう促す質問をすることができます。例: 『神はどうしてこのような苦しみをみな許しているのですか』― 149ページの「もし,こう言われたなら ―」の部分参照。
9 反論が聖書翻訳で用いられる用語,あるいは言葉の相違を伴う場合: この種の反論の場合には,いくつもの聖書翻訳や原語を対比させながら,聖書中に用いられている特定の語の正しい意味を論じる方法が用いられています。例: 「魂」― 300,301ページ参照。
10 聖書を神の言葉として受け入れていない人からの反論: 日本の野外でしばしば直面する反応の一つです。このような場合は,すぐに聖書から論じるよりも,まず身近で現実的な例を取り上げ,家の人の道理に訴える仕方で反論に答える方法が用いられています。その後,聖書に家の人の注意を引き,論じます。例: 『わたしは見えるものしか信じません。神は一度も見たことがありません』― 134,135ページ参照。
11 聖書以外の源からの証言を活用する: 「論じる」の本が反論に対処するために用いている方法の特徴の一つであり,これは聖書的な先例に倣うものです。パウロはアテネ人に宣べ伝えていた時,「知られていない神に」ささげられた祭壇に言及した後,一般に受け入れられていた世俗の資料から引用しましたが,それは証言に説得力を加えるものとなりました。(使徒 17:22-34参照。)「論じる」の本はこの模範に倣っており,一般の歴史書,百科事典,宗教関係の参考文献などを活用しています。これにより,偽りの宗教的慣行の起源,ある種の教義の発展,ヘブライ語やギリシャ語の意味などに関して,独善的な主張をしているのではないことを示すことができますし,証言はいっそう説得力のあるものとなります。例: 「祝日」(221-227ページ),「魂」(301-304ページ),「誕生日」(305,306ページ),「喫煙」(391-393ページ)参照。
12 これまでに挙げた幾つかの反論に加えて,地域社会特有の反論やその時々に生じる出来事に関連してエホバの証人に投げかけられる反論があります。したがって,反論に巧みさと大胆さをもって対処する方法を常に研究し,学んでゆかなければなりません。例えば,地域によっては,「なぜ皆さんは先祖を大切にしないのですか」とか,「なぜエホバの証人は伝道ばかりし,地域社会をより良い場所にするために地域の活動に積極的に参加しないのですか」といった反論が投げかけられるかもしれません。あるいは,特別な出来事をきっかけに,「あなた方は輸血を拒否して子供を見殺しにするのはどうしてですか」といった質問に答える必要が生じるかもしれません。こうした反論に巧みに答える方法が「論じる」の本の283,102,103および310,311ページに載せられています。それで,挑戦となる反論に直面したなら,「論じる」の本を調べ,その中から巧みな対処方法を常に学び続けるのはふさわしいことです。
欲しい情報を見つけだす方法を修得する
13 「索引」を用いる(438-445ページ): 反論に直面する時,ある特定の論題を示す言葉を「論じる」の本の「索引」の中から探すことができます。例: 運命論者は胎児であったヤコブとエサウに関する預言的な言葉を読み,聖書は運命という考えを支持していると唱えるかもしれません。「索引」の「運命を前もって定めること」の部分を見るなら,「ヤコブとエサウ,85」という情報を見いだすことができます。
14 「しばしば間違った仕方で適用される聖句」の部分を用いる(445ページ): 相手の人が自分の信念を説明しようとして聖句を曲解していると思える場合,この部分を開くことができます。例: 三位一体を信じる人の中には,ヨハネ 20章28節を示し,トマスがイエスに向かって「わが神……」(口語)と述べたことに言及し,イエスはトマスの言葉を否定しなかったゆえにイエスは神である,と主張する人がいます。445ページの「しばしば間違った仕方で適用される聖句」の部分を見ると,ヨハネ 20章28節について54ページを参照するようになっています。
15 「主要な項目」に注目する: 5ページには76の「主要な項目」が挙げられています。欲しい情報は大抵の場合,これらの項目の該当する部分を開くことによって見いだせます。
16 各項目の中にあるゴシック体の主な質問や肉太の明朝体の副見出しに注目する: この方法によって鍵となる質問を容易に探し出すことができ,かつ全体の骨組みを把握することができます。
17 相互参照を活用する: この本の随所に載せられた相互参照を用いることによって,特定の論題を総合的に把握できるよう助けられます。相互参照は同じ資料の単なる繰り返しではありません。例: 111ページには王国に関連した相互参照が見られます。そこでは「年代」の355-358ページの項と「終わりの日」の116-120ページの項を参照するよう指示されています。
築き上げる仕方で「論じる」の本を用いる
18 「論じる」の本の7ページ3節にある通り,この本は “議論をして勝つ”ための助けとして用意されたのではありません。真理に対して敬意を示さない人と議論するのは築き上げる用い方ではありません。本当に満足のゆく答えを知りたくて質問する人や聖書の見解に進んで耳を傾ける分別のある人,また真理を愛する人が聖書を理解し,受け入れるのを援助するために用いるべきです。
19 聖句が引用されているときには,その聖句を強調すべきです。「論じる」の本は優れた本ではあるものの,あくまでも聖書を理解するための一つの助けに過ぎません。神の言葉,聖書こそ権威ある書物であることをいつも覚えておく必要があります。それで,できる場合にはいつでも自分の聖書を取り出し,聖句を調べるよう勧めることができます。そうすれば,わたしたちの話す事柄が実際にその人の持っている聖書の中にあることに相手の人は気づくでしょう。
20 確かに「論じる」の本は,王国の良いたよりを宣べ伝え,弟子を作る業にあずかるわたしたちに対するエホバからのすばらしい贈り物です。(ヤコブ 1:17)この本に精通し,十分に活用するなら,わたしたちの宣教能力は驚くほど向上し,同時に「論じる」の本に対する認識は大いに深められることでしょう。「論じる」の本の特色や用い方を学んだ今,家族で,あるいは仲間の奉仕者と一緒に練習することにより,自由自在にこの本を用い,最良の賛美の犠牲を神にささげてゆくよう決意したいものです。―テモテ第二 2:15。