「知識」の本を用いて人々をキリストの弟子に導く その1 ― 目標を持って教える
1,2 心を動かすとはどういう意味ですか。
1 研究生をキリストの弟子に導くには,心を動かす教え方が欠かせません。心とは,その人の内面の本当の姿のことです。(ペテ一 3:4)心には,感情,動機,欲求が宿っており,考え,理解,意思の働きも含まれています。それで,研究生の表面に表われる部分だけではなく,内面の状態を洞察しましょう。研究生が真理を理解し,愛するように助けてください。どのように行なえますか。
2 「永遠の命に導く知識」の本は,誠実な人の心を動かす上で助けとなる書籍です。(「ものみの塔」誌,1996年1月15日号,10ページを参照してください。)これから3回にわたる「王国宣教」の記事では,この本を用いてどのように心を動かす研究司会を行なえるかを取り上げます。第1回は「知識」の本全体を概観し,それぞれの部分で,司会者がどんな目標を持つことができるかを考慮しましょう。
3 1-4章を扱う際にはどんな目標を持つことができますか。
3 初期の研究の目標: 研究生が研究を継続し,霊的に進歩するかぎを握っているのは1-4章です。この部分で信仰の肝要な土台を据えたいものです。その土台とは,研究生が,(1)聖書を神の言葉として受け入れ,(2)エホバ神の存在を認め,愛するようになることです。
4-9 研究生の意欲を高めるため,1章をどのように用いることができますか。
4 聖書を神の言葉として受け入れる(1,2章): 学び始めたばかりの人にとって最初の章は大切です。ここで難しいとか,ついてゆけないという印象を与えないようにし,聖書を学びたいという意欲を高めましょう。そのために,4,5ページの挿絵と1章の4,5,7,18節は助けになります。
5 4,5ページの挿絵を用いて次のように話し合うことができます。
「数百年前の人々は,携帯電話やデジタルカメラの機能について説明されて,信じることができると思われますか。[間を置く。] 人間は,科学を探求して知識を深めてゆくことによって,こうしたものを作れるようになりましたし,今のわたしたちはそれを疑うことなく受け入れることができます。パラダイスの希望も同じです。__さんがこの本を学び,聖書に関する知識を取り入れてゆくなら,少なくともこうした希望は夢ではないとお感じになることができると思います」。
6 ある奉仕者は,1章の4節の例えを次のように調整しています。
「通常自動車を運転するときに,ほとんどの人は説明書を読むことはありませんね。どんなときに説明書が必要になるでしょうか。[故障したときと答える。] わたしたちの人生も同じです。特に何かの導きがなくても生活がうまくいっていると感じるときがあるものです。しかし,問題を抱えたりスランプに陥ったりすると,聖書という説明書は実に助けになります。さらに,ふだんから説明書にある方法で車を扱うなら長持ちするように,日ごろから聖書を生活の導きにしているなら,幸福感はずっと長続きします」。
7 続く5節では,「満足のいく生活」のブロシュアーの第2部を学んだという経験が生きてきます。研究生が特に役立ったと感じている例を復習し,聖書の価値に対する認識を高めるのはいかがですか。7節では,ブロシュアーの第4部の4節や第6部の5節を思い起こすことができるでしょう。―「王国宣教」2003年7月号,3ページ,9節と5ページ,11節を参照してください。
8 1章の18節には,聖書を学ぶことにより,「人生に関する深遠な疑問に対する答え」を得,「神との親しい関係を培うよう助けられ」,「神だけが与えることのできる平和を楽しめる」とあります。これらの分野ごとに目次から幾つかの章を示し,その後の研究への意欲を高めることができたという経験が寄せられています。1章が終わった段階で,聖書は学んでみる価値のある本だと研究生が感じるようになっていることが大切です。
9 研究生の関心に応じて,学ぶ章の順序を調整しても差し支えありません。例えば,家族生活に関して聖書から導きが得たいと思い研究に応じた人の場合,15章を先に討議することができます。聖書預言に深い関心を持つ人の場合,11章を研究できるかもしれません。
10,11 聖書を神の言葉として受け入れるようどのように助けることができますか。
10 2章はじっくりと扱いたい部分です。1-9節は一度の研究で討議できるでしょう。8節には,聖書が神の性格を明らかにしているとありますが,実際に聖書の特定の部分を読み合ってみることができます。例えば,背景を簡単に説明してから,ヨナ 3章10節から4章11節を読みます。4章1-3節を読み,「ヨナは本心を率直に神に話していますが,__さんなら,こう言われたときにどう感じるでしょうか,神はどう反応なさると思いますか」と尋ねます。続く4節を読み,「神はヨナに質問しますが,ヨナは答えませんね。どうなさるでしょうか」と問いかけ,さらに5-8節を読みます。少しずつ読んでは考えさせる質問をします。最後に神がどのような方に思えるか尋ねてみてください。「人が本心を話すとき,それが愚かに思える考えでもすぐに怒ったり退けたりされず,辛抱強く教え諭される方である」という結論に至るかもしれません。裁き人 6章12-20節,36-40節,7章9-15節,出エジプト記 3章10-12節,4章1-19節,創世記 18章20-33節なども随時用いることができます。
11 10節以降の三つの副見出しでは,聖書が神の言葉である証拠,すなわち,その高い知恵,科学と調和し正直で信頼できること,預言の成就を取り上げています。一度に一つの副見出しを扱えるかもしれません。「満足のいく生活」のブロシュアーの第3部の3,4,6,8節にある質問のように,取り入れた知識に関して深く考えさせる質問をするのは効果的です。必要に応じて,聖書に関する3巻のビデオ,「すべての人のための書物」のブロシュアーの14-29ページなども用いることもできます。
12 研究生が創造者の存在を認めるために何ができますか。
12 エホバ神の存在を認め,愛する(3,4章): 3,4章では,この目標を意識しましょう。「知識」の本は,創造者が存在するかどうかについてほとんど論じていません。それで,3章の1,2節を学ぶ際,神についてどのように考えているか率直に尋ねるのはよいことです。「満足のいく生活」のブロシュアーを学び,たとえ創造者を確信できていなくても,その存在を意識できるようになっているならすばらしいことです。一方,創造者の存在を受け入れられないと研究生が感じているなら,その原因を共に考慮しましょう。創世記の記録を神話と感じているなら「創造」の本の3章,学校で学んだ進化論のせいなら4,5,7,8章などから幾らかの資料を話し合うことができます。
13-15 研究生が神を愛するようにどのように助けることができますか。
13 「神のみ名を使うべき理由」の副見出しの部分では,「エホバに近づきなさい」の本の1章の9-12節を活用することができるかもしれません。エホバというお名前の意味を身近にとらえる上で,この本の10節の例えは助けになります。それで,この副見出し部分の討議を進めつつ,エホバというお名前が当時のイスラエル人にとって何を意味したのか,その方に信頼を置いた人と退けた人がどんな結末になったか,今日のわたしたちにはどんな意味があるかを話し合います。神のお名前の意味を理解することは,人格的な存在としての神を知る第一歩です。
14 3章の14-19節では,エホバ神の魅力的な特質に少しでも触れるようにしましょう。「エホバに近づきなさい」の本の48-54,172-175,273-275ページなどの自然界の例を少しずつ用いることができます。また,皆さん自身がこの書籍を学び,感動した事例を話すのは最も効果的です。
15 4章では,イエス・キリストがエホバ神を親しく知るためのかぎであることについて考えます。あなたが研究生の心の中にキリストへの愛が育つように助けるなら,必然的にエホバ神に対する愛も築くことになります。「地上におけるイエスの歩み」の副見出しの部分を考慮する際,「エホバに近づきなさい」の本の29章にあるイエスに関するエピソードの幾つかを聖書から話し合えるかもしれません。研究生の注意を常にエホバ神に向けるようにするなら,研究生はエホバ神に対する愛情を少しずつ育むことができます。1-4章で信仰の土台を据えることができたなら,5章以降を研究することが容易になります。
16-19 「知識」の本の5章以降をあなたはどのように用いたいと思いますか。
16 5-9章を学ぶ: 5章は真の宗教と偽りの宗教というテーマを扱っています。6-9章では,サタンの存在と罪(6章),イエスの贖い(7章),宇宙主権の論争(8章),復活の希望(9章)という大切な教理を扱っていますが,人がなぜ死ぬのかという疑問に答える形で全体が一貫しており,興味を起こさせる扱い方です。場合によっては,先にこの四つの章を学んでから5章に戻るほうが,研究生は受け入れやすいかもしれません。
17 10-15章: 研究生の心の中に信仰という霊的建物を建ててゆきます。10章と11章を通して,王国が現実の存在であり,今が終わりの日であることを理解してほしいと思います。信仰には,エホバに対する感謝の念と認識が不可欠です。そのために,12-15章を学ぶ際には,学んだことを生活に当てはめ,聖書の原則が本当に役立つことを実感できるよう助けてください。今学んでいる知識を持っているのと持たないのとではどんな違いがあるのか推論したり,個々の研究生に合わせて具体的な適用方法を話し合ったりできるでしょう。
18 16-19章: 正しいことを行ないたいという気持ちが強くなると,研究生はエホバに依り頼む必要性を強く感じるものです。16章を通して個人的に絶えずエホバ神に祈り,エホバ神と一緒に問題に取り組む習慣を身につけましょう。エホバが祈りを聞いてくださり,極めて個人的な仕方でエホバの助けや慰めを経験するなら,エホバに対する個人的な愛着が深まり献身へと導かれます。これらの章を学ぶ際には,司会者自身がエホバの備えにどれほど感謝しているか言い表わすようになさってください。
19 「知識」の本全体を概観し,研究生の内面に関してどんな目標を持って司会に取り組むことができるかを考慮しました。「知識」の本以外に補足的な資料を用いる際には,何を成し遂げるために用いるかを考え,研究生にとって本当に必要な部分だけを扱うようにしましょう。資料をただ読むのを避け,生き生きと説明したり,共に推論したりしてください。いつでも研究生の内面の進歩についての目標を念頭に置き,心を動かす研究司会に心がけましょう。続く記事では,視覚に訴えることにより心を動かす方法を考慮します。