世界展望
「血清肝炎,再び増加す」
◆ 昨年,11月12日付,デーリー・ヨミウリ紙は,このような見出しの記事を掲げ,1969年に輸血を受けた患者のうち,5人にひとりが血清肝炎にかかったとの,ある調査結果を報じた。慶応大学の島田信勝教授の率いる医師団の行なったその調査は,厚生省に報告するためのものであった。血清肝炎は1968年以来,増加しており,専門家もその原因がつかめないとのことである,供血された血液中のビールスによって引き起こされると考えられている血清肝炎は,おおだん・肝硬変・胃の障害その他の疾ぺいを招くおそれがあると同報告は指摘した。いうまでもなく,血清肝炎にかからないようにする最も簡単な方法は,輸血を避け,血液増量剤を必要とする場合には,あくまでも代用血液を用いてもらうようにすることである。
輸血なしで行なわれた脳の手術
◆ 最近,アメリカ,カリフォルニア州の17歳になる一少女は,馬から振り落とされて重傷を負い,生命が危うくなった。地面に落ちていた棒から突き出ていた,長さ約13センチのクギが頭に突きささり,9センチほど脳にくい込んだからである。多数の神経外科医と連絡を取ったものの,医師たちは,輸血を行なえるのでなければ,手術はできないとして,手術を断わった。輸血は少女とその両親にとって宗教上の信念に反することであったため,輸血に同意できなかったのである。しかし,ついに,輸血をせずに手術をすることに快く応ずる外科医が見つかり,2度の手術が輸血なしで行なわれ,成功した。最初の手術では,脳組織の中にはいった髪の毛と骨の破片を除去し,次の手術で,傷口の周囲のよごれた骨を取り除き,傷口を金属板でふさいだ。少女の宗教的良心を尊重して手術を行なうよう努力を払うかわりに,少女を見殺しにしようとした医師がいる中で,前述の医師は進んで手術を引き受け,成功したのである。
危機に面する石油資源
◆ 米国務省のW・M・レヤード博士は,非共産主義世界の石油事情の見通しは暗いと述べた。非共産主義諸国は以前にもましてアラブの石油に依存しており,西欧は,必要とする石油の85%を中東および北アフリカから,また,日本はその90%を中東から入手している。万一,アラブとイスラエル間の紛争が再燃し,アラブ諸国からの石油が断たれたなら,どうなるであろうか。レヤード氏は,他の石油資源にたよって需要を満たすことはできないと見ている。
仕事は長寿に寄与するもの
◆ 最近の研究によれば,若い時から仕事に携わり,いわゆる退職年限を過ぎてからも働き続ける,農村の人々が最も長生きをすることがわかった。同時に,節度のある生活習慣や正しい動機づけ,また,創意工夫に富む関心を持つのもたいせつなことがわかった。仕事,とりわけ,からだを使う仕事は,のろいどころか,祝福なのである。
血清肝炎に汚染された血液は死を招く
◆ アメリカ・ボストン市のイーブニング・グローブ紙が最近報じたところによれば,輸血によって血清肝炎の感染を起こして死亡する人が,ボストン市一帯では毎月平均1名出る。シカゴでは,その割合は4日にひとりになるといわれている。ニューヨーク市のある病院では,心臓切開手術を受けた患者の25%が,汚染された血液のために肝臓の病気にかかった。同紙は,さらに,「これは,医師や公衆保健当局も取り除くことができそうにない,大きな問題に発展しつつある」と述べている。この問題が増大する原因の一つは,麻薬の常習者となり,皮下注射器の不衛生な針を通して血清肝炎にかかった後,血を売って金に変える人がふえていることにある。
心臓移植手術の減少
◆ 心臓移植が初めて行なわれたのは,1967年12月で,1968年に行なわれた心臓移植手術は101件,ついで,翌1969年には,47件に減少し,昨年は9月までに15件行なわれたにすぎない。それら心臓移植手術を受けた患者のうち,今なお生存しているのは,わずか15人にすぎない。アメリカ,スタンフォード大学のノーマン・E・シャムウェイ博士はこう語った。「初期の心臓移植手術は狂気なまでの熱意をもって迎えられたが,今では一般に消極的な見方が取られているようである」。
縮小する教会
◆ カナダ,モントリーオールの英国教会は,同市の五つの教会の仕事を,できれば一つに縮小する計画を進めている。教会員の急激な減少がその理由とされているが,教会のほとんどすべての宗派が同じ問題をかかえている。
テレビを用いて教育を施す
◆ ブラジルの北東部に住む8万人もの人々は,テレビを通して教育を受けている。学校教育未修了者のため,高校の教科課程をテレビで学べるようにした施設がおよそ1,000か所に設けられている。授業は40分間で,週5日行なわれる。その地方では,高校に進学する生徒のうち,実際に卒業するのは,1,000人につき,わずかひとりにすぎない。
童貞制に反対する司祭たち
◆ 去る10月3日,オランダで開かれた,ローマ・カトリック司祭からなるヨーロッパ司祭大会の席上,強制的な童貞制の廃止を求める決議が圧倒的多数で可決された。もちろん,そうした決議は教会の方針を左右するものではない。1週間に及ぶ同会議には,32か国から200名が出席した。
疑問視される洗浄剤の安全性
◆ 酵素洗浄剤は強力な洗浄力を持っているとされているが,ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医大の3人の医師は,その安全性を疑っている。46匹のちょうせんねずみを用いた実験で,酵素を注射したり,そのかおりを吸わせたりしたところ,8匹が肺に大量の出血を起こして死んだ。生き残った多くのねずみは,体重の減少・鼻からの出血・せき・呼吸困難にみまわれた。実験に使用された酵素は濃縮されたもので,洗浄剤に含まれているものより濃厚であったが,そうした反応を引き起こすという事実は,その安全性を疑うに足る理由であると3人の医師たちは見ている。
盗みを許す司祭
◆ 最近,南アフリカのローマ・カトリックの司祭,デエイビッド・シャナハンは,不当な体制のもとにあって,家族を扶養するに足るお金をもらえるような仕事につけなければ,盗みを働いても,道徳上の罪には問われないであろうと,教区民に話したとのことである。ヨハネスブルクの新聞,1970年8月22日付,デーリー・メール紙は,シャナハン司祭のことばをこう報じた。「教会の見地からすれば,教区民は不当な法律に従う道義的な責任はないこと,また,不当な法律のもとで,処罰を免れるために,うそをついたとしても,道徳的な悪をおかしているわけではない,とわたしは教区民に話したのである」。
環境をそこなう汚染
◆ 人間がもたらしている環境汚染は,海洋をそこなうものとなっている。著名な海底探検家,ジャック・イブ・クリトウ氏は,「海洋は死の危険にさらされており,汚染は海洋全体に及んでいる」と評した。バルチック海も例外ではなく,その沿岸諸国のもたらす海水汚染は,海洋生物を滅ぼしつつある。農耕地からは化学物質が,下水からは洗浄剤や有機的汚物がバルチック海に注ぎ込み,深い海底に蓄積し,魚類を害している。