すきまだらけの物質
● わたしたちが日ごろ見慣れているたいていの物品は,実際はなにもない空間です。レンガ,木材,ガラスなど,日常目にする物品を構成している原子や分子は,たとえそれらの物品自体がどんなにじょうぶで堅いように見えたとしても,その大部分はなにもない空間です。
原子は,原子核と呼ばれる密度の非常に高い中心の核と,原子核の回りを取り巻く電子の雲から成っています。対象となる原子の型にもよりますが,電子雲の半径は原子核のそれの約1万倍もあります。原子核をピンポン玉ほどの大きさと仮定すると,原子核を取り巻く電子雲の直径は320㍍以上になります。そして,その間には何もありません。
原子核は,大きさからすると原子のごく一部を占めているにすぎないものの,質量の面ではかなりの割合を占めています。物品を構成するなにもない空間の大半が電子雲によるという事実は,そうした物品を軽くするものとなっています。もし,コップの中に,電子雲を取り除いた原子核だけをぎっちり詰めるとすると,そのコップの重さは500億㌧にもなります。