世界展望
共産主義との妥協
◆ 教皇パウロ六世は,ハンガリーの亡命首座大司教ジョゼフ・ミンゼンティ枢機卿をこの二月に解任した。同大司教はこれまでハンガリー政府に対する抵抗を続けていた。この措置は,同教会に対する共産主義諸国からの譲歩を得ようとする教皇の働きかけの一つであると,おおかたの観察者は見ている。現在ハンガリー政府は,教会内の人事を教皇に許しているが,その候補者に対する拒否権は依然保持している。辞任を拒否する声明の中でミンゼンティはこう述べた。「重要な聖職にいわゆる“平和的な司祭”を任命することは,教会の至上の指導権に対して司祭と信者双方がいだく信念を打ち砕くものである」。
経済学者にとって『変化した世界』
◆ 米国大統領の経済顧問ウォルター・W・ヘラーは,最近開かれたアメリカ経済学会の集まりでこう語った。「われわれは明らかに再検討の必要な時期に来ている。……われわれにとって全くわからない事がらがあまりに多い」。無限の供給を想定しつつ需要を操作してゆくという従来の経済学はもはや通用しない。「経済学者は,世界は変化してしまい,自分たちはその変化をやっと理解しはじめたにすぎないのではないかと感じている。……従来の経済学の教科書は無用にならざるをえないであろう」と,ロサンゼルス・タイムズ紙は報じている。
インドの富
◆ インドの最近の食糧問題は,同国が貧しい国であるとの印象を与える。インドの年間個人所得は約75㌦(約2万2,500円)である。しかし他の見地から見ると,インドは世界でも裕福な国に数えられる。同国は主要工業国とみなされており,国民総生産は世界第10位である。理工系の大学卒業生は,アメリカおよびソ連に次いで多い。またインドは,まだ発掘されていない天然資源に富んでいる。たとえば,鉄と亜鉛の埋蔵量は北アメリカ全体よりも多い。
一酸化炭素の危険
◆ アメリカ,ウィスコンシン州のある医学研究班は,喫煙者の血液を輸血することに異議を唱えた。アメリカ各地の献血者2万9,000人を対象に調査した結果,環境上の諸要素もある程度の影響を与えてはいるが,血液中の一酸化炭素の濃度を引き上げる「主因は喫煙である」ということが明らかになったからだ。ニューヨーク・タイムズ紙の報ずるところによると,一酸化炭素は「これまでに知られている最も致命的な有毒ガスの一つであり,心臓と脳が最大の影響を被る」。