世界展望
読書熱
◆ 日本における昨年の書籍の売上げは16%増で,1974年の30%余りの急増に次ぐものである。ほとんどすべての人が読み書きのできる日本人は,1975年に一人平均約六冊の本を買ったことになり,合計は6億6,600万冊に上った。その割合でいくと,アメリカ人は13億冊の本を買わねばならないことになる。「不景気の間,書籍の売上げは下り坂になる,と一般に予想されていたが,この2,3年は実際には戦後最良の年である」と日本の最大の出版社の一役員は述べている。
子供とスポーツ
◆ ファミリー・ヘルス誌は「最近の調査によると,15歳未満の若者三人に一人は,運動中に,医者の手当てを必要とするほど重いけがをしている」と述べている。同誌は「是が非でも,勝とうとする幼い時から植え付けられるスポーツに対する見方」を挙げている。プロ野球選手のラスティー・スタウブは,あらゆる年齢層のスポーツが「この時代の暴力と欲求不満」をいよいよ反映していると語っている。同選手は,プロ野球が「もはやスポーツではなく,体を使うひどい職業である」と断言している。
エジプトのブーメラン
◆ 最近オーストラリアで出版されたある本は,ブーメランが本当は古代エジプト人により発見されたとして,ファラオの墓で見付けられた,曲線状の木製の物体を引き合いに出した。これに憤慨したオーストラリア・ブーメラン協会は,オーストラリア原住民の遺産に対する攻撃だとして,その本の出版を禁止させるために訴訟を起こした。エジプトの“ブーメラン”は自らを証明する機会を得るだろうか。ニューズウイーク誌はこう述べている。「博物館長たちが,3,000年前の加工物を空中に投げてみるのをためらっていることからすれば,ブーメラン論争の決定的な結論は出そうもない」。
“放射能を浴びる役人”
◆ 米国上院議員のウィリアム・プロクシマイヤーは,連邦準備局がおよそ40億㌦(約1兆2,000億円)を米国バージニア州カルペパー近くにあるポニー山の中の貯蔵室に保管させたと述べている。伝えられるところによると,このお金は,原子兵器による攻撃で国家の資金の備えが燼灰に帰した場合の頼みの綱である。毎年ほぼ200万㌦(約6億円)の維持費を要するこの貯蔵室はまた,400人ほどの人の避難所ともなる。プロクシマイヤーは,「この最後の審判の日に関するシナリオによれば,我々は40億㌦(約1兆2,000億円)の現金を手にしてはいるが,放射能を浴びた数人の孤独な政府役人以外はだれもいなくなっていることになる」と述べている。
経口避妊薬に関する別の警告
◆ 全米人口問題協議会がまとめた調査によると,経口避妊薬を服用する40歳以上の女性の場合,この原因による死亡率は,堕胎を含む他のいかなる産児制限の方法によるものよりもはるかに高い,ということが明らかにされた。その調査結果は先進国に住んでいる女性に適用される。同協議会は,この年齢層にとって,経口避妊薬による死亡率は,産児制限の方法を全く用いなかったための妊娠による死亡率より,さらに高い。
死のほ乳びん
◆ 世界の三分の二の人々にとって「多くの場合,幼児を乳製品で育てるのは,その子供の死亡証明書に署名をするのに等しい」と,米国コーネル大学の二人の栄養学者による最近の世界的調査は断言している。汚染され,薄めすぎた乳児用調乳は,栄養不良や下痢,あるいは胃腸障害を引き起こす可能性があり,それらは貧しい地域社会における幼児の主な死因と言われている。「熱帯地方の病院の小児科病棟は,この人為的病気のために死にひんしている赤子であふれている」。同報告は,開発途上国の高い幼児死亡率の責任を次のような広告に帰している。「すてきな家に住み,すてきな赤ちゃんを望んでいる,すてきな人は」母乳ではなく,「牛乳で赤ちゃんを育てます」。同報告は,「宣伝攻勢はすさまじく,宣伝文は強力で,収益は高い」と述べている。
愛の火花
◆ 春になると,カササギはよく針金のくずや金属片を使って巣を造り,つがいの時期の準備をする。南日本では高圧線の横木の上にそうした金属性の巣を作ったため感電するものもある。また漏電件数も増えている。九州電力は今のところ,恋愛中の小鳥を追い払うことに,あまり成功を収めてはいない。
売春婦の祈り
◆ 最近のAP通信によると,台湾の北投にある温泉保養地では,幾百人もの公娼や私娼が近ごろストライキを行なった。同至急報は,ほとんどが仏教徒であるそれらの売春婦は,その結果できた時間を利用して祈りのために寺院を訪れたとも伝えている。
最も安全な飛行
◆ 全米輸送安全局の統計によると,自家用および法人所用の飛行機よりも,一流航空会社の飛行機に乗るほうが50倍も安全である。統計はまた,空のタクシー便よりも一流航空会社の飛行機のほうが118倍も安全であると指摘している。1975年中,主要航空会社では10万飛行時間に対する死亡率はわずか0.04人であったが,自家用および法人所用の飛行機は2.01人,また空のタクシーは4.71人であった。
巨大な腫瘍
◆ 中国の新華社通信は,昨年12月,ソワという名のトーゴ共和国の女性から直径45㌢,重さ40㌔の卵巣腫瘍が取り除かれたことを明らかにした。針麻酔を使用したと伝えられる中国およびトーゴ共和国の医師による手術の後,婦人はすぐに回復したと言われている。同通信は,婦人が1970年に腹部のはれに初めて気付いたこと,そして腫瘍が除去されるときまでには,体重が90㌔近くにも増えていたことを伝えている。
多過ぎる見物人
◆ 西ドイツのケルン動物園には,週末ともなればおよそ四万人の人々が訪れる。同動物園長エルンスト・クルマンはこう述べている。これは「動物,特にサルとネコ属の動物を興奮させるので,それらの動物には休日が必要である。日曜日の夜に動物園を閉めるときには,サルは興奮した様子で走り回る。サルは遊びもしないし食事もしない。その多くは,循環器系の障害を持っている。サルは全く疲れ果てた様子で,おりの中にただ座っているだけである」。
最長の道路トンネル
◆ ゴットハルト山脈を貫いてスイスとイタリアを結ぶトンネルの,最後の数メートルの花こう岩が最近爆破された。このトンネルは16㌔近くの長さで,開通すれば世界最長のハイウェイのトンネルとなるだろう。
「遺伝的な重い欠陥」
◆ ハイデルベルクの二人の教授の述べるところによると,西ドイツでは四人のうち一人の新生児が「遺伝的に重い欠陥を持っている」。同教授たちは,染色体の異常のため200人に1人の子供にモウコ症などの奇形が見られるとも語っている。さらにそれらの医師の話によると,部分的に,あるいは全く遺伝に起因する病気の数が,西ドイツや他の工業国において毎年増加している。
“火酒のテスト”
◆ 強いアルコール飲料は,特に北米のインディアンに関連して“火酒”と呼ばれてきた。そのため,白人よりもインディアンのほうが酔いの回りが早いという結論を下している人々がいる。しかしながら,米国アリゾナ州フェニックスでのアルコールの同化作用に関する研究で,二人の医師は,体重一㌔あたりのアルコール吸収作用において,アメリカ・インディアンと白人との間には大した違いがないことを発見した。この発見は,白人よりもエスキモーとカナダ・インディアンのほうがアルコールを吸収するのが遅いとする1971年のカナダでの研究と相容れない。サイエンス・ダイジェスト誌は次のように述べている。「しかしそれ以来,カナダでの研究は確認されたものではないとして何人かの研究者により批判されてきた。その研究は,入院中のインディアンと健康な白人とを比較し,呼気によるテストだけで,アルコールの同化作用を測定したものであった」。
赤い雪
◆ 南フランスの山地の住民は,この冬,空から赤い雪が降ってくるのを見て驚いた。科学者の説明によれば,赤い砂がサハラ砂ばくから1,500㌔近くの距離を強風によって運ばれてきたのである。その砂が落下する白い結晶と混ざって赤い雪となった。
絶滅にひんするライオン
◆ 国際ワイルドライフ誌は,現存しているライオンは20万頭に過ぎないと述べている。これは,わずか四半世紀前と比較して50%もの減少である。この減少の原因はハンターにあるのではなく,むしろアフリカの一部の土地所有者たちがライオンを毒殺していることにあると言われている。また,ライオンの生息地である同大陸の,草原地帯がますます家畜の放牧のために使用されるようになっている。現在の傾向が続けば,ライオンは今世紀末までにはわずか数千頭になるだろうと懸念されている。
遺言についてはどうか
◆ 人があいまいな遺言を残して,あるいは全く遺言を残さずに死ぬ場合,多くの問題が遺族につきまといがちである。遺言を準備するかどうかは個人的な問題である。もし人がそうすることを決意するなら,有能な弁護士に相談したいと思うだろう。しかし,何を,まただれを遺言の中に含めるかを前もって書き出しておくのは賢明なことかもしれない。インダストリー・ウイーク誌は次のように述べている。「すでに遺言が書いてあって,財産に多少とも変更があったり,他の州へ移転するような場合は,遺言を修正することを忘れてはならない。出産,死亡,そして結婚などの際に遺言を再吟味するとよい」。
輸血の別の危険?
◆ 米国ジョージア州アトランタにある疾病予防センター(CDC)は,献血による血液を輸血されてから18時間後にコロラド・ダニ熱にかかった人がいると報じている。しかし,ダニ熱のウイルスの存在が分かる前に,この人の血液は82歳の男の人に輸血された。その男の人は病気になり,このウイルスは彼の血液中に発見された。アメリカ医学会ジャーナル誌は,CDCの職員の次のことばを引用している。「コロラド・ダニ熱が輸血された血液により伝染することは,以前には実証されていなかった」。同誌はこう付け加えている。「しかし,同職員がさらに述べるところによると輸血を受けた人がそれ以前に感染していたとは考えられない。『モンタナ州でもその男の人の家に近い地方は,伝染に必要とされる,小さなげっ歯動物があまりいないとされているからである』」。