世界展望
人命を奪う,大量輸血
◆ 医学誌「外科回診」は最近二つの研究結果を発表したが,その研究は短期間に大量の輸血を受ける人の死亡率が「大幅に上昇した」ことを明らかにしている。「全体で50%という死亡率は,大量の輸血に関係した問題のゆゆしさを物語っている」と同誌は報告し,さらにこう述べている。「予想がつくように,輸血の回数の増加に伴い,死亡率がかなり増加した。輸血の量が10ないし14単位の場合,死亡率は37%,15ないし19単位の場合は53%。20ないし24単位の場合は62%で,25単位以上の場合は78%であった」。
大量の輸血を受けて死亡しなかった人の場合にも,重大な合併症にかかる危険性が大きかった。「10ないし19単位の輸血を受けた患者の約85%,および20単位以上の輸血を受けた患者のほぼ全員に,24時間以内に重大な合併症が見られた」とその記事は述べている。「15単位以上の輸血を受けた人の90%以上が,一つ以上の病気に感染したということは幾分驚きであった」。―1981年8月号,47-54ページ。
軍国主義の復活?
◆ 現在政権の座にある自由民主党の政府高官の間には,靖国神社を国家の戦争記念碑にしようとする気運が高まっている。彼らは8月15日が第二次世界大戦の戦没者の死を悼む日となることを願っている。ところがそれに反対するグループは数多く,彼らはそうした動きが軍国主義と,その中における神道の役割を復活させると考えている。神社の境内に展示された物の中には,潜水艇,陸軍の戦車などの戦争兵器があった。同神社の記念ホールには,血染めの軍服,神風特攻隊員の遺言書や写真などの品が幾百も収められている。
救世軍が脱退
◆ 世界教会協議会は「福音ではなく政治を」導きにしているとの告発を残し,救世軍が同協議会を脱退した。救世軍は,同協議会がゲリラ活動に経済的な援助を与えていることに抗議していた。
ピストルを携帯する牧師たち
◆ 最近米国のデトロイトで開かれた全国バプテスト大会に出席しようとしていた14人の代表者が,カナダ国境を越える際に未申告のピストルを隠し持っていたかどで逮捕された。デトロイトのフリー・プレス紙は,「ウインザー市のアンバサダー橋とデトロイト-ウインザートンネルで逮捕された人々のうち少なくとも12人は聖職者であった」と述べている。ピストルの中には22口径の連発式もあれば,35.7口径のマグナムもあった。そのトンネルにあるカナダ税関の所長代理はこう述べた。「我々は彼らが何を携行しているかを尋ね,また何らかの小火器を所持しているかと尋ねた」。裁判でこの牧師たちは罰金を科されるか執行猶予の刑を受けた。14の裁判のうち七つを手掛けた一裁判官はこう説明している。「真実を語ってくれさえしたら,我々は彼らの身柄を送還する。我々に知らせさえしてくれれば,国境検査の際に銃を持っていたところで法律的に全く問題はない」。そしてこう付け加えている。「もちろん銃はことごとく押収したので,それを持たずに帰国しなければならない。そして彼らの大半は無事に帰国するに違いない。その時彼らは,銃を携えて行く必要のないことを悟るであろう」。
宝くじの当選者が破産
◆ 1979年に米国マサチューセッツ州チコピー市に住む26歳の青年が,州の宝くじに大当たりし,100万㌦(約2億2,000万円)を獲得した。当選者には年賦で賞金が支払われたが,今この人は破産申告を提出しており,こう述べている。「この2年間は地獄にいるような気持ちだった。お金がきっかけで問題が数々生じ始めた。持っていたお金の大半はもうなくしてしまった」。破産手続きと債権者の要求によって,賞金の今後の支払いは凍結された。賞金を獲得してからこの人の戸口付近には「強欲漢」が姿を現わし始め,本人の言葉を借りれば「16歳から60歳までの女性からの手紙攻めに遭った」。この青年は大量のお金を女友だちにつぎ込んでいた。二人は婚約寸前だったが,財政上の問題が起き始めると化けの皮がはがれて,この女性は強欲な女であることをさらけ出した。この宝くじの当選者が遭遇した別の問題は,突然,強盗の襲撃の的になったことである。異なった人からこの人は9回強奪された。身に付けていたのはほんの数㌦であったにもかかわらず,「人々からは,動く銀行だとみなされる」とこの人は説明している。そして,「その種のお金を手に入れると,人々の貪欲としっと心をかきたてることになる」と付け加えている。
『道徳的多数派の』道徳
◆ イスラエルのF-16ジェット機が,完成途上にあったイラクの原子炉を爆撃した後,米国のいわゆる道徳的多数派運動の僧職者ジェリー・フォールウェルは,イスラエルのベギン首相に電話で話をしたと言われている。米国オハイオ州のシンシナティーにあるランドマーク・バプテスト教会堂に集まった4,000人の聴衆を前に,フォールウェルは自分がユダヤ人の指導者に述べた事柄を誇らしげに次のように語った。「首相,私は,あのF-16を製造するという,実に名誉ある使命を与えてくださったことに対し,心からの喜びを申し上げたい」。さらに,イスラエルの爆撃を非難する国際連合の票決に関し,フォールウェルは群衆にこう述べた。「我々に不屈の精神がなかったためキューバに行なえなかったことを彼らは行なった。そのことに対し,我々は喜びを表わすべきである」。
変わりゆく時代
◆ 「結婚するかしないかを決定するに先立ち,二人は同棲すべきであると思いますか」。これはカナダ人を対象に最近行なわれたギャラップ調査の中の質問である。10年前の2倍に上る人々が「はい」と答えた。実際,同意した人(46%)の方が同意しなかった人(40%)よりも多かった。今より保守的傾向の強かった10年前には,70%の人が「いいえ」と答えていた。一般の道徳がどんな方向に向かっているかを示すものとして,30歳未満で試験結婚をよしとする人々は,10年前には40%だったものが70%になり,50歳以上の人の場合には,10年前(9%)よりも3倍も多くの人々(27%)がそれに同意している。
隣人としての証人たち
◆ ニューヨークのブルックリンハイツ・プレス紙の一コラムニストは,最近「マイルズ・スタンディッシュ」という偽名で送られてきた不平の手紙の一部を公表した。ものみの塔協会本部の職員はこの界隈で多くのスペースを占有しすぎているという不平に答え,このコラムは皮肉を込めてこう述べた。「このマイルズ・スタンディッシュ氏の件で皆さんの感情を害するのは申し訳ないが,我々はエホバの証人を隣人として持つことをうれしく思っている。第一に,彼らは非常に清潔である……それらの人々の中には薄汚れた人は一人もいない。いわば彼らは自分自身の歩道をきれいにしているのである。証人たちが何らかの手を打ったら,モンターギュ街[地元のビジネス地区]がどんなふうになるか想像がつくだろうか。……これらの神聖な人々に,モンターギュのビルを……二つあげればよい。そこは我々全員にとって,外観の一層美しい買い物の場所となるであろう」。
交通事故の犠牲になる動物
◆ デル・ターゲスシュピーゲル紙によると,ドイツ連邦共和国では,ハンターによって殺される野生動物より,自動車にはねられて死ぬ野生動物の方が多い。毎年ドイツでは,シカ8万頭,ウサギ12万羽,アカジカ3,000頭,イノシシ2,000頭,ヒキガエル25万匹が交通事故の犠牲になるという。ヒキガエル以外の両生類は幾百万匹にも達し,爬虫類や鳥にいたっては数えることもできない。
増加する文盲
◆ ユネスコによると,世界中の文盲の数は1970年の7億4,200万人から1980年の8億1,400万人へと増加した。もし現在の傾向が続くなら,1990年にはその数は8億8,400万人に達するであろう,と国連所属の同機関は述べている。また,文盲は女性の方が男性よりも依然多く,その数も増加の一途をたどっている。一般に文盲率の最も高いのは農村部であるが,都市やその近郊の貧困地区でも同様のことが言える。「このように文盲と貧困は密接に関連している」とコートジボアールのフラテルニテ・マタン紙は伝えている。
医師はどこにいるのか
◆ 国連の世界保健機関(WHO)のロザリンダ・バレンツエラ博士は,世界には「医師の分布に大きな偏りが見られる」と述べている。例えば同女史は,「東アフリカは世界でも最も恵まれない区域で,10万人につき6人,つまり1万7,480人につき一人の医師しかいない」と語っている。一方,「最も恵まれているのは西ヨーロッパの区域で,そこには10万人につき190人の割合で,つまり528人に一人の医師がいることになる」とバレンツエラ博士は指摘した。これは東アフリカの33倍に相当する。アフリカ全土では,平均5,400人に一人の医師がおり,アジアではその割合が2,800人に一人,北アメリカでは600人に一人となる。
愛煙家の顔
◆ 喫煙によって人の顔の皮膚が老けて見えるようになると考える医師は少なくない。米国フィラデルフィア市の皮膚科専門医アルバート・クリグマンはこう語っている。「愛煙家の皮膚はあまり健康ではない。しかし私の手持ちの情報はすべて個人的な観察であり,比較対照できるような研究は一つもない」。カナダの免疫学者であるジョン・ジェラールは200人の男子を対象にし,喫煙によって免疫組織が影響を受けるかどうかを調査した。喫煙しているかどうかを尋ねることはほとんど必要なかったとこの医師は語っている。なぜなら,「長期間にわたってたばこを吸っている人は,顔のしわですぐに見分けが付いたからである。たばこを吸う人と吸わない人の顔は30歳の時点ではあまり変わらないが,40ないし50歳になるとその相違が歴然としてくる」。
「殺しのライセンス」が没になる
◆ 4年間にわたる議会審議の末,イタリアは,いわゆる痴情犯罪に関係した殺人者がたいした罪も受けずにいることを可能にしている一つの法を廃止した。その法律では,「自分あるいは自分の家族の名誉を傷付けられたことにより怒りが引き起こされ,その状態で」不貞な配偶者を殺害した場合には,「3ないし7年の懲役刑が科される」とされていた。イタリアが離婚を合法化する前には,この法律を利用し,姦淫を犯したとして妻を殺害して短期間の刑に服し,その後再婚する自由を得ようとした人さえいたといわれる。これからこうした犯罪は,他の殺人と同等に扱われる。
絶望を食い物にする
◆ 赤十字国際委員会(ICRC)によると,ベトナムからの難民 ― しばしば“ボート・ピープル”と呼ばれる ― が毎月約4,000人,東シナ海と南シナ海で海賊の手に掛かって殺害されている。「海賊は無類の暴力を行使する一つの産業と言えるほどになってきた」と同委員会は語っている。17世紀以来跡を絶たない海賊は,ベトナムを出航した,難民であふれるボートの8割近くを襲うと言われている。そして「安全な港に到着した4ないし5人に対し」海賊の襲撃に遭って「到着できなかった人が恐らく5人はいる」と同委員会は述べている。