世界展望
南極大陸の氷の下を見る
◆ スペイン程の大きさのロス氷棚は,長い間科学者の興味をそそってきた。「地球の生物圏中,その孤立状態と珍しさの点でロス氷棚に匹敵するところはまずない。底知れぬ海溝や地下のどうくつもものの数ではない」と科学者のジョン・クローは語っている。この辺ぴな地域では氷の厚さが420㍍もある。科学者たちは最近この氷を貫くため,南極大陸に熱いガスを超音波で噴出するドリルを持ち込んだ。これを用いて彼らは氷棚に,下の海,つまり“失われた世界”に通ずる穴をあけた。氷で覆われた海底がどのようなものかを知るため,科学者たちはその穴を通して氷棚の下約200㍍の日のささない海底に,テレビカメラとライトを下ろした。そのカメラで見ると海底には沈殿物で覆われた角ばった小石が敷き詰められているかのようである。生物が住んでいる証拠もあり,甲殻類らしい2匹の海中生物がカメラの視界を横切った。またその海底には生物のいる他の徴候として何かの足跡や穴のようなものもあった。「それは海底に生息する生物が実に豊富なことを示している」と全国科学協会,極地計画担当の責任者ドウェイン・アンダーソン博士は語った。
人工心臓を用いて成功
◆ スイス,チューリッヒ病院の国際的外科医チームは最近,初めて“完全人工心臓”の使用に成功したと報告している。それはしばらくの間体外で用いられた。心臓手術の後,一人の女性患者が“非常に重い心臓機能不全”にかかったが,患者の心臓が正常に戻るまで,心臓に血液を送り出させるため,人工心臓が患者の心臓に管で接続された。医師たちは人工心臓を一週間かそれ以上接続しておく予定だったが,2日間用いるだけで済んだ。医師たちはもし人工心臓を使わなかったら,この女性は死亡したであろうと語った。この手術の執刀に当たったマルコ・チュリナ博士は「これは完全人工心臓が両心室に取り付けられて成功した最初の例である」と語った。
“歯は偽ることができない”
◆ イギリス,サウスポートで放火犯がある事務所を物色したが,机の引出から一つのりんごを取り出し,一かみして置き忘れてしまった。その男が放火して建物のほとんどは焼けたが,その事務所だけは焼け残り,置き忘れたりんごが証拠となった。警察はそのりんごを,かみ跡に関する指導的権威者ジョン・ファーニスのリバプールの家に急送した。5日後,警察は放火犯人を逮捕した。裁判ではかみ跡が指紋と同様,証拠として有効と判断され,その男は3年の実刑を言い渡された。ファーニスはこう説明している。「歯形が全く同じという人はまずいない。どのかじ屋もハンマーの使い方が多少違うように,また犯罪者が独特な仕方で自分のかなてこを用いるように,食物のかみ方が全く同じという人はまずいない。人々の歯には独自の特徴がある。自分の歯で偽りを語ることはできても,その歯は偽ることができない」。
身長世界一の女性,成長がストップ
◆ 米国インディアナ州,シェルビビルに住む22歳のサンディ・アレンはギネスの世界記録の本の中で1974年以降,世界一長身な女性として挙げられている。彼女の身長は今2㍍32㌢だが,自分の成長がようやく止まったと考えている。彼女は最近医者に自分の脳下垂体のしゅようを取り除いてもらった。アレン嬢はこう説明している。「わたしの脳下垂体が異常に成長ホルモンを分泌したのはこのしゅようのせいです。医師の話ですとこのしゅようが今までずっとできていて身長に影響したようです」。その手術では味覚や嗅覚をつかさどる脳の中枢の一部も除去してしまった。彼女の嗅覚はかなり回復したが,味覚は思わしくない。彼女はこう付け加えた。「これでいいのかもしれません。お陰で体重もいくらか減り,5月と比べると23㌔以上減って185㌔にまでなりました。食物の味が良くないのでそれほどたくさん食べないように思います」。
女性と肺ガン
◆ 調査によると喫煙する女性で予告された通りの結果になっている人数が増加している。例えば,コネティカット州のガン疫学研究所の最近の報告では同州において1945年から1949年までの期間中,男性の肺ガン患者数は女性の約5倍だったが,1974年にその割合は2倍弱から同数程度になった。そして1975年には新しい進展が見られた。35歳から44歳までの女性の場合初めて,男性よりも大勢が肺ガンに侵された。
学生の喫煙者は減少したか
◆ 少なくとも大学生の間ではたばこを吸う人は少なくなっているかもしれない。プリンストン大学の調査によると学生たちでたばこを吸うのは約7%に過ぎない。9年前には45%であった。ハーバード大学の新入生クラスでは1,624人の学生のうち,喫煙者はわずか27人だった。大学生よりも高校生の方に喫煙者が多いようだが,それはなぜだろうか。プリンストン大学,保健部門の部長は次のように語った。「こういう所にいる学生たちは情報を評価し,それに従って行動することに慣れている。彼らは長期間の喫煙が危険であることを知っており,高校でたばこを吸い始めたとしても普通ここに来るころまでにはやめてしまっている」。
仕事に熱中し過ぎる?
◆ ドイツの神経科医ゲルハルト・メンツェルは,仕事に熱中し過ぎるのはアルコール中毒と同じくらい危険だ,と主張している。初期の症状として,胃痛,頭痛,循環系障害,集中力の低下,過度の不安などが挙げられている。とりわけ,いつも仕事に熱中していると,仕事のことを考えて夜も眠れず,退社時間後もしばらく残業をしなければならないような衝動を感じる,とメンツェルは述べている。
スエズ運河の通航量
◆ スエズ運河再開以来二年を経た現在,同運河の通航量は1日平均55隻に上り,1967年の中東戦争で閉鎖される以前の数に近い。しかし,伝えられるところによると,以前に比べ船が大型化し,輸送量が増えたため,貨物の通過量はほぼ二倍になった,とスエズ運河管理局の局長マショール・アーメッド・マショールは述べている。ところが,この運河は6万重量㌧,喫水11.5㍍の貨物船しか航行できないため,石油タンカーの通航量はそれほど多くない。世界中の石油タンカーの半数は,大き過ぎてスエズ運河を通れない。しかし現在,同運河の水深を深くし,幅を広げる計画が進められ,1980年までには15万重量㌧,喫水16㍍の貨物船が航行できるようになる。
1789年のほうが速かった?
◆ 最近,英国の上院は,ロンドン ― パリ間の郵便事業に関する苦情を知らされた。ボイドカーペンター卿は,現在手紙が配達されるのに12日から13日かかる,と述べ,「フランス革命以前に比べ,二倍の時間がかかっている」と付け加えた。
サウナ風呂について発言するフィンランド人
◆ フィンランドのサウナ風呂製造業者は,世界のある場所でサウナ風呂が悪用されていることを懸念している。彼らは,ある人々が作り上げた,サウナ風呂に対する扇情的なイメージを嘆いている。ヘルシンキのサウナ風呂大手メーカーの取締役トルステン・ヒバリネンは,事態を正すためにこう述べた。「フィンランドでは,同じ家族の者でない限り,男女が一緒にサウナ風呂に入ることはない。また多くの家庭では,子供が大きくなると男女別々に入浴する」。フィンランドの人口は500万に満たないが,サウナ風呂の数は100万近くにも上る。
緑内障の“レーザー”療法
◆ ソ連の医学者で,モスクワ国立眼病研究所の所長を務めるミカエル・M・クラスノフは,レーザーを使えばある種の緑内障はほぼ100%,別の主な種類の緑内障は約65%完治すると主張している。その治療は,非常にエネルギーの高いルビーレーザーを短時間照射することによって眼に穴を開け,眼圧を下げるというものである。これ以外の治療法となると,手術が必要な場合もある。「普通,患者は,六か月間おきに[レーザー]治療を受けねばならない」と,メディカル・ワールド・ニューズ誌は伝えている。しかし大抵の患者は,「手術を受けるより,五分間ほどの治療を年に二,三回受けるほうを選ぶ」。米国の科学者は,依然この治療法を実験的なものと見ている。
「1畝<ムー>当たりブタ1頭」
◆ 中国建設誌によると,8億余りの国民の作物を生産するのに,「中国の農業は主として,有機肥料つまりたい肥を使用している」。「中国ではブタのふんがたい肥の最大供給源である」と同誌は述べている。1頭のブタが1年間に排出するふん3㌧に雑草や土を混ぜると,「良質の肥料が5㌧から10㌧」得られる。化学肥料を少量併用すれば,「1畝<ムー>(0.06ヘクタール)の畑には十分」である。同誌は,「“人間1人にブタ1頭”,もしくは“1畝当たりブタ1頭”という目標が一般化している」点に触れている。
才覚のあるギリシャ人
◆ アテネ工芸学校の入学試験でほぼ満点を取ったギリシャの一学生は,多くの援助を得ていた。アテネ・デーリー・ポスト紙によると,「年若いアンドレアスは,両足に送信機と受信機を結わえ付け,[外に駐車してあった]車の中の二人の友人と絶えず連絡を取っていた」。友人たちは試験問題が聞こえると,教科書を調べて答えを捜し,青年にそれを書き取らせていた。あやしいと思った教授は,この学生が試験時間の前半は何も書かず,後半に左耳を押えながら書いているのに気付いた。
英国企業
◆ 英国のある小さな会社の取締役は,イスラム教徒の礼拝用の敷物のベイルートからメッカへの平素の供給がレバノン戦争によって絶たれたことを知った。彼は,「地元の図書館で本からさし絵をかき写した」と語っている。「二,三日後,見本の敷物が五,六枚メッカに送られた。注文が殺到し,あっという間に7万4,000枚も売れた」。この会社は,今年度“一年の不思議な輸出業者への賞”を受賞した。
飛ぶニワトリ
◆ ニワトリは,普通飛べないものとされている。ところが進取的な養鶏家たちは,少しでも飛べるニワトリを改良していった。北マリアナ諸島のロタ島で行なわれた,ニワトリを飛ばす大会で,あるニワトリは103.37㍍という世界新記録を出した。これは,米国オハイオ州における89.58㍍という以前の記録を破るものである。
スパイの広告
◆ オーストラリアの主要な新聞に最近,週給220㌦で政府の情報収集員を募集するという広告が載った。広告はこう告げている。「局員はスパイ,妨害行為,テロを含む政府転覆活動に関するオーストラリアの安全情報収集組織の法定責任に直接関係のある任務を引き受けると期待してよい」。
スケートボードによるけが
◆ 消費者製品安全委員会が最近伝えたところによると米国でスケートボードに乗ってけがをした人の数が一年に十万人以上に達した。少なくとも28人の若者がスケートボードに乗っていて死亡した。「スケートボードから落ちて死亡する犠牲者は例外なく頭を打っているので,ヘルメットを使うなら,死の危険性を減らせるだろう」と委員会は語っている。