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目ざめよ! 1980
目80 1/22 21–24ページ

顕微手術の驚異

オーストラリアの「目ざめよ!」通信員

家事をしていたある若い母親の耳に突然,悲鳴が聞こえてきました。外に飛び出した母親は,三歳の息子が妹の指を2本おので切り落としてしまったのを見て,背筋が寒くなりました。ある鉛管工は丸のこで中指を切り落としてしまい,他の2本の指にも一部ひどい傷を負いました。二歳になる男の子は,父親の操作する農耕用の草刈り機の後部から落ち,足を刃に巻き込まれてくるぶしから先が切断されてしまいました。あるボイラー製造工は,板ガラスの窓をぶち破り,その際,右腕を手首とひじの間で切断してしまいました。

十年前にこのような事故が起きたなら,傷口の手当てをすることしかできませんでした。切断された箇所は捨てられたことでしょう。しかし今日では,自分や家族のだれかがこのような事態に直面しても,顕微手術の驚異的な恩恵に浴すことさえできれば,切断された部位を再植して患部を完全に治療できる見込みは大いにあります。

顕微手術とは,その名の示す通り顕微鏡を見ながら行なわれ,特別の訓練を積んだ外科医が,中には直径1㍉にも満たないものもある動脈や静脈,神経を接合していく手術です。体の各部を単に再接合するだけでなく,切断された指や手足の血流や感覚を元に戻すことができます。

興味深いことに,この技術は最近開発されたものではありません。先駆をなしたのはスウェーデンで,1921年に耳鼻咽喉関係の手術が,また1940年代には目の手術が,このような技術を用いて行なわれました。そして1965年に,親指の再植手術が日本で成功し,翌年には中国で,人さし指の最初の再植手術が成し遂げられました。1968年にはオーストラリアのシドニーで,世界最初の小児の指の再植手術が成功しました。今や世界の各地で,切断された体の部分を再び接合する手術(これを断肢再植と呼ぶ)が行なわれており,このような手術はもはや珍しいものとはみなされなくなりつつあります。

様々な面に活用されている顕微手術

顕微手術の中でも断肢再植は最も劇的で脚光を浴びることが多いとはいえ,この技術の適用分野はそれだけに限られているわけではありません。他の大手術の手法にも顕微手術の驚異的な技術が活用されており,十年余り前には不可能であったと思われる事柄が成し遂げられています。

例えば最近では,そけい部,胸,足の甲などから取った皮膚切片を動脈,神経,時には骨までもいっしょに体の修復すべき箇所に移すことが行なわれています。咽喉のガンの場合,新たな食道を作ることが必要になりますが,組織のかなりの部分を取り除かなければならないこの種の大手術にも,顕微手術は大きく貢献してきました。移植された組織内の血管や神経は顕微手術によって新しい移植部位の血管や神経につながれます。一方,組織を取った箇所も同様の処置が施されて傷口が縫合されます。傷口をふさぐために,そこに皮膚を移植することもあります。自分の組織を移植しますから,拒否反応の問題は最小限に食い止めることができます。

避妊手術を受けたものの生活事情が変わって生殖機能を回復させたいと望む人々の機能回復手術にも,この顕微手術が急速に使われるようになっています。男性の精管機能回復手術では,直径わずか0.3㍉強の輸精管をつなぐことになりますが,ある調査によればその9割が機能を回復し,手術を受けた人の配偶者の半数が早い時期に妊娠したとのことです。「不妊手術を受けた母親に朗報。8割が……再び子供を持つ機会に恵まれる」という最近の新聞の見出しが物語っているように,女性の輸卵管をつなぐ手術も好成績を収めています。

新しい分野を切り開くための研究も行なわれています。そのうちの二つだけを挙げても,胎児に対する手術とマイクロ・レーザー光線を用いた手術があります。

器具と技術

顕微手術の行なわれている手術室をのぞくと,マスクと手術着をつけた外科医の一団や手術台,麻酔器など,一般の手術と大差のない光景が見られます。もっとも,一つだけ余分のものが目につきます。それは手術室の上方にある,両側からのぞける双眼鏡と映画のカメラを組み合わせたような大きな装置です。顕微外科医(普通はその助手も)は,患者をじかに見る代わりに,これを使って,接合すべき細い血管や体の他の箇所の拡大された立体像を見るのです。

使用される針は赤子のまつげほどで,肉眼で見るのは困難です。直径0.018㍉つまり人間の頭髪の四分の一の太さのナイロン糸がこの針に結わえ付けられていますから,針に糸を通す必要はありません。宝石商が使うような極細のピンセットや小さな血管用鉗子,精巧なはさみ,特製の持針器も用いられます。

一続きに縫合してしまうと,拍動に伴って必要とされる血管の動きが阻害されるため,一針縫うごとに結紮していかなければなりません。直径1㍉ほどの血管に,14か所もの結び目の必要とされることもあります。布や革を手で縫う作業に通じている人には,顕微鏡で見なければ分からないようなこうした複雑な結紮を行なうのにいかに多くの時間と労力が求められるか想像に難くないでしょう。この技術について,最近次のように言われました。これは「世界で最も難しい仕事と言えよう。手のほんのかすかな震えでも重大な事態を招くことになる」。

執刀中の外科医

執刀中の医師たちに注目してみると,望ましい結果を得るために必要とされる辛抱強さや集中力,協力の精神に感動させられます。執刀の際には,穏やかでゆっくりとした手の動きが求められます。そのため,顕微外科医のほとんどは,手術の前にコーヒーやアルコール飲料を飲みません。こうしたものを飲むと手の震えることがあります。肉眼では分からないような震えでも,顕微鏡を通して見ると手が揺れ動いているような感じがします。

この分野では,独特の技術や特別の技量が求められるため,専門医による指導や幾年にも及ぶ訓練,実習,経験が必要になります。現在のところ,オーストラリアは,顕微手術の面で世界の先端を行っているとされています。オーストラリア人の場合,統計上,西欧の他のどの工業国よりも事故で肢体の一部を切断する率が大きいので,これは幸いなことです。

完全に切り落とされた手のひらの修復手術の様子に“焦点を合わせ”,この顕微手術で実際にどんなことが行なわれるか見てみましょう。皮膚,筋肉,腱,神経,静脈,動脈,このすべてを,顕微鏡で見なければ分からないような細い糸で縫合していくという複雑な作業を行なわなければなりません。

適度の血行を回復させるために,4本の動脈と4本の静脈を縫合します。静脈は,血管壁が薄いため,破れたり,収縮したりして,探し出すのが非常に難しいことがあります。血管を見つけた後にしなければならないのは,それを洗浄し,切り詰め,縫合することです。静脈がある長さにわたって傷ついている場合は,体の他の部分から血管を取って来て,橋渡しをさせる必要も生じます。まず静脈をつなぎ,その次に動脈をつなぐことによって,失われる血液の量を少なくできます。

指に通じる10本ほどの神経をつなぎます。各々の神経には,5本から6本の線維束があります。9本の腱と8本の小さな筋肉もつなぎます。最後に,皮膚構造全体を縫合することが必要になります。合計すると,顕微鏡を見ながら行なった縫合が180針,通常の縫合が100針ほどになりました。

この手術は約6時間かかりました。この種の手術に要する時間は,2時間から20時間と対象によって大きく異なります。わずか1本の指の再植手術でも,4時間から6時間を要します。

緊急時にはどうしたらよいか

緊急事態は突然臨みます。自分や自分の愛する人,または同僚が,過って指や手や脚を切断したとします。慌ててはなりません。切断された部分を清潔なビニール袋(もしくはゴム手袋)に入れて,水が入らないようにしっかり封をします。切断された部分は摂氏4度から6度で冷やしておかなければなりません。そこで,氷を浮かせた冷水に袋ごとつけて,できるだけ早く,最寄りの病院か顕微手術を行なえる施設に持って行きます。もしも時間がかかるようであれば,切断された部分を冷蔵庫に入れておくこともできるでしょう。しかし,冷凍庫<フリーザー>の中に入れてはなりません。そのまま氷につけてはならず,切断された部分を消毒液や滅菌剤に浸してもなりません。そのようにすると,組織が破壊されてしまい,接合できなくなることがあるのです。洗うことも禁物です。切断された部分を乾いた状態に保つことが大切です。

顕微手術を行なう設備の整った最寄りの施設の場所を知っておくのは良いことです。1976年10月2日号のザ・ランセット誌はこう伝えています。「切断された指は,冷やされたまま,患者と共に,顕微手術を行なえる最寄りの外科医のもとにいち早く届けられるべきであるのに,残念ながらいまだに,けが人の救護に当たる係官はそれを捨ててしまっている」。

事故からどれほどの時間内であればうまく再植できるかは,体の各部分によって異なります。指の場合は,冷却処置を講じなくても10時間はもちますし,適正な冷却処置を講じておけば30時間以上経過しても再植が可能です。犬の脚を切断し,それを48時間冷蔵した後に再植した実験例もあります。

限界と益

再植が成功するかどうかには様々な要素が関係しています。ギロチンで切ったときのように指が鋭く切り落とされている場合は,100%に近い成功の見込みがあります。引き裂かれたり,押しつぶされたりなどして,組織や骨に重大な損傷がある場合には,成功の可能性もそれに伴って減少します。切断された部分がひどく傷ついている場合,顕微外科医は手術を断念することがあります。長時間の手術に耐えることが求められますから,患者の容態が制約となる場合もあります。

オーストラリアで行なわれた最近の調査によると,指の再植では7割,腕の再植では8割が成功しています。別の報告によると,ある関節に無理な働きをさせることができないという点を除けば,再植された指は一般に,正常の指と比べて8割方その機能を回復するとのことです。再植された部位の機能を回復させるには,一般に,手術の後,機能回復訓練や物理療法を施すことが必要です。しかし,現在までのところ,前腕の半分より上で切断されたものを接合する試みは良い結果を挙げていません。

手の親指が切断された場合は,元に戻すために大きな努力が払われます。というのは,親指がなくなると,手の働きの効率が4割も落ちるからです。切断された親指を接合できない時には,顕微手術によって,患者の足の親指を移植することが行なわれています。足の指の腱や神経,血管や骨をつなぐと,患者にはそれが元の親指とほとんど同じように感じられます。

「実際に移植してみると,足の親指が手の親指のように見えてくるのだから面白い,以前よりは太目でも,それは手術の際に改善できる」とある医師は語りました。足の親指を失うと聞くと,多くの人はためらいを覚えるでしょう。しかし,食べることや字を書くことなど手の親指が毎日行なう無数の仕事をするのに,足の親指は必要ではありません。

短期間の調整と訓練で,再び,歩いたり,走ったり,スポーツをしたりすることができるようになります。足の親指を“手の親指”代わりにしているオーストラリア人はしだいに増えていますが,その中にはプロ・フットボールの選手もいます。

幸いな結果

様々な立場の人が顕微手術の驚異的な技術から益を得てきました。例えば,この記事の冒頭で触れた人々のことを思い起こしてください。幾百人もの人が顕微手術の恩恵に浴してきましたが,これらの人々はその代表的な例です。

あの幼い少女の場合,事故から1年ほどたった今,2本の指とも元どおりになり,どちらの手がけがをしたのかさえ分からないほどです。鉛管工はどの指も失わずにすみました。ただ,寒くなると,いくらか問題があるようです。あの二歳の男の子は,今では八歳になっていますが,普通の子供と同じように,走ったり,跳びはねたり,フットボールをしたりしています。ボイラー製造工の場合も,切断された腕がとてもよくつながり,空手を始め,かつては切断されたその腕で,何枚ものかわらを割ることができるほどです。

顕微手術は実に驚嘆すべき技術であり,困っている人々に大いに役立つものとなっています。しかし,それにもまして驚嘆させられるのは,人体に備わっている驚くべき治ゆ力です。外科医は体の様々な箇所を縫合するかもしれませんが,人体に組み込まれている再生力はわたしたちの体を設計されたかたの偉大な知恵を物語っています。このことを認識するわたしたちは,偉大な創造者に向かって敬意を込めて次のように語った詩篇作者と同じ感慨に打たれます。「わたしはあなたをほめたたえます。わたしは畏怖の念を起こさせるように,くすしく造られているからです」― 詩 139:14,新。

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