世界展望
『危機に瀕する世界』
◆ 「1980年代の幕開けとともに,世界は第二次世界大戦以後のどの時期よりも深刻な危機に直面している」。これは,国際開発欧州独立委員会による最近の報告である。ドイツ連邦共和国の元首相ウィリー・ブラントを会長とする同委員会は,さらに,「今や世界経済の機能がいちじるしく低下しており,あらゆる国々の短期的および長期的利益に損害が生じていることは明らかである」と述べている。ロンドンのガーディアン紙は,この報告の言葉づかいを「狼狽に近いものである」と評し,「実際に真実の危険が追ってきた時に唯一の答えとなったのは,つぎはぎ細工と引き延ばし戦術であった」と説明している。また「ブラントがすぐにでもかわることが必要だ。時間は残されているだろうか」と警告している。
池から得られる太陽エネルギー
◆ イスラエルでは,最近,底の浅い池を利用した新しい発電装置の運転を始めている。この池は死海南岸に近い小さな集落にあり,太陽光線が水にさし込むと池の底は高温になる。普通の場合とは異なり,温水は上昇しない。底の近くに溶けている塩分が重たい水の層を形成し,対流を阻むのである。表面にある軽い淡水は,摂氏80度にも達する下方の熱い塩水の熱を保つ働きをする。この温水を用いて,低温で沸騰しタービン発電機を動かすある液体を熱する。予備計画によると,深さ2.5㍍,広さわずか7,000平方㍍の一つの池から,昼夜兼行で150㌔㍗の電力が生産される。この装置は経済的で,環境を汚染することもないと言われている。
エネルギーの保存にも注意が必要
◆ 自分の家を持つ多くの人々は,貴重なエネルギーを保存するために,壁や天井にくまなく断熱材を取りつけ,空気漏れを防ぐために,すきまというすきまをふさぐようにしている。ところが実験的に作られたこのような密閉された家には,ドライヤー一つで暖めることができるというその建設者の主張にもかかわらず,問題が生じた。「サイエンス80」誌の報告は,「大多数の家の場合なら普通に外から吹き込んでくる新鮮な空気が入って来ないため,中の空気が悪くなった」と述べている。「家中でホルムアルデヒドのガスの濃度が高くなり」,室内の放射能も,「戸外の自然環境における放射能の100倍以上」だった。同報告は,そのような家で熱の損失を最小限に抑えつつ空気交換を行なえる北欧の熱交換装置についても論じている。
命をだしにしたギャンブル
◆ 米国ネバダ州のラスベガスは長い間ギャンブルで名をはせてきた。そして今,ギャンブル熱は賭博場から一地方病院の職員に転移したのではないか,と非難する声が聞かれるようになっている。ニューヨーク・タイムズ紙上の一報告は次のように述べている。「危篤状態にある病人がどの位生きられるかをだしにして賭事を行なう人々がいるといううわさがあった。それらの人々は,場合により,そうした何人かの病人の死を速めることまでした疑いがある」。地方検事の行なった調査では,患者の生命維持装置を細工した証拠が見つかったと言われる。
冥王星の大きさ
◆ 天文学者たちは最近新しい技術を用いて,初めて冥王星の直径を測定した。ヘール天文台にある,特殊な強化装置の付いた200インチ(5㍍)望遠鏡で撮影した写真から,冥王星の直径が3,000ないし3,600㌔であることが判明した。これは,直径3,476㌔の,地球の月とほぼ同じ大きさである。英国のニュー・サイエンティスト誌に掲載された報告はさらに,冥王星の密度は,「水の半分である(厳密に言えば0.3-0.8の間であり,固体の岩石の密度3をはるかに下回る)」と述べている。
不潔な習慣
◆ 英国の児童・生徒に関する心理学的分析が示すところによると,「喫煙する子供たちは不健全な子供たちである」とニュー・サイエンティスト誌は述べている。その説明は次の通りである。標準型少年人格検査を喫煙する子供に課したところ,子供たちは,「不従順で不健全な子供たちに典型的に見られる人格特性を[示し],それは非行少年や成人の犯罪者の特性に類似していた」。「喫煙する子供たちの人格特性は,その子供たちが危険なことに誘惑され,潜在的にはすでに反社会的であることを物語っている。……それは確かに非行に走りやすい性格の一面であるように思われる」。
人体の値段が上昇
◆ 米国の健康保険協会によると,過去10年間に人体の無機物の値段は643%上昇した。インフレにより,人体を構成する基礎的な無機物の価格は0.98㌦から7.28㌦にはね上がった。ところが,これらの無機物から作られ,実際に人体に存在する化合物,例えばヘモグロビン,ホルモン,酵素などの化合物には600万㌦以上の値打ちがあるとされている。(「ものみの塔」誌1976年10月15日号619ページをご覧ください。)
地震に対する備え
◆ ある葬儀社が,東京で起こる可能性がある大地震のために20万個の棺桶を備蓄する費用を政府に求めた。英文読売紙上の報道は,「1923年の関東大震災級の大地震が東京を襲ったなら,約50万人の命が奪われるだろうと実際に予告する学者がいる」と記している。葬儀社の指摘するところによると,1923年には約10万人が死亡したが,多くの遺体は棺桶がなかったため,焼却しなければならなかった。こうした目的のため,およそ2,000個の「折りたたみ式」の棺桶が,葬儀社団体の手によって蓄えられている。
高価な治療
◆ 医師は一種の“安全”保険として患者に輸血を施す場合がある。この観点から,ファミリー・ヘルス誌の次の統計を考慮するのは興味深い。その統計によると,日本では,「輸血によって肝炎にかかる確率は80%である。米国ではそれほど問題は深刻ではないが,米国人は,今でも輸血によって感染した肝炎の治療のために毎年8,600万㌦(約206億円)を注ぎ込んでいる」。
『別の名による離婚』
◆ 1968年から1978年までの10年間に,米国でカトリックの宗教問題を扱う判事により認められた年間の結婚破棄件数は,338件から2万7,670件に増加した。破棄が今では非常にひんぱんに行なわれているため,「それらは“カトリック式離婚”と呼ばれることがある」とタイム誌は論評している。しかもこのようにして別れたカトリック信者は,教会内で良い立場にとどまっている。しかし法王ヨハネ・パウロは,破棄の根拠として現在判事に受け入れられている心理学的な口実が「別の名の下に離婚を許可する理由となっている」ように思えると,バチカンの結婚裁判所に述べている。断固たる取締りが予想される。
聖書に出て来るお金に戻る?
◆ 最近のこと,イスラエルはアブラハムが4,000年ほど前に使用したお金と同じ名称を持つ新貨幣を発行した。アブラハムは妻の埋葬地を買うために「商人たちに通用する銀四百シケル」を払った。(創世 23:15-19,新)新しいシケルは25セント(約60円)の価値を持つが,これは,現代イスラエルの以前のポンドと比べれば10倍の価値があるとは言え,古代のシケルと比較した場合にははるかに価値の低いものであろう。毎年100%を優に超すインフレのせいで,1ポンドはわずか2.5セント(約6円)の価値しかなくなってしまった。政府は聖書的な名前のついた通貨がもっと信用されることを願っていたが,現代のイスラエル人は,「新しいシケルも以前のポンドと同じように早く価値が下がってしまうのではないかという恐れを抱いて」いた,とタイム誌に報じられている。そのため人々は「新しい通貨を米国のドル,英国のポンド,そしてヨルダンのディナールに替えるため,イスラエル内のアラブ人両替商のところに集まった」。
喫煙増加率が減少
◆ ギリシャでは,たばこの使用量を抑えるための社会事業省によるキャンペーンがある程度の成功を見ている。伝えられるところによると,1979年のたばこの消費量はわずか0.07%増えたにすぎなかった。ちなみに,1977年と1978年の増加率は5%である。このキャンペーンでは二様の方法が採用されたが,その一つは,たばこの危険について人々に警告すること,二つ目は公共の場での喫煙が非喫煙者に及ぼす危険を減少させる試みだった。喫煙は公共の運輸機関,病院,診療所では禁じられている。
古代クレタの人身御供
◆ クレタ島のアカルナエ神殿近くの考古学的な発掘によって,3,000年以上昔の人身御供の犠牲者と言われる若い男子の骸骨が発見された。「これは,有史以前のエーゲ海地方で,人身御供をささげる宗教的な習慣のあったことを裏付ける初の科学的証拠である」とアテネ・デーリー・ポスト紙は主張している。同紙は続けてこのように報じている。若者の骸骨は「犠牲にささげられたばかりのように,祭壇の上でうずくまっていた。……そして,それにも増して重要なのは,犠牲のために用いられたしんちゅうのナイフで,そのナイフも骸骨のすぐそばに置いてあった」。
英国人の道徳が低下
◆ 英国において婚前交渉が急速に一般化していることが,最近の政府調査により明るみに出た。20ないし25年前に結婚した婦人のうち,婚前交渉を持ったと報告されているのはわずか35%だが,1971年以降に結婚した女性の場合にはその2倍以上(75%)の人々が,そうした関係のあったことを認めている。未婚の英国女性で現在40代の人々の62%は,処女であると述べているが,23ないし24歳の独身の女性のうち,性関係を持ったことがないと言えた人は15%に過ぎなかった。
視力を回復させる手術
◆ 長い間眼鏡をかけていた近視の人も,ソ連で開発されている新技法の手術を受ければ,いつの日か眼鏡を取り外せる日が来るかもしれない。ソ連ではこのような手術が2,000件以上行なわれ,94%の成功率を見ていると言われる。米国人の中でこの治療を最初に受けた人の一人は,「左目の包帯が医師の手によってはずされた時,歓声を上げ,眼科医のノルマン・シュタールにだきついてくちづけした」とニューヨーク・ポスト紙は報じている。ソ連の医師スビャトスラフ・フョードロフは,モスクワにおいて,シュタール医師と数人の米国人眼科医に対して,角膜を平たくし,目の焦点を合わせ直すための16の精密な切り傷を角膜につける訓練を施していた。米国の場合,この手術には片方の目につき約1,500㌦(約36万円)の費用がかかるという。
最高の計算機?
◆ ある中国人は,二つの10けたの数字の乗算を,暗算により8ないし9秒間で計算できると伝えられている。「中国建設」誌によると,この人は子供のころから暗算で速く計算する方法を探究し続けていた。現在24歳の「この人は,どんな数字に対しても加減乗除ができ,自分の指を用いるだけで,分数,累乗,平方根,対数,三角関数を計算できる」と同誌には記されている。この人の方法だと,数字を電卓に入力するよりも早く,問題の答えを得られる場合も多いとされている。「中国建設」誌は,この方法について述べた最新刊の書籍は中国人の実業家にとって有用だと述べている。「[電卓]が中国で普及するようになるまでにはまだ相当の時間を要する」からである。
マリファナに関する新しい報告
◆ 全米麻薬乱用対策協会によって出された新しい報告は,マリファナが以前に考えられていた以上に,健康に害を与える大きな危険性を持っていると言明した。毎日マリファナを吸うと,喫煙の場合と同様に肺を損なうことになる。加えて「幾年にもわたるマリファナの継続使用は,人癌の発生原因となることがやがて示されよう」。しかし,高校生の常用者は,4年間でほぼ2倍になっており,ある調査は,あらゆる年齢層のアメリカ人少なくとも4,300万人がマリファナを使用したことがあるということを示している。
「不滅」のための犠牲
◆ インド,ニューデリーの通信員ピーター・ニーズワンドは,インド南部の都市バンガロールで,人間の犠牲をささげていたかどで告発された老齢のスワーミー(ヒンズー教の宗教教師)が,心臓発作のため死亡したと報じている。警察によれば同スワーミーは,「破壊の女神」カーリーをなだめるために,「血のささげ物」を調合したとのことである。調査は,6歳以下の5人の子供たちの殺害を中心に進められた。子供たちは,雇われた殺し屋にお菓子やビスケットで誘惑され,そののち殺し屋は,子供たちののどを切った。彼らの血はびんの中に集められ,スワーミーのところへ持って行かれた。その血は宗教儀式の際に用いられた。警察によれば,スワーミーはこうした方法で不滅に到達できると信じていたということである。