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目ざめよ! 1981
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こけおどしではなかった大爆発

セントヘレンズ山が噴火した時の様子について,米国ワシントン州スポケーン市に住むあるエホバの証人の語った個人体験談

私たちが一家そろって,5月18日,日曜日の午前中に王国会館の集会へ行った時には,これから生じようとしている事態を連想させるものは何もありませんでした。午後になって空が曇ってきました。蒸し暑くなり,黒雲が垂れこめて来たので,雷雨になるものと思っていました。しかしじきに,普通の嵐ではないことが分かってきました。2時には太陽が全く見えなくなり,あたりは真夜中のような闇に包まれました。鳥はねぐらに帰り,犬や猫はしきりに家の中に入りたがりました。何もかもが無気味に静まりかえっていました。

それから,何の前ぶれもなく,火山灰が降って来ました。宇宙飛行士が持ち帰った月の塵に似ていると言われる,うすねずみ色の灰でした。やがてあらゆるものがこの異様な塵に覆われました。この塵は,それに含まれるガラスの粒子に光が反射してキラキラ輝いており,風に乗ってどんな所にも,どんなすきまにも入り込みました。恐ろしい反面,不思議と引きつけられるものを感じました。この灰によって,スポケーンと近隣の町々の機能は麻ひしてしまいました。

車を数キロ運転すると,エアフィルターが詰まって,掃除をするか取り替えなければなりませんでした。数百キロ走るごとにオイル交換が必要でした。時々,視界がゼロに近くなることもあり,幹線道路には故障車や事故を起こした車が並んでいました。全員が防塵マスクを付けていましたが,それでも息苦しく,呼吸器疾患のある人は大変でした。

二日二晩,市の職員以外はだれも家の外に出ようとはしませんでした。事態は恐ろしいほど深刻になっていました。母はティムとドナの所に行っており,そこに泊まっていました。幸いなことに,デイブと私は前日に食料品を買い込んでおいたので,ひどく惨めな思いをしないですみました。しかし,食糧がなくなった人は,パンやミルクをはじめとする基本食品なしで生活しなければなりませんでした。スポケーン市内の卸売り業者から食品の供給を受けていた小さな町々の中には,土地の食料品店の店先から食糧がまったくなくなってしまったところもあります。

私はこの報告をセントヘレンズが大爆発を起こした五日後に書いていますが,火山灰などの降下物が家畜や作物にどれほどの影響を及ぼすかはまだ分かっていません。これまでのところ,家畜は無事のようです。目の痛みが家畜やペットの最大の問題となっています。塵の中のガラスの粒が目を傷つけ,刺すような痛みを与えるのです。

今回の出来事は明らかに私たちがこれまでに経験したことのないものでした。災害が発生すると直ちに,エホバの証人は電話で連絡を取り合い,助けが必要かどうか調べました。時には,用件を伝えるのに10分以上かかることもありました。

町の内外の道路はすべて閉鎖されました。列車,飛行機,バス,その他の商業交通機関はいずれも止まってしまいました。

火山灰の掃除は大仕事です。シャベルですくったりほうきで掃き集めたりしようとするそばから,舞い上がってしまうのです。しかも,数センチ積もるだけで,屋根が抜け落ちる危険があります。信じられないほどの重さです。そして,風が強く吹くと,灰は風に乗って目,鼻,のどに入り込み,家の芝生や庭を一面に覆います。

最悪の事態が過ぎたのかどうかは,ここしばらくの間様子を見なければ分かりません。セントヘレンズは再び鳴動を続けており,もう一度噴火するのではないかと心配されています。噴火の可能性は予測されていましたが,これほどの爆発をするとはだれも夢にも思っていませんでした。事実,先週の日曜日つまり,5月18日の朝まで,ほとんどの人が,あの山はこけおどしをしているだけだと言っていました。

今では,セントヘレンズ山を見くびる人は一人もいません。―寄稿。

[24ページの図]

(正式に組んだものについては出版物を参照)

空中を運ばれる灰

セントヘレンズ山 スポケーン

380㌔

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