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目ざめよ! 1982
目82 2/8 24–26ページ

すべてのものから逃れて

人里離れた土地の美と静けさを見いだした一夫婦の登山手記

米国カリフォルニア州のシエラネバダ山脈のただ中にある雄大なヨセミテ渓谷を取り囲む山々の最高峰に登った私たち夫婦は,ほぼ一日,人影を見ませんでした。標高3,000㍍ほどのなだらかなクラウズ・レストの頂に立ち,新鮮でさわやかな空気に包まれた私たちは実にそう快で,とても良い気分でした。

確かに大抵の人は,土の山道を行くハイキングや登山に私たちほど熱意を示さないでしょう。しかし,その山を二人で独占できることは私たちにとって大きな価値があるのです。ほんの数日前には,渓谷のキャンプ場や食料品店,売店で列を作って自分の番を待っていました。シャワーや手洗いを使うにも,時には座る場所を確保するのにさえ並ばなければなりませんでした。ちょうど8月で,ヨセミテ国立公園の中でも人気の集中しているヨセミテ渓谷は観光シーズンの真っ盛りでした。私たちの住んでいるニューヨーク市のにぎわいを思い出すようになりました。

抜け出す潮時

娯楽やレストランでの食事,教育的なプログラム,風光明媚なこの谷の息をのむような美しさを満喫してはいましたが,そろそろここを抜け出す潮時に思えました。

翌朝,リー・バイニング・バスに乗って,曲がりくねってゆるやかに上るタイオガ峠道路を行きました。この道路は広さ3,100平方㌔のこの公園を横断している唯一の道路です。私たちはテナヤ湖で下車しました。とても魅力的な湖だったので,その湖畔にキャンプを張れば妻が喜ぶことは分かっていたのですが,私はすでに立てていた計画のことを優しく思い起こさせました。私たちのたどるコースは大まかに言って,テナヤ峡谷の縁に沿って南西に進み,それから有名なジョン・ミューア道を南に向かい,マーセド川沿いにヨセミテ渓谷に下るというものでした。

十分の装備を整え,山の冷気に備えてダウンの寝袋とコートを持参しました。また,三日分の乾燥食品と飯ごう,救急医療品,地図,小型のコンロをアルミニウムの枠のリュックサック二つに入れて持って行きました。フォーシス峠道を見付けると,サンライズ山の山腹をジグザグにうねって進む,乾燥して土ぼこりの舞う山道を登って行きました。

その日の午後遅く,サンライズとクラウズ・レストの間の標高2,700㍍余りの高原の美しい湖のほとりに着きました。美しい緑の草原の周囲には松林が見えます。余りの美しさに引かれて去り難くなり,そこにテントを張りました。静かな小川で水を補給し,凍結乾燥のビーフ・ストロガノフのおいしい食事をしました。

それから,日の沈む少し前に,周囲の森の中を歩いて,食料をつるしておくのにうってつけの木の枝を探し出しました。どうしてそんな心配をしたと思われますか。この辺のクマは利口なのです。私には以前,クマに出し抜かれた苦い経験があったのです。

クマを出し抜く

私がここのクマについて知ったのは,10年前に友達二人とリトル・ヨセミテ渓谷でキャンプをした時のことでした。森林警備隊員から食料を木につるした方がよいと告げられたのですが,経験が浅かった私たちは,あまり高くつるすまでもないだろうと考えたのです。

その晩,テントの中で寝ていた私たち3人は,何かがそっと歩き回っている物音に目を覚ましました。外を見て驚きました。3頭の大きなアメリカクロクマがリュックサックの中のごちそうにありつこうと,鼻を上に向けているではありませんか。そのうちの1頭が,リュックサックを結わえ付けてある木に飛び付きました。一面に敷き詰められた松葉の上に,たちまち食料が散らばりました。クマどもは,この野蛮な夜会の分け前をめぐって内輪もめをしながら,かん詰め,包み,袋など,つめにかかる物を残らず引き裂いてしまいました。翌朝私たちは,半欠けのジャガイモをゆでてみましたが,食べられたものではありませんでした。クマが食べ残した食料と言えばこれだけだったのです。

今は,妻と一緒にあの時と同じく一面に星の輝く夜空の下にいます。その間に少しでも何かを学び取って,私が利口になっていたならよいのですが。この度は,空のリュックサックをチャックを開けたまま地面に置いておきました。食料の方はナイロン製のナップザック二つに詰めて,高さ5.5㍍ほどの所のがっしりした枝に丈夫なひもで結わえ付けておきました。しかも,私たちが騒ぎに巻き込まれないように,食料はテントから60㍍ほど離れた所につるしておきました。

その晩,私たちは,はっとして目を覚ましました。ただのごちそうになんとしてでもありつこうとする腹をすかしたクマが森の静寂を破ったのです。ナップザックめがけてつめを立てて必死に登っているクマの重みで下の枝のきしむ音が,私たちのテントからも聞こえました。木によじ登ったクマが枝の先端の方に進み過ぎたのでしょう,その枝はぽっきり折れてしまいました。クマ君は地響きを立てて地面に落ち,悲鳴に似たすさまじいうなり声を上げました。

だれかがあの物音を聞いていたなら,クマは木そのものを倒し,食料をせしめたに違いないと思えたことでしょう。リトル・ヨセミテでクマにやられた時のことが頭をよぎりました。私の体からは力が抜けてしまいました。食料なしで戻らなければならないのです。

しかし,翌朝,どうだったでしょうか。木の所に行ってみると,食料が無傷でちゃんとぶら下がっていたのです。それを見た私は,歓声を上げて叫び,ひざをたたいて大喜びしました。私たち二人は子供のように踊り回って喜びました。朝食は,ホット・ミルク,グラノーラ,乾燥果実,それに紅茶の簡単なものでした。熱心な祈りをささげ,私たちの創造者に感謝を言い表わしました。

ヨセミテの人里離れた土地

それから,クラウズ・レストに登りました。山に難易度を付けるなら,クラウズ・レストは実際,易しい山の部類に入ります。私たちのルートには,よじ登らなければならない崖も,足を取られる急斜面もありませんでした。それに,私たちは,2年前の新婚旅行の時の過ちを繰り返したくありませんでした。

その時は,ヨセミテ滝の脇を通るジグザグの険しい山道を登って行きました。この滝は世界でも有数の高さを誇っています。午後も遅かったので,日の暮れる前に頂上に立とうと思っていました。ところが残念なことに,体調をひどく崩していたため,翌日渓谷に戻って来た時には,二人とも足がひどく痛んでいました。続く四日間は,まるでロボットのように,曲がらない足を引きずり,気分がすぐれずしかめ面をしながら,歩き回りました。

今回はそうではありませんでした。巨岩が幾つも連なる世界最大級の岩壁の頂上に立ち,さわやかな気分でした。足下の花こう岩はテナヤ峡谷の底まで1,400㍍余りの絶壁となっています。西のヨセミテ渓谷から東の険しいシエラ山脈の高い山並みまでを初めて見渡すことができました。

有名な博物学者ジョン・ミューアはこの付近全域を1890年に国立公園に指定するのに貢献しました。私たちには,この公園に関するミューアの次のような描写がよく分かりました。「世界でも最も美しい調べを奏でて流れるトールーン川とマーセド川の水源,無数の湖と滝,絹のように滑らかな芝生,雄大な森,そそり立つ花こう岩のドーム……1万2,000ないし1万3,000フィート[3,660ないし3,960㍍]もの高さに空高くそびえ,雪を頂く山々。何もない斜面と尖塔状の高峰群とが並び,目もくらむような峡谷や盆地が一部その間に入り込んでいる。陽光を浴びる崖縁に広がる庭園,大きな音をとどろかせて長大な白い山腹を滑り落ちる雪崩,ごう音と共に白煙りを立てて流れ落ちた水が,曲がりくねった険しい峡谷の中で白く逆巻く瀑布,日の当たらない山陰の氷河」。

名残惜しかったのですが,このすばらしい場所を去らなければなりませんでした。その晩,リトル・ヨセミテ渓谷まで進み,この旅の間で一番よく寝れたと思えるほど快適な眠りを楽しみました。朝になって元気を回復した私たちは,マーセド川を眼下に見ながらジョン・ミューア道を進みました。川の水は岩や大石にぶつかって「美しい調べ」を奏で,高さ181㍍のネバダ滝と97㍍のバーナル滝の2箇所で激しく落下し,壮観な光景を描き出しています。実にすばらしいながめです。

旅の終わり

ヨセミテ渓谷に入ると,疲れと空腹と体の痛みをどっと感じました。でも,それだけの努力を払う十分の価値がありました。激しい活動によって体は元気付けられ,ストレスが解消してさわやかな気分になりました。この美しい地球を私たちのために備えてくださった愛する創造者に対する感謝の念は一層高められました。

ずっと以前にジョン・ミューアが語った通りです。「山に登って,その良い知らせを聞け。陽光が木々の間に差し込むように,のどかな自然があなたのうちに流れ込むであろう。風はそのさわやかさを,嵐はその内に秘めるエネルギーを吹き込んでくれる。そして,心配事は落葉のように吹き飛ばされるであろう」。―寄稿。

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