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目ざめよ! 1983
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医療救急隊員の語る経験談

ある日曜日の朝,米国カリフォルニア州のハンティングトン・ビーチ消防署で部署についていた医療救急隊員に電話が入りました。電話の向こうからは,「すぐ来てください! 主人が死にそうなんです!」という気も狂わんばかりの声が聞こえてきました。パートナーと一緒に現場へ行くと,マンションのすべての部屋に血が飛び散っており,男の人が首をしっかり押さえて床に横たわっていました。心臓が拍動する度に,動脈血がほとばしり出ました。どんなことが起きたかというと,この男の人は外で酒を飲み,帰って来て自分の妻を殴ったところ,刃渡り23㌢ほどの肉切り包丁で妻に首を刺し通されたのです。脳に血液を供給する頸動脈の一つが切断されていました。この人はあわてふためいて,部屋の中をかけ巡ったのです。

そして今,この人は床の上でのたうちまわっています。本人は自分が死のうとしていることをはっきり悟っていました。私は外科用鉗子で首の出血をとめ,両腕に1本ずつ点滴を始め,乳酸ナトリウム加リンゲル液と呼ばれる代用血液増量剤で血液の総量を補いました。それから,その人を急いで病院へ連れて行きました。日曜日だったので,手術室で外科医の助手を務める人が少なく,私が助手を務めました。当人の足から取られた動脈が頸動脈に結合され,この人は一命を取り留めました。

医療救急隊員として過ごしていた間,こうして人々を死の瀬戸際から救出するのは私にとって非常に報いの大きなことでした。しかし,それよりもはるかに大きな報いは,こうした劇的な出来事のおかげで,命を救う別の業について本心に立ち返れたことです。その命を救う業は,私自身の命をも含む無数の人々の命にかかわる,はるかに重要な業です。

話は私が5歳の時にさかのぼります。父がエホバの証人になり,私と私の二人の兄弟にエホバの証人としての訓練を与えるようになったのです。しかし,16歳の時に私はかなり反抗的になり,エホバの証人としての生活は自分にとって余りに制限が多すぎると感じました。そこで17歳の誕生日を迎える直前に,私はもう集会にも,戸別の宣べ伝える業にも行きたくないということを父に話しました。

父は私に腰を下させ,エホバへの愛が父の生活にとって最重要な事柄であるという点を聖書から説明してくれました。そして,父の家でその扶養家族として生活するのであれば集会に出席し,伝道活動を続けなければならない,と言いました。人が家族よりもこの神エホバを愛することがどうしてできるのか理解に苦しみました。それで父の家を出て,高校の友達のところに身を寄せました。

高校を卒業してからは,本当に重要だと思えた事柄の幾つかを得ることに努力を集中しました。また,高校で出会った若い女性とデートを続けました。19歳になった時は何でも知っていると思っただけでなく,結婚をする備えも十分にできていると考えていました。それで,高校時代の恋人であったパムと結婚しました。私たちは15年間結婚生活を続け,二人の娘をもうけました。円熟するにつれて,人生には現在以上のものがあることが分かりました。これから5年,また10年たって,私の若い娘たちはどうなっているでしょうか。この事物の体制は娘たちにどんなものを提供するでしょうか。そして,私はどんなことをしてやれるのでしょうか。

それまで機械組立て工場で働いていましたが,労働時間が長く,昇進の機会もほとんどなかったので,その仕事をやめ,消防隊員の仕事に就きました。24時間交代の勤務だったので,丸一日家で過ごすことが多くなりました。こうして私には自分が望んでいた以上の時間ができました。

そこで,『もっとお金をもうけ,さらに多くの物を得るためにこの余分の日々を用いればよい』と考え,二つ目の仕事を持つようになりました。それは建設関係の仕事でした。消防隊員として24時間交代の仕事をし,それからそのまま建設の仕事へ出掛けて行き,丸一日働いたものです。それで,私は34時間ほど家を空けた後に帰宅していました。無理もないことですが,家族の関係は緊張したものになりました。

ハンティングトン・ビーチ消防署が新しい計画,医療救急隊員計画に取り掛かったのは丁度そのころのことでした。私はその計画に加わり,続く8か月間はカリフォルニア大学のアービン医学センターで集中スクーリングを受けて過ごしました。一日16時間のこの課程で学んだ事柄すべては,救急医療に備えるためのものでした。外傷専門医と呼ばれる特別の訓練を受けた医師が,病院の無菌の手術室ではなく,焼け落ちた家や大破した自動車の中,薄汚れた路地,たばこの煙の充満したバー,空地その他どこにおいても命を脅かす状況に対処する方法を教授してくれました。私は緊急手術室で外科医と共に幾時間も立って,彼らが心臓切開手術や胸部切開手術を執刃したり,つぶれた体を元の形に戻したりするのを見学しました。

この訓練の間に,生命がどれほどもろいかを悟りました。そして,神,つまり創造者について父が教えてくれた事柄を思い巡らしました。また,詩編作者ダビデが畏敬の念をもって語った,「わたしは畏怖の念を起こさせるまでにくすしく造られている」という言葉を幾度も考えました。(詩編 139:14)私は,人体だけではなく,動物や植物,地球,そして幾兆もの星を持つ幾十億もの星雲などから,神の知恵とその創造物に見られる意図的な造りとを感じ取るようになりました。

そして,こうした事柄に気付くようになってから,父の数多くの言葉が私の頭の中によみがえってきました。家を出てから幾年も後に,自分が父を必要とした時のことを思い起こしました。父は愛と親切とをもっていつも助けてくれました。私のことを決してあきらめませんでした。そして,私がどこへ行こうと,いつも「ものみの塔」と「目ざめよ!」の両誌を必ず受け取れるよう取り計らってくれました。何にも増して自分が学んだこの教訓を忘れることはできません。つまり,自分の子供のことを決してあきらめてはならないということです。どんなことがあってもです! イエスのたとえ話の放とう息子の場合のように,そして私の場合のように,子供たちの内部で何かささやく声があって,親の元に戻って来て,エホバに仕えるようにならないとも限らないからです。―ルカ 15:11-24。

8か月にわたる医療救急隊員の課程を終了してから,2か月の休暇を取って家族と共に旅行に出掛けました。その2か月間は,高まってきていた家族の緊張をある程度和らげました。文字通り妻との恋愛をやり直しました。私は自分が妻をないがしろにしてきたこと,また男性にとって支えになってくれる,愛のある妻以上に優れた報いはないということに気が付きました。また,子供たちと一緒にいてやること以上に,子供たちに与えられる良いものはないことにも気付きました。

家に帰ってから,私は妻に家族の聖書研究が必要だと思っていることを伝えました。そして,エホバの証人にそれを司会してもらいたいと思いました。妻のパムはエホバの証人に対する憎しみを持つよう育てられていました。ですから,妻がすぐに同意してくれた時には驚くと同時に大喜びしました。研究が始まり,1年後の1974年に私たちはバプテスマを受けました。

訓練期間中に生命がどんなにもろいものか悟るようになったことは既に話しましたが,医療救急隊員として実地に仕事をしてみて,生きようとして体が最後まで必死になり,極めて恐ろしい傷と闘うのを見て感銘を受けるようになりました。

その一つの例はこの経験の冒頭に挙げた刺傷事件です。先に述べたように,刺された被害者は一命を取り留めましたが,言語能力の一部を奪われ,右腕と右足が利かなくなりました。脳への血液の供給が減ったためです。この人が回復途上にあった時,私は見舞に行きました。私は助けを与えた人々をしばしば見舞っていました。それは神の王国に関する私たちの希望について彼らに証言をする機会になりました。私は,現在の回復は一時的なものにすぎず,恒久的な回復は神の王国の支配のもとでこの地上において可能になることを説明しました。私たち夫婦はこの夫婦と4か月間聖書を研究しました。二人はやがて別居しましたが,最近聞いたところでは,ご主人のほうはまだエホバの証人と研究を続けているとのことです。

別の時には,おぼれた人を助けに行きました。パートナーと現場に着いたのは,近所の人がプールの底から7歳の女の子を丁度引き上げた時でした。その女の子の心臓の拍動は止まっており呼吸もしていませんでした。医師の間で,こうした状況は臨床死と呼ばれています。それでも,その子は生物学的にはまだ死んでいませんでした。まだかすかながら生気が残っていました。私たちは点滴を始め,心臓に刺激を与えて鼓動を再開させるために強心剤を与え,電気カウンター・ショックを与えました。

その時には女の子の両親が駆け付けていました。二人共ひどく取り乱しており,押しとどめておかなければなりませんでした。私たちはプールサイドで22分間この少女のために手を尽くしましたが,その子の心臓が拍動することも,その子が自力で呼吸することもありませんでした。私たちはどんな場合にも基地になる病院の医師と電話で連絡を絶えず取っていますが,この時の医師はもうあきらめて女の子を連れて来るようにと言いました。しかし,もう一歩で少女は蘇生すると思えたので,もう少しやってみる許可を医師から得ました。

私たちは心肺蘇生術を続け,私は胸腔に注射器を突き刺し,心臓に届かせました。すると,かすかながら心臓の拍動が認められました! 人工呼吸を続けましたが,心臓の拍動が強くなるにつれて,少女は自分で呼吸を始めました。息を吹き返したのです。脳の障害が幾らか残って足が弱くはなりましたが,その若さのおかげでこの少女はリハビリテーションによく応じ,7年後の今ではすっかり元気になっています。

ある日のこと,王国の音信を携えて戸別訪問をしていましたが,一人の婦人は私に非常に腹を立てました。その人は私に出て行くようにと言い,口汚なくののしりながら道のところまで私の後を追い立てて来ました。そこで私は振り向いてその婦人に,「6か月前に幼い赤ちゃんが息をしなくなって,死んだものと思われたのはこの家ではありませんでしたか」と尋ねました。驚きとしか言いようのない表情がその婦人の顔に浮かびました。それから声を秘めて,「どうしてそれを知っているのですか」とその人は尋ねました。

「私がその子の命を救った医療救急隊員なものですから」。

この婦人にきまりの悪い思いをさせるためにそうしたことを言ったのではありません。ただ,エホバの証人がその婦人の言うように週末に人々の邪魔をするやっかい者ではなく,社会にとって有用な人々であることを知ってもらいたかったのです。婦人は私を家へ招じ入れ,20分ほどエホバの証人の業と私たちが人々の戸口を訪れる理由とについて話し合いました。そして,「ものみの塔」と「目ざめよ!」の両誌を配布しました。

妻が王国の音信を携えて戸別訪問をしていた時にも同様のことが起こりました。妻が一人の年老いた男の人に近付くと,その人は「そんなものはいらん! ここから出て行け!」とどなりつけました。その時私は別の家で話をしていましたが,パムと会って一緒に帰る途中,パムが私にその出来事を話しました。私たちがその人の家の前を通り過ぎた時,その人は外に出ていました。その人には見覚えがありました。奥さんがひどい脳卒中にかかって危うく死にかけたのです。この男の人の要請に応じた医療救急隊員が私だったのです。そこで私は妻と並んでその人のところへ行き,「奥さんはいかがですか」と尋ねました。それから妻をその人に引き合わせました。その人が荒々しい態度を取ったのは私の妻で,私もこの聖書教育の業に携わっていることを知ってもらいたかったのです。それには考えさせられたようで,その年老いた男の人はパムに謝罪しました。

ある時一軒の家の戸口に立ったところ,一人の婦人が出て来ました。私は自分の名前を述べて自己紹介をし,話し始めましたが,「ちょっと待って!」という家の人の言葉にさえぎられました。「確かにラリー・マーシュバーンさんだわ! よく覚えていますよ! 主人を燃えている飛行機の中から引きずり出してくださったんですもの!」とその人は述べ,さらにこう付け加えました。「私にとても親切にしてくださり,主人は決して死なない,必ずよくなると元気付けてくださいましたね」。確かにそのご主人は一命を取り留めましたが,ひどいやけどを負っていました。婦人は私の名前を覚えていたため楽しい訪問ができ,その婦人に聖書文書を配布しました。

同様の出来事は繰り返し起こり,それは戸口だけに限らず,マーケットや街頭でも,人々から「家の娘の手当てをしてくださった方ですね」とか「母を救ってくださいましたね」などそれぞれの状況に応じた言葉を掛けられます。それは報いの大きい事柄です。

しかし,出動する度に報われる経験をするわけではありません。ある時,私の腕をつかんで,「もう死ぬわ」と言った婦人がいました。確かにその婦人は臨床的には死にました。パートナーと私は心肺蘇生術を施しました。心臓の拍動が戻っては消え,戻っては消えしましたが3時間手を尽くした末ようやく息を吹き返しました。ところが,その人の口を突いて出た最初の言葉は,「どうして死なせてくれなかったの」というものでした。「何ということだ!」と私はうめき声を上げました。その婦人は年老いて,病気にかかっており,生きてゆくのがいやになっていました。私たちはその婦人を病院に連れて行きましたが,心臓がひどく損なわれていたので,ペースメーカーを入れました。最近聞いたところでは,その婦人はまだ生きているとのことです。

別の時のことですが,現場に到着してみると近くの消防署の消防隊員が3人私よりも先に来ていました。3人は涙で目を曇らせて居間に座っていました。そのうちの一人が身ぶりで台所の方を指しました。老夫婦が床に横たわっており,二人共死んでいました。男の人は身体障害者で,両足がありませんでした。心中です。その人の奥さんである女性がまくらに頭を載せ,その男の人から顔を背けて横たわっていました。そして,男の人が妻の後頭部を撃ったのです。それから,彼は妻のそばに横たわり,遺体に腕を回し,銃を自分の頭に当て,自分で引き金を引いたのです。子供たちに残された走り書きには,二人の互いに対する愛がしたためられていましたが,経済的な問題と健康上の問題が余りにも大きくなり過ぎ,二人共生活に疲れてしまったことが記されていました。二人は一緒に死ぬことにしたのです。実に痛ましい悲劇です。消防隊員の目が涙でうるんでいたのも無理からぬことです。

医療救急隊員の業務に携わっていた5年間に(今では防火について米国各地で講演していますが,いまだに毎月数回は医療救急隊員として出動しています),70ないし80人の人の死を目にしました。その大半は生に執着し,必死に生きようとします。私はそれを幾度となく見てきました。

目をつぶると,転覆して火のついた車から出られなくなった若い男の人のことが今でもまぶたに浮かびます。私は腹ばいになって窓から入って行き,ただその若者をしっかり抱きかかえていました。若者の顔は恐怖におののき,助けてくれるよう私に懇願していました。その人が助からないことは分かっていました。私はその若者には分からなかったことを知っていました ― その若者の下半身は元に戻せないほどつぶれていたのです。私たちには若者を引きずり出すことができませんでした。私はただその若者の首に腕を回し,若者が息を引き取るまで話し掛けました。

仕事上,恐るべき麻薬乱用の実体を目にします。短縮してPCPと呼ばれ,一般には天使の粉と呼ばれているフェンシクリディン塩酸塩を使った人々のために,幾度も幾度も呼び出しを受けて出動したことを覚えています。その薬は思考を変え,非常に短い,散発的な感情の激発の際に,信じ難いような力を発揮させます。

ある時,午前1時に,一人の若い男性の母親の要請で出動しました。母親が何をしても,息子は反応を示さないのです。私たちが現場に到着すると,その若者は居間の寝いすに座っていました。若者は身長175㌢くらいで,非常にやせており,体重は60㌔ほどでした。二人の警察官がそこに来ており,母親から事情を聴取していました。

パートナーと私は若者と話し合おうとしましたが,若者は“もうろうとして”おり,幻覚を見ていました。目玉を動かすことも,まばたきをすることもなく,両腕と両足をしっかりとまっすぐに伸ばしていました。しかも,両手足をまっすぐに伸ばした姿勢を30分間取り続けていたのです。いすに座って,3分間両手足をまっすぐ前に出すようにしてごらんなさい。そして忘れてならないのは,この若者がその10倍の時間そうした姿勢を取り続けたということです! 私たちはその若者の生命徴候,つまり血圧や心拍,呼吸などの類を測定し始めました。容態は安定しており,取り立てて差し迫った危険はないように見えたので,若者を病院へ移送することにしました。その時点ではまだどんな薬を服用したのか分かっていませんでしたが,一人の警官はPCPではないかと疑っていました。

その時までに救急車は到着しており,緊急事態に応じた係員が6人その場にいました。私たちが若者を抱えて患者運搬車に載せようとしたところ,若者は突然爆発的に行動し始めました。そして,私たち6人を文字通り投げ飛ばしたのです。私は若者に馬乗りになって相手の首に片腕を回しましたが,若者は簡単に後ろに手を回し,私のシャツをとらえ,文字通り自分の頭越しに私を投げ飛ばし,地面にたたきつけたのです! 私は身長183㌢で,体重は86㌔ありますが,その私を2㌔入りの砂糖の袋のように軽々と投げ飛ばしたのです! ようやく6人がかりで若者を取り押さえ,手錠をし,患者運搬車に縛り付けました。若者は死にませんでした。PCPは通常命を奪うものとはなりませんが,麻薬について特別な研究をした一薬理学者によると,PCPの継続的な使用は脳を“フライにする”― その薬理学者が使った言葉 ― ことになりかねません。この段階にまで至ると,人は自分で話したり考えたりすることができなくなります。

別の時に,パートナーと私は,現場に既に到着していた警官の要請で,浜辺での乱痴気パーティーの場へ出動しました。警官たちはPCPを飲んだ男の人を取り押さえようとしていました。私たちも手伝って,警官はようやくその男に手錠を掛けました。警察の手錠は非常にがんじょうに作られており,二つの手錠の輪をしっかりした鋼鉄製の鎖がつないでいます。ところが,この若い男は非常に狂暴になり,手錠の二つの輪をつないでいる鎖をぷっつり切ってしまったのです! 二人の警察官と私ともう一人の医療救急隊員にできることと言えば,男を地面に押さえ付けておくことだけでした。事実,警官の一人はその男を取り押さえるために最後には警棒を使わなければなりませんでした。それから,警官は手錠を二つ掛け,私たちがその人を病院に連れて行きました。

この二つの出来事は,実際に自分の目で見るまでは信じられないような驚くべき力をPCPが発揮させることをよく示しています。実際にそれを目撃していても,なおかつ信じ難いものなのです。

幾度も出くわす別の麻薬はヘロインです。ヘロインは中枢神経抑制剤で,呼吸困難を引き起こします。私は,ヘロインを使った男の人が気を失って倒れた現場に呼ばれたことがありました。その男の周りをヘロインで陶酔した者たちが取り囲んでいました。針はまだその男の人の腕に刺さっていました。呼吸は止まり,顔色は青ざめていました。私は男に点滴を施し始め,パートナーは男ののどに管を入れ人工呼吸ができるようにしました。顔に赤みがさしてきたので,ナルカンを幾らか投与しました。ナルカンというのは,“narcotic antagonist(麻薬拮抗剤)”を意味します。これはヘロインの効果をほぼ即座に相殺します。(しかし,PCPの効果を相殺するためのそのような薬は入手できません。)その人は数秒のうちに息を吹き返しました。ほかの中毒者たちはそれを見て脅しをかけてきて,私たちからナルカンを取り上げようとしました。もっと安全にヘロインを使えるようにするため,それを欲しがっていたのです。

いくら口を酸っぱくして言っても,麻薬が心身に及ぼす害,それも麻薬をやめてから5年あるいは10年後にまで及ぶ害について,若い人々を納得させることはできません。彼らは信じたくないので,信じようとしないのです。そうした者たちを米国カリフォルニア州のカリフォルニア大学アービン医学センターの精神病棟に一日だけ連れて行って,長年麻薬を乱用してきた人々 ― 妄想症の患者や緊張病の患者 ― を見せてやることができれば,目が開かれるかもしれません。LSDで1,000回以上幻覚体験をした人々を見てきましたが,理論上はともかく実際にはそうした人々はもはや人間ではありません。思考力はなくなっており,植物人間同然です。

医療救急隊員で,同時にエホバの証人であるというのは余り例を見ない取り合わせです。医療救急隊員として私はけがをした人々が回復するのを助け,臨床死に陥った幾人かの人々の息を吹き返させることさえしています。それは満足感をもたらす仕事です。キリストのもとにある,エホバの王国についての真理を人々に教え,人々を霊的にいやし,人々が霊的に生きるようになるまで助けるのは,それよりもずっと満足をもたらす業です。医療救急隊員として行なえる善は一時的なものですが,霊的に成し遂げられた善は楽園の地で永遠に続くものとなり得ます。医療救急隊員として私は多くの苦しみを見ますが,エホバの証人として,そうした苦しみが,いつまでも続く健康と幸福と永遠の命に取って代わられることを示せます。非常に多くの嘆きや痛みや死を見ると心が痛みますが,エホバの次の約束を思い起こすと喜びに満ちあふれます。

「神の天幕が人と共にあり,神は彼らと共に住み,彼らはその民となるであろう。そして神みずから彼らと共におられるであろう。また神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」― 啓示 21:3,4。

放とう息子同様,本心に立ち返り,天の父,エホバ神のもとへ戻れたことを本当に感謝しています!―ラリー・マーシュバーンの語った経験。

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この訓練の間に,生命がどれほどもろいかを悟りました

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私は胸腔に注射器を突き刺し,心臓に届かせました。すると,かすかながら心臓の拍動が認められました

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「6か月前に幼ない赤ちゃんが息をしなくなって,死んだものと思われたのはこの家ではありませんでしたか」

[8ページの拡大文]

私はただその若者の首に腕を回し,若者が息を引き取るまで話しかけました

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その男は私のシャツをとらえ,文字通り自分の頭越しに私を投げ飛ばし,地面にたたきつけた

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男は手錠の二つの輪をつないでいる鎖をぷっつり切ってしまった!

[11ページの図版]

医療救急隊員として,私は多くの苦しみを見るが,エホバの証人として,そうした苦しみが終わることを示せる

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