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  • 裁判を受けるチョコレート ― 証拠はどれほど苦く,どれほど甘いか
  • 目ざめよ! 1984
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目ざめよ! 1984
目84 8/22 24–27ページ

裁判を受けるチョコレート ― 証拠はどれほど苦く,どれほど甘いか

証言はすべて記録され,検事と被告側の弁護士との最終弁論も終わっていました。陪審は証拠を検討して評決を行なうために退廷していました。法廷を埋め尽くした傍聴人は何時間もの間深い関心をもって,被告に有利な,あるいは不利な証言が次から次に行なわれるのを見守っていたのです。そして今彼らは評決を待っています。

被告も傍聴人と同じく評決を待っています。暑いせいか,それとも心配しているためか,今にも溶けそうな様子です。待っている間,被告の思いは長時間にわたって行なわれた証言にはせもどります。そして被告は,自分の過去について自分自身が話したことを思い起こします。

被告の証言

被告は法廷で次のように話したのです。1519年のこと,スペイン人の探険家エルナンド・コルテスは,アステカ族のインディオたちから金銀の財宝を略奪するために,遠征隊を率いてメキシコの奥地に入り込みました。皇帝のモンテスマとアステカ族の臣民とは,コルテスとその部下の兵士たちを「海から上がった白い神々」と考えたので,コルテスの一行を歓迎し,大いにもてなしました。その時に冷たくて苦い飲み物が出されましたが,それは彼らをもてなしたアステカ族の好物で,カカウアトルと呼ばれていました。

スペイン人が聞いた話では,アステカ人は,彼らの予言者の一人が楽園からカカオの木の種を持って来て自分の庭に植えたと信じていました。予言者は,その種を絞った汁で造った酒を飲んで,あらゆる知恵と知識を得ました。モンテスマ自身,カカオには力とエネルギーを与える作用だけでなく,衰えてゆく性的能力を刺激する効果もあると信じていました。また,カカオ豆はお金としても通用していました。

カカウアトルは,ヨーロッパ風の味に慣れていた征服者(コンキスタドーレス)の舌には苦すぎましたが,少量の砂糖を加えたところ味がぐっと良くなったので,コルテスはチョコラトルと呼ばれていたこの甘いほうのカカウアトルを,スペインの宮廷に紹介することにしました。スペインではチョコラトルはたちまち大好評を博しました。上流社会の婦人たちはチョコラトルを大変好み,教会にいる間も飲みたくて,熱いチョコラトルの入ったカップを侍女に持って来させたほどでした。この異国の飲み物の需要は急速に高まり,やがてスペインの船が,カカオ豆を栽培している赤道付近の国々から欠かさずカカオ豆を持ち帰るようになりました。

珍しい,そして刺激のあるこの飲み物の原料と作り方は,極秘にされていました。しかしその秘密はもれてしまいました。スペインの修道士たちがイタリアの修道士たちにもらしたのです。それでその飲み物はイタリアへ,フランスへ,英国へ,そして全ヨーロッパへと野火のように広がって行きました。それぞれの国で各々の好みに応じ,その国独特の香料を加えました。英国では,私の名前が発音しにくいと言ってチョコレートという名に変えてしまいました,と被告は思い出して語りました。

話はつづきます。これらの国々でも,また1765年には米国でも,近代的な方法でカカオ豆をチョコレートに変える設備を持つ工場が次々とできました。そしてやがてミルクチョコレート,板チョコ,ナッツ入りチョコレート,チェリー入りチョコレート,キャラメル入りチョコレートなどが作られるようになりました。イタリアにはチョコレートのパスタがあります。肉にチョコレート入りの肉汁をかける国もあります。デンマークでは軽食にチョコレートのサンドイッチを食べます。チョコレートのたばこやチョコレート風味のチリもあります。チョコレートでくるんだミツバチやイナゴまでありますよと,被告はにこにこしながら言いました。しかし,裁判官はこれを聞いて吐き気を催したのか,水の入ったグラスに手を伸ばしました。

「確かに世の中の人々は私に病みつきになっています。しかしこれは私を告発する理由にはなりません。多くの事実が示すとおり,これは私が立派な特性を持っていることの証拠であります」と述べて被告は法廷での話を終えたのでした。

被告は検察側の言い分をよく覚えています。証言台に呼ばれた証人の一人は20歳の若い女性で,彼女の証言は被告にとってとりわけ不利だと検察側が考えていたのを被告は思い出しました。彼女の顔にはひどいにきびの跡が残っていたからです。その証人は1週間に板チョコを3枚ないし4枚食べたと証言しました。彼女のあとに続いて,同じような肌の問題に悩まされている証人たちが次々と証言台に立ち,それぞれが,週に数枚の板チョコを食べたことを証言しました。

被告はまた,ある医師が,自分の知っている医師のほとんどはアレルギー反応を引き起こす食物の表の中にチョコレートを入れている,と証言したのを思い出しました。また,チョコレートを食べたらジンマシンが出たとか,偏頭痛や胃痛に悩まされたなどと,宣誓後証言した人たち一人一人の顔も思い出すことができました。

それから,チョコレートは虫歯の原因になると証言した歯科医もいました。ほかの人たちもその医師と口をそろえてそう主張しました。チョコレートは血中コレステロール値を上げ,心臓病の危険を高める罪を犯した,と証言した医師もいました。その証人に続いて今度は一人の専門家が,チョコレートには「カフェインが多量に含まれている」から,紅茶かコーヒーを飲むほうがまだましだと言いました。この調子で検察側は証拠の提出を終えました。

被告は,自分を弁護する側の最初の証人の言葉がどれほどうれしかったか思い出します。ある有名なアレルギー専門医は次のように証言しました。「牛乳と砂糖は別として,チョコレートはひとつの食品に浴びせられる非難としては最大の非難を受けていると言えるでしょう。……この際,真実と誤った社会通念とを区別することに努めるのは時宜を得たことと思います。チョコレートは極めて栄養価の高い食品でありますから,その区別をするのは重要であります。少量でもカロリーの高いものが是非とも必要な場合に,チョコレートはその長所を認められてきました」。

この証人は,チョコレートとニキビの関係について質問されました。「チョコレートはニキビの最大の原因となる刺激物と決まっているかのように長い間考えられておりました。チョコレートは血液中の脂質を増加させて脂肪質の働きに影響を及ぼすと考えられていたからです」とその証人は述べ,研究調査による,「チョコレートはニキビに特に影響はないという結論」にも言及しました。

ペンシルバニア大学で最近行なわれた調査も引き合いに出されました。その調査は,ニキビに悩まされていた人65人を対象に行なわれました。その人たちは毎日たくさんのチョコレートを食べ始めました。46人についてはニキビに変化は見られませんでしたが,10人はよくなり,9人は悪くなりました。その同じ患者たちに,チョコレートを含まない,よく似たキャンディーを与えたところ,53人については変化がなく,5人はよくなり,7人は悪くなりました。最近海軍が4週間の予定で,ニキビに悩まされていた海軍兵学校の学生の一群に,毎日少なくとも3枚の板チョコを食べさせて調査を行なった事実も持ち出されました。彼らの皮膚の病変に影響は見られませんでした。

ある人々は,チョコレートを食べると偏頭痛がするとか,胃をこわすとか,ジンマシンが出るなどと証言しましたが,それについてはどうでしょうか。証拠を見るとはっきり分かるとおり,ある人の場合にチョコレートはそのような反応を引き起こすことがあります。被告は,そう言われて自分が落ち着きを失い,いすに腰をかけてもじもじしていたのを思い出しました。「チョコレートそのものは確かにアレルギー反応や中毒……反応を刺激することがある」のをその医師は認めましたが,チョコレートが広く用いられているところを見ると,そのアレルギー反応は比較的に軽いものであるという点も指摘しました。診断が「困難な場合や原因不明」の場合には,チョコレートはかっこうのいけにえにされ,「正当な根拠はほとんどないのに,何でもチョコレートのせいにして,やたらにチョコレートを禁じることが多い」と思うとも述べました。また,「チョコレートが引き起こした反応で記録されている実例は,医師や一般の人々が抱いている全体的な印象よりもはるかに少ない」のです。

チョコレートは虫歯の原因になるという非難に対する弁護に,被告は特に関心を抱いていました。それで,米国の国立歯科研究所を含む三つの研究センターの研究報告に耳を傾けました。それらの研究センターは,チョコレートに,歯を覆って虫歯にならないように守る腐食防止因子 ― 恐らくチョコレートに含まれる脂肪 ― があることを発見しました。

といっても,ミルクチョコレートは目方の55%が砂糖です。そして砂糖は確かに虫歯の原因になります。しかし,チョコレートに含まれる腐食防止因子は,虫歯をつくる砂糖の性質と戦うのかもしれません。また,ジャガイモのようなでんぷん質の食物は,すぐに溶ける砂糖よりも長く歯に付着しているので,虫歯を作るもっとたちの悪い犯人と言えるかもしれません。

ペンシルバニア州立大学の女性の権威者の証言を聞くと被告の表情はゆるみます。「体は果物,野菜,牛乳あるいはハチミツなどに含まれる糖分と,チョコレートや砂糖菓子に含まれる糖分とを区別することができません」とその人は証言しました。また,テキサス大学の行なった調査についての証言を思い出した時には,被告は笑いをこらえきれなくなりました。その調査によって,チョコレートによく似た競争相手のキャロブは,1枚の板チョコに比べて虫歯を作る可能性が5倍も高いということが分かったのです。

弁護は続きました。チョコレートが血中コレステロール値を高めるというのは事実ではありません。何人かの専門家が示したところによると,チョコレートの中の脂肪は飽和脂肪ですが,「他の飽和脂肪と違って,血中コレステロール値を高めないようです。植物性なので,純粋のチョコレートにはコレステロールは含まれていません。心臓病を心配している人々も,チョコレートを避ける必要はありません。ただしチョコレートがカロリー過剰の一因となる可能性はあります」。ですからもしカロリーを勘定しているのであればご用心。40㌘ほどの板チョコ1枚には220カロリーの熱量があるのです!

しかしそのカロリーは,ある人たちが好んで言うように,全く「栄養価のないカロリー」ではない,という証言を思い出して被告は自分を慰めます。チョコレートにはたんぱく質,ビタミンA,D,E,K,リノール酸,カルシウム,チアミン,リボフラビン,フェニールエチールアミン,鉄などが少量含まれています。

チョコレートにカフェインが幾らか含まれているのは事実です。しかし,1杯の紅茶やコーヒーに含まれている量よりもはるかに少ないのです。どれほど少ないのでしょうか。30㌘ほどのほろにがいチョコレートには5ないし10㍉㌘ほどのカフェインが含まれていますが,カップ1杯のコーヒーには100ないし150㍉㌘のカフェインが含まれているのです。

最後に一人の専門家は,モンテスマとそのアステカ族の臣民の考えていたことは正しかったと証言します。チョコレートは疲労回復に強い効き目があるので,チョコレートを食べると力とエネルギーがわいてきます。競技中の運動選手や戦場の兵士たちはチョコレートを食べます。ヒラリーの探険隊がエベレストを征服した時,彼らは何十キロものチョコレートとココアを携行しました。米国のジェミニ計画の宇宙飛行士が宇宙飛行をした時にも,チョコレートは同行しました。

ここで被告の回想は中断されました。男女の陪審員が陪審席に戻ったからです。裁判官は被告に起立するように言いました。茶褐色の被告が立ち上がって陪審のほうを向くと,廷内は静まりかえりました。群衆はこの時を待ち構えていたのです。決定的瞬間が訪れました。

「陪審員の皆さん,結論は出ましたか」と裁判官が問いかけます。

陪審長は浮かぬ顔で裁判官を見,簡単に説明します。「いいえ,満場一致の決定を下すことはできませんでした。意見はまちまちです。有罪と考えた陪審員もいれば,無罪と考えた陪審員もおりました」。

法廷の中にはざわめきがわき起こりました。評決不能陪審です! 次はどうなるのでしょうか。それは裁判官が後ほど決めます。しかし傍聴人はどうでしょうか。さしあたって各々が被告について自分で判断しなければなりません。

そしてチョコレート氏のほうはどうなのでしょうか。どう感じたのでしょうか。「満足しています。まあ,こんなところでしょう。私はよく色々なことを言われますが,自分はそれほど悪くもないと思っています。かといって私は完全でもありません」。チョコレート氏はしばらく考えていましたが明るい表情で言いました,「汚染されていない母乳以外に,完全な食物が果たしてあるでしょうか」。

エホバの民が嘆いていた時,彼らは,「肥えたものを食べ,甘いものを飲み」,嘆かないで喜ぶように言われました。(ネヘミヤ 8:10)『神の王国は食べることや飲むことではない』ということ,また節度を保てば「人が感謝してあずかるために神が創造された食物」は食べても構わない,ということを覚えておくとよいでしょう。―ローマ 14:17。テモテ第一 4:3,4

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私は,チョコレートでくるんだミツバチやイナゴとして供されることもあります

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ある人の場合,チョコレートはアレルギー反応を引き起こすこともあります

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キャロブの菓子は板チョコよりも虫歯を作る可能性が5倍も高い

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ご用心。40㌘ほどの板チョコ1枚には220カロリーの熱量があるのです

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ヒラリーがエベレストを征服した時,また宇宙飛行士が宇宙飛行をした時,チョコレートも同行した

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