世界展望
ガン治療の最新情報
ガンが制圧される日は思いの外早く到来するだろうか。サウス・アフリカン・ダイジェスト誌によると,南アフリカの科学者の一チームは「悪性腫瘍にじかに抗ガン剤を運ぶ」よう設計された抗体を作り出した。どのように運ばせるのだろうか。それは,特定のガンを突き止めるまで体中を巡るようこれら人工の抗体をプログラムすることによる。抗体はいったんえじきを見つけると,運んでいる致命的な薬を“どっさり”降ろすことによって腫瘍を撲滅する。その抗体は,“訓練された警察犬”のように,見つけた腫瘍のところにとどまることなく探索を続け,診断されずに残っているガンをも見つけ出し,救命薬をもってその中に入り込む。
救命反射
おぼれて時間がたっても命を取り留めることは可能だろうか。「哺乳動物潜水反射」と呼ばれる救命反射のおかげで可能である,とニューヨーク・デイリー・ニューズ紙は報じている。ミシガン大学の研究者マーチン・ネミロフ博士は,アザラシが水中に長時間とどまっていても死なないのと同じ「仕組み」が人間にもあることを発見した。以前には,4分間以上酸素の供給が途絶えると脳の機能は停止すると考えられていた。しかし,人が摂氏21度以下の水の中に沈んでいる場合,その反射が働き,脳以外の体各部への血液の流れは遅くなる。最近3歳の少女がおぼれて40分たっていたのに命を取り留めたのもそれで説明がつく。犠牲者を水から引き上げてすぐ蘇生術を施すなら,脳と体はよみがえる場合がある。例の反射は大人よりも子供の場合のほうがよく働くと言われている。
メキシコの犬は板ばさみ
メキシコ市の問題は,交通,スモッグ,過密だけではない。公衆衛生管理局の職員アンヘリーニ・デ・ラ・ガルサ博士の話によると,メキシコ市には犬が100万匹余りおり,その数は年に20%の割で増加している。そのほかに20万匹の野良犬が市街をうろついており,狂犬病などの病気に感染しているとみなされている。数を減らす努力の一環として毎年1万2,000匹が同市から排除されている。ところが,犬の捕獲に当たる人たちは,犬の処分に反対する人々の攻撃の的になることが多い。ばとうされたり,石や棒,はては銃で攻撃されたりしている。
「正常な反応」?
連邦捜査局の報告によると,米国では1985年中に「強姦」が4%増加した。そうした婦女暴行事件は,報告された数ではニューヨーク市が3,880件で最も多く,ロサンゼルスの2,318件がこれに次ぐ。当局はその原因として多くの要素を指摘しているが,一部の専門家は,「身繕い,動作,思わせぶりな言葉などによる誘惑的な振る舞いによって自ら暴行を招く女性もいる」と主張している。(グローブ・アンド・メール紙,トロント,カナダ)16歳の少女に暴行して告発されたある男は,ウィスコンシン州の裁判所で執行猶予の判決を受けた。なぜだろうか。その暴行事件は思わせぶりな服装に対する「正常な反応」として起きたというのが判事の結論であった。
医療過誤電話緊急相談サービス
医師の間で医療過誤訴訟に対する恐れが高まっているのに伴って,米国では,医師が「自分の患者になりそうな人でかつて医療過誤訴訟を起こしたことがある人」を判別するのを助ける新しいサービス業ができている。チェンジング・タイムズ紙の報道によると,「医師への警報」として知られる電話緊急相談サービスがあり,年間基本料金150㌦(約2万7,000円)と,一人を指名するごとに追加料金10㌦(約1,800円)で,患者となる見込みのある人を選別してくれるという。しかし,医師のためのこの備えに対応して,医療過誤訴訟に関係したことのある医師かどうかを知りたいと思う患者を援助する電話緊急相談サービスも設けられている。その料金は5㌦(約900円)である。どちらのサービスも特定の訴訟の結果は明かさない。
利口な赤ちゃん
赤ちゃんには知能指数があるだろうか。幾つかの自主研究の結果,赤子に知能指数のあることが明らかになった。デトロイト・ニューズ紙の伝えるところによると,研究者たちは,生後6か月ほどのえい児の注意持続時間を調べることにより,その知能指数を測定できると述べている。それらの数値は,その子たちが四,五歳になった時に行なわれた標準的な知能テストの数値とほぼ等しいということである。ニューヨーク大学の研究者マーク・ボーンステインは,親から絶えず学習能力を刺激されるえい児は,それほど頻繁に刺激されないえい児よりも知能テストで高い点数を取る,と評している。
十代の中絶
米国では「未婚の十代の妊娠する率がどの先進国におけるよりも高い」と,「メディカル・アスペクツ・オブ・ヒューマン・セクシャリティー」誌の一記事は述べている。それらの少女のおよそ3分の2は出産する。残りの3分の1は中絶を行なう。十代の少女に施された中絶手術45万件のうち,およそ1万5,000件は15歳未満の少女が関係していた。これら年若い少女たちの多くは一種の避妊として中絶を繰り返している,とその記事は述べている。統計の示すところによると,米国で行なわれる中絶手術総件数の28%は十代に対するものである。
本のほうがいい!
13歳から16歳までの少年少女1,050人を対象に,ドイツのドルトムント大学が行なった調査結果を見ると,優秀な生徒はコンピューターやテレビの前であまり時間を費やさない,ということが分かる。なぜそうしないのだろうか。それは彼らが「書かれた文字を通して西洋の文化に接することのほうを」好み,現代の科学技術やコンピューターに対しては比較的に冷たく,懐疑的な見方をしていることが多いからである。それとは対照的に,ドイツの新聞「フランクフルター・アルゲマイネ」の伝えるところによると,「コンピューター中毒者」は1日に8時間もテレビ画面の前で費やす。その時間のうち3時間ないし4時間はコンピューターに,残りの時間はテレビかビデオを見ることに費やされる。
増加する校内暴力
英国の教師4,000人を対象に行なわれた調査で,車のタイヤを切る,フロントガラスを割る,放火する,ナイフで刺す,ピストルで撃つなど,あらゆる事例が挙げられ,「校内暴力」の増加していることが明らかになった。学校当局は,生徒同士が刃物で互いに相手を刺したり,バルコニーから相手を投げ落としたり,板ガラスのはまっている窓を突き破って投げ落としたりもすると報告している。同調査によると,教師4人に一人は脅されたことがあり,10人に一人は暴力の対象としてねらわれたことがあり,25人に一人は暴行を受けた。暴力は男性に対しても女性に対しても振るわれ,女教師の中には性的な嫌がらせをされたことを報告した人も数人いた。学校内暴力は「極めて深刻な問題となっており,おおっぴらな暴力団抗争同然のようなことが行なわれる地区もあるほどだ」と,ロンドン・タイムズ紙は伝えている。
問題を抱える翻訳者
種々の文書(文学的修飾のない技術的内容のもの)を幾つもの言語に翻訳するコンピューターの性能は日ごとに向上している。ゼロックス社の翻訳部門の主任ペテル・デ・マウロは,今では「毎年5万ページの英文が,ボタンを一つ押すだけで,スペイン語,フランス語,イタリア語,ドイツ語,およびポルトガル語に翻訳」されていると言う。ユーロトラと呼ばれるそのシステム一つの価格は3,000万㌦(約54億円)である。しかし,「その知的な機械も,めったに使われない言葉や,二つの意味のある言葉についてはなお困難を抱えている」と,メキシコの新聞「エル・ウニベルサル」は伝えている。例えば,“anti-fire security”(耐火安全保証)というような用語は安全保証に火をつけると誤訳されるかもしれない。
海水面の上昇
21世紀が終わるまでに世界中の海岸付近にある市町村は現実の脅威に直面するかもしれない,と英国の雑誌「ネイチャー」に最近掲載された記事の中で二人の地質学者は主張している。彼らが発見したところによると,燃料の燃焼が増加して大気中に放出された二酸化炭素が海水面を世界的に著しく高めている。この二酸化炭素が地熱の逃げるのを妨げる結果,“温室”状態,つまり気候の温暖化が生じ,中緯度にある氷河の溶解はもとより,熱による海の膨脹をも引き起こすと考えられている。海水面が世界的に年々上昇するのを人間が介入して幾分遅らせてはきたが,「海水面の上昇も,『死と税金』と共に,人類の避け難い運命となっている」と,その地質学者たちは述べている。
依然として繁盛している商売
昨年,南アフリカでは6,000件余の商店の倒産があった。1日平均16件である。それゆえ,多くの商店にとって1985年は苦しい年だったのだが,ある種の商売は引き続き繁盛している。それはアフリカ医術(muti)にかかわる業種である。ヨハネスブルグにあるその種の店の所有者ナイドゥー博士は,「当店は一種のスーパーマーケットのようなもので,なんらかの治療薬を購入するためにあらゆる人種のあらゆる年齢の人々がやって来る」と語った。顧客は媚薬,家庭内の問題を解決する薬,悪霊を追い出したり,将来を予言したりする物などが見つかると思っている。同博士の店には動物の皮や骨,ヒヒの器官(これが邪悪な霊に対するお守りになると信じている人は少なくない),薬草などが置いてある。同博士は店の品を悪霊から守るために,ムペポという名で知られている薬草を4時間ごとに燃やしている。
英語の人は?
ロンドンに住む人々は,学校で話される一般的な言語の中で今やベンガル語が第二位を占め,1万2,000人もの若者が話していることを知ってショックを受けている。ある学校では45の異なった言語が使われており,市全体では161の異なった言語を児童生徒が使っている。しかし,英語は大多数の人々の共通語であり,家庭においてもそうである。
米国において1980年代に最も急速な伸びを見せたのは日本語で,大学で日本語を学ぶ人の数は40%余り増加した。同様の関心は大学以前の段階でも見られる。ニューヨーク市にある日本協会の報告によると,日本語を習う人の数は5年前に入学した人の数に比べると3倍になったという。この日本語熱の原因はどこにあるのだろうか。日本語に対する国民的な関心の主な理由は,「経済・技術面における日米関係の発展」にあるようである。