あらゆる言語や宗教の人々に証言する
1 1世紀のクリスチャンは他の言語や別の宗教の人々に熱心に証言しました。その結果,「100年までには,地中海沿岸のすべての属州にクリスチャンの共同体があったと思われる」と言われています。―「中世の歴史」。
2 ここ日本には,外国語を話す人々が数多くいます。仕事や他の目的で来ているため,今ではかなりの規模の外国人が住んでいる市や町もあります。キリスト教世界から来た人々,ヒンズー教徒,またユダヤ教徒やイスラム教徒をはじめ,様々な宗教を信奉する大勢の人々が日本に住んでいます。こうした言語や宗教面での多様性のため,そのような人々に会った時,そのすべての人と話して証言する仕方を知るのは大変な課題となります。事実上,地元に宣教者の区域があると言えるかもしれません。どうすればあらゆる言語や宗教の人に「宣べ伝え……徹底的に証しするように」というイエスの命令に従えるでしょうか。―使徒 10:42。
別の言語の人々に証言する
3 日本支部の区域にある外国語および手話会衆では,新しい伝道者の大きな増加が見られています。四つの外国語と日本の手話言語で,合計72の会衆が設立されており,ほかに15の群れが日本語会衆の世話を受けています。しかし,外国語の会衆がまだ区域で業を行なっていない所では,今後さらに多くを成し遂げることができます。
4 言語の障壁を乗り越える: 確かに,母国語で教えてもらえば,もっと速く,もっと深く理解できる人は少なくありません。「良いたよりのため」,また「それを他の人々と分かち合う者となるため」に,多くの兄弟姉妹が別の言語を学んでいます。(コリ一 9:23)何年もの間,英語を話すある姉妹の雑誌経路となっていた中国語を話す女性は,聖書研究を勧められても応じませんでしたが,中国語を勉強していた別の姉妹から中国語の文書を勧められたところ,それを快く求め,研究にも快く応じました。それほどの違いをもたらしたのは,2番目の姉妹がその女性の国語で二言三言話そうと努力したためでした。―使徒 22:2と比較してください。
5 「ものみの塔」誌,1992年11月1日号が,「外国語を学ぶなら,若い人々の知力が発達するだけでなく,エホバの組織にとって彼らは一層有用な者となります」と述べたのももっともです。ベテル家族の成員で,新たな外国語の学習と取り組むようになった人は少なくありません。こうして兄弟たちは,率先して仕える人の必要な会衆でとりわけ助けになってきました。もし別の言語をよく知っておられるなら,あるいは進んで学びたいと思われるなら,あなたも外国語の会衆や群れを援助できるかもしれません。―マタ 9:37,38。
6 真理に入る以前にベトナム語を学んだ,フロリダに住むある兄弟は今,ベトナム語を話す人々に良いたよりを伝える大きな喜びを味わっています。その言語の知識を活用して証言する面で一層自分を役立たせることができるようにするため,この兄弟は家族と共に米国を横断して,ベトナム語の面で必要の大きい場所に移りました。こうして移動して以来,ベトナムから来た多くの人々と聖書を研究する面でかなりの成果を収めています。
7 カリフォルニアに住む開拓者の一姉妹は,自分の区域で数人の耳の聞こえない人に会いました。姉妹はそれらの人に真理を教えるため,手話を教えてくれる人を見つけられるようエホバの助けを祈り求めました。ある日,近所のスーパーマーケットで買い物をしていたところ,耳の聞こえない一人の若い女性が,ある製品を見つけるのを助けてほしいと書いた紙片を持って近寄って来ました。その製品を見つけるのを手伝った後,開拓者はその地方の耳の聞こえない人たちを助けるために手話を学びたいと思っていることを筆談で伝えました。すると,耳の聞こえない女性も筆談で,「どうして耳の聞こえない人たちを助けたいと思っているのですか」と尋ねました。姉妹は筆談でこう答えました。「わたしはエホバの証人で,聖書を理解するよう耳の聞こえない人たちを助けたいと思っています。もし手話を教えてくださるなら,喜んで聖書を教えて差し上げたいと思います」。そして,「その女性が,『よろしいですよ』と言ってくれた時のわたしの喜びは分かっていただけないと思います」と語りました。その姉妹はこの女性の家を6週間にわたって毎晩訪ねました。こうして手話を学び,耳の聞こえない女性のほうは真理を学び,何とバプテスマを受けたのです。それは30年前の話ですが,この開拓者は今でも耳の聞こえない人々に証言しており,今も手話会衆と交わっています。
8 もしあなたが別の言語を流暢に話すことができ,その言語の面で必要の大きな所に移動したいと願っておられ,またそうすることができるなら,そのことを会衆の長老たちと話し合ってみてはどうでしょうか。そのように移動する資格があると長老たちが考えるなら,あなたの奉仕できる地域が近くにあるかどうか巡回監督に尋ねてみてください。もしなければ,協会に手紙を書くことができます。ただし,あなたの言語能力に関する所見を記した添え状も同封してください。―「ものみの塔」誌,1988年8月15日号,21-23ページをご覧ください。
9 備えられた道具を使う: 協会の文書は様々な外国語でも入手できます。パンフレットを携帯するのは良いことと思われます。あるいは,同一の区域で外国語の会衆が活動していなければ,あなたの区域で話されている諸言語の「求め」のブロシュアーも使えます。日本語を話せないことが明らかであれば,何語が読めるかを尋ねてください。そうすれば,どんな文書を勧めるかに関して選択の範囲が広がるかもしれません。例えば,ウルドゥー語を話す人は,アラビア語も読めるかもしれません。
10 証言活動の際に会う人の言語をたとえ自分は話せなくても,そのような人に良いたよりを伝えられるかもしれません。どのようにするのでしょうか。「すべての国の人々のための良いたより」という小冊子を使うのです。その小冊子には簡潔な音信が59の言語で印刷されています。その小冊子の2ページに説明されているように,家の人の話す言語を確かめてから,小冊子の該当するページに印刷されている情報を読んでもらってください。読み終えたなら,相手の話す言語の出版物を見せてください。そのような出版物を持っていないなら,日本語の出版物を見せてください。そして,相手の話す言語の出版物を携えて再び訪問したいということを伝えてください。その人の名前を尋ね,住所と共に書き留めてください。その情報は多分,「外国語を話す人々の訪問依頼用紙」(S-70a)を用いて,該当する言語の最寄りの会衆あるいは群れに送ることができるでしょう。そのような情報をふさわしい兄弟たちに転送する方法に関する指示を詳しく知りたい方は,「王国宣教」,1993年10月号,7ページをご覧ください。もしその言語を話す人で,訪問してくれる人がいないなら,あなたがその難しい仕事を引き受けて,もしかしたら日本語の出版物を見ながら相手の人と研究を行なえるかもしれません。―コリ一 9:19-23。
キリスト教以外の宗教の人に証言する
11 人々の宗教的な背景についてある程度知っていると,神の王国について効果的に証言できるものです。世界の主要な宗教については,「神を探求する人類の歩み」の本から洞察できます。そのようにして人々の信条を十分理解すれば,真理の知識を得るよう人々を助けることができます。
12 この折り込みの最後のページの囲み欄には,キリスト教以外の宗教を奉じている人々に証言する際に使えるよう,エホバの組織が用意した最新の出版物が挙げられています。それらの出版物を読めば,良いたよりを携えてどのように人々に接するべきかが分かります。忘れてならない有用な道具は「論じる」の本です。その本の21-24ページには,仏教徒,ヒンズー教徒,ユダヤ人,およびイスラム教徒への対応の仕方に関する実際的な提案が載せられています。
13 述べることに気をつける: 信仰が同じなら,個々の人の信条も当然同じであると判断して,ある宗教を奉じる人々について類型的な見方をしないよう注意すべきです。そうではなく,話し合っている相手の人が物事をどのように考えているかを理解するように努めてください。(使徒 10:24-35)イスラム教徒のサリムンは,コーランが神の言葉であると信じるように育てられました。しかし,この上なく憐れみ深い神が人間を地獄の火の責め苦に遭わせるというイスラム教の教えをどうしてもそのまま受け入れることができませんでした。ある日,エホバの証人に招かれて集会に出席しました。直ちに真理を悟ったサリムンは,今ではクリスチャン会衆の幸福な長老として仕えています。
14 キリスト教以外の信仰を抱く人々に証言する際,わたしたちの取り組み方のために,良いたよりについて話し合う機会を失ってしまうことがないよう注意しなければなりません。(使徒 24:16)宗教によっては,改宗させようとするどんな試みに対しても,その信奉者たちが非常に神経質になる場合があります。ですから,共通の立場を築くための論点を目ざとく見つけて,神のみ言葉の真理全体に引き付けることができるようにしてください。思いやりのある取り組み方をして真理を明確に提示すると,羊のような人々はこたえ応じるものです。
15 また,わたしたちの音信から不必要に人を遠ざけないようにするために,言葉の選択も重要です。例えば,自分がクリスチャンであることをすぐ明らかにすれば,聞いている人は必然的にあなたのことをキリスト教世界の教会と結びつけてしまうかもしれず,そうなると障壁が築かれる可能性があります。また,聖書を『経典』もしくは『聖典』と呼ぶほうが都合がよい場合もあります。―マタ 21:42。テモ二 3:15。
16 もし,キリスト教以外の宗教の人に出会って,その場で証言する用意ができていないと思ったなら,その機会にただ知り合うだけにし,パンフレットを渡して,氏名を交換してください。二,三日後に,証言の準備を十分行なってから再び訪問してください。―テモ一 4:16。テモ二 3:17。
17 仏教徒に証言する: (「神を探求する人類の歩み」の6章をご覧ください。)仏教徒の信条はその帰依者によってそれぞれ大いに異なります。仏教は人格的存在としての創造者の実在を唱道するというより,西暦前6世紀のインドの男性,ガウタマ仏陀を宗教上の理想的人物とみなしています。初めて一人の病人と一人の老人と一人の死者を見たガウタマは,人生の意味について思い悩みました。そして,『人間はただ苦しんで,年老いて,死ぬために生まれるのだろうか』と考えました。もちろんわたしたちは,答えを知りたいと思う誠実な仏教徒に対しては,そうした疑問に答えることができます。
18 仏教徒に話す際,教典の中の最大の教典である聖書の建設的な音信と明快な真理から,はずれないようにしてください。他の大抵の人と同様,仏教徒は平和や徳行や家族生活に深い関心を抱いており,こうした話題であれば喜んで話し合う場合が少なくありません。そういう話し合いができれば,人類の諸問題に対する真の解決策である王国を強調することができるでしょう。
19 ある都市には,仏教その他の東洋哲学に従っている中国人が大勢住んでいます。日本の大学に通う中国人の学生も少なくありません。ある姉妹は,食料品店で出会った中国人の男性に中国語のパンフレットを渡して,聖書研究を勧めました。すると,その人は,「聖書ですか。わたしはこれまでの生涯中ずっとそれを探し求めてきたのです」と言いました。その男性はその週のうちに研究を始め,全部の集会に出席するようになりました。
20 ある開拓者の姉妹は,これまで10年余り,中国人の学生に真理を教えてきました。姉妹はそれらの学生の住む,部屋が八つあるアパートの建物を訪れて奉仕した時,どの部屋でも研究を始められるようエホバの助けを祈り求めました。2週間もたたないうちに,姉妹はそのアパートの各部屋で少なくとも一人の学生と研究を行なっていました。彼女にとって効果的な近づき方は,学生には共通の関心事がある,つまり学生は皆,平和と幸福を願っていることが分かった,と伝えることです。それから,相手の関心事も同じかどうか尋ねると,大抵はそうだと答えます。それで姉妹は,中国人のために用意された,「永続する平和と幸福 ― どうすれば見いだせますか」(英語; 中国語)というブロシュアーに注意を引きます。一人の学生はたった5回研究しただけで,自分が長いあいだ探し求めていた真理を今や見いだしたと語りました。
21 ヒンズー教徒に証言する: (「神を探求する人類の歩み」の5章をご覧ください。)ヒンズー教には明確な教義がなく,その哲学体系は非常に複雑です。ヒンズー教には主神ブラーフマナ(創造者ブラフマー,維持者ビシュヌ,および破壊者シバ)に関する三位一体論的な概念があります。不滅の魂に対する信仰は輪廻の教えに不可欠で,その教えは,人生に対する宿命論的な見方をヒンズー教徒に抱かせる傾向があります。(「論じる」の本の427-431ページと「ものみの塔」誌,1997年5月15日号,3-8ページをご覧ください。)ヒンズー教は寛容を説く宗教で,宗教はすべて同じ真理に到達するとされています。
22 ヒンズー教徒に証言する際の一つの取り組み方は,人間が完全な状態で地上で永遠に生きるという,聖書に基づく希望を説明すると共に,全人類が直面している重要な問題に対する聖書の答えを述べることです。
23 ユダヤ人に証言する: (「神を探求する人類の歩み」の9章をご覧ください。)キリスト教ではない他の宗教の場合とは異なり,ユダヤ教は神話にではなく,歴史に根ざした宗教です。そして,まことの神を探求する人類の歩みにおける肝要な要素が,霊感を受けて記されたヘブライ語聖書を通して示されています。ところが,神の言葉に反して,現代のユダヤ教の基本的な教えの一つは,人間の魂は不滅であるという信条です。わたしたちが共にアブラハムの神を崇拝していることを確認し,今日の世界で同じ難題に直面していることを認めることによって,共通の立場を築くことができます。
24 神に対する信仰を持たないユダヤ人に出会ったなら,常にそのように考えてきたのかどうかを尋ねると,どうすればその人に最もよく訴えられるかを見極める助けになります。例えば,神がなぜ苦しみを許しておられるのかに関して,満足のゆく説明を一度も聞いたことがないのかもしれません。誠実なユダヤ人であれば,キリスト教世界で行なわれているイエスに関する誤った説明ではなく,ギリシャ語聖書のユダヤ人の筆者たちがイエスについてしている説明によって,メシアとしてのイエスの実体を再検討するよう励ますことができます。
25 ムスリムに証言する: (「神を探求する人類の歩み」の12章をご覧ください。)ムスリム(モスレム)とはイスラム教(マホメット教)の信奉者という意味で,その教えには,彼らの唯一の神アッラー,およびその最後の最も重要な預言者ムハンマド(マホメット; 西暦570-632年)に対する信仰が含まれています。ムスリムは神に子があったとは考えていないため,イエス・キリストは神の下位の預言者であり,それ以上の者とは認めていません。1,400年足らず前に書かれたコーランは,ヘブライ語聖書とギリシャ語聖書の両方に言及しています。イスラム教とカトリックとの間には著しい類似点があります。どちらも,人間の魂の不滅,一時的責め苦の状態,および火の燃える地獄の存在について教えています。
26 唯一まことの神がおられ,聖書はその方の霊感を受けて記されたというわたしたちの信条は,明らかに共通の立場となります。コーランを注意深く読んでいる人は,トーラーや詩編や福音書への言及を神の言葉とみなしており,それらを神の言葉として認め,またそれに従わなければならないと解釈しています。ですから,それらを研究することを申し出ることもできます。
27 自分はムスリムであると言う人には,次のような話し方が効果的かもしれません: 「私は多くのムスリムの方とお話ししたことはありませんが,あなたの宗教の幾つかの教えについてこの手引きで少し読みました。[『論じる』の本の23ページを開く。] この説明によりますと,皆さんは,イエスは預言者の一人でしたが,ムハンマドは最も重要な最後の預言者であったと信じておられますね。では,モーセも真の預言者であったと信じておられますか。[答えてもらう。] モーセが神ご自身の固有のみ名について神から何を学んだかを見ていただけるでしょうか」。それから,出エジプト記 6章2,3節を読みます。再訪問の際に,「神への真の服従が求められる時」という小冊子(英語; ペルシャ語)の13ページの「唯一の神,唯一の宗教」という副見出しのもとにある資料を検討できるかもしれません。
28 今日,「あなた方は見いだせるうちにエホバを尋ね求めよ。近くにおられるうちに呼びかけよ」というイザヤ 55章6節の言葉に従って行動している人は少なくありません。この言葉は,言語や宗教の背景にかかわりなく,心の正直な人々すべてに当てはまります。行って,「すべての国の人々を弟子と(する)」よう努力するとき,エホバがわたしたちの努力を祝福してくださることを確信できます。―マタ 28:19。
[6ページの囲み記事]
クリスチャンではない人々のために用意された文書
仏教徒
「見よ! わたしはすべてのものを新しくする」* (ブロシュアー)
中国人
「永続する平和と幸福 ― どうすれば見いだせますか」(ブロシュアー)(英語; 中国語)
ヒンズー教徒
「クルクシェトラからハルマゲドンまで ― そして,あなたの生存」(小冊子)(英語)
「わたしたちの問題 ― それを解決するよう助けてくれるのはだれか」(ブロシュアー)(英語)
「神の真理の道は解放に通じる」(小冊子)(英語)
「死に対する勝利 ― それはあなたにも可能ですか」(小冊子)(英語)
「愛と真理をもって神を崇拝すべきなのはなぜですか」(ブロシュアー)(英語)
ユダヤ人
「平和な新しい世 ― いつの日か到来しますか」(パンフレット,第17号)(英語)
「エホバの証人 ― どのようなことを信じている人々ですか」(パンフレット,第18号)(英語)
「戦争のない世界がいつの日か実現しますか」* (ブロシュアー)
ムスリム
「楽園への道を見いだす方法」(パンフレット)(英語)
「神への真の服従が求められる時」(小冊子)(英語; ペルシャ語)
* 日本語で発行されている品目