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  • 負債を抱える ― 現代の生き方
    目ざめよ! 1977 | 7月22日
    • 負債を抱える ― 現代の生き方

      負債を抱えたことがありますか。お金を借りたことや,クレジットで品物を買って後日その代金を支払う約束をしたことがありますか。

      今日,そのような経験を持つ人は例外的な存在ではありません。世界史上,今ほど多くの人々が負債を抱え込んだことはかつてありません。

      同じような事は会社や都市そして国家全体にも起きています。そのすべては,これまでにないほど多額の負債を抱え込んでいます。その結果,現時点で世界中のあらゆる種類の負債を合計すると,その額は幾千億どころか幾百兆円にも上ります。

      異なった生き方

      こうして,負債を抱えることは一般に認められている,“標準的”な生き方とみなされるようになりました。そのような生き方に従う人の数は増加の一途をたどっています。しかし,負債に対する現代のこのような見解は,これまでの世代の持っていた見解と著しい対照をなしています。

      昔はほとんどの家庭で,借金をするのは恥と言ってもよいこと,何とかして避けるべきこと,と考えられていました。人々は普通,負債を抱えるよりは,むしろ多くのものをなしで済ませてしまうのが常でした。

      もちろん昔は今ほど生活様式も複雑ではありませんでした。その上,世界の大半の人々の間に,農耕を主とする生活様式が行き渡っていました。

      例えば,その当時の家屋は現在よりもずっと簡素でした。森林の豊富な国は少なくなかったので,木造家屋は比較的安く建てることができました。泥や粘土にわらを混ぜ,それを使って簡単な家を建てる国もありました。熱帯の国々では,やしの葉や,わらが建築材料として用いられました。そのような家を建てるのに,それほどの費用はかかりませんでした。

      交通の手段としては,大抵の場合,徒歩で事足りました。もっと速い交通の便が必要なら,馬やロバ,そしてある場合にはラクダが利用されました。重い荷物は荷車に載せて,牛やラバや馬に引かせて運びました。そのようなものを購入するために多額の借金をしなければならない家族はほとんどありませんでした。

      著しい変化

      今日,工業化された社会ではもちろん,農業国の都市においてさえ,そのすべては著しく変化しています。昔の簡素で費用のかからない生き方を追い求めることは,今やほとんど不可能です。

      そのような場所で,家屋はずっと凝った造りになり,値段も高くなっています。高価な自動車や列車や飛行機が交通機関として用いられています。トラックや貨車は膨大な量の荷物を輸送しますが,費用もかさみます。企業の用いる事務所や機械類およびその他の設備にしても同じことが言えます。

      諸国家は,近代戦に必要とされる極めて複雑な兵器で武装します。最新型の潜水艦の中には何と一隻約10億㌦(約3,000億円)するものもあるのです。また政府は,国民のために,警察,消防,清掃,下水,道路保全,水道,福祉および社会保障の給付,およびその他多くの業務を行なっています。現代の社会において,そのすべてを行なってゆくためには膨大な資金が必要とされます。

      個人にしろ,企業にしろ,都市や国家にしろ,こうしたものすべてのために前もって貯蓄をすることはほとんどできません。そのため借金をして,負債を抱えることになるのです。

      別の理由

      個人的な負債について言えば,人は失業やその他の経済的な破たんの結果,やむを得ず借金をする場合があります。また,家や自動車など大きなものを購入する際に,ほとんどの人が現金で支払えないこともよく分かります。

      しかし,多くの人々は必需品でないものを購入するために負債を抱えるようになっており,そのような人の数は増加の一途をたどっています。例えば,数十年ほど前までは,テレビや高価な無線装置,様々な電気器具などの製品は全く存在していませんでした。しかし,今やこうした物品が必需品であるかのように考えられています。

      こうした物品をすぐに入手するため,増々大勢の人々は進んで負債を抱え込み,それを後日支払おうと考えています。現金で購入するために,まず貯金をするような人は珍しい存在となっています。

      しかし,世の中に見られる,気ままに消費し,重い借金を抱え込むという状態はこのまま続くのでしょうか。借金の上に借金を重ねていっても,悲惨な結果を見ることになる日が来ないなどと言えるでしょうか。世界の抱える負債の重荷は,すでに危険な段階にまで達しているのでしょうか。

  • 負債は危険な段階に達しつつあるか
    目ざめよ! 1977 | 7月22日
    • 負債は危険な段階に達しつつあるか

      人が多額の金を借りて,それを返済できなくなるとどうなりますか。その人は破産してしまいます。その人の財産は金を貸してくれた人,つまり債権者によって没収されてしまうかもしれません。

      一企業が負債を返せなくなり,破産した場合,それは大抵存在しなくなります。債権者はその企業の資産を売却するかもしれません。こうして,会社の従業員は職を失うことになるのです。

      同様の事態が国全体に起きる場合もあります。1930年代の世界大恐慌の際には,どの国でも生活水準が著しく低下しました。失業者が急増したため,幾千万もの人々は貧困生活を余儀なくされました。

      そのような状態が再び国々に生じ得るでしょうか。負債の重荷はそのような危険な段階にまで達していますか。

      国債

      負債の中でも特に危険で,最も多くの人々に影響を及ぼすのは,政府の抱える負債です。政府が財政破綻を来たすなら,国民の多くは痛手を受けます。

      現在,世界の諸政府は,負債の面でどのような状態にあるでしょうか。非常に悪い状態に陥っているというのがその答えです。多くの政府は負債の泥沼にはまり込んでいます。その上,それらの負債はすでに膨大な額に上っているにもかかわらず,急速に増大しているのです。

      そのような負債には,(1)他国との取引によって生じる負債,および(2)国内で生じる負債の二通りがあります。

      政府はどのようにして別の国に対して債務を負うようになるのですか。それは個人が借金せざるを得なくなる場合とほとんど同じで,自分の収入よりも多くを支出するために負債を抱えることになるのです。

      例えば,フランスは自国で必要とされる石油の大半を輸入しなければなりません。石油は高くつきます。ですから,フランスは膨大な額の金を石油輸出国に支払わねばなりません。その上フランスは,いろいろな国から他の製品をも買い入れています。近年になって,フランスの輸入額は,輸出額を上回るようになりました。その結果,赤字,つまりそれら他の国々に対する負債が生じました。その負債を返済するために,フランスは他国から,あるいは様々な銀行から金を借りなければなりませんでした。

      それと同様の状態にある国は少なくありません。そうした国々の輸入額は輸出額を上回っています。それらの国々の国際的債務が増大しているのは,フランスの場合と同様,石油の購入が一因となっています。それらの国々では石油が十分な量産出されないか,全く産出されないため,石油を輸入しなければなりません。ですから,比較的少数の産油国だけが裕福になり,他の大半の国々は負債の泥沼にますます深くはまり込んでしまいます。

      もちろん,外債の蓄積には,石油以外の他の要素も関係しています。国々は機械類・製品・武器・および他の様々な産物をも輸入しています。そして輸出が十分でないと,負債を抱えることになるのです。

      驚くべき額の負債

      1976年の末に,ニューヨーク・タイムズ紙は,「問題となっている国際的債務の膨大な蓄積」と題する見出しの記事を掲載しました。その記事は次のように述べていました。

      「最近の金融市場で最も憂慮されているのは,国際的債務の膨大な蓄積である。その大半は民間の商業銀行に対する負債になっている。多額の負債を抱えた外国の借り手がその債務を果たせなくなるかもしれないという危険は隠すべくもない」。

      外債を抱える国々の“リスト”でまず第一にその名が挙がるのは英国です。同国には,約450億㌦(約13兆5,000億円)の国際的債務があります。これは限られた天然資源しか持たない国にとって途方もない額です。ブラジルとメキシコには各々200億㌦(約6兆円)を超える外債があり,フィンランドとインドネシアはそれぞれ100億㌦(約3兆円)近くの負債を抱えています。ソ連および東欧のその同盟諸国には,合計して400億㌦(約12兆円)ほどの外債があります。

      フランスは約100億㌦(約3兆円)の外債を抱えており,その額は増大しています。

      パリの一新聞は,「フランス経済に赤信号」という見出しを掲げました。その刊行物は,1970年代初頭の三倍に相当する百万人以上の失業者数や二けたの上昇率を示すインフレ,および一年前の三倍に相当し,約10億㌦(約3,000億円)に上る,最近一か月間の貿易赤字などに言及しています。

      イタリアの債務状態はさらにひどく,その額は約200億㌦(約6兆円)に達しています。イタリア銀行の元頭取は,同国で次のように語りました。「イタリアの抱える赤字は,今や我が国の経済が吸収できないほどに増大している」。

      問題を抱える貧しい国々

      発展途上国の大半,中でも石油を輸入している国々は,多額の負債を抱え込んで四苦八苦しています。その外債の総額は今や1,700億㌦(約51兆円)に上っており,その額は急速に増大しています。それら発展途上国の負債はわずか数年前と比べても二倍になっています。

      ビジネス・ウイーク誌は,これらの国々の負債が,「いかなる正常な規準をもってしても,それらの国々の返済能力をはるかに上回る」額に達していることを述べています。その窮状について,経済顧問機関バクスターはこう伝えています。

      「それらの国々はすでに返済能力ぎりぎりまで債務を負っているが,今年,そしてこれからも毎年,新たに莫大な額の借入れをしなければならない。その金は一体どこから来るというのだろうか。それらの国々が債務を果たす見込みはほとんどないように思える」。

      その問題の程度はバクスターがさらに述べている,次の論評からも分かります。「それらの国々が現在借り入れている資金は,切に求められている資本の改善のためにではなく,差し当たり支払い日の来た負債を返済するために用いられている。このやり取りで主要な役割を果たしているのは欧州の銀行家で,貸付け金の返済期限を延期し続けている。しかし,いつの日か身動きの取れなくなる者が出て来る。しかもその時には手の施しようがなくなっていよう。そうしたことが起きるのも時間の問題である」。

      世界の金融体制は緊密に結び付いています。ですから,わずか数か国でも財政破綻をきたすなら,体制全体が破綻をきたすのではないかと恐れている経済学者もいます。

      改善される見込みはない

      1976年末に,辞職を間近に控えた米国のサイモン財務長官は,100か国余りの石油輸入国に対して,それらの国々が1977年度も膨大な赤字を出すことになろうと語りました。同長官の推定によると,その赤字額は,すでに存在している膨大な赤字に,さらに500億㌦(約15兆円)の赤字を上積みするものとなります。

      サイモン財務長官は,石油の価格が急激に上昇した1973年以来,事態が悪化の一途をたどってきたことを警告しています。1973年当時には,高くなった石油代の支払いに応じるだけの剰余金を持つ国々もありましたが,今では剰余金のある国はほんのわずかにすぎません。

      ニューヨーク・タイムズ紙は,世界の経済状態を要約して次のように述べています。「ヨーロッパの商業および金融の中心地では,世界経済の行方,増大する国債管理の問題に対処する能力,低成長,および失業者の増加などに関して暗雲がたれ込めている。英国およびイタリアの財政難が余りにも報道されすぎたために,工業国の少なくとも三分の一は何らかの重大な財政難を抱えているという事実から注意がそらされてしまっている。……発展途上にある貧しい国々はさらにひどい状態にあり,膨大な……負債を抱えて四苦八苦している」。

      こうした外債すべてに加えて,各国政府は内債をも抱えています。これは,政府の自国内での収入よりも支出の方が多いときに生じます。そして大抵の場合,これらの内債の額は外債の額をはるかにしのぎます。

      多くの国々が負債の泥沼にいよいよ深くはまり込んでいるため,次のような疑問が生じます。だれがそれらの国々を救済するのでしょうか。しばしば援助を求められるのはアメリカ合衆国です。では,同国の財政状態はどうなっていますか。

      [5ページのグラフ]

      (正式に組んだものについては出版物を参照)

      国際的債務

      外債の総額,公的および私的なものを含む

      単位: 10億ドル

      45

      40

      35

      30

      25

      20

      15

      10

      5

      ユーゴスラビア

      スペイン

      インドネシア

      フィンランド

      フランス

      イタリア

      メキシコ

      ブラジル

      東欧諸国a

      英国

      [脚注]

      a 東欧の共産主義諸国

  • 最も裕福な国はどれほど健全か
    目ざめよ! 1977 | 7月22日
    • 最も裕福な国はどれほど健全か

      生産される財貨やサービスの総額から判断すれば,米国は世界で最も裕福な国です。また,同国の生活水準は極めて高いものです。

      「現代重要演説集」という本の中で,一経済学者はこう論評しています。「米国経済のお陰で,確かに我々の生活水準は前例のないほど豊かな状態に達した。しかし,一世代のうちに,我々が自国の経済に人類史上最大の負債構造を抱え込ませたということもやはり事実なのである」。

      そうです,現在見られる高い生活水準の大半は,借金によって実現したものです。

      驚くべき負債額

      その結果,米国は驚くべき額の負債の重荷を抱えており,その負債額は毎年累積していきます。対外的に言えば同国の国際収支はしばしば赤字に陥り,対内的に言えば同国政府の負債は膨大な額に達しています。

      ディーン・ウッター社の副社長ロバート・スウィナートンは次のように語っています。「国民全体として,我々は借金しようとする激しい衝動に駆られている。それは最近号のバロンズ誌の論説欄の述べているとおりである。『文字通り国民全体が,官僚から一家の稼ぎ手に至るまで,借金をすることに対する渇望とも言える態度をあらわにしている。将来を先に使い果たしてしまうような傾向は比較的広く見られ,こうした行き過ぎが続いてゆけば必ず思い知らされる日が来るに違いない』」。

      米国内の負債総額は今や3兆㌦(約900兆円)を優に上回っています。これは同国が一年間に生産する財貨やサービスの総額の約二倍に相当します。

      この膨大な負債額に関して,US・ニューズ・アンド・ワールドリポート誌は,「それは手に負えなくなっているか」という質問を提起し,それに対して,「非常に多くの借り手にとって,山のような負債は支え切れないほど重いものになっている」と答えています。

      この莫大な負債総額のうち,連邦政府の負債は約6,500億㌦(約195兆円),企業の負債は約1兆5,000億㌦(約450兆円),個人の負債は約1兆㌦(約300兆円),そして地方自治体の負債は約2,300億㌦(約69兆円)になっています。

      連邦政府の負債

      連邦政府はここ数年間大きな赤字を出してきました。これは,もちろん,税金による収入よりもはるかに多額の支出をしたために生じたものです。

      過去二年間の赤字は驚くべき額に達しました。1975会計年度の赤字は436億㌦(約13兆円)で,第二次世界大戦以来最悪のものでした。1976会計年度の赤字は656億㌦(約20兆円)で米国史上最悪の赤字を記録しました。連邦政府の負債に対して支払われる利息だけでも,今や毎年400億㌦(約12兆円)に上っているのです。1939年当時,その額は10億㌦(約3,000億円)にすぎませんでした。

      しかし,経費を節約するのも容易なことではありません。政府“固有”の責務はいよいよ多くなっています。例えば,近代的な軍備を整えるための費用は年々高くなり,今では年間1,000億㌦(約30兆円)を優に上回っています。国家公務員に支払う年金の予算は十年前の六倍になっており,今後十年以内に今の二倍ないし三倍になると考えられています。公務員退職基金からは,払い込まれるよりも多くの資金が支出されており,社会保障費についても同じことが言えます。

      ウォール・ストリート・ジャーナル誌は,老齢者や退職者や身体障害者に対する社会保障制度関係の給付という政府の責務だけを取っても,将来2兆5,000億㌦(約750兆円)の赤字が見込まれると断言しています。同紙はこう述べています。「自由主義者たちが論じたがるとおり,国はこの負債を自ら抱えており,それは将来税金を引き上げることによって返済される。もちろん,これは全く愚にもつかない考えである。将来税金をそれほど引き上げるなら,課税基準が崩壊しかねない」。

      負債を調達する

      政府がある年に赤字を出した場合,経費を支払うために借金をしなければなりません。政府がそうするための一つの方法は,国債のような有価証券を,個人や銀行や企業に売ることです。

      しかし,政府は別の方法でも資金を調達します。政府は『何もないところから資金を作り出せる』のです。この点に関してニューヨーク・タイムズ紙は次のように論評しています。「連邦準備局という半独立機関の管理下にある政府の金融政策はどことなくベールに覆われ,しばしば議論の的になるが,その中で全く同意され,容認され,理解されている事柄が一つだけある。それは,一般にFedという略称で知られるこの機関が,保証となる預金なしに小切手を振り出して,何もないところから資金を作り出せるということである。連邦準備銀行は額面に制限されることなくそのような小切手を振り出せる」。なるほど,新たに公債発行限度を引き上げる際には必ず議会の承認を得なければなりませんが,ほとんどの場合,議会はそれを承認します。

      もちろん政府は,将来取り立てる税金によって,自らの発行した債券に表示されている金額を返済し,負債を解消するに足る収入を得たいと考えています。しかし,過去16年間に,米国がわずかながらも黒字を記録したのは後にも先にも一年だけで,残りの15年間は赤字を出しています。その上,最近では赤字額が大幅に増えています。

      インフレに拍車を掛ける

      国債がインフレの主要な原因の一つになっていると考える経済学者も少なくありません。それほど多くの資金が余分に国の経済に注ぎ込まれるなら,商品やサービスの価格をつり上げる結果になります。

      過去40年の間に米ドルがその購買力の75%を喪失したこともこうした過剰支出による結果にほかなりません。しかし,こうした事態は米ドルに限らず世界中の通貨にも見られます。

      アメリカ経済研究所は次のような見解を明らかにしました。「すべての通貨は徐々にその価値を失ってきている。どの通貨も,今や第二次世界大戦前の購買力の少なくとも四分の三を喪失している。その上,すべての通貨は,これから数年間,それが事実上無価値になってしまうまで,著しくその購買力を失ってゆくものと思われる」。

      同研究所は,こうした貨幣価値の低下の主要な責任は,「政府の赤字を埋め合わせるために作り出される購買手段がインフレを引き起こしている点」にあるとしています。

      前途にある「つらい経験」

      この報告はまた,悲観的な調子でこう述べています。「来たらんとする不況期間中につらい経験を通して教訓を学ぶまでは,健全な借り入れ手段が回復する見込みはほとんどないと我々は見ている」。

      同様に,バクスターもこう述べています。「継続的かつ膨大な赤字予算のもたらすインフレの影響は,米国経済の財政的基盤を揺るがしている」。

      一投資顧問会社の社長ギルバート・M・ハーズも次のように語っています。「負債を絶えず拡大し続けた結果,財政面の流動性[現金,およびすぐに換金できる資産]が次第に悪化して行った。こうした事態は最終的に国際的な金融恐慌を引き起こし,それに続いて世界的な不況が訪れるであろう」。

      政府は単に経費を節減し,収支の均衡を図ることができるでしょうか。そうすることはできますが,それでは失業率が高くなるだけです。米国の経済体制は,政府が国の経済に“作り出された”資金を送り込むのを今やめるなら,多くの人々が失業しかねないような仕組みになっているのです。そしてすでに失業者はあふれているのです。また,税金は今でも高いので,予算の均衡を図るために税金を引き上げるなら,手強い反対に遭うことでしょう。それは“租税一揆”とでも言うべきものを引き起こすかもしれません。

      ですから,世界で最も裕福な国にも,それなりの深刻な金融問題があるのです。米国自体が負債の波に洗われているのですから,負債を抱えておぼれかけている他の国々を助けるのに有利な立場にあるとはとても言えません。

      [8ページの図版]

      『すべての通貨は,第二次世界大戦前の購買力の四分の三を喪失している』

  • 他の面でも累積する負債
    目ざめよ! 1977 | 7月22日
    • 他の面でも累積する負債

      負債に関する政府の窮状は,他の諸機関にも反映されています。企業,地方自治体,そして個人も,それぞれ負債のゆえに深刻な苦境に直面しています。

      こうした負債から抜け出すことはいよいよ困難になっています。これまで数年間に及ぶ景気後退が,多くの人々に難しい問題を投げかけてきた主な理由はそこにあります。貸付金を返済できなくなったため,破産が相次ぎました。

      企業の財政難

      一例として,インダストリー・ウイーク誌はこう伝えています。「西ドイツの企業倒産は記録的な数に達した。……40万㌦(約1億2,000万円)を超える損害および負債を出して倒産した会社の数は一挙に30%も増加した」。

      1976年12月に,ウォール・ストリート・ジャーナル紙は日本の企業倒産の数が前月最高数に達したことに触れ,さらにこう付け加えています。「1976年度全体の企業倒産総数は,昨年作られた,これまでの最高数1万2,600件を上回り,1万5,000件になるであろう」。

      英国の状況について,デイリー・メール紙は,英国における倒産の数が60年来最高のレベルに達し,「1930年代の不況のどん底の時でもそれには及ばない」と,伝えています。

      米国では,幾つかの大企業もご多分にもれず倒産しました。同国が第二次世界大戦に突入して以来どの時期にも見られなかったほど多くの銀行が業務を停止しました。それでも,経済研究所は,「[それら]は,借金という広大な海の波間に漂う破産という氷山の一角にすぎない」と警告しています。

      問題を抱える諸都市

      それとほぼ同様の事態が,多くの都市や州をはじめとする地方自治体にも生じています。中でも特によく伝えられているのはニューヨーク市の財政危機でしょう。同市の抱える負債は130億㌦(約3兆9,000億円)に上っています。昨年同市は,短期公債の支払いを停止せざるを得ない事態に追い込まれましたが,その措置は後日,法廷で違法と宣告されました。

      しかし,ビジネス・ウィーク誌は,その論説の中で次のように述べています。「実際のところ,ニューヨーク市の抱える問題は,より広範に及ぶ問題の先ぶれに過ぎない。今から三年ないし五年以内に,米国の大都市すべては深刻な財政難に陥るであろう」。

      負債の泥沼にはまり込んでゆく都市は後を断ちません。諸都市に課せられた責務を果たしてゆくには,税収だけでは不十分です。例えば,米国の首都であるワシントン市の場合,1960年代から歳出は毎年約15%ずつ増加してきたのに対し,税収は約6%上昇したに過ぎませんでした。

      日本の47都道府県のうち,39の自治体は赤字を出すであろうと伝えられています。すでに財政破綻を宣言した都市は二か所あります。US・ニューズ・アンド・ワールドリポート誌は,「日本の643都市のうち赤字財政の都市は,二年前の53都市から約100都市に増えるであろう」と推定しています。他の国々にも,負債の増大している都市は少なくありません。

      消費者に対する重圧

      多くの国の平均的な消費者は,負債の重圧をひしひしと感じています。典型的なアメリカ人の場合,必要な経費を支払った後に残る金のほとんどは借金の返済に当てられています。

      ですから,最近の景気後退に際し,これらの累積した負債を返済できなくなった人は少なくありませんでした。破産件数がこれまでになく多かったのはそのためです。

      それでもなお,消費者の負債は増加の一途をたどっています。ロサンゼルス・ヘラルド・エグザミナー紙はこう伝えています。「ロサンゼルスの典型的な賃金労働者は,自分の所得をほとんどすべて使ってしまう。そのような人は自分の収入ぎりぎりの線で生活しており,そのため,ちょっとした非常事態が生じても悲惨な結果を招くことになりかねない」。

      同紙の伝えるところによると,負債の問題を抱える「典型的な人」には800㌦ないし900㌦(約24万円ないし27万円)の月収がありますが,「大抵の場合,銀行,クレジット・カード会社,小売店,およびガソリン・スタンドから約1万㌦」を借りており,「神経をすりへらして」います。

      ミルウォーキー・ジャーナル紙は,売春婦の一味の中に,「自分の稼ぎを家計の足しにしていた」主婦がいたことを報じています。英文読売紙の伝えるところによると,一人の主婦は,「建築ローンの返済の重圧に耐えかねて」自殺を図りました。

      確かに今日問題を抱えている人すべてが無分別な仕方で所持金を使っているわけではありません。物価が余りにも高くなったために,収入が支出に追い付いてゆかないというのが現状です。しかし,一方では,自分たちが本当に必要としていないような物を買うために無分別に金を使った人も少なくありません。そうした人々は払い切れないほどの負債を抱え込んだため,その報いを刈り取らなければならなくなったのです。

      疑わしい“安全性”

      最近では,銀行に預金のある人でさえ,幾分不安を感じるようになっています。それは,大銀行の倒産が生じたからです。

      米国では,同国の銀行業界で上位20社の一つに数えられる,フランクリン・ナショナル銀行が倒産し,ドイツでは大銀行であるヘルシュタット銀行が倒産しました。そのほかにも多くの銀行が倒産しました。また,他の銀行も負債の返済期限を延期しすぎているため,マーティン・メーヤーは,「銀行家」と題する包括的な調査書の中で次のように述べています。「この制度の中における貸付金による潜在的な損害額は幾十億㌦にも上っており,それが爆発するのは時間の問題である。現在築き上げられつつある銀行構造は,崩壊の危険をはらんでいる」。

      しかし,そのようなことは米国では起こり得ないのではありませんか。4万ドル(約1,200万円)までの預金は,連邦預金保険会社(FDIC)などの機関によって保証されており,安全なのではありませんか。

      確かにそうです。しかし,興味深いのは,アルビン・トフラーが自著,「経済けいれん報告書」の中で述べている事柄です。「FDICの幹部は一般大衆の大半が知らない事柄を知っている。それは,同機関の手持ち資金では預金総額の1%を保障できるにすぎないということである。あわてふためいた,銀行の顧客が,我先に預金を引き出しに殺到するなら,同機関はその要求に応じることはできない」。

      当局者が恐れているのはそのような取り付け騒ぎです。そのようなことは,わずか数か国が財政破綻をきたしたり,企業や都市が破産したため銀行が軒並みつぶれたりすれば,起こり得るのです。

      しかし,1976年にはそれまでの景気後退から経済面での回復が幾分見られたのではありませんか。確かにそうした回復が見られ,さらに一層の回復が期待されています。最近の数十年間というものは,そのようなパターンの繰り返しでした。しかし,景気後退はより深刻になり,回復は緩慢になって,長期的な失業者数は増加しています。

      この点に関して,バクスターは,昨年次のように述べました。「現在,経済状態が立ち直りつつあることは確かである。しかし,経済は一方では膨大な赤字予算を抱えながら,他方では流動性[現金,およびすぐに換金できる資産]という薄い層によって支えられているにすぎない。前者が結局は流動性を損なうようになることを,歴史は示してきた」。

      それでは,あなたの立場はどうなるのですか。自らを守るために一般の人にはどんなことができますか。

      [10ページの拡大文]

      『典型的な賃金労働者は,自分の所得をほとんどすべて使ってしまう。そのような人は自分の収入ぎりぎりの線で生活しており,そのため,ちょっとした非常事態が生じても悲惨な結果を招くことになりかねない』。

      [11ページの拡大文]

      「FDICの幹部は一般大衆の大半が知らない事柄を知っている。それは,同機関の手持ち資金では預金総額の1%を保証できるにすぎないということである」。

  • あなたにできることは何か
    目ざめよ! 1977 | 7月22日
    • あなたにできることは何か

      実際のところ,今日の世界の難しい経済情勢を変えようとしたところで,あなたにできる事はほとんどありません。あなたはそうした事態を作り出したわけではなく,むしろその被害を受けているのです。

      しかし,今日生計を立ててゆく際にのしかかって来る重荷を幾らかでも軽くするためにできる事がないわけではありません。大抵の場合,それは自制と関係しています。どうしてそう言えるのですか。

      自制を働かす

      物を買う段になると,自制を働かすことができなくなる人が多いということが,今日の負債にかかわる特に大きな問題の一つとなっています。気が付いた時には金を使い過ぎていて,不必要に借金をしなければならなくなります。

      しかし,経済的に難しい時期には断固たる措置を講じなければなりません。家族の必要を注意深く再評価してみるべきです。家族は収入の範囲内で生活していますか。

      そうでないなら,不急不要のものはなしで済ませるか,少なくとも減らすことができるでしょう。確かに,隣りの人は,例えば高価なカラーテレビを持っているかもしれません。しかし,それを購入することが家族により大きな負債を抱え込ませるなら,それを買うゆとりができるときまで待つのはどうでしょうか。

      金のかかる娯楽やぜいたくな食べ物,および高価なアルコール飲料を控えたからといって,損をするわけではありません。喫煙の習慣は捨てたほうが良いでしょう。そうすれば,一年間に多額の金を節約できるだけでなく,自分の寿命を延ばすことになるかもしれないのです。

      賭博をする人は,競馬場や賭博場などの施設がどうして成り立っているのか自問してみると良いでしょう。そうした施設が成り立っているのは,賭博で金を失う人が圧倒的多数を占めているからにほかなりません。そうでなければ,賭博施設は,そのような膨大な利益を上げることができなかったはずです。こうした点で自制を働かせて,多額の金を節約すれば,ずっと有益な事のために使うこともでき,将来,物を買うために蓄えておくこともできます。

      金を節約する秘訣は,実際的な見地から見て自分の収入に合った生活ができるよう,自分の欲望や期待を抑えることです。欲しいと思うものについて考え続けるのは良いことではありません。むしろ,負債を抱え込まずに,自分の買える物について考えてみてください。

      現金で支払う

      このごろは借金をすることが大いに奨励されており,金融業者が至る所に見られます。それはなぜでしょうか。金融業はとてももうかるからです。

      確かに,借金をする際に支払う6,7,8%の利子は大した額とは思えないかもしれません。しかし,貸付けの期間によっては事実上二倍か三倍にはね上がります。どうしてですか。というのは,その期間中,借りた金の全額を使えるわけではなく,それをすぐに返済し始めなければならないからです。

      例えば,最近の米国における自動車ローンの利子は平均して860㌦(約25万8,000円)でした。これは自動車の実際原価を上回ります。ほとんどの人にとって,そのような大きな物のために前もって資金を蓄えておくことはできないのが普通ですが,これはローンがどれほど高く付くかをよく表わしています。少額の貸付けについても同じことが言えます。ですから,月賦で物を買うなら確かに高く付きます。それで,できるならいつも,現金(あるいは小切手)で支払いを済ませるようにすると良いでしょう。

      クレジット・カードの使用も大きな問題の一つです。食料品を含め,物を買うのにクレジット・カードを利用する人は増加の一途をたどっています。しかし,クレジット・カードは危険な武器であるかのように扱わねばなりません。現金で支払わなくてもよい場合には,安易に物を買いがちです。しかし,クレジット・カードで性急に不必要な買い物をするなら,後日,それを支払おうとして金銭的に難しい問題を抱え込むことになりかねません。

      できることなら,借金をしないで,物を買う前に貯金をすると良いでしょう。そうすれば,負債を抱えたり,高い利息を払ったりすることを防げるだけでなく,その資金を銀行に入れておけば,利子が付きます。

      消滅しかかっている

      このように,現状にあって財政面で自分を守る方法は幾つかあります。しかし,現在の経済体制を長らえさせる方法はありません。なぜですか。それは,この経済体制が近い将来に良い状態へ回復したとしても,それは一時的なものにすぎないからです。

      誤ることのない神の預言の言葉は,経済体制をも含む今日の体制全体が,「過ぎ去りつつ」あることを示しています。(ヨハネ第一 2:17)それらの体制が長続きすることはありません。神のご意志は,間もなく人間の物事に介入して,この不満足な体制に終止符を打つことだからです。―ダニエル 2:44。

      それゆえ,神のみ言葉は,「世も世にあるものをも愛していてはなりません」と警告しているのです。(ヨハネ第一 2:15)この体制にしがみ付いたり,それを永続させようとしたりしてもむだです。イエス・キリストの予告されたとおり,間もなく,「世のはじめから今に至るまで起きたことがなく,いいえ,二度と起きないような大患難」が起こります。(マタイ 24:21)その「大患難」の期間中に,今日の金融体制は間違いなく崩壊します。

      現在,至るところで増大している山のような負債について考えれば,そのような経済上の崩壊が速やかに起こり得ることを認識できるでしょう。聖書はまさに,昔に起きた次のような事態が起きることを示しています。「彼らはその銀をちまたに捨て,その金はあくたのようになる」― エゼキエル 7:19。

      それは,“ありそうもない”ことではありません。世界状勢を観察する人々の中にさえ,何らかの急激な変化が起こるに違いないと考える人は少なくありません。例えば,「経済けいれん報告書」の中で,著者のアルビン・トフラーはこう述べています。「今日我々が目撃しているのは,単なる経済的大変動などではない。むしろ,それよりもずっと根深く,ありきたりの経済学のわく内では理解できないものである。それゆえ,いよいよ首をかしげる一方の経済学者たちは,『古い法則はもはや通用しない』とつぶやいているのです。我々が目撃しているのは産業主義の全般的な危機である。……この地球上では,産業文明の破綻が現実に起きているのである」。

      トフラーの見るところによれば,世界経済に関する悲観的な見通しが,“愚にも付かない”考えとして一笑に付されていたこともありましたが,そうした見通しは「今や真剣に考慮されて」います。

      将来に必ず来ようとしている事柄のゆえに,物質に過度の信頼を置かないようにするのは良いことです。確かに毎日生活してゆくためにはお金が必要です。しかし,それに信頼を置くなら,必ず失望に至ることでしょう。

      わたしたちすべては,この古い体制に取って代わるものについてもっと学び,それに信頼を置かねばなりません。この古い体制に取って代わるのは,天的な王国政府の下における神の新秩序です。(マタイ 6:10)ここ地球上における,義の管理の下で,人類を苦しめている諸問題すべては解決されます。そうした問題の中には経済問題も含まれています。そして,それらはわたしたちを完全に満足させるような仕方で解決されます。というのは,新秩序の全能の創造者に関して,聖書はこう述べているからです。「あなたはみ手を開き,すべての生ける物の願いを満たしておられる」― 詩 145:16,新。

  • ヨーロッパ最大の内陸港
    目ざめよ! 1977 | 7月22日
    • ヨーロッパ最大の内陸港

      西ドイツの「目ざめよ!」通信員

      私たち夫婦が南ドイツの美しい地域に住む友人たちに別れを告げると,友人は「これからどこへ行くのですか」と尋ねました。ライン川沿岸のデュイスブルク近辺が目的地であることを説明すると友人は,「じゃあ,あなた方は火花や煙の出るところへ行くのですね」と言いました。

      デュイスブルクを訪れたことのある人なら,その言葉の意味が分かります。そこでは,巨大な煙突から立ち上る煙で,日中でも空が暗くなり,夜は溶鉱炉の火で,空が赤く染まります。

      しかし私たちは,こうしたことを聞いても落胆することなく,調査に出掛けることにしました。デュイスブルクにヨーロッパ最大の内陸港のあることが分かりました。その岸壁は43㌔にも及び,ドックは22もあります。それは重要な港です。1974年には,6,800万㌧の貨物がここで扱われました。それに比べ,ハンブルクの最大の海港が同じ期間に扱った貨物の量は,わずか5,700万㌧でした。

      理想的な立地条件

      この内陸港が重要視される一因は,その理想的な立地条件にあります。ここには,世界有数の製鉄工場の溶鉱炉があります。また,ごく近辺からは,れきせい炭が豊富に産出されます。デュイスブルク市内には,大きな銅工場や多くの化学工場があります。ラインおよびその支流であるルール川のこの流域に工場が集中したため,能率的な港が必要となりました。

      さらに,デュイスブルクが港湾都市として高く評価される理由は,運河によって同市が国際的な水路や東ドイツと結ばれている点にあります。実際,ライン・マイン・ドナウ運河を使用すれば,黒海まで行くことができます。デュイスブルクには,フランス,スペイン,英国,スカンジナビア,ポーランド,ロシア,またその他の国々の船が寄港します。

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