世界展望
宗教の影響が濃い,米大統領就任式
◆ リチャード・M・ニクソンの2度めの大統領就任式では,宗教の影響がはっきりと見られた。ニクソン氏(60歳)は,イザヤ書 2章4節が開かれた,2冊の家族用聖書に基づいて就任の宣誓をした。そこにはこうしるされている。『かれらはその剣をうちかへてすきとなし…戦闘のことを再びまなばざるべし』。これは,ニクソン氏の変わらない基本目標と思われる「何世代にもわたる平和」に言及した彼の就任演説にふさわしい聖句であった。バプテスト派やローマ・カトリック,またギリシャ正教の祈りがささげられた。ニクソン支持の選挙運動をしたユダヤ教のラビの祈りは普通王のためにささげられるものであった。最後の合同礼拝は翌日行なわれ,それには,伝道師のビリー・グラハムとモルモン教の幕屋聖歌隊も参加した。
大統領となるには
◆ 昨年の12月に死亡した,H・S・トルーマン,アメリカ元大統領は,かつて令嬢のマーガレットさんに,良い大統領になろうと思えば「山上の垂訓を実践することはできない」と書き送ったことがある。大統領は「マキャベリやフランスのルイ11世,シーザーやボルジアでなければならず…うそつきで,裏切り者で,英雄で,運に恵まれた者等々でなければならない」と彼は述べた。
飛行機事故の死亡者総数
◆ 昨年の統計によると,1972年は飛行機事故による死亡者を最も多く記録した年であった。民間航空機で1,700人を越す人々が命を失った。それまでに最高数を記録していたのは1966年であったが,1,000人を少し上回っていたにすぎない。
危機にひんしている野鳥
◆ アメリカのテキサス州の海岸線沿いに巣を作る野鳥の数は減少している。1969年には主な繁殖地区のそれらの野鳥は合計1万1,500羽ほどであった。しかし,1970年にはその数は8,800羽に減少した。稲の栽培に用いられている殺中剤や水銀性の農薬の影響で,湿地に生息する顔に白いはん点のあるトキの数が減った。1970年に,脳の中にかなりの量の水銀や殺虫剤の成分が含まれている,トキのひなの死がいが見つかった。研究者たちは,その年のひな鳥は「事実上全滅した」と報告した。
『翌朝飲む』経口避妊薬
◆ 最近,カナダ医学協会が述べたところによれば,カナダの大学生には『翌朝飲む』強力な経口避妊薬が大量に与えられているとのことである。その経口避妊薬は5日間連続服用すると,性交後72時間してから服用し始めた場合でも効き目がある。こうした経口避妊薬の使用は,今日の大学生の道徳の崩壊が深刻化している証拠である。しかしながら,医学の権威者たちによると,その経口避妊薬の成分として使用されている薬剤,ジエチルスチルベストロール(DES)はがんと関連があるとのことである。肉牛の肝臓に残留しているDESが発見された時,カナダ政府は畜牛に対する同薬剤の使用停止を命じた。アメリカの科学者たちは,DESを服用していた婦人を母親に持つ若い女性には珍しい型の膣がんが進行していたと報告している。
子どもを揺り動かす
◆ 子どもの頭は,首の弱い筋肉に比べてかなり大きいので,子どもを揺り動かすと頸部をいためたり,脳の血管を傷つけたりするおそれがある。アメリカ,ピッツバーク市の小児科医,ジョン・カッフェイ博士は子どもを揺り動かすと,腕や足の骨を折るおそれがあると指摘した。精神遅鈍,視力障害,さらには死をさえ招く危険がある。中には,自動車事故のさいのいわゆる「むち打ち」症と似ているものもある。同博士は,子どもを揺り動かすことが多くのおとなのごく普通のしぐさである点に注意を向けた。
医師と患者の関係
◆ カナダのオンタリオ医学協会は,人びとが医師に関してどんなことを考えているかを知ろうと試みている。同協会は,一般の人びとと医師との間の増大するギャップを埋めたいと考えている。さらに最近,アメリカ心臓協会は医師と患者の間の仲介人の採用を考慮するよう勧められた。この仲介人,すなわち「医者の友」は,医師のために患者に治療法を説明するのである。ロンドンのある医師の次のことばは問題の一面を明確に示している。「わたしは診療の仕事を厳密に言って一つの実務として行なっている。わたしの患者は病気か,あるいは病気でないかのどちらかである。自分の家庭問題に対処できないために頭痛持ちになり,自分の不幸をわたしの診察室の机越しにぶちまけている間,わたしにそばに座わって耳を傾けてもらいたいと願うような人に費やすための時間はわたしにはない」。
ヒッチハイクに伴う犯罪
◆ アメリカではヒッチハイクに伴う犯罪がひん繁に起きている。ミネアポリスでは1年間にヒッチハイクに伴っておよそ8件の重大事件が起きた。ロサンゼルスでは同様の事件が1日に約3件の割で起きている。女性は現在ヒッチハイク人口の4分の1を占めているものと見られる。その結果,性犯罪がふえている。メアリーランドの一警察署長は,女性のヒッチハイクは「事実上強姦を招くようなものだ」と語っている。1971年にロサンゼルスで起きた強姦事件全体の22%および強盗事件の4.7%はヒッチハイクに関連したものだった。罪を犯した運転者も,車に乗った者も,服装やふるまいの点である模範にはかなっていなかった。
月に捨てられたくず
◆ 一連のアポロ月飛行計画の結果,およそ5億㌦(約1,300億円)相当の「がらくた」が月面に残された。たとえば,わずか1回の月飛行で宇宙飛行士は,200万㌦の「月面車」,4万5,000㌦相当の手で扱う道具や運搬具,1個30万㌦の小型の生命維持装置2個,12万5,000㌦のアンテナ,それに月着陸船の5,000万㌦相当の部品を捨てた。岩石や土の標本を積み込む場所をあけるため,宇宙飛行士はおのおの1足4,000㌦のクツを処分した。寝るためのハンモックは4,000㌦であった。処分されたテレビカメラは1台9万㌦,映画用カメラは5万㌦であった。
英国の若者に毛しらみが流行
◆ 英国,ロンドンの文部省の医療当局者が報告したところによれば,英国の若者百万人のうちほぼ4分の1の者の髪の毛にはしらみがいるという。同当局者は次のように語った。「現在,男女を問わず長髪が流行しており,男女がお互いの首に腕を回して歩くことか習慣となっているので,毛しらみが広まるのは当然である」。
ペルーのアンチョビーの危機
◆ ペルー政府は,かたくちいわしの一種であるアンチョビー漁をふたたび制限つきで許可している。昨年4月,不可解な暖流のためアンチョビーは姿を消した。ペルーは世界でも有数の,魚類製品の輸出国であり,アンチョビーは魚粉や魚油の主要な原料で,年間4億㌦(約1,040億円)の収益を上げるペルーの産業資源である。同政府はすでに魚粉40万㌧の輸出契約を外国と結んでおり,それを履行するためにやむをえず出漁を許可した。
ユダヤ人の人口
◆ アメリカのロサンゼルス・タイムス紙か最近伝えたところによれば,同市に住むユダヤ教正統派所属のユダヤ人人口は,1960年の推定4万9,250人から1970年の2万9,200人に減少した。
欧州共同市場の拡大
◆ 今年の初め,EEC(欧州経済共同体)もしくは欧州共同市場にさらに3か国が加盟した。イギリス,アイルランドそしてデンマークが,同市場の最初の加盟国,つまりフランス,西ドイツ,イタリア,ベルギー,オランダおよびルクセンブルクに加わった。
マリア崇拝の衰退
◆ 最近,カトリック教会のマリア崇拝が衰退していると伝えられている。アメリカの首都ワシントンのカトリック大学の神学教授,イーモン・キャロルは,ロザリオを繰りながら公にささげる祈りや九日間の勤行,またマリア崇拝に関連した他の儀式など,聖母礼拝が“劇的に衰退”しているとして嘆いた。2,3年前には,こうした事柄はカトリック教徒の生活の中で顕著な役割を果たしていた。同教授は,「多くの人たちにとって,マリア信仰という精巧な建物が突然崩壊したかのようである」と語った。彼は,これを,第二バチカン公会議で行なわれたマリアの地位に関する論争に対するカトリックの一般信徒の反応が招いた結果であろうと考えている。
若者の不道徳を是認する牧師
◆ 英国,ケンブリッジにあるトリニティ大学の学長で英国教会会員のジョン・ロビンソン博士は,異性あるいは同性間の性関係を問わず,少年少女は14歳で性関係を持つことを法的に許されるべきであると述べている。その話を聞いていたメソジスト協議会の人々の中には同博士のそうした見解を喜ばない人がいた。ところが,同協議会の会長ハリー・O・モルトンは,ロビンソン博士にはそのような法律の通過を提案する権利があるとして同博士を公に弁護し,性関係は公に討議されるべき事柄であり,もしロビンソンのことばが「そうした討議をするよう人々を助けるものとなるなら,それは歓迎すべきことである」と言明した。