「満足のいく生活」のブロシュアーによる聖書研究
1 「満足のいく生活」のブロシュアーを用いて聖書研究を行なう際,三つの目標を意識していることは助けになります。(1)聖書が神の言葉であるという認識を築くこと(1-3部),(2)創造者を身近に感じるように援助すること(4,5部),(3)神との友情を築くなら満足のいく生活を送れるという認識を培ってもらうこと(6-9部)です。この目標を達成するために何ができるか考慮しましょう。
聖書が神の言葉であるという認識を築く
2 第2部にある聖句を説明し,例証し,適用なさってください。この積み重ねによって,神の言葉が生活に及ぼす影響を,家の人が実感するなら,み言葉に対する感謝と認識を抱くことができます。必ずしもすべての聖句を取り上げる必要はありません。家の人の関心を高める上でふさわしい聖句について話し合いましょう。
3 心を動かす説明: 「王国宣教」2002年3月号,折り込み,10,11節の提案を実行している奉仕者は,この面で成功を収めています。人は,聖句についての理解,洞察力,識別力,そして知恵を得るとき,それを宝のように,まさに神に関する知識のように感じるはずです。(箴 1:1-3; 2:1-11)兄弟たちが成功を収めている例を幾つか挙げましょう。
8ページ,11節を用いた再訪問を以下のように準備できます。
エフェソス 4章26,27節: ブロシュアーの本文には,「憤っても」という部分について,「憤りを感じるのがもっとも」な場合があると述べています。「罪を犯してはなりません」とは,暴力に訴えないこと,仕返ししないこと,いつまでも根に持って無視する態度を持たないことと説明できるかもしれません。「憤りを感じること自体悪いのではありません。しかし,そう感じるのがもっともな場合でも,暴力に訴えたりうらみを持ち続けたりしないため,憤りの感情に対処するようアドバイスしています」と説明します。強い怒りの感情にどう対処できるかについて箴言 19章11節,助けとなる特質についてコロサイ 3章12-14節を紹介します。
箴言 19章11節: 本文にある「強い怒りの感情にどう対処できるでしょうか」との問いかけをします。聖句が感情を爆発させる前に「洞察力」を働かせるように勧めていることに言及します。洞察力が他の人の言動の背後にある理由を理解する能力であることを説明します。本文にある自問を用いて,洞察力を働かせるならどうして怒りを遅くするのか,いろいろな場面に関して例証することができます。わたしたちによくある状況に適用し,日々の生活に共に当てはめるよう勧めてください。
9ページ,14節を用いた再訪問を以下のように行なえるかもしれません。
箴言 15章13節: 最初の一文を読み,「喜び」がストレスを軽減するかぎであることを指摘します。喜びを失いがちな状況に対処することについて続く二つの聖句を紹介します。
伝道の書 7章16節: 「義に過ぎる者」に関する本文の説明を活用し次のように話し合うことができます。「だれでも,自分が正しいと思うことを他の人が行なわないとがっかりしたりいら立ったりするものですね。聖書ではそのような人を義に過ぎる者と呼んでいます。この聖句は人間関係でストレスを抱える原因の一つが義に過ぎることにあると指摘しています。特定のやり方にこだわったり,他の人がそのとおりにしないといら立ったりすることを避けるなら,不必要にストレスを抱え込むことを避けられますね」。
箴言 12章25節: 本文中の聖句の前後にある文章が,この聖句の前半と後半の意味を説明しています。後半の部分を説明する際,わたしたちは人の心を読むことができないため,良い言葉をかけてもらうためには,まずだれかに相談する必要があることを推論します。それから,この聖句が,「心配事が心に重くのしかかっているなら,独りで苦しむことがないようにしなさい。信頼できる友に打ち明けて,励ましとなる良い言葉をかけてもらいなさい」という意味であることを説明します。この格言の価値を例証するために,苦しんでいるときに自分独りで努力しても,なかなか消極的な思考回路から抜け出せないこと,友人や家族からの励みとなる言葉は,それを断ち切る力があることを話し合えます。
4 可能な限り聖書を実際に開き,ブロシュアーの本文の説明を活用してください。挿絵や写真にも注目できます。例えば,7ページ,9節のルカ 6章38節を説明する場合,8ページの写真から話し合います。「左側の家族はどう感じているでしょうか。たった一皿とか1個とは思わず,自分たちを気遣ってくれる気持ちを心から喜んでいますね。受け取った家族はどのように反応するでしょうか」と推論し,8ページの2行目から「与える精神が促進され」るという部分について話し合います。さらに写真から「このような様子を観察している子どもたちにはどんな影響が及ぶでしょうか」と尋ねることもできます。長い目で見るなら最も人生を豊かにする生き方であることを理解してもらえるでしょう。
5 場合によっては,聖句の価値を示すのに,他の出版物の視覚に訴える資料を補足的に用いると助けになるかもしれません。ある原則を当てはめている人の様子を示す挿絵や写真を出版物から探し,それを見せて適用を励ましている兄弟たちもいます。それでも,ここに挙げた例のように,ブロシュアーそのものを前面に出し,多くの補足資料を持ち出すことは避けましょう。奉仕者自身が聖句をよく調べ,黙想し,生き生きと自分の口で語るなら,家の人の心を動かすことでしょう。―申 6:6。
6 第3部に関心を持続させる: 第2部を扱う際,わたしたちがソーシャルワーカーではなく,聖書に対する価値観を築こうとしているという目的意識を持っていることは肝要です。特定の聖句に家の人が感動しているなら,その機会を活用し,聖書そのものへの認識を高めてみるのはいかがですか。―「王国宣教」2002年3月号,折り込み,13節を参照してください。
「人間関係」の副見出しから話し合った後,次のように話し合うことができるかもしれません。
「これらの聖句は周りの人との関係をよくするのに役立つと思われませんか。[相手の述べることを聞く。] ところで,どれほどの国の人が聖書を自分の分かる言語で読めると思われますか。[11ページ,2節を討議する。] ではどうでしょう。__さんが役立つとおっしゃったこの同じ聖句をヨーロッパの人でもアジアの人でも,日本から見て地球の裏側に住んでいる人でさえ,自分の分かる言葉で読めるということですね。そう考えると,聖書は単に身近な人との関係をよくするだけでなく,人種や民族の違いを超えて,世界中の人を仲良くさせる可能性を秘めた本だということになりませんか」。
7 一人の姉妹は,第3部の内容に少し言及してから第2部の聖句を考慮するという方法をとって,第3部への関心を高めることに成功しています。例えば,12ページ,4節を用いる場合,まず12ページの写真に注目します。それからヨブ 26章7節とイザヤ 40章22節を読み,地球が浮いており丸いことが何千年も前に聖書に書かれていたことを指摘します。それから「__さんの家の屋根はどんな形でしょうか」と尋ねます。家の人が,外に出ないと分からないと答えると,「そうですね。何千年も前に書かれた聖書の中に地球の姿が記してあるということは,地球の外にいるだれかが聖書を書かせたに違いないと思いますが,いかがですか」と尋ねます。第3部で詳しく学ぶことを告げると,家の人は早く第3部を学びたいという気持ちを言い表わしました。また第2部で学ぶ聖書の原則に対する認識を一層高めることにも貢献しました。
8 第2部の討議が終わったなら「聖書 ― それがあなたの生活に及ぼす力」のビデオを見るなら,聖書に対する関心を高めることができるでしょう。
9 第3部から教える: 第3部に入っても型にはまった研究スタイルにならないようにし,よく会話してください。質問を用いるのは効果的です。例えば,11ページ,2節では,「そうすると,聖書はどれほどの人が,手にすることができるでしょうか」,「世界中にどれほどの言語があるかご存じですか」,「聖書が翻訳されている言語は驚異的なものだと思われませんか」,「これほど多くの言語に翻訳されてきたのはなぜだと思われますか」などと,尋ねてみることができるかもしれません。
10 視覚に訴える資料も役立ちます。3節では聖書が1,600年以上かけて書かれたことについて述べています。兄弟たちの中には学生時代の歴史の教科書の年表などを活用している人もいます。「聖書が今年完成したとすると,創世記が書かれたのは古墳時代,真ん中にある詩編は室町時代,そしてマタイによる書は昭和に入ってからということになりますね」と年表を追いながら説明すると,聖書の壮大なスケールが伝わるようです。
11 世界史の図表にはたいてい,アレクサンドロス大王の統治を示す世界地図とその後4分割された地図が載せられています。それで7,8節の預言を扱う際には,一般の信頼されている資料を用いて聖書の預言の信ぴょう性を示す奉仕者もいます。この預言の成就の例から,聖書が幾通りにも解釈できるあいまいな予言ではないことを気づかせてください。
12 ここまで学んだ時点で,家の人が聖書をどのようにみなしているか,見解を知る質問を用いて確かめるのはよいことです。必要に応じて,「すべての人のための書物」のブロシュアー,「聖書 ― 正確な歴史,信頼できる預言」,「聖書 ― 人類の最古で最新の本」のビデオを活用することができるでしょう。
創造者を身近に感じるように援助する
13 創造者を認める: 第4部から,研究生が創造者の存在を受け入れるように援助しましょう。2節では,宇宙に始まりがあったことを示す科学的な証拠に言及しています。「創造者」の本,11-14ページの資料にもう少し詳しく扱われているので補足的に用いることができるかもしれません。
14 16ページ左側の挿絵は,わたしたちの体の基本的単位であるタンパク質が,非常に複雑な分子構造を持っていることを示しています。次のように説明できるかもしれません。
「挿絵の一番上の部分を見ると,炭素,水素,酸素,窒素などがそれぞれボールで表わされていて,それらがつながってアミノ酸という分子を作っています。アミノ酸は何百種類もありますが,生物体のタンパク質に必要なのは20種類だけです。[真ん中の挿絵] それらがふさわしい順番に,らせん状につながれてゆきます。[左下の挿絵] アミノ酸はただつながるだけでは,機能を持つタンパク質になれません。折りたたまれて立体的な形になります。勝手気ままに曲がるのではなく,決まった所で曲がり独自の形を作り上げてゆきます。[右下の挿絵] アミノ酸以外の物質が結合している複合タンパク質も形成され,その機能を果たしています」。
15 このことが何を意味するかを分かりやすく説明するため,「創造」の本,43ページ,17節の例えを用いることができます。続く44ページ,18節や「目ざめよ!」誌,1987年1月22日号,6ページの確率を示すこともできます。そうすれば,ブロシュアーの16ページ,3節にある生化学者の言葉がより説得力を持つことでしょう。生物を分子レベルで見るなら一つのタンパク質もひとりでにできたとは考えられません。
16 16ページ,4節については,「王国宣教」2002年3月号,折り込み,15節を参照してください。脳の持つ優れた働きに関しては,「創造者」の本,4章を活用できます。
17 エホバ神との友情を育む: 第5部はエホバが信頼できる友になってくださることを取り上げていますので,今後の展開の土台となる資料です。多くの人の人生をとても豊かにしてきた交友関係に入るため,エホバ神がどんな方かをまず知るように勧めてください。2-5節にはエホバがどんな方か全体的な事柄が説明されていますので,1節ずつ要点を強調して扱うことができます。
18 3節では,エホバが命を与え,支える方であることを教えています。使徒 14章17節から,神が食物を備えることによりご自身の性格を明らかにしておられることを指摘してください。「創造者」の本,78-81ページから,エホバが命を支え続けるために循環のシステムを作られていることに言及できるかもしれません。4節にはエホバの四つの属性が登場します。「エホバに近づきなさい」の本の48ページ,173-175ページ,273,274ページなどの自然界の事例を用いることができます。だれかと友になるには,その人の仕事ぶりを見るだけでなく人となりをもっと詳しく知る必要があります。それで,自然界に加えて,聖書を調べるなら神の特質がよく分かることに言及できるでしょう。ここで神のお名前の意味を説明したなら,今後の研究ではエホバという名前を意識して用いてください。事あるごとにエホバの特質に触れましょう。
神との友情を築く
19 第9部,28ページの左には,「神との友情を築いていくなら,満足のいく生活を送ることができる」と記されています。このブロシュアーのテーマにどうすれば到達できるかを考えて,それぞれの箇所を学ぶようにするなら,資料の大切なポイントを強調することができます。
20 第6部 エホバが人間を創造した目的を知るなら,本当に満足のいく生き方を理解できる: アダムの実在の証拠を示すなら,研究生は学んでいることをより現実的にとらえることができるでしょう。(「目ざめよ!」誌,1983年1月8日号,15ページの囲み記事と「創造者」の本の98ページを参照してください。)アダムが神と親しい関係を持っていたことを示す表現が幾つも出てきますので,それらに注目なさってください。人間同士の良い関係でさえ,愛に加えて敬意が不可欠です。2節から,神との親しい関係に,「健全な怖れ」の気持ちが含まれることを説明するなら,神との友情を正しく理解する上で助けになるでしょう。第7部への良い土台ともなります。
21 第7部 アダムとエバが神との親しい関係を捨てたときに満足のいく生活が失われた: 創世記 3章16-19節と23,24ページの挿絵を考慮し,仕事や家庭内の問題など,わたしたちのストレスの主な要因がここから始まったことを話し合ってください。(第1部と比較することもできます。)創世記 2章16,17節と22ページの写真から,病気や死などが人類に持ちこまれた結果苦しめられていることを説明してください。そうすれば24ページ,8節の後半にある結論に研究生も到達することができるでしょう。
22 第8部 神との親しい関係を取り戻すために,エホバとイエスがしてくださったこと: 25ページの写真はわたしたちの置かれている状況を例えで表わしています。「王国宣教」2002年3月号,折り込み,16節を参考にし説明することができます。アダムの場合と同じく,イエスが地上に実在していたことについて,「ものみの塔」誌,1995年8月15日号,8,9ページや「創造」の本,221ページから取り上げることができます。ここでは,満足のいく生活を取り戻すため,イエスが行なわれたことが二つ取り上げられており,分けて扱うことができるかもしれません。
23 4節では,イエスが幸福な生活を送るための指針を与えられたことに言及しています。山上の垂訓を一緒に読んでみるのはいかがでしょうか。これはあくまでも神との関係をよいものにするための提案であり,その生き方が実生活のストレスを軽減することにもなる点に言及できます。もう一つは贖いです。家の人の心の中に,エホバに対する感謝の気持ちが育まれてきたでしょうか。それなら,6節から,家の人がこれまで考えなかった思考の型を教えることができます。コロサイ 3章12-14節が引用されていますが,第2部11節で引用されたときに省略されていた部分に言及しています。エホバが惜しみなく自分を許してくださっていることを意識するときに,この聖句を本当に当てはめたいという動機づけを得ることができます。それで第2部で出てきた聖句の数々は,神との友情を育てようとする人にはもっと深い意味を帯びるようになります。
24 この折り込みに挙げられた提案は,皆さんの区域,研究生にも有効でしょうか。そうであればぜひともその提案を活用してください。人々の宗教的な背景,関心,能力,事情は皆異なります。一人一人に純粋な関心を払い,エホバとの個人的な関係を築くよう援助してください。わたしたちがエホバのご意志を行なうために払う努力を,エホバが豊かに祝福してくださいますように。