副鼻腔炎に対処するには
あなたは曇っている日に頭痛がしますか。鼻カタルに悩まされて,鼻水がしょっちゅう出て困りますか。それは副鼻腔が悪いからだ,と考えておられるかもしれません。その考えは正しいかもしれず,あるいは,他に原因があるかもしれません。
事実,副鼻腔の権威A・P・セルツァー博士の発見によると,副鼻腔が悪いと考えていた人1,000人のうち,実際にそうだった人はわずか12%にすぎませんでした。しかし副鼻腔がわるくても,わるくなくても,それについての知識は興味深いものですし,あなたの役にたつことがあるかもしれません。
では,副鼻腔などのように,洞と呼ばれるものはいったいなんでしょうか。洞とは,「くぼみ,腔,または穴」のことです。わたしたちのからだには洞がたくさんあります。その中で一番注目に価するのは,鼻の近くにある,もしくは鼻腔とつながりのある4組の洞です。これは副鼻腔として知られています。ここではこの4組だけを取りあげます。
その位置
副鼻腔のうち最大のものは,上がく骨に入りこんだ,鼻の両側にあるピラミッド型の二つの洞です。これらの洞は,上歯の根元のすぐ上のところから,眼窩にかけてあいており,おとなの場合,16立方センチよりやや大きいのが普通です。
小さいのは,目の上のひたいの中にある前頭洞です。この前頭洞のうしろ側の,前頭洞より少し下がったところには,篩骨,つまり“ふるい状”の骨の中に二つの洞があります。これらの洞はいずれも,少ない場合は3個から,多い場合は18個ほどの小さな蜂窩でなっています。もうひと組の洞は,篩骨洞のうしろ側のさらに下がったところで,頭がいの底部に近いところにあります。
これらの副鼻腔については,その大きさや,形や,数に一様性がないと言われています。ただし,その大きさはたいてい同じで,その構造が多数の小室または仕切室でなっていようと,少数のそれでなっていようと,変わりありません。
その目的
これらの穴,腔,くぼみつまり副鼻腔は,どんな役目を果たすのでしょうか。胸腺はなんの役にもたたない,と多くの人が長いあいだ考えてきたように,ある人々はこれらの有用性を疑いますが,創造者を信ずる者にとっては,人体の他のあらゆる部分と同様,これらにも存在の理由がある,とみるのが合理的なように思われます。
ひとつには,副鼻腔は,頭がい骨の重量を軽くします。またこれがあると,頭がい骨が振動しやすいので,副鼻腔が声のひびきをよくすることは疑えません。健康であるためには,副鼻腔の通りのよいことが必要とされています。それはわたしたちの吸い込む空気を湿めらせたり,暖めたりすると考えられているからです。また副鼻腔は,たんとか粘液などの廃物をからだが排除するのを助ける,と考えている人も少なくありません。
なぜ副鼻腔がわるくなるか
副鼻腔炎は,それ独特の定型的な症状がないために,副鼻腔炎かどうかすぐにわかるとはかぎりません。なぜそう言えるかは,副鼻腔炎が一般に他の状態に付随して生ずることを考えてみるとわかります。その最もありふれた状態は普通のカゼ,すなわち上鼻道の炎症です。したがって,頭痛・熱・めまい・食欲の減退または嗅覚の喪失などがそのまま,副鼻腔の症状とは言いきれないのです。
なぜわたしたちの副鼻腔,もっと厳密にいって副鼻腔の粘膜は,時々調子がわるくなるでしょう。それは粘液が出すぎるためか,鼻またはのどに通ずる管が炎症を起こしてつまるためです。もっと直接的な原因としては,副鼻腔から出ている管をふさぐ腫瘍や鼻たけ,さらに多いものとしては,副鼻腔の粘膜にまで波及することのある鼻炎などがあります。
粘膜が炎症を起こす傾向は遺伝によるものかもしれません。また胎児期の状態が望ましくなかったために,早くからそういう素因ができてしまったかもしれず,幼児期に適当な食物や愛情のこもった両親の世話が足りなかったためかもしれません。過度の心配とか,いっしょに住んでいる,あるいはいっしょに働いている人々との間に生ずる緊張やあつれきなどが原因になるのと同様に,感情を抑制しないことも誘因となるでしょう。また湿度や気温の高低が極端で,それになれていないことも,副鼻腔炎の原因となる可能性があります。
ある人の副鼻腔炎は,重病で全身が衰弱したためか,あるいは体力を消耗する快楽にふけったためかもしれません。アレルギー性,感染,かたよった食習慣,運動不足,休息や睡眠の不足などがもとで起こる場合もあります。こうしたことはみな,急性副鼻腔炎の原因になりがちです。急性副鼻腔炎をなおさないで放置しておくと,表面化しなくても,なおりにくい慢性副鼻腔炎になる恐れがあります。
どうすればよいか
他の健康問題と同じく,まず予防することです。「健康において最も重要な要素は予防である」とはまさしく名言です。
休息と睡眠を十分にとり,新鮮な空気を吸うことです。また健康によい食物を食べ,からだに負担をかけすぎないようにします。すわって働く職業の人ならば,とくに運動療法がよいでしょう。これをすると元気な気分があじわえます。鼻の病気の人は,往々にして暗示を受けやすいので,健全な精神と感情をいつも培うように努力することが必要でしょう。
へやを暖めすぎたり,乾燥させすぎたりしないようにしてください。必要以上に暖かくするよりも,気持ちよい程度に涼しいほうがよいのです。たばこを吸う人ならたばこをやめ,酒の非常に好きな人は量を減らします。
すすめられている療法の一つは,ビールとかコーヒーをさけて,水やくだものジュースを十分に飲むことです。熱い湿布,熱い蒸しぶろやサウナぶろ,からだが排泄物を出すのを助けるかん腸剤の使用などをすすめる権威者もいます。からだが廃物を排泄しようとする努力のあらわれである,と副鼻腔炎を見る人々はとくに,濃厚な,高度に精製された食品を減らすようにすすめます。
ある自然療法医はタマネギの湿布をすすめます。(タマネギをこまかくきざみ,それを2枚のガーゼにはさんで,寝るときくびに巻きつける。)熱湯のゆげを吸いこむことをすすめる人もいます。
医者は,いままでに述べた療法のどれかをすすめると同時に,消炎剤や抗ヒスタミン剤を処方するかもしれません,消炎剤を使用すると粘膜のはれはひきますが,これを鼻腔の中へたらしこんだり,噴霧したりする場合は10日以上つづけてはいけません。血圧の高い患者に使用するさいにはとりわけ注意が必要です。重症の場合には,医師は痛みをやわらげるために抗生物質やペニシリン,あるいはもっと強いものを処方するかもしれません。慢性の場合,手術をすすめる医師もいますが,最近,その数は昔ほどではなくなりました。
他方,脊柱指圧療法医は,副鼻腔炎はとくに交感神経系と関係のある過敏症であるということを前提にして治療を進めます。局部的には,頭につながる神経のある脊柱を操作することにより,また全身的には,患者のからだ全体の総体的な健康の増進をはかることによって,両面から治療を行ないます。副鼻腔炎の治療を施すとき,副鼻腔に圧力を加え,栄養に力を入れる脊柱療法医はますますふえています。
ほかにも治療法はあります。しかしつまるところ,節度と自制が根本をなしていることは,いくら強調しても強調しすぎることはありません。健全な栄養をとり,適度に運動し休息と睡眠を十分にとり,また正しい精神的,感情的習慣を保つようにこころがける人は,副鼻腔にかんするかぎり予防策を講じていることになります。
ほとんどの人は自分のからだに対して,自分の自動車に対するほどの注意も払わないようです。しかし因果の法則はいずれの場合でも容赦なく当てはまります。そして自動車よりもからだのほうが無限に高い価値をもっているではありませんか。この原理は副鼻腔炎のみならず,人間を悩ます他のあらゆる病気に当てはまります。副鼻腔炎の専門家がつぎのように述べているのも,十分の理由があるわけです。「ここで一番重要なことは,他の場合と同じく全身の健康である。すべての粘膜の正常な働きは,からだ全体の健康に大きく左右されるからである」。